欝と痛み、カナビスは両刀の剣

Source: Earth Times
Pub date: 24 Oct 2007
Subj: Cannabis, 'a Double Edged Sword'
Author: Ravi Chopra
http://www.ukcia.org/news/shownewsarticle.php?articleid=12932


本日出版された神経科学ジャーナルに掲載された研究によると、カナビスの活性成分であるTHCを少量摂取すると欝の症状に効果があるが、量が多過ぎると逆に症状が悪化することが示された。同じことは合成カナビノイドにも当てはまるという。

カナダのマッギール大学精神科のガブリエラ・ゴビー博士とフェルナンド・セガン研究センターのチームは、ラットを使った神経生物学実験で、低容量のカナビスを投与すると脳内のセロトニン・レベルを高めることを見出した。この発見が注目されるのは、欝や精神病に似た症状が気分を調整する神経伝達物質のセロトニンの欠乏によって引き起こされることが知られているからだ。

だが研究者たちは、カナビスの投与量を増やしてセロトニンのレベルを高くし過ぎると再び欝がぶり返すことも確認している。カナビスのこうした働きについて、研究者たちは、カナビスは両刀の剣になりうると指摘している。

欝の治療には、セレクサやプロザックのような抗鬱剤を使って、脳内にあるセロトニンを集中化することでも効果のあることが知られているが、今回の研究では、低容量のカナビスでセロトニンそのものを増やすことができることが初めて証明された。

論文を主筆したマッギール大学の学生であるフランシス・バンビーコPhDは、「昔から、カナビス・スモーカーの間ではカナビスが欝に効くと言われていましたが、不安やイライラなどが大きくなって悪くなったと言う人もいます。今回の結果からは、特に高い効力のカナビスを多量に摂取した場合には、欝が亢進すると考えられます」 と語っている。

カナビスを抗鬱剤としてユーザーが自己治療ことについては、今回の研究を率いたゴビー博士は、「われわれの研究は、欝を抱えている人が過剰にカナビスを使用すれば精神症状のリスクが高くなることを示して」 おり、普通のカナビスの使い方では摂取量を調整することが難しいので問題が多いと指摘している。

実際、これまでの研究で、欝に苦しんでいる非常に多くの患者がかつてはカナビス・ユーザーだっとことが判明しているとゴビー博士は明かしている。

研究チームは、現在、ストレスや痛みの大きいときに脳内に自然生成されるエンドカナビノイドに注目して、抗鬱剤のような副作用のない新しい薬の研究を進めている。エンド(内因性)カナビノイドには、カナビスと同じような化学的性質のあることが知られている。

ゴビー博士は、「エンドカナビノイドを亢進して痛みや不安、欝などの治療に使えるような薬が見つかる可能性が非常に大きいと考えています」 と語っている。

一方、麻酔学ジャーナルに掲載されたカリフォルニア大学の研究でも、15人が参加した痛みの実験で、中程度のカナビス使用で痛みが最も緩和されるが、使用量が多いと逆に痛みが悪化することを見出している。

研究を率いたマーク・ウォレンス博士は、カナビスの使用量が効果の鍵になっているとして、この実験結果は、合成あるいは天然のカナビスを使った将来の医薬品を作る際の判断材料になると語っている。

この結果について、多発性硬化症協会のラウラ・ベル博士は、「多発性硬化症患者の多くが痛みの症状の緩和にカナビスを使っていますが、現在までのところでは、まだカナビスの効果についての研究は少なく明確な結論には至っていません。多発性硬化症に焦点を絞った将来の大規模研究の結果に注目しています」 と話している。

カナダの研究:
Cannabinoids Elicit Antidepressant-Like Behavior and Activate Serotonergic Neurons through the Medial Prefrontal Cortex  The Journal of Neuroscience, October 24, 2007, 27(43):11700-11711

カリフォルニアの研究:
喫煙カナビス、神経疼痛に治療効果、THC摂取量、中程度が治療域、過度は逆効果  (2007.10.24)
Dose-dependent Effects of Smoked Cannabis on Capsaicin-induced Pain Wallace, et al, Anesthesiology:Volume 107(5)November 2007pp 785-796