カナビスと精神病

関連を示す強いエビデンスはない

ランセット、カナビス48論文 検証レビュー

Source: drugtext.org
Pub date: December 9, 2004
Subj: No strong evidence that use of cannabis
has important consequences for psychological health
Web: http://www.thehempire.com/index.php/cannabis/news/
no_strong_evidence_that_use_of_cannabis_has_important_consequences_for_psyc


この記事は、ランセット2004年5月15日号に掲載された 『若者のカナビス等の違法ドラッグ使用による精神及び社会的続発症 - 系統的レビュー』 (Psychological and social sequelae of cannabis and other illicit drug use by young people: a systematic review  John Macleod et al.) の結論を抜粋要約したもので、この論文では、過去に提出された48件の関連論文を総合的に検証している。当然のことながら、それには、カナビスと精神病の関連を示しているとして頻繁に引用されるスエーデンやニュージーランド、オランダなどの論文も含まれている。


若者たちの間では、違法ドラッグ、特にカナビスが広く使われているが、それに伴い、いくつかのタイプの精神衛生上の害や社会的への悪影響もが起こっている。

だか必ずしも、それらの害とカナビスの使用とは直接の因果関係で結ばれているとは限らない。もし因果関係が存在すれば、リクレーショナルなカナビス使用が増えるに従って、社会にはその分だけ公衆衛生問題が多く顕在化することになるし、もし直接の因果関係がなく相関関係だけとすれば、単にカナビスを押さえつけることをベースにした政策だけでは、公衆衛生の十分な改善は期待できないことになる。

カナビス使用と、学業成績の低さ、及び他の違法ドラッグ使用の増加との間には、かなり一貫した関係がみられる。しかし、精神的な健康問題や問題ある行動との間の関係は一貫性が薄い。いずれにしても、これらの関係は因果関係ではなく、相関関係の範疇で説明できる。

検証した論文のデータには、若者と精神的害に間に、重大な因果関係を強く示すようなエビデンスは見られない。しかし、そのような関連の可能性については、ないとまでは言い切れない。

カナビスの使用と学業成績の低下の間には一貫した関係が見られる。この関連については、この問題を扱った大半の研究において、客観的で明らかに妥当なデータで示されている。

カナビスの使用と他のドラッグ使用とに間には一貫した関係が見られる。しかし、1件の研究で注射した場所が検証されているだけで、そのほかの全ての研究は、裏付けできない自己申告にもとづいている。

カナビス使用と精神病問題の間には一貫した関係は見られない。関連がないとする研究がある一方で、使用量が増えれば問題も増加すると主張する研究もある。後者の研究でも、特定の精神症状に関連付けられるパターンについては一貫していない。精神病問題について扱った大半の研究は、自己申告による症状によるもので、標準的な診断基準にもとづいたものは一部にとどまっている。また、臨床的に統合失調症という結果を導き出した研究は1件だけしかない。

カナビス使用と反社会的その他の問題ある行動との間には一貫した関係は見られない。関連を認めた研究でも大半が、裏付けのない自己申告にもとづいている。

社会一般を対象とした長期的研究では、カナビスに比べて、それ以外の違法ドラッグのほうが多く使われているとした研究は見られなかった。

カナビスと精神病の害の関連を示すエビデンスがあることは確かだが、しかしながら、このエビデンスの範囲や強度については一般に思われているよりも弱く、さらに、これらの因果関係については明確というにはほど遠い。

とくにカナビス使用と精神病との結び付きに関しては,問題になる精神症状が、カナビス使用の結果というよりも、その人にもともと備わっている素因による影響のほうが大きいように見える。

最初に無症状で自覚のない精神症状が前提にあって、それがカナビスを使おうとする動機を引き起こすと考えられる。もともと精神症問題を引き起こしやすい傾向のある人は、ドラッグを使うと問題のある使い方をする傾向が大きい。例えば,うつ症状の人は、そうでない人に比較して、タバコを始めやすく、止められない。

精神症傾向のある人は、カナビスを使うと症状を悪化させることもある。

以上の考察は、カナビスと精神衛生上の害や社会的への悪影響に関しては、ほとんどが直接の因果関係ではなく、それ以外の関係として説明可能なことを示唆している。しばしば、ドラッグ政策においては、ドラッグ使用と精神病の因果関係をベースにその正統性を主張しているが、ここに示されたエビデンスでは、その因果性は強いとは言えない。

カナビスの問題は広く関心が持たれているが、この検証レビューでは、カナビス使用そのものが精神病や公衆衛生上の重大な原因になるというような強いエビデンスは見出せなかった。しかし、このことは、精神社会的な面でカナビスには害がないことを意味するわけではなく、問題を示すエビデンスもあり、無害という結論は出てこない。

カナビスは広くつかわれているので、もっと良質のエビデンスが求められている。また、他のドラッグとの関係も、例え少ない使用でも、重要な影響を持っている可能性がある。