ドイツ

カナビスの医療使用を初めて認める

Source: DW-World
Pub date: 21 Aug 2007
Subj: Germany Allows Patient Legal Use of Cannabis
http://www.ukcia.org/news/shownewsarticle.php?articleid=12806


ドイツで、多発性硬化症患者が厳しい条件付きで薬局からカナビスを合法的に買うことが認められた。医療目的のカナビスの使用が許可されたのは、ドイツでは初めてのことになる。

火曜日の南ドイツ新聞によると、ボンにあるドイツ厚生省医薬品研究所(FPMP)は、多発性硬化症に苦しむ51才の女性に対して、症状緩和のために薬局から合法的にカナビスを買うことを初めて認可した。

この女性はバーデンウュルテンベルグ州に住むクラウディアさんで、認可には厳しい制約がかけられているが、8月末から、カンビスの「標準化された抽出液」を1年間にわたり薬局から購入できるようになる。医師が治療経過を監視し、本人と薬局には盗難を防ぐように安全に抽出液を保管することが求められている。


カナビスには痛みの緩和効果がある

ミュンヘンの新聞によると、カナビスには、深刻な神経障害である多発性硬化症にともなう痛みやけいれんの緩和に効果のあることは、科学的研究でも示されている。また、ガンやエイズ患者の体重減少を防ぐことも知られている。

いまのところドイツでは、ごく少量の所持が黙認されてはいるが、基本的にカナビスは違法になっており、医療目的の使用についても、公共の利益を目的とした科学研究に限られている。

このために、カナビス関連で医師が処方できるは、カナビスの活性成分を化学合成したドロナビノールだけしかなかったが、ドイツでは正式に医薬品として認可されていないために保険では費用がカバーされず、今回のカナビス医薬品のほうが安くなると見込まれている。


だが、カナビスは依然違法のまま

ドイツ行政裁判所は、2005年に、患者の治療も公共の利益に範疇に入るとして、医療目的のカナビス使用を完全に禁止していることに疑問を投げかける判決を出している。今回の医薬品研究所の決定はこれに呼応したもので、今後のカナビスの医療使用についてはケースバイケースで認可を検討することになる。

火曜日の決定はカナビスによる治療を認めた画期的なものとはいえ、これからもカナビスが違法であることには変わりなく、無許可でカナビスを調達する患者は逮捕されるリスクを負うことになる。先週の南ドイツ新聞は、C型肝炎の患者がカナビス所持の罪で、地方裁判所から執行猶予なしの1年の懲役刑判決を受けたと報じている。

この記事では、「標準化されたカナビス抽出液」 がどのようなものであるかはっきり書かれていないが、価格的な面から考えると、高価なGW製薬のサティベックスではなさそう。また、IACMの記事によると、オランダの医療カナビス・ベドローカン も輸入できると書いてあり喫煙による摂取も前提にしているように思われる。

カナビスの成分は油性であまり水に溶けないが、アルコールに溶解した「カナビス抽出液」にすれば水に希釈することができる(水に希釈したものをカナビス・チンキと呼ぶこともある)。このために、普通は飲み物に薄めて経口摂取されるが、発現を早くするために ボルケーノ・バポライザー で蒸気にして吸引する方法も知られている。

合成THC(ドロナビノール)をゴマ油に溶かしてカプセルにしたマリノールや、カナビス抽出液スプレー・サティベックスは、経口摂取なので発現が遅いという欠点があるが、どちらもボルケーノ・バポライザーで蒸気にして吸引することで発現を早めることもできる。しかし、マリノールかサティベックスしか認められていない場合を除けば、価格が高く実用性に乏しい。カナビス抽出液はこれらの医薬品の強敵になる可能性がある。

Germany: MS patient receives a certificate of exemption for the medical use of cannabis by the Federal Health Ministry  IACM-Bulletin (2007.8.19)

ドイツ、大多数が医療カナビスを支持  (2006.6.25)
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