オランダのMRI研究

カナビスは若者に脳に悪影響を与えない

Source: Expatica
Pub date: 17 Oct 2007
Subj: Cannabis Dose Not Affect Brains
http://www.encod.org/info/CANNABIS-DOES-NOT-AFFECT-BRAINS.html


若者がカナビスを吸っても脳に悪影響はない。この結果は、神経精神分析学者のジェリー・ジャガー博士のチームが、若者の発達中の脳にカナビスの影響を調べた研究で明らかになった。

オランダ・ユトレヒト大学医学センターのジャガー博士は、40人のティーンエイジャーを対象に、カナビスを常用しているグループとカナビスを使っていないグループを半数づつに分け、記憶力と集中力テストとともに脳をMRIスキャン(核磁気共鳴画像法)して比較した。

その結果、カナビスを吸っている若者は、吸っていないグループと同じように良好な状態を示した。「未発達の脳の若者がカナビスを吸って起こる変化は、大人の脳で起こっている様子と変わらなかった。」

博士は、いろいろ複雑な問題に悩んでいる若者たちはカンビスを使わない方がよいとしながらも、たまにカナビスを吸う程度の大多数の若者には害にならないという見方をしている。「彼らは10年もすれば普通の市民となって、それ以降はカナビスをやらなくなるのが一般的ですから」 と語っている。

MRIを使って、カナビスが発達中の脳にどのような影響を与えるのかについてしらべた本格的な研究はまだ始まったばかりの段階にある。いずれにしても、これまでの研究では決定的な悪影響があるという一貫した結果はなく、今回の研究もそれを補強したものになっている。また、過去に行われたMRI研究とすれば、被験者の数が最も多くなっている。

2005年11月に発表された 研究 では、未成年の統合失調症患者と健常者28人をいろいろな条件で4グル-プに分けて比較した結果、カナビスの使用が、統合失調症患者の脳の前頭葉前野の繊維束の発達不良を促しているとして、病態生理学的に、未成年の神経発達過程で統合失調症に見られる認知機能傷害が起こると主張している。

しかし、この研究の最も大きな問題の一つは、実際上MRIによる客観的な統合失調症の診断法が確立していないことで、別の統合失調症患者のMRI画像と似ているからといって、その人が統合失調症を引き起こしていることにならない点にある。この研究は当初マスコミにセンセーショナルに伝えられたが、以後これを追認した研究はない。

未成年の統合失調症患者と健常者の脳発達に対するカナビス頻繁暴露の影響  (2005.11.30)

今回の研究のようにカナビス・ユーザーと非ユーザーを比較したMRI研究とすれば、2006年5月に発表された 研究 が知られている。

研究者たちは、カナビス・ユーザーと非ユーザー10人づつのMRIを比較して、「常習的なカナビス使用でも、通常は、若者の正常な脳発達の神経毒にならないと結論できる」 とし、さらに予見として、「カナビスが単独で脳へダメージを与え、統合失調症のような神経障害を引き起こすという仮説が誤りであることを示唆している」 と述べている。

カナビスは若者の発達中の脳に害を及ぼさない  (2006.5.11)


カナビスの経口投与や吸引直後の脳の状態をMRIで調べる研究も行われている。2007年5月にロンドンで開催された第2回カナビスと精神病学会の カンファレンス では、カナビスを常用していない健康な男性15人を対象に、THC,CBD、プラセボを経口投与して1時間後にMRI撮影をして画像を比較している。

その結果、カナビスによるさまざまな症状や認知変化は、THCとCBDが脳の特定部位に影響することで起こっていると結論している。 しかし、カナビスを投与した状態では脳に何らかの影響があるのは当然のことで、その部位についても予想の範囲内に収まっている。

また、ハーバード大学の研究者たちは、カナビス喫煙中の脳の変化について調べるために、MRI装置内で被験者が実際にカナビスを吸引するためのアタッチメントを作成している。

しかし、アメリカの公式のカナビス研究には政府が提供する品質の悪いカナビスしか使うことが許されておらず、実態に即した意味ある研究が行えないという制約がある。この装置でも、まだリアルタイムで脳の変化を観察できるようになったという段階に過ぎず、結論的なことは何も報告されていない。

Harvard Scientists Build a Device to Smoke Weed During Brain Scan  (Wired Blog 2007.9.27)