Weekly News
2007年6月14日
●FDAの諮問委員会、カナビノイド・ブロッカーの安全性を認めず
2007年6月14日 - アメリカ・メリーランド州ロックビル発
食品医薬品局(FDA)の独立諮問委員会は、昨日、論議の的になっているカナビノイド・レセプターのアンタゴニスト(ブロッカー)である リモナバント が、人間の使用には安全とは言えないという結論を出した。この薬については、現在、製造元のフランスのサノフィ・アベンティス製薬がダイエット補助医薬品としてアメリカで販売する許可を求めてFDAに承認申請している。
受入れの是非について意見を求められた内分泌および代謝医薬品諮問委員会の委員たちは、14対0の票決で、リモナバントがアメリカの規制許可に合致するような「良好なリスク・メリット特性」を持っていないと決定を下した。委員たちは、リモナバントを処方された患者では、うつ、吐き気、嘔吐、さらに自殺傾向が高まることが示されていると報告している。
また、これまでにも、リモナバントを服用した被験者では多発性硬化症などの神経症的な副作用が見られたという論文も発表されている。
ヨーロッパの規制当局は、2006年にリモナバントの処方箋による使用を 承認 しており、すでにアコンプリアの商品名で販売されているが、現在その決定の再検討が予定されている。リモナバントは、人間の使用が認められた最初のカナビノイド・アンタゴニストで、ヨーロッパでは昨年の承認以降10万人の患者に処方されている。
FDAでは、7月中にも、承認するか却下するかについて最終的な判断を下すと見られている。当局側は、法的には諮問委員会の決定に拘束されるわけではないが、勧告に従うのが通例になっている。
エンド(内因性)カナビノイドは体内で生成されるカナビノイドの一種で、カナビスのTHCなどの外因性カナビノイドと同じように神経細胞のCB1レセプターに結合するようになっているが、レモノバントはその自然な結合をブロックするように作用する。
しかしながら、エンドカナビノイド・システムは、食欲、 体温、 気分調整、 血圧、 骨密度、 生殖、 学習能力、運動神経 などの基礎的な生体機能の調節に広範囲に入り組んで関係しているために、一部の専門家たちは、リモナバントのような薬を長期間使っているとさまざまな深刻な副作用に見舞われる可能性があると指摘している。
例えば、臨床前研究では、生まれたばかりのマウスにリモナバントを注射すると、摂食行動を拒否 して、ときには数日で死んでしまうことが示されている。また、遺伝的にCB1レセプターのないノックアウト・マウスでも、認識減退、痛覚鈍麻、自発運動の低下などさまざまな 健康障害 に見舞われ、健康なマウスに比較して死亡率が高いことが知られている。
さらに1件だけだが、リモナバンドを毎日使っていたことがトリガーになって、全く病歴のない人に 多発性硬化症 の神経症状が引き起こされたとする症例報告もある。うつ病のような精神的な副作用についても、レモナバントの被験者たちの間では一般的に見られることも分かっている。また、FDAの委員たちによると、レモナバントを使っている人では自殺を試みるリスクが2倍近くなると報告されている。
サノフィ・アベンティスは以前にも禁煙のための薬として承認を求めたこともあるが,その時はFDAに却下されている。
●ニューヨーク州議会、医療カナビス法案を可決。知事も同調を表明
2007年6月14日 - アメリカ・ニューヨーク州アルバニー発
ニューヨーク州議会は、13日、認定患者が医師の監督下で医療カナビスを使えるようにする法案を92対52で可決した。
下院4867号法案 では、認定患者が医療目的で、カナビス2.5オンスを所持することと12本の植物を栽培することが認められている。上院でも、早々に法案の審議が行われることが予定されている。
エリオット・スピッツァー知事(民主)は、先の選挙では医療カナビスの使用には反対の姿勢を示していたが、今週始めには、以前の態度を覆して同調する立場を表明している。
この法案が成立すれば、1996年にカリフォルニア州などで初めて医療カナビスが合法化されて以降、13番目の州になる。また、議会を通じて成立するのは今年で2番目のことになる。
つい先日も、コネチカット州議会でも同様な法案が通過しており、現在、州知事の最終判断を待つ 状態になっている。
●カナビノイドが皮膚の炎症を軽減
2007年6月14日 - ドイツ・ボン発
サイエンス・ジャーナルの最新号に掲載された臨床前データによると、カナビノイドが皮膚の炎症を大きく軽減し、アトピー性皮膚炎などを始めとする各種の皮膚病の治療に使える理想的な局所薬になる可能性が示された。
ドイツのボン大学の研究チームは、さまざまな化学刺激物質を晒して皮膚に炎症を引き起こしたマウスにTHCを局所的に投与すると、炎症が著しく軽減されたと報告している。また、エンドカナビノイド・レセプターを持たないマウスでは、皮膚刺激に対するアレルギー反応が大きくなるのに対して、エンドカナビノイドの受容レベルを高めたマウスではアレルギー反応が低くなることが示された、とも発表している。
「これらの結果は、皮膚の接触アレルギーの治療にエンドカナビノイド・システムが防護的な役割を果たすことを示しており、治療に応用できることを示唆している」 と結論を書いている。
カナビノイドは油溶性で皮膚から直接体内に吸収されることはほとんどないために、カナビスをベースにした局所軟膏薬では、カナビスの喫煙やマリノールのようなTHC製剤を経口摂取した時のような精神活性は起こらない。
ヨーロッパで行われた 臨床実験 では、カナビスベースの軟膏を塗ると、肝臓障害によって起こる中程度から深刻な尿毒性のかゆみや、血液透析患者の皮膚の乾燥症などが大幅に軽減されることが示されている。
また、アメリカで行われた別の実験では、THCの経口投与で肝臓障害患者のそう痒症を緩和できることが報告されている。
カナビスベースの軟膏の歴史は古く、20世紀の初頭までは、炎症の治療に広く使われていた。
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For more information, please contact Paul Armentano, NORML Senior Policy Analyst, at: paul@norml.org
Source: http://www.norml.org/index.cfm?Group_ID=7282