カナビスと統合失調症

COMT遺伝子は発症リスクに無関係

Source: The British Journal of Psychiatry
Highlights of this issue
Pub date: 31 Oct 2007
Subj: Genetic Risk in Schizophrenia
http://drugpolicycentral.com/bot/article/bjp.rcpsych.org4498.htm


統合失調症発症の要因とされている脆弱遺伝子とカナビスの関係が注目を集めているが、カナビスと脆弱遺伝子の相互作用が発症リスクにはならないという研究が発表された。

イギリス・カーディフ大学精神薬理学部のスタンレー・ザミット教授に率いられた研究チームは、カナビノイド・レセプター内にあるどの遺伝子が統合失調症に関与して、カナビスの使用よってどのような影響を受けるのかを調べた。また、カナビスの統合失調症発症に介在していると考えられているCOMT(catechol-O-methyltransferase)遺伝子についてもその役割を検証している。

調査は、ケースコントロール・サンプルとして統合失調症患者750人と対照群の688人を対象に、小規模グループに分けて、各種のカナビノイド・レセプターの遺伝子タイプごとに影響を調べた。また、COMT遺伝子については、統合失調症患者493人について対照群なしのケース調査方式で行われた。

その結果、カナビノイド・レセプターの遺伝子と統合失調症の間には関連性はなく、カナビス使用とも関係していないことが明らかになった。

また興味深いことに、以前報告されていたようなカナビスの使用とCOMT遺伝子の間の関連についても追認することができなかったと報告している。この結果について、研究者たちは、カナビス使用とValMet・COMT対立遺伝子の間には関連性はなく、COMT遺伝子とカナビス使用の相互作用で統合失調症が発症するとは考えられないと書いている。

今回の研究:
Genotype effects of CHRNA7, CNR1 and COMT in schizophrenia: interactions with tobacco and cannabis use, Stanley Zammit et al, British Journal of Psychiatry (2007) 191: 402-407

今回の研究を率いたザミット教授は、2002年に発表された 1969年スエーデン新兵における自己申告カナビス使用と精神病のリスク、病歴コホート研究 や2007年7月に発表された カナビスの使用と精神疾患および感情障害出現のリスク、総合的検証でも有名。

いずれもカナビスと統合失調症の関連を示した権威ある研究として知られ、「カナビスを吸うと統合失調症になる率が6倍に増える」、「カナビスのジョイント1本でも吸えば、精神病のリスクが40%増える」 といった刺激的な引用になってあちこちで使われている。

今回は、以前の疫学研究を発展させて、遺伝子レベルで生理学的にカナビスと統合失調症の関連を解明しようとしている。しかし、結果には関連性が見出せず、カナビスが統合失調症を引き起こすことを証明するのがいかに難しいことなのかを印象づけただけに終わっている。

COMT遺伝子が、カナビスによる統合失調症発症に関与しているとする研究は、2005年1月に発表されたもので、「カナビス・ユーザーの25%は精神病のリスクが10倍」 というヘッドラインでセンセーショナルに伝えら、カナビス・ユーザーの4人に1人は他の3人よりも10倍も精神病になりやすい、という 誤解 が広まった。

一時はこの研究によって、遺伝子レベルでカナビスと統合失調症の関係が解明されたとして注目されたが、以後それを追認する研究がなかなか現れず、内容を疑問視するむきもあった。