アメリカ政府は1974年には知っていた

隠蔽されたカナビスの抗癌作用発見


The American Medical Marijuana Association

Source: AlterNet
Date: May 31, 2000
Subj: Pot Shrinks Tumors; Government Knew in '74
Author: Raymond Cushing
Web: http://www.alternet.org/story/9257/?page=entire


21世紀を迎えたばかりの2000年2月、スペイン・マドリッドの研究者たちがカナビスの活性成分であるTHCをラットに注射したところ治療不能だった脳腫瘍がなくなったと発表し、医療カナビスという言葉がそれまでとは全く違った意味を持つようになった。

だが、マドリッドのこの大発見については2月29日のUPI通信が簡単に伝えただけで、実質的に大手マスコミは何も報道せず、大多数のアメリカ人には知らされることすらなくいつのまにか立ち消えてしまった。


初めてではなかった大発見

いずれにしても非常に不可解なことは、THCが腫瘍を縮退させたという研究は、実際にはこれが初めてではないという事実だ。

腫瘍を持った動物にTHCを投与したマドリッドの研究は実際には2番目で、すでに26年も前にアメリカのバージニア大学の研究者たちも同じことを実験していた。どちらの研究も、テストした大半の動物の腫瘍が縮退するか完全に破壊されることを見出している。

1974年、バージニア医科大学の研究者たちは国立衛生研究所から資金提供を受けて、カナビスが免疫システムにダメージを与える証拠を探していたが、その代わりに、THCがマウスの肺癌、乳癌、ウイルス性の白血病の成長を遅くすることを発見した。

しかし、アメリカでのカナビス弾圧の歴史を書いたジャック・ヘラーの「裸の王様」によると、連邦麻薬局(DEA)は即座にバージニアの研究を止めさせて、それ以降のすべてのカナビスと腫瘍についての研究をできないように画策した。

1976年には、ジェラルド・フォード大統領が、大手の製薬会社に対してカナビスのハイを起こさずに医療メリットだけを引き出す合成THCの開発権利だけを例外的に認めて、それ以外の公的なカナビス研究を一切終結させた。


マドリッドの実験

ネイチャー・メディシン3月号に掲載されたマドリッドの研究は、コンプルセンテ大学のマニュエル・グズマン博士に率いられたチームが実施したもので、45匹のラットの脳に癌細胞を注入して、腫瘍ができたことをMRI(磁気共鳴画像法)で確認してから、12日後に、THCとWin55 212-2(THCと似た作用を持つ合成カナビノイド)を15匹づつに注射して、何もしていない対照群の15匹と比較して調べた。

「グリア細胞腫を植え付けた後に何も処置しなかったラットは、すべて12〜18日で死亡した。・・・これに対して、カナビノイド(THC)を処置したラットは、対照群ラットに比較して著しく長く生存した。THCが効果を示さなかったラットは3匹だけで16〜18日で死亡したが、9匹はそれよりも長く19〜35日間生き延び、残りの3匹については腫瘍が完全に消失した。この状態はWin55 212-2でもほぼ同様で・・・」

また、研究者たちは、THCの生化学・神経学的な影響を調べるために健康なラットの脳に7日間にわたって多量のTHCを与える実験も行ったが、害は何も見付からなかった。

「腫瘍が消失した3匹のラットについては詳細なMRI分析を行ったが、壊死、浮腫、感染、トラウマなどにともなうダメージの兆候は何もなかった。・・・また、カナビノイドの投与の副作用にについても検証したが、腫瘍の無くなったラットもそうでなかったラットについても、カナビノイドの投与で運動神経や身体活動などの行動パラメータには大きな変化は見られなかった。」

「食物と水の摂取量と体重についても、カナビノイド投与期間中もその後も影響はなかった。また、カナビノイドを使ったラットの血液学的な面についても標準と変わりなかった。以上のように、7日間のカナビノイド投与期間中もその後少なくとも2ヶ月間は、生物学的パラメーター、組織の損傷を示すマーカーのどちらにも変化は見られなかった。」


隠蔽されたカナビス研究

グズマン博士は1998年にカナビノイドによって乳癌細胞の増殖が抑制されることを見出していたが、このときは生きた動物ではなくペトリ皿(シャーレ)での実験だった。したがって、生きた動物の腫瘍にTHCを投与した実験とすれば、今回の研究が1974年のバージニア研究以来のことになる。

グズマン博士は筆者のEメール・インタービューに答えて、バージニアの研究にことは聞いていたが、実際の文献は見つけることはできなかったと言う。このためにネイチャーメディシンに論文では1974年バージニア研究には触れておらず、今回の研究が腫瘍を持った動物に対する初めての研究ということになった。

「バージニアの研究の存在については知っていました。しかし、オリジナルの文献を入手しようとさまざまな人を通じて何度も試みたのですが、実際には入手不可能だと分かったのです。」

先のジャック・ヘラーの本によると、1983年9月にレーガン/ブッシュ政権がアメリカの大学や研究者たちに対して、1966年から1976年に行われたすべてのカナビス研究の論文とその概要文献を図書館から廃棄するように要請した。こうした検閲については疑問視する動きが起こってすぐに撤回されたが、実際に多量の情報が失われたことが知られている。


わずかに残されたバージニア研究の痕跡

グスマン博士は、バージニアの研究が1975年の国立癌研究所のジャーナルに 「カナビノイドの抗腫瘍作用」 というタイトルで発表されていることを知らせてくれた。筆者はこの情報をもとにあちこちを探して、ついにカリフォルニア大学デービス校の医学部図書館でコピーを入手し、早速マドリッドにファックスで送った。

バージニア研究の論文の概要には次のように書かれていた。「ルイス肺癌腫の成長が、THCとCBN(カナビノール)の経口投与で抑制された。・・・20日間連続でTHCとCBNを投与したマウスでは、当初の腫瘍の大きさが縮退した。」

この論文では乳癌については触れていないが、1974年8月18日のワシントンポスト紙のロカール版に 「研究で癌が抑制」 というヘッドラインのニュースで取り上げている。現在では、この記事が1974年の研究について紹介した唯一の新聞記事として知られているが、そこには次のように書かれている。

「バージニア医科大学の研究チームは、マウスによる実験でカナビスの化学活性成分が3種類の癌の成長を抑制することを発見した。また、臓器移植の拒否反応を引き起こすとされている免疫作用も抑えられるのではないかと指摘している。・・・研究者たちは、THCがマウスの肺癌、乳癌、ウイルス性白血病の成長を遅らせ、生存期間が36%伸びることを見出した。」


今だ無視し続けるアメリカ

グズマン博士にこの25年前の新聞記事をファックスで送ると、興奮した返事が返ってきた。

「私にとっては非常に興味深い記事です。この事実を発見した研究チームの希望に満ちた興奮が間近に迫ってくるようです。ですが、この発見の後で起こった悲しむべき展開を思うと何とも言えなくなります。不幸なことですが、私たちが再びTHCの抗腫瘍作用のベールを取り除くまでのこの25年間は、世界が希望に満ちた発見から追われて、知的好奇心を長く去勢された不毛の時代だったわけです。」

だが、今回のマドリッドの発見もアメリカでは実質的には存在しないも同然の扱いになっている。ネイチャー・メディシンの論文のことを取り上げたのは、2000年2月29日付けのUPI通信が簡単に1度だけ伝えただけだった。筆者も、クリントン・スキャンダルを最初に取り上げたことで有名なインターネット・ゴシップサイト「ドラッジ・レポート」で偶然に短いリンクを見つけて初めて知ったほどだった。

今回の発見は、自然の生み出した成分が命を脅かす脳腫瘍を破壊するという文句のない大ニュースであるにもかかわらず、ニューヨーク・タイムスもワシントン・ポストもロスアンゼルス・タイムスも含めてすべてのマスコミが無視を決め込んでいる。

Delta-9-tetrahydrocannabinol induces apoptosis in C6 glioma cells   Guzman et al, FEBS Letters 1998 436: 6-10.
Anti-tumoral action of cannabinoids  Manuel Guzman el al, Nat Med March 2000 Vol 6 No 3
Cannabinoids: Potential Anti Cancer Agents  Manuel Guzman, Nature Reviews, Vol 3, Oct 2003

THC destroys cancer cells, but the research is buried and ignored.  D.Larsen, Cannabis Culture, 2002.9.3
カナビノイド、ガン治療薬への期待、アメリカの偏見と立ち遅れ  Paul Armentano, 2006.2.14