続出する医療カナビス栽培希望者

ニューメキシコ州、供給をめぐる課題と挑戦

Source: New Mexican
Pub date: May 19, 2007
Subj: Volunteers Lining Up To Grow Medical Marijuana
Author: Diana Del Mauro, The New Mexican
http://www.mapinc.org/norml/v07/n622/a01.htm?134


別名「魔法の土地」(The Land of Enchantment)と呼ばれるニューメキシコ州で、医療カナビスをめぐる新しいニッチ市場が出現しようとしている。あちこちの農家からは、カナビス栽培の将来性を見越して問い合わせが続出している。

ニューメキシコ州では、4月の始めに、医療カナビス法(リン&エリン・コンパッショネート・ユーズ・アクト)が議会を通過し、アメリカで医療カナビスを認めた12番目の州になったが、それ以降、医療カナビスの栽培ライセンスを求める人たちが、州の保健省に問い合わせの電話をかけてきたり、中には直接話を聞きに訪れる人もいる。

保健省の担当者は、栽培ライセンスを発効するなどという話は誰もしたこともなれれば、そのような書面もないとして、どうしてそんな噂が出てくるのかとニガ笑いしている。保健省の感染症医療ディレクターであるスティーブ・ジェニソン医師も、「何人かが尋ねてこられましたが、法律をどのように実現するかについてはまだ何も決まっていませんと答えています」 と語っている。


他の州の保健省の役割は小さい

ニューメキシコ州の事態は極めて例外的だと言える。医療カナビス法を持つ他の州の場合、一般に、保健当局に課せられている役割は、医療目的にカナビスを所持したり栽培することを認められた患者や介護者の登録事項を管理する程度で、ニューメキシコ州よりもずっと小さい。例えば、コロラド州やオレゴン州では、医療カナビスを用意することは患者側にまかされている。

だが、ニューメキシコ州の場合は、保健省が、州内の認定患者用に、カナビスの生産・保管・配布・販売をすることが法律で定められている。この点が他州とは全く違い、連邦政府が犯罪と考えている活動に州自らが関与することで、連邦政府との間の法的対立が表面化してくる可能性がある。

「ニューメキシコ州の保健省が人的患者に医療カナビスを配布することになれば、アメリカでは初めての州になります」 とドラッグ・ポリシー・アライアンス(DPA)ニューメキシコ支部のレーナ・シュチェパニスキー代表は指摘している。

全国的な運動を展開している彼女の団体では、今回の法案に対するロビー活動を行ったほか、2006年にはビル・リチャードソン知事のキャンペーンに5万ドルを提供している。

シュチェパニスキー代表によれば、1976年に始まって1992年に打ち切られた実験新薬プログラム(IND)の適応を受けた5人の患者だけが、現在でも連邦政府のドラッグ乱用研究所(NIDA)から医療カナビスの支給を受けているが、それ以外には、医療カナビスを患者に配布している連邦および州政府機関はないと言う。


非常に複雑な問題

州のゲーリー・キング司法長官は、法がどのように実行されても、連邦法でカナビスの使用・所持・配布が違法であることには変わりはないと言う。しかも、連邦政府は、公式には、カナビスには医療効果がないという立場をとっている。

この事実は、ニューメキシコ州の職員も含めて医療カナビス・プログラムに係わるすべての人が、州法では連邦の訴追から保護されないことを示しており、「依然として連邦法に反しているので、現段階では、州の職員は実際的な危険に晒されることになる」 とフィル・シスネロス司法省広報官も認めている。

しかし、今までのところ、公式に司法長官事務所に、この件で問い合わせをして来た人はいないと言う。

つい先日、保健省と司法長官事務所の代表らは、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の臨床研究者であるドナルド・アブラム博士を招いて、特定の病状にある患者の治療にカナビスが効果を持っていることを示す臨床エビデンスの説明を受けた。会合では、新しいニューメキシコ州法が直面する実施上の課題についても話合いが行われた。

「この件は本当に複雑な問題ですから、われわれは最大限慎重に対処していかなければなりません」 と保健省のジェニソン氏は語っている。

何年にもわたって医療カナビスが合法化されるのを待ち望んでいた人たちのとっては、州法の完全実施までには、まだまだ紆余曲折があることを我慢しなければならないということになる。


配付システムをすぐに実現するのは難しい

いずれにしてもジェニソン氏のよれば、法律の発効する7月1日からは、患者には一時的に無料の医療カナビスIDカードが発行されることになっている。カードはいずれ有料化される予定になっている。

現在、ニューメキシコ州では、医療カナビス・プログラムに関する公式のルールと規制管理の方法について8人の医師たちで構成される諮問会議と検討を続けており、10月1日までには実施プログラムの全容を決めることになっている。

「確かに、保健省が療カナビスの生産と配布のライセンスを発行して管理するという条項を含んだ州法とすれば、ニューメキシコが初めてのことになります」 とDPAのシュチェパニスキー支部代表はeメールで語っている。

「しかしながら、他の州の多くの市や郡も、生産と配布に関する管理規則を持っており、州自体も、法律には明示的に書かれていないものの、実質的には、生産と配布に関する規制管理を推進する立場を取っています。」

ニューメキシコ州保健省の採用する管理方法としては、医療カナビス・カードの保持者にカナビスを栽培するライセンスが与えられる可能性もある、とシュチェパニスキー代表は指摘している。

「規制管理の方法については多くの可能性が考えられますが、現在、州や全国の専門家が実施可能な多くの方法について検討を進めています。患者さんの多くは自分で栽培するよりも、配付システムを通じてカナビスを受け取る方を好みますが、すぐに実現するのは難しい情勢です。」


コロラド州の場合

コロラド州は、2000年の住民投票で54%の賛成と2001年に憲法修正を経て、医療カナビスが利用できるようになったが、人口動態統計係のロマルド・ハイマン局長によると、今日では1300人の患者さんが登録対象になっている。

医療カナビス・プログラムに登録している人の80%が慢性的な痛みと診断されたもので、次いで、筋肉のけいれんが多くなっている。ここでは、必ずしもガンやHIV/エイズがトップにはなっているわけではない。

コロラド州の保健省から医療カナビス・カードを取得するためには、患者は、コロラド州でライセンスを受けた医師に診断を受けて、適応対象になっている症状があることを確認してもらった上に、カナビスを使う推薦を得なければならない。医師は、正式な治療薬としてカナビスを処方することまではできないが、今までに315人の医師が推薦状を書いている。

患者は、法的な前科や薬物中毒の経歴を問われることはなく、IDカードを支給された人は、カナビスを所持して使用できるほか、1度に6本までの植物を栽培することが認められている。だが、種子は自分で見つけなければならない。

カードの有効期間は1年で、患者は、保健省から毎年新しいカードを取得しなければならない。登録料金は、コロラド保健委員会の今週の投票で20ドルの値下げが決定し、年間90ドルになっている。

登録者は公開されていないが、保健省は警察の問い合わせに対して、その人物が登録されているかどうかを答えなければならないようになっている。

カナビスの生産と配布に関しては、患者自身で栽培するかブラックマーケットで調達する状態に残されている。「この件については、省の管轄外になっていますので、個人個人がどのようにしてカナビスを入手しているかには感知しません」 とハイマン局長は語っている。


カリフォルニア州の場合

カリフォルニア州の場合も、法律に明文化された配布システムはないが、あいまいな型で、市や郡政府にライセンスしたり規制したり、あるいはディスペンサリーの出店を禁止したりする権限を与えている。州内には、1万3000人のカード所持者がいるが、配布システムについては、パッチワークのように地域ごとに異なっている。

全国的にカナビス改革運動に取り組んでいるマリファナ・ポリシー・プロジェクト(MMP)のブルース・ミルケン氏によれば、連邦麻薬局(DEA)がカリフォルニアのディスペンサリーを家宅捜査したりしているが、州政府機関がその後を追うようなことはないと言う。


オレゴン州の場合

オレゴン州で医療カナビス・プログラムがどのように運営されているかについては、ユージンにあるレジスター・ガード紙のレポターであるティム・クリスティ氏にeメールで説明してもらった。

「オレゴン州の医療カナビス法は1998年に住民投票で導入されましたが、州当局の役割は、唯一、カナビスが治療に役立つことを示した医師の証明を提出した患者にカードを発行することです。対象となる病状や疾患は限られており、ガン、HIV/エイズ、アルツハイマー病、吐き気、消耗症候群、痛み、発作、筋肉のけいれんとなっています。」

「カードは、州警察がやってきたときの保護の役割を果たしますが、連邦警察の手入れには何の役にも立ちません。いったんカードが発行されると、どのようにしてカナビスを入手するかは患者に任されており、自分で栽培するか、介護者または別のカード保有者に栽培を頼むか、ブラックマーケットで調達することになります。」

「プログラムを拡張して、州公認のディスペンサリーを設置したり、患者が栽培できる本数や所持できる量を増やそうとする動きもありますが、投票で賛成は得られていません。」

「最新の数字については把握していませんが、プログラムの適応をうける患者は着実に増加しています。もっとも、これは熱心な一人の医師がたくさんの申請にサインしているためで、多くの医師は、州の医師管理委員会がサインしないように求めてから、患者の要請には応じなくなりました。」

オレゴン州の医療カナビス・プログラムについて掲載しているウエブサイドの数字は次のようになっている。
  • カードを保持している患者数: 14、050人
  • オレゴンの医師免許を持ち、医療カナビスの使用にサインした医師数: 2、513人
  • カード保持患者の最も多い症状: 深刻な痛み、次いで、筋肉のけいれん、吐き気
オレゴン州の年間登録料は100ドル、州の医療援助プログラムに登録されている人の場合は20ドルになっている。しかっし、当然のことながら、コードをもらえるだけで、カナビスが支給されるわけではない。また、カナビスの取得費用には保険は適応されない。


ニューメキシコ州では?

ニューメキシコ州の場合は、ガン、緑内障、多発性硬化症、脊髄の神経組織の損傷、てんかん、HIV/エイズ、などを始めとする疾患や症状に対して、医師の推薦の下で、保健省が医療カナビスの使用を承認することになったが、果して、患者さんたちは安寧のケアを受けられるようになるのだろうか?