処方医薬品乱用による死亡率

違法ドラッグ全体の3倍以上

カナビスによる死亡はゼロ、フロリダ州検視調査委員会

Source: New York Times
Pub date: June 14, 2008
Legal Drugs Kill Far More Than Illegal, Florida Says
Author: Damien Cave
http://cannazine.co.uk/cannabis-news/united-states/
legal-drugs-kill-far-more-than-illegal-florida-says.html


フロリダ州を舞台としたドラマとして有名な 『スカーフェイス』 から 『マイアミ・バイス』 に至まで、フロリダのドラッグ問題と言えばもっぱらコカインと相場が決まっていたが、最近のフロリダ州では、処方医薬品の乱用による死亡事故のほうがはるかに多くなっている。

フロリダ州検視調査委員会(Florida Medical Examiners Commission)は、今週、2007年に行われた検視解剖のデータを分析した 報告書 を発表したが、その結果によると、処方医薬品が原因となった死亡率が、すべての違法ドラッグを合計した死亡率の3倍になっていることが明らかになった。

当局によると、こうした処方医薬品の乱用が目立つようになったのはおよそ8年ほど前からのことで、それ以来沈静化する気配はなく、もっと強力なコントロールが必要になっている。

今回の研究の共同スポンサーにもなっているフロリダ州法執行局のジェフ・ビアズレー薬物情報監査官は、「横流しをする悪質なヘルケア・プロバイダー、病院を渡り歩いて何重にも医薬品を仕入れるいわゆるドクターショッパー、ドラッグ流通にからむ窃盗犯罪など、医薬品の入手経路は多岐にわたっています。それが問題をいっそう複雑にしているのです」 と言う。

今回の報告書の結果は、連邦麻薬局 (DEA) が連邦レベルで行った同種の調査結果と同じようなものになっている。連邦の調査では、約700万のアメリカ人が処方医薬品を乱用していることになっているが、この数字に間違いがなければ、この6年間で80%も増加して、コカイン・ヘロイン・幻覚剤・エクスタシー・シンナーの乱用者の合計を上回ったことになる。


(グラフは直接の死因になった人数。体内に検出されても死因でない場合は含まれない)


今回のフロリダ州の報告書では、州全域で発生した16万8900人あまりの死亡事故、自然死、自殺などによる死亡者の検視結果を分析している。

分析結果によると、コカイン、ヘロイン、アンフェタミンによる死者の合計が989人なのに対して、バイコディン(ヒドロコドン)やオキシコンチンなどを始とする合法オピオイド系の強力鎮静剤による死者数は2倍以上の2328人になっている。また、バリウムやザナックスのような抗不安剤とともよく使われているベンゾジアゼピンでも743人が死亡している。

検視時に最も多く見られるのがアルコールで4179人の体内から検出されている。だが、直接の死因と判断されたのは466人で、コカインの843人よりも少なくなっている。しかしながら、死者のいないカナビスやアンフェタミンの25人に比べればずっと多いことには変わりはない。また、死亡時に体内からヘロインが検出された人の数は110人で前年よりも14%増加しているが、合法のオキシコドンの検出者数は1252人で36%も増えている。

フロリダ州では、ドラッグ関連の死亡については他の州よりも詳細に調べているので単純に比較することは難しいほどだが、州の対応状況の整備については依然として遅れたままになっている。すでに他の38州では、処方医薬品の販売を監視するためのプログラムが施行されているが、フロリダ州ではプライバシーの懸念から何度も法制化が見送られている。

その結果、連邦、州、地元の当局者たちは、フロリダ州がアメリカ国内の処方医薬品の違法販売の供給源になっていると口を揃えている。

報告書の発表に際して出された声明の中で、フロリダ州のドラッグ管理責任者のウイリアム・ジェーンズ氏は、「監視プログラムを設けることが最優先課題ですが、それだけで十分というわけでもありません。インターネットを使った違法な売買をなくす方法を探す必要もありますし、医師や薬剤師に対して乱用している可能性のある人を特定するように促していくことも必要です」 と語っている。

今回の報告書
The Drugs Identified in Deceased Persons by Florida Medical Examiners 窶 2007 Report

2008年3月12日に行われたアメリカ上院犯罪とドラッグに関する司法小委員会で、疾病予防管理センターのレオナルド・パウロジー博士は次のように 証言 している。

「今日では、世界の国々が、インフルエンザの蔓延や自然災害、テロなどの脅威に目を向けるようになってきています。確かに、こうした脅威に対しては即時的な対応が必要でその価値は十分にありますが、一方で、毎日の日常の中で直面している公衆衛生問題の現実を見失うわけにはいきません。

「例えば、違法ドラッグや合法医薬品の過剰摂取による死亡事故です。現在のアメリカでは、こうした死亡が非意図的傷害死亡の第2位を占めるまでになっています。これを越えるものは自動車による死亡事故しかありません。」

また、アメリカ・ドラッグ乱用研究所(NIDA)も2005年に処方医薬品の乱用について警告を発している。NIDA Community Drug Alert Bulletin - Prescription Drugs

リクレーショナル・ドラッグよりもはるかに多い処方医薬品の死亡事故
カナビスの死亡率、他のドラッグよりも危険なのか?

処方医薬品はもともと危険性が高い。製薬会社は認可さえ取っていれば殺人罪で訴えられることもないので、実際にどのような人がどれだけ使っているかよりもどうしても売上を増やすことに関心が向かってしまう。

本当に安全で効果のある薬を提供することが自分たちの使命と考えるのならば、カナビスの医療効果を否定することはできないはずだが、ここでも自分たちの医薬品の売上が第一で、カナビスを無視しようとする。

しかし、今後ますます処方医薬品による死亡事故が確実に増えている世の中にあって、カナビスを無視しようとすることに対しては偽善のそしりを免れなくなるだろう。

処方医薬品による死亡が急増していることに関しては、ドラッグテストと関係しているという見方もある。

連邦政府は、学校でのドラッグテスト実施のために多額の補助金を出してきているが、ドラッグテストでは、体内に代謝物が数週間も残るカナビスが最も発覚しやすいために、すぐに代謝して検知されにくいハードドラッグや検知対象になっていない処方医薬品が使われることになる。カナビスでは死亡することはないが、ドラッグテストが致死性の高い薬物の 「ゲートウエイ」 になってしまっている。

こうした懸念もあって、アメリカ小児科学会は繰り替えしてドラッグテストの中止を求める 声明 を出している。