アメリカ内科医師会

医療カナビスの禁止緩和を強く要請

Source: Los Angeles Times (CA)
Pub date: 15 Feb 2008
Subj: Physicans Group Urges Easing of Ban on Medical Marijuana
Author: Eric Bailey, Los Angeles Times Staff Writer
http://www.mapinc.org/norml/v08/n179/a01.htm


広く尊敬を集めている医師たちの大きな団体が、連邦政府に対して、カナビスの医療使用を厳格に禁止している政策を緩和して、治療利用のための研究を促進するように求める声明を発表した。

内科医の団体としてはアメリカで最大の12万4000人の会員を持つアメリカ内科医師会(ACP)が発表したポジション・ペーパーでは、カナビスをめぐる長く憎み合う合法化議論が、カナビスの医療恩恵の可能性を追求する研究の邪魔をしてきたと強く主張している。

団体の評議会の承認を受けた13ページのポジション・ペーパーは、今週の火曜日に同会のウエブサイトで公開された。現在、カナビスは規制薬物法でヘロインやLSDなどとともに医療価値のない中毒性の強い薬物として第1区分に分類されているが、医師会ではその分類を改めて格下げするように政府に求めている。

カナビスの分類変更要請については、ワシントンの政治家や政府の規制当局は何十年にもわたって拒絶を繰り返してきたが、今回の提言によってさらなるプレッシャーが新たに加えられたことになる。

ブッシュ政権は、医療カナビスの合法化を求める議会や法廷や行政官機関のすべての試みを攻撃的なまでに拒絶し続けているが、臨床研究者たちは、連邦政府がカナビスの悪害を調べることにばかり資金を注ぎ込み、カナビスの医療可能性をさぐる本格的な研究を認めようとしていないと口を揃えている。

現在ではカリフォルニア州を含む十以上の州で医療カナビスが合法化されているが、連邦は禁止法を理由に弾圧的な政策を続けている。カリフォルニアでは、連邦政府当局がカナビス・ディスペンサリーの強制捜査を繰り返し、また州の医師免許管理当局も、医療カナビスの使用推薦状を積極的に書いている少数の医師グループに対して厳しい監査を続けている。

こうした状況の中で、大半の医師たちは医療カナビスに係わることを避けてきた。

アメリカ内科医師会のポジション・ペーパーでは、医療カナビス法が施行されている州の医師と患者の双方に対して、刑事および民事罰を科さずに保護するように求めている。

医師会の会長を務めるデビッド・デール医師は、「この問題に言及すべき時期が到来したと感じています。カナビスを使うことに対する患者や医師の不安をなくすために、不確実な部分を取り除きたいと思っています」 と話している。

医療カナビスの支持者たちは、このポジション・ペーパーが戦いの重要な分岐点になる可能性があるとして歓迎している。サンフランシスコに住むマリファナ・ポリシー・プロジェクトのブルース・ミルケン氏は、「このポジション・ペーパーは、医療カナビス議論全体を揺さぶる地殻変動になる」 と語っている。

「政府は、カナビスの医療価値については科学的に認められておらず、医学コミュニティからも支持されていないと盛んに主張してきましたが、内科医師会はこの2つの医療カナビス神話を完全に粉砕したことになります。」

一方、ホワイトハウス麻薬撲滅対策室(ONDCP)側は、医療カナビスを合法化することについては、正しい政策ではないと主張している。

今回の緩和要求に対して、バーサ・マドラス副室長は、「14世紀の薬に逆戻りさせようとするもので、とても不可解で理解できません」 と答えている。また、彼女は、カナビスを医療品として使えるかどうかの認証は連邦の食品医薬品局(FDA)が担当しており、天然のままのカナビスが処方医薬品として認められることはほとんどありえないと話している。

カナビスの活性成分であるTHCを化学合成した医薬品としては、これまでにカプセルと錠剤の2種類がFDAの認可を受けている。また、現在、天然のカナビスの抽出液をつかった経口スプレーも初期段階の臨床試験が行われている。

FDAの広報官は、今回のポジション・ペーパーについては直接コメントすることは避けながらも、2006年に行われたメディアの質問に対して、内科医師会の担当者は、当局側が喫煙カナビスを医療治療と認めることは絶対にないだろうと答えていたと指摘している。

カリフォルニア州の住民投票で医療カナビス条例が成立してからもうすぐ12年が経過するが、アメリカ看護師協会やアメリカ公衆衛生協会などを始めとする各種の医学団体がカナビスを合法的に医療使用できるようにするように連邦議会に働きかけてきた。

そのような中で、内科医師会よりさらに大きく、アメリカで最大の24万人の会員を擁するアメリカ医師会(AMA)は、カナビスの医療研究の必要性を認めながらも、カナビスの分類については第1区分のままに据え置くことを主張している。

しかし、内科医師会のポジション・ペーパーでは、今回の発表でAMAを刺激して同じスタンスを取るきっかけになることを期待すると書いている。

ニューヨーク医学カレッジの名誉教授であるアブラハム・ハルパーン医師は、「このペーパーは、世の中に大変化が起こり得ることを示しています」 と話している。

ハルパーン医師は、AMAに対して、カナビスの分類変更を支持するとともに、連邦の反ドラッグ当局者である麻薬局(DEA)とドラッグ乱用研究所(NIDA)にカナビス研究に関する実質的な拒否権限を与えている連邦法を変更することを求めるように働きかける意向を示している。

また、内科医師会のポジション・ペーパーでは、喫煙だけではなく喫煙によらないカナビスの使用についてもさらなる研究を実施して、それぞれの病状に最も適合する治療法を調べて特定の症状に対する最適な服用量を調べることも提唱している。

さらなるカナビス研究が必要な疾患としては、関節リウマチのような痛み、けいれんのような神経性の運動障害、多発性硬化症や脊髄損傷による痛みや震え、トラウマなどの症状を上げている。しかし、カリフォルニアのカナビス専門の医師たちが日常的に推薦しているてんかんや緑内障による眼圧の治療に対しては、カナビスの治療効果に疑問も投げかけている。

今回のポジション・ペーパーは象徴的な意味合いも強い。最も大きく影響する可能性があるのは現在行われている大統領選挙のキャンペーンで、内科医師会の態度表明が関心を引きつけて、新しい政権が政策に取り入れることも期待されている。

クリントン政権で公衆衛生局長官を務めたアーカンソー大学医学部名誉教授のジョスリン・エルダー氏は、「どのような風が吹くのかにかかっています。われわれ市民がこの問題をどのように考えて反応するかということです」 と言う。

「私は、これまで長いことかかって、やっと最後の10年が来たと考えています。」

今回のアメリカ内科医師会のポジション・ペーパー:
Supporting Research into the Therapeutic Role of Marijuana  The American College of Physicians, Feb 8, 2008 (pdf)

カナビスには医療価値がないという主張 をいまだ続けている連邦麻薬局(DEA)は、その理由として、アメリカ医師会(AMA)が、カナビスを医療価値のない 危険な薬物として 規制薬物の第1類 のままにしておくことを提言していることを根拠にあげている。

しかしながら、実際に アメリカ医師会の医療カナビスに対する見解 を見てみると、基本的にカナビスに医療価値があることを前提に、カナビスの医療利用についてさらなる適切な対照研究を行うことや、煙によらない摂取デバイスの開発の必要性についても強調している。その上で、研究結果が十分に揃うまではカナビスを規制薬物の第1類のままにしておくことを勧告する内容になっている。

昨年の11月には、アメリカ精神医学会総会も満場一致で医療カナビス支持 している。