カナビスの分類とカナビノイド



カナビスは、成育地の環境が異なれば形状やカナビノイドの構成も異なることはよく知られている。 カナビスの分類は、植物の形状のよって行われる 「形態型」 が多いが、この他にもカナビノイドの化学的構成の違いによって分ける 「ケモ型」(chemotype) と呼ばれる分類方法もある。

現在では、シードバンクによって人工交配が進み数百種類の種子が販売されるようになって、この2つの分類方法は入り組んできているが、以前のように地域性の強い自然交配が主な場合は、形態型とケモ型には一定の相関傾向が見られる。


形態型分類

形態で分類する代表的な方法は、サティバ/インディーカ分類で、葉の形状、背丈や成育期間にも違いがある。薬用用途に限定すれば、ケモ型分類とも重なっている。

サティバ   葉のブレードは幅が狭くスマートで、一枚の葉のブレード数は5〜11。成長は早いが、成育期間は長く、そのために背丈も高い。開花が始まってから成熟するまでには10〜16週間かかる。植物の色は薄めのグリーン。芳香や味はくせが少ない。ケモ I 型で、効果はマインド・ハイ系。

インディーカ   葉のブレードは幅が広く、一枚の葉のブレード数は3〜7。背は低く、成育期間は短い。開花期間は6〜8週間で、バッズは密で樹脂に富んでいる。植物の色は濃いグリーン。芳香は強く、味も強い。ケモ II 型で、効果はボディ・ストーン系。


ケモ型分類

ケモ型は通常、THC(テトラヒドロ・カナビノール)とCBD(カナビジオール)の2種類のカナビノイドを軸に、次の5つのタイプに分類されている。
タイプ I   高THC、低CBD。この種のカナビスは、いわゆる「マインド・ハイ」系に属し、効力がシャープで強い。多くは緯度30度以下の熱帯地方に成育する。効力の強いことで有名なタイ、メキシコ、ジャマイカ、南米コロンビアなどのカナビスがこの分類に属している。形状は多様だが、多くは背が2〜3メートルぐらいと高く、葉が茂り、枝は下部のほうが長く全体に円錐形をしている。メキシコやタイなどの一部はさらに背が高くポプラのような形状をしている。一般に、成熟には時間がかかる。

タイプ II   中〜高THC、高CBD。この種はモロッコやアフガニスタン、パキスタンなど北緯30度近辺に成育している。効力は、CBDが鎮静作用を持っているために、THCとCBDの構成比率によって強度や質にかなりバリーエーションがある。一般に、タイプ I に比べてピークはフラットだが、持続時間が長く、いわゆる「ボディ・ストーン」系に属する。

全体的に浸出する樹脂も多いのでハシシの製造に向いている。トルコやギリシャ、中央アジアなどのものは、背丈が2〜3メートル程度で、上方ほど短くなるものの長い枝が上に向かってポプラのように伸びるが、ネパールや北インド、北アフリカでは、成育時には1.5〜1メートル程度の小型なものもあり、短い茎には小さな葉が密生したバッズを形成する。成熟は早い。

タイプ III   低THC、高CBD。この種は、主に繊維やオイル用に栽培されているもので、通常、緯度で30度以上の温帯に成育している。THCが少ないので吸ってもあまりハイにはならず、軽い頭痛がして眠くなる。

形態は多様で、栽培目的によって全然異なっている。繊維用のヘンプは背丈が10メートルを越すものもあり、主茎が長いく、側茎や葉は上部にしか付いていない。オイル用のヘンプは0.5〜1.5メートルほどの小型で、葉が茂り、茎はどれも同じ長さだが短く、全体が円筒のような形状をしており、一見してカナビスには見えない。

タイプ IV   この種は、南アフリカやナイジェリア、アフガニスタンなど限られた地域にしかみられなもので、タイプ I やタイプ II のTHCサイド・チェーンが短くなったプロピル基状のカナビノイドTHCVを多量(5%以上)に含んでいる。THCVの効力はTHCよりもやや劣るが、急速に発現し急激に消失する性質があるために、THCとCBDの効果とも複雑に融合し、最もエグゾチックな効果をもつカナビスと言われている。

タイプ V   この種は、CBGMというカナビノイドを生成することが特徴で、東アジアに成育している。しかしCBGMには活性がなく、全体に薬理効果も少ないとされている。

これら5つのケモ型はそれぞれが明確に分離しているわけではなくお互いが重なりあっている。形態にも多くのバリエーションがあるが、重要なことは、カナビノイドの生成量や構成比が遺伝によって決まるということで、栽培方法の工夫によって植物の大きさや形や樹脂の浸出量はある程度変えることはできるものの、遺伝的性質であるカナビノイドの構成を簡単に変えることはできない。このため、タイプ IIIの繊維用のヘンプの種からは高THCのカナビスを育てたりすることはできない。


CAT分析による分類

CAT分析 では、THCとCBD以外のカナビノイドも含めてさらに細かい分類をビジアル化して提供している。この指標を使えば、素性の分からない植物でもかなり正確に特徴を知ることができる。




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ブリーディング

栽培法でカナビスの遺伝的性格を変えることはできないが、種類の違う植物を交配によってそれぞれの遺伝子を組合せ、特徴の入り交じった品種を作ることができる。最近は、サティバとインディーカの人工交配(ブリーディング)が盛んに行われ、一部のシードバンクでは、サティバ/インディーカの遺伝子比率が、100-0、70-30、50-50、30-70、0-100などと分類して種子を販売している。

サティバ% インディーカ% 品種例
100 タイ、ヘイズ、マラウィ、スワジ

70 30 シンデレラ、カリ・ミスト、スカンク、パワー・プラント、ブードゥ、ヘイズ

50 50 AK47、バブル・ガム、ジャック・ヘラー、スーパー・スカンク、ホワイト・ウイドウ

30 70 ビッグ・バッズ、ブルベリー、ノーザン・ライト5、スイート・テゥース、トップ44

100 アフガニ、ヒンズー・クシ、ノーザン・ライト、シバ
交配の世代で品名が重複することも多い。例えば、スカンクには20種類以上種類があるといわれている。


ブリーディングは、新しい品種をつくり出すためばかりではなく、品種を安定させるためにも行われる。一般に、交配結果が安定するには5シーズン以上の成育が必要とされ、その間、形状が安定せず奇形が現れたり、種がうまく発育しなかったりする。

また、特別な環境に適応するように植物を改良することも行われている。最近では自家栽培がさかんになり、狭い室内でも簡単に栽培できるような小型で、成育期間が短く、照明の波長によく反応する品種の開発も進んでいる。