カナダ

55%がカナビス合法化を支持


使用率は世界平均の4倍、一方では逮捕急増

Source: Drug War Chronicle
Pub date: July 13, 2007
Subj: Canada: A Majority Favors Marijuana Legalization, But Arrests Are Rising
http://stopthedrugwar.org/chronicle/493/
canadians_support_marijuana_legalization_but_arrests_increase


カナダは、最近実施された世論調査で過半数の人がカナビスの合法化を支持し、国連の調査でも、世界で最もカナビスが愛好されている国の一つとされているが、一方では、カナビスの逮捕者も急激に増えている。

多くの識者は、この逮捕数の増加の原因が、前のリベラルな政権でカナビスの非犯罪化が不調に終わってタガが外れたために、もはや警察が逮捕をためらうことがなくなったからだと口を揃えている。

6月の中旬に行われた アンガス・リードの世論調査 では、回答者の55%がカナビスを合法化すべきだと答えている。昨年の1月の総選挙では、カナビスの非犯罪化政策の破棄を掲げる保守党が政権を獲得したが、その当時、保守党の政策に賛成していた人は38%で、52%が非犯罪化路線の継続を支持していた。今回の調査では非犯罪化支持が当時よりさらに強まっていることが示された。

また今週は、国連薬物犯罪事務所(UNDOC)の発表した 2007年ワールド・ドラッグ・レポート で、カナダのカナビス使用率が最も高いレベルにあることが分かり、カナダのメディアはこぞってこの問題を取り上げた。国連のレポートによれば、カナダのカナビス使用率は世界平均の4倍で、16.8%の成人が過去1年間にカナビスを使っていた。この使用率は先進国では最高で、世界歴代では、ザンビア(2003年17.7%)、ガーナ(1998年、21.5%)、パプアニューギニアとミクロネシア(1995年29%)に次いで5番目の高さになっている。

水曜日には、この国連のレポートに鼓舞されてナショナル・ポスト紙が、カナビス禁止法の変更を求めた 『カナビスの合法化に道理あり』 と題する短刀直入な社説を掲げた。社説では、もしアルコールやタバコの使用率が世界平均の4倍になったら病気や死亡者が目に見えるほど増えているはずだと指摘してから、次のように書いている。

だが、カナダ人が好むカナビスには健康を害したという痕跡はあるだろうか? あるとすれば、労働生産性の統計になかに隠れているかもしれないが、明らかに平均寿命などの測定可能な健康指標には悪影響を及ぼしているようには見えない。

また、長くカナビスに寛容な状態が続いてきた中で、圧倒されるほど多量に使われ、しかも違法状態で混入物が混ぜられている危険があるにもかかわらず、われわれの回りは何ら目立った害が見られない。

この結果一つ見ても、古くから社会で広く使われてきたアルコールなど合法ドラッグに比較すれば、カナビスは基本的に害の少ないドラッグであることを示している。また、国連のデータを見れば、カナビスの使用率の高さがハードドラッグの使用者増大を招いていないことは明らかで、カナビスがゲートウエイになるという主張を一蹴している。

確かに、隣国のアメリカは日常的貿易や入国にまで難癖を付けてくるだろうが、それを脇において理性的に考えれば、非犯罪化の道に立ち止まらなければならない理由は全くと言ってよいほどない。

しかし、これまでも幾多の委員会や議会でナショナル・ポスト紙と同様な見解が示されているにもかかわらず、現在のハーパー保守党政権は全くその方向に進もうとはしていない。逆に、火曜日のカナディアン・プレス紙によれば、カナダの主要都市のいくつかでは、昨年のカナビス所持による逮捕者が 20〜50%も急増 している。その結果、数年前にはほぼ絶滅しかけていたカナビスによる刑事犯罪歴を持つカナダ人が、今では何千人も出てきている。

オンタリオ州警察所長協会のテリー・マクラーレン代表は、「これまで、われわれは、法廷の厄介にならずに済ませる非犯罪化法案の成り行きを見守ってきたのですが・・・成立しないと分かれば、これまで通りの仕事に戻るだけです」 とカナディアン・プレス紙に語っている。

一方、新民主党のリビー・デイビス議員は、「ハーパー政権はたくさんの人を逮捕していますが、若者のカナビス使用を阻止できていません。彼らは、教育や防止対策に資金を注ぎ込もうとはしていません。いわゆるアメリカのドラッグ戦争に加わって、非常に抑圧的な政策を取るばかりで、全く失敗に終わっています」 と話している。

また、ドラッグ法の改革を目指している カナダ・ドラッグ政策ファウンデーション の弁護士で犯罪学の教授でもあるユージン・オスカペラ氏は、「禁止法ではタバコやアルコールの消費を減らすことに失敗しましたが、規制管理と公衆衛生教育の組み合わせでは成功しています。もう21世紀なのですから、棍棒を振り回してカナビスを刑事法で取り締まっても効果がないことを知るべきです。このようなことを続けていても、将来の展望はありません」 と語っている。

カナダでは、現在の保守党政権が続く限り現状は変わらないだろうが、政権が変わったとしても必ずしもカナビス法の改革が実現するとも限らない。前のリベラル政権では、保守党以外の政党がすべて非犯罪化を支持していたにもかかわらず細部の合意が得られず、結局、採決にまで持ち込めなかったという苦い経験もある。しかし、今回の世論調査で、過半数のカナダ人がカナビスの合法化を支持していることが明らかになり、いずれそれが政治の動きに反映するに違いない。