オランダのコーヒショップ

喫煙禁止でも生き延びる


Source: Reuters
Pub date: April 19, 2007
Subj: Dutch coffee shops say cannabis smoke here to stay
Author: Sabine Fiedler
http://www.ukcia.org/news/shownewsarticle.php?articleid=12458


タバコの喫煙禁止法は、アムステルダムを訪れる旅行者の魅力の一つになっているコーヒーショップの終わりを意味するのだろうか?

その可能性はない、と保守派の政治家でコーヒーショップのオーナーでもあるミカエル・フェーリング氏(50)は言う。

ヨーロッパ諸国ではレストランやカフェ、バーなどでのタバコの喫煙禁止が始まっており、オランダもそれに続こうとしているが、フェーリング氏は、そうなってもカナビスを吸うことは可能なまま残されると見ている。「タバコの喫煙禁止でコーヒーショップが終わりになるなどと考えるのばかげていますよ。」

フェーリング氏によれば、コーヒーショップにやって来てカナビスを買って吸うお客さんたちは、普通はタバコを混ぜてジョイントを巻いているが、タバコが禁止されてもいくらでも他の方法を見つけるだろうと言う。

「パセリでも、あるいはお望みならボロの靴下だっていいんです。それを混ぜて吸ってもここでは誰も気にしたりはしませんよ。それとタバコの代替えになるようなハーブだってたくさんありますから。」

タバコの喫煙禁止法は2008年から開始されることになっているが、それに伴って、カナビスの活性成分であるTHCを煙ではなく蒸気にして吸うことのできる風変わりな新しい方法が広まることも考えられる。

「ここにやって来るアメリカ人のお客さんたちは、たいていはタバコを混ぜずにパイプを使ったり、ボルケーノを使っていますよ」 と言って、彼は、少し暗めで雰囲気の良い店に置いてある銀色で円錐型の装置を指さした。

ボルケーノはバポライザーと呼ばれる装置の一つで、カナビスを熱してTHCの蒸気をつくり、長い縦型のバルーンに貯めるようになっている。

彼は、装置をカウンターに出し空気を送り込んでバルーンを膨らませながら、ボルケーノを使えば、パイプのようにカナビスを燃焼させて無駄に煙を逃すことがないので、その分何回も使えて結局は安くつくと言う。

「アメリカ人のお客さんで満席の日などでは、100から200バルーンぐらい出ますよ。」


オランダの寛容政策

だが、この「420カフェ」にやって来るヨーロッパ人のお客さんは、大半がカナビスとタバコを混ぜたジョイントを好むとフェーリング氏は言う。

そんな一人で、スイス在住でチェコ生まれのパベール・コトーバさんは、入口の近くの椅子に腰掛け、「禁止されたって、店の外へ出て吸えばいいだけのこと。何の問題もないさ」 と大きな笑顔に潤んだ瞳で言う。

法的には、オランダでもカナビスは禁止されていることになっているが、「寛容政策」のおかげてお客さんは5グラムまでの購入が容認されている。コーヒーショップも政府から規制を受けていて、在庫できるのは500グラムまでになっている。

コーヒーショップがオランダに出現したのは1970年代の始めで、それ以来、ツーリストたちを魅きつけている。

今までのところ、オランダの国会議員の多数は、コーヒーショップに対してはいかなる禁煙規制も免除されると主張しているが、ヨーロッパではもっと包括的な禁止法が導入される気配もある。

カナビスの小売業を営む他の多くの仲間たちには悲観的な見方もあるが、カナビス小売業組合の公報を担当しているフェーリング氏は、年間10億ユーロ以上と推定される産業が禁止法で危険に晒されるとは考えていない。

700軒以上もあるオランダのコーヒーショップの大半は、いよいよとなれば、みんなでカナビス・ドライブ・インをつくれば、カウンターにはお客さんの列ができて買って帰るようになるだけで、何の影響もないと彼は言う。「そうした巨大な店なら、1年間に約500万ヨーロだって稼ぎ出しますよ。」

さらに、最近、政府が法制化を進すめているコーヒーショップでのアルコール販売禁止が実現しても、お客さんがたいして嫌がるとも思えないと言う。「その分、たくさんカナビスを吸うようになるだけですよ。」

オランダでは、2008年1月より、ホテル、レストラン、ファストフード店での喫煙が全面禁止となる。カフェやクラブなどでの実施は2011年に予定されている。

420カフェ は、アムステルダム駅から大通りをダム広場に向かい、途中の細い路地を右に入ったところにある。

アムステルダムでも最も古いカフェの一つで、以前からビールを販売していた。普通、コーヒーショップではアルコールの販売は認められていないが、アムステルダムでは、コーヒーショップの認定制度が始まる1997年以前から酒類の販売免許を持っていた店は例外的に認められている。

現在は「420カフェ」と呼ばれているが、正式名称は「デ・クーエル」で、店内の前半分はカフェそのものに残されている。奥のディーラー・カウンターの横には、ボルケーノ・バポライラー2台と顕微鏡が置かれている。音楽はロック中心で、レゲはなく、クラシカルな雰囲気に包まれている。

この記事では、タバコを混ぜないでカナビスだけで吸えば禁煙法に抵触しないのではと書かれているが、実際上この論理が通るかどうかは疑わしい。

オランダでもそうだが、医療カナビスが認められているカリフォルニアやカナダでも、「no smoking」の対象には明確にカナビスも含まれている。

しかし、コーヒショップは飛行場などに設置されている喫煙ルームのような位置付けをすることもできるので、そうした回避策が取られる可能性もある。また、地方のコーヒショップでは中庭を持っているところもあり、もし室内でだめでも外では許されるのではないか?

スピリッフ (ベベリウィック)。室内にはバーダンパーも設置している

EUの禁煙政策が進められるにともなって、ここ数年、オランダのではバポライザーを設置するコヒーショップが増えてきている。中には、バポラーザー専用の禁煙ルームを持っているショップもある。

バポライザーの種類とすれば、バーダンパーとボルケーノの2種類で大半を占める。バーダンパーがホッカ型の水パイプがベースになっているのに対して、ボルケーノは前もってバルーンに蒸気を貯めてから、取り外して吸うようになっている。この構造上の違いは、開発の対象が嗜好用途と医療用途の違いから来ている。

バーダンパーはユーザーが強く吸引する必要があるが、嗜好用途の場合は吸っているという手応えがあり、コーヒーショップではこちらのほうが人気がある。店側にとっても、メンテナンスとしては1日1回水を入れ替える程度で済むために設置しやすい。

ボルケーノはバルーンから蒸気を押し出すことで、肺の弱い患者でも時間をかけて吸うことができる。また、バルーンの大きさを調整して一定量の蒸気をつくれるので、蒸気の量や濃度を一定にできるという特徴がある。このことは、医療用途では重要な要素となっている。

しかし、コーヒーショップなどで大勢が共同で使う場合は、人数によってバルーンの大きさを変えたり、パーツが多いためにメンテナンスにも手間がかかるという欠点があり、店に置いてあっても実際には使えるようになっていないことも少なくない。

ホッカ型のバーダンパーとバルーン型のボルケーノ


コーヒーショップでは、バーダンパーのほうが人気がある


エニータイム (アルクマール)では、多数のバポライザーを設置している


バポライザー専用ルームもある。入口には禁煙マークが・・・


参考:   バポライザー、魔法の蒸気