チェコ共和国

今ではカナビスは普通の生活の一部

Source: Radio Prague
Pub date: 27 December 2005
Subj: Cannabis - now a normal part of life in the Czech Republic
Author: Ian Willoughby
Web: http://www.radio.cz/en/article/74121


先頃発表されたヨーロッパでの調査によると、全EU諸国の中で、カナビスを吸っている人の割合はチェコ共和国の若者が最も高くなっている。鉄のカーテン撤去以前には、チェコ社会の中でドラッグが問題になったことはほとんどなく、あってもアンダーグランド世界の現象に過ぎなかった。

しかしながら、特にカナビスに関しては、チェコでは今では普通の生活の一部になっている。ヨーロッパ・ドラッグ監視センター(EMCDDA)の最新報告書によれば、チェコの16から34才までの人の22%が過去1年間にカナビスを吸ったと答えており、ヨーロッパのどの国よりも多くなっている。

首都プラハのチャールス橋のすぐ脇にある地下カフェで若い男女にインタビューしてみると、若者たちのとっては、カナビスがごく普通の生活の一部になっている様子がわかる。

少女:「2.3年前からそんな感じ。カナビスを吸うってクールよ。今ではそれがノーマルだもん。ここではみんな表の通りで吸っているわ。だから私も隠したりしない。でも、通りで気にする人なんていないけど、クラブでは吸わないわ。店の人とトラブルになるから。」

少年:「前は吸っていたけど、俺は今はやっていない。友だちは吸っているけどね。ものすごく吸う奴もいるよ。」

少女:「みんなとてもオープン・マインドよ。両親は旧世代だけど、危険だなんて全然思っていないもの。」

しかし、彼らの親たちが若かった時代にはカナビスにしても他のドラッグにしてもあまり出回っていたわけでもなく、世の中が変化したのは最近のことのようだ。翻訳家で作家のジェセフ・ラウフォルフさんは、チェコスロバキアの共産主義時代のことを思い出して次のように語っている。

「もちろん人々はカナビスのことは知っていましたよ。ですが大半はただ知っているというだけで、実際に使っていたのは幸運な一部の人だけで自宅栽培がほとんどでした。密輸もありましたが、捕まると最低でも2年間の懲役でしたからあまり多くはありませんでした。」

「もっとも、栽培していたといってもとても貧弱なもので、庭に生えていたとしても、誰もそれとは気づかず警察に通報する人なんかいませんでした。」

しかし、ラウフォルフさんによれば、1989年11月のビロード革命以降に急激に世の中が変化したもので、今の若い世代になってからというわけでもない。

「カナビスに対する人々の考え方は非常にリベラルで、平均的な人でも普通のことだと思っていました。小さな村などではみんなが吸っていましたから。何か特別の変わったものをやっているという感覚はなく、ちょっとビールを飲むような感じで吸っていました。」

「いわゆるインテリやアンダーグラウンドのカウンターカルチャーのような人とは違って、畑でトラクターを運転していたりするようなごく普通の人たちです。」

チェコ・ドラッグ監視センターのビクトル・ムラビック代表は、この15年間にまた別の変化が起こったと言う。

「カナビスの市場や配布方法が変わったのです。90年代の始めころは、タダでもらったり買っても非常に安かったので商業化以前の状態で市場といえるものはなかったのです。でも今はすっかり商業化されて、タダということはほとんどなくなりました。単にブラック・マーケットの一商品になったわけです。」

ムラビックさんは、自分の研究所でもチェコ共和国のドラッグの使用についてモニターしているので、先月発表されたヨーロッパ全体の状況には特に驚いていないが、一部に誤解を招くような印象を受けたと次のように指摘する。

「チェコだけが飛び抜けてカナビスの使用率が高いわけでもありません。例えば、同じような国もイギリスなど5ヵ国ほどあって似たような数字になっています。また、カナビス問題については、特に合法的なものも含めて精神活性のある薬全体の状況の中で見るべきです。」

「チェコ社会では、伝統的にアルコールの使用については特に寛容で、タバコについても同じです。従って、カナビスの使用についても、このような背景も含めて広い範囲でとらえる必要があるわけです。」

また、EMCDDAの調査では、過去1年間に最低でも1回はカナビスを吸った人の割合だけに注目していて、他の要素が考慮されていないとも言う。

「この調査では、カナビスを使うインテンシブや頻度といったことに何も触れていません。多分、チェコ人は、もともと他の国の人たちに比べて好奇心が強いので、いろいろ違ったものを試してみる傾向が強いと思いますよ。」

チャールス・ブリッジから数分のオールドタウンの奥まった路地に、プラハ・ドラッグ・クリニックがある。創始者のイワン・ダウダ医師は、カナビスの使用が一般化しているのを認めながらも、報告書のデータには疑いを投げかけている。

「いつものことですがドラッグのこととなると、統計は本質的な問題を抱えています。例えば、チェコは楽観的でオープンな社会ですから、若者たちも悪びれず何も隠さず答えます。そのぶん数字は他の国よりも高くなっていると思います。また、今回の報告書全体のいろいろな数字には、チェコに良い面もあります。」

「ハードドラッグの使用が少なく、いわゆるソフトドラッグに偏っているのは良いニュースです。このような大きな落差は、チェコ同様にカナビスの使用率が高いヨーロッパの他の国では見られません。そうした国のハードドラッグとソフトドラッグの使用率には目立つほど大きな差はないのです。」

チェコ人はリラックスすることが好きで、世界でもビール飲みが多いが、そのこととカナビスの使用率の高さが関係しているという人もいる。 「まあ、国のキャラクターみたいなもんだよね。カナビスが好きなのは。笑って、音楽を聞いて、おいしく食事できるドラッグだからだよ。その他にも楽しいことがあるからね。」

「もう10年か12年も昔にことだけど、スキンヘッドたちのデモがあって、本当に攻撃的でアナキストたちと衝突していたのを見たことがあるけど、その戦場のような衝突から200メートルも離れていないところではカナビスの合法化デモもやっていた。そこでは、みんなが歌って踊って、いい雰囲気だったよ。」

「私は、カナビスとアルコールが非常に似たところがあると思っているの。アルコールのほうがちょっと危険かもしれないけど。だから、その分だけ社会がカナビスがを新しいドラッグとして受け入れているんじゃないのかな。」

チェコでは20年前に比べて、カナビスの使用が大きくひろがったわけですが、その結果、身近にネガティブな出来事を見たりしますか?

「当然のことですが、カナビスだってドラッグですよ。いくらソフトドラッグといってもドラッグに違いはありませんからリスクを持っています。カナビスに神経過敏になる人もいます。でもそれは、アルコールに合わない人もいることと同じことです」 とダウダ医師は言う。

「ですので、若者たちには適正な情報を与えて、カナビスにもリスクがあることを教える必要があります。カナビスをやるなら他人にも自分にも責任を持って、アル中やハードドラッグと使ったりする人のようにならないように注意しなさいとね。」

現在のチェコ共和国のカナビスの法律は少し混乱している。明確な量の定義もせずに、「少量よりもそれほど多くない量」の所持については軽犯罪ということになっている。

ダウダ医師は、現在、チェコ国会で法律をもっと明確なものにしようとする動きがあることを歓迎している。「ドラッグを何層かのカテゴリーに分けて、カナビスを最も低いレベルに位置付けるように計画されています。こうした政策は、10年前よりもずっとプログマティックだと思います。もっとも、20年前はもっとプログマティックでしたが。ボルシェビキ時代はドラッグなど問題にされませんでしたから。」



Annual report 2005: the state of the drugs problem in Europe  (EMCDCA)


Annual Report The Czech Republic 2004 Drug Situation