マリファナ禁止法は失敗

最近の有力レポートがすべて同意見

Source: http://www.mpp.org/
Subj: New Reports All Agree: Marijuana Prohibition is an Expensive Failure
Web: http://www.mpp.org/reports/index.html
2005.7


マリファナ禁止法の失敗と急激な費用の増加を指摘し、政策の転換を求めている、3人のノーベル賞受賞者、著名なシンクタンクであるアメリカン・エンタープライズ研究所などが出した最近の6つのレポートを紹介。

●マリファナ禁止法を廃止すれば毎年100〜140億ドルの財源が確保できる...
    -- ミルトン・フリードマンら500人の経済学者の連名レポート

ハーバード大学経済学部ジェフリー・ミロン客員教授が、2005年6月2日、「マリファナ禁止法の財政面からの考察」 というレポートを発表し、マリファナ禁止法を廃止して、マリファナにアルコールと同様の課税による規制を導入した場合、取締りの経費の節減と税収入の増加で毎年100〜140億ドルの財源がうまれると見積もっている。

ノーベル経済学賞の受賞者で保守派の重鎮ミルトン・フリードマンを中心に、さらに2人のノーベル賞受賞者と500人を超える著名な経済学者がこのレポートを支持し、「マリファナ禁止法に対するオープンで率直な議論」 を促す公開書簡を連名でブッシュ大統領、連邦議会、知事、州議会に送っている。「われわれは、このような議論を通じて、マリファナを合法化して他の商品と同様に課税・規制した社会体制が好ましいという結論になると確信している。」

連法政府や州政府のさまざまなデータを利用して、ミロン教授は次のように結論を出している。
  • マリファナ禁止法を合法的規制システムに置き換えると、禁止法執行のために政府が負担している約77億ドル(連邦レベル24億ドル、州および地方レベルで53億ドル)を節約することができる。

  • マリファナ販売からの税収は、税率を日用品と同程度とした場合が24億ドル、アルコールやタバコ並にした場合が62億ドルになる。


●政府の反ドラッグ政策には成果なし
    -- 政府の浪費を告発する市民の会(CAGW  Citizens Against Government Waste)

政府の浪費、不正、乱用、不始末を削減することを目標に掲げた全国組織CAGWは、2005年5月12日、「ホワイトハウス麻薬撲滅対策室(ONDCP)が17年と多額の費用をかけて行ってきたドラッグ・コントロール政策は何ら意味のある成果を上げることはできなかった」 とする検証レポートを発表した。

「ONDCP浪費はドラッグ戦争の煙の中」 と題するレポートは、どのようにONDCPが毎年何百万ドルも無駄にメディア広告や州対策に費やしてきたかを明らかにしている。
  • ONDCPは、納税者の税金を多数の高額なドラッグ・コントロール政策に投入してきたが何ら成果を上げられず・・・アメリカのドラッグ問題を食い止めるどころか、1997年以降42億ドルをメディア広告や州との抗争、ずさんなドラッグ密輸対策費として浪費し、国を不毛の荒れ地に変貌させてしまった。

  • 1996年にアリゾナ州とカリフォルニア州で医療マリファナ法が住民投票で認められて以来、ONDCPは医療マリファナ条例を持つ州に対して嫌がらせのキャンペーンを開始し、「州の権利を侵害し、税金を露骨に乱用し、ONDCPの本来の使命を逸脱してきた。ホワイトハウスの麻薬対策室は、国にまたがる大がかりなドラッグ組織を根絶するために財源を使うべきなのに、納税者の汗の結晶である税金で、プロパガンダばかりのニュース・ビデオをつくって州民にまき散らしてきた。

  • ONDCPは、無駄で不必要なプロジェクトに税金を湯水のごとく浪費している。連邦法をも犯して、マリファナを規制してコントロールしようとする州の努力を妨害したり、国の反ドラッグ・キャンペーンに20億ドルも費やして高額なプロパガンダ広告をつくったにもかかわらず、若者のドラッグ使用を減らすこともできない。さらに、マリファナ合法化のあらゆる動きに反対し、本来ドラッグ戦争とは無関係な医療マリファナの弾圧にまで連邦の資金を浪費している。


●ドラッグ戦争は低所得のマリファナ・ユーザーに対する戦争に変質した
    -- 判決監視プロジェクト(Sentencing Project)

監獄での人権侵害と急増する監獄人口を告発する判決監視プロジェクトは、2005年5月3日、「1990年代を通じて法執行当局は、低所得のマリファナ事犯の逮捕に焦点を移し、ドラッグ戦争がマリファナ戦争に変質した」 とするレポートを発表した。

このレポートによれば、1990年から2002年の間に国全体のマリファナ事犯は82%増加し、そのほとんどが単純所持で占められている。現在では、年間150万人のドラッグ事犯の45%がマリファナで逮捕されている。

その結果、警察の費やした資金の大半が低所得層の単純所持に対するもので、マリファナで重罪になる者は6%に過ぎない。また、マリファナ事犯で刑務所に入れられている4人に一人が低所得層になっている。

マリファナ禁止法の執行に毎年数十億ドルも費やしてきたにもかかわらず、マリファナの価格は下がるいっぽうでユーザーを減らすことも、入手を難しくすることもできなかった。


●刑務所はドラッグ政策の役に立たない
    -- アメリカン・エンタープライズ研究所

アメリカで最も信頼されているシンクタンクの一つである保守系のアメリカン・エンタープライズ研究所は、ドラッグ政策を刑務所中心ではなく、治療オプションの拡大に焦点を合わせるべきだ、と書かれた新しい本を発行した。

2005年2月に発行された「アメリカのドラッグ政策分析評価」で、メリーランド大学教授でRANDドラッグ政策研究センター上級エコノミスト、ピーター・ロイターと独立系コンサルタント、デビット・ボイムは、市場分析の手法を使って反ドラッグ政策活動の効果について評価を行い、活動が失敗していると結論づけている。

著者たちは、「執拗な法執行でドラッグの使用が減るという確証もないままドラッグ政策はいっそう懲罰的になっていき・・・刑務所のドラッグ事犯は1980年から2003年までで10倍に膨れあがってしまった」 として、この状況を改善するには次のような変更をすべきだと提言している。
  • 法執行は、下層レベルのディーラーを多量に検挙するのを目標にするのではなく、ドラッグの取引に伴う暴力などの問題に焦点を合わせるべきである。

  • ヘビーなドラッグ・ユーザーに対する取締りを緩和して治療サービスに資金を費やし、有罪を宣告された中毒者は強制的に治療を受けさせ、節制を守れば自由にさせておくようなプログラムを拡充すべきである。


●マリファナ削減に何十億ドルも費やしたのに、効果もわからない
    -- 良識を求める納税者機構 (Taxpayers for Common Sense)

連邦政府の浪費や効果のない財政支出を監視している全国組織、良識を求める納税者機構は、連邦政府がこの30年間マリファナ撲滅に数百億ドルを費やしたにもかかわらず、その使用状況にほとんど変化がなかった、とする経済的側面からの研究を発表した。

2005年6月28日に出された 「連邦のマリファナ政策に対する基礎評価」 で、政策に実効があるかどうか確証もないにもかかわらず、マリファナの使用と供給の削減のために多額の税金が投じられてきたと指摘し、広報官は 「天井知らずの赤字下で、われわれ納税者は多くの税金が煙りの中に消えていくのを見てきたが、政府のマリファナ削減対策には何の効果もなかった」 と述べた。

研究では、国の反マリファナ政策のコストと効果を評価した結果、連邦の対策費が増えるとマリファナの使用も増えていることを見い出して、ホワイトハウス麻薬撲滅対策室(ONDCP)の若者向けメディア・キャンペーンや学生のドラッグ・テストがマリファナの使用率を低減させることもできずに無駄で実効のない逮捕を繰り返してきた、と喝破し、政策が失敗だったことを明らかにしている。

「ドラッグ戦争の究極的な成果はドラッグの使用を減らずことにある・・・この基準に従えば、政府のマリファナ政策はほとんど効果を上げていない。これ以上この問題に何十億ドルも費やし続けるよりも、政府はマリファナ・ビジネスから完全に手を引く方が好ましい」 とレポートは結んでいる。


●ドラッグ戦争は泥沼にはまっている
    -- 連邦司法省レポート

U.S. Department of Justice: Top cops say drug war is on the wrong track

司法省の2005年のレポート 「国内のドラッグの脅威評価」 は、マリファナ戦争が失敗しただけではなく、警察当局もアンフェタミン(覚醒剤)のほうが圧倒的に脅威だと見ている、とした結論を出している。

現場の地方警察関係者にどのドラッグが最も脅威だと思うか調査したところ、マリファナとしたのは12%しかいなかった。しかもこの数字は毎年下降し続けている。一方では、「マリファナは国中に広がり、どこでも手に入る」 ほど大量に出回って日常化しているにもかかわらず、最大の脅威として、36%がコカインを、40%がアンフェタミンをあげた。

「このデータは、国中でマリファナが流通し使われているにもかかわらず、大半の法執行当局が、暴力や危険なドラッグ工場などもっと実体のあるリスクとして、アンフェタミンのほうが緊急な問題と考えていることを示している」 と指摘している。

(これに反して、ホワイトハウス麻薬撲滅対策室(ONDCP)は執拗にマリファナにこだわり、2002年11月には国中の法執行関係者に書簡を送り、「この国では、マリファナの脅威に匹敵するドラッグは他にない」 と平然と書いている。)

このレポートはまた、「入手しやすさが減ったという報告は一つもない」 としている。実際、一部の地域からの報告では、未成年にとってマリファナのほうがアルコールやタバコよりも手に入れ易くさえなっている。