カナビスのゲートウエイは過去のもの

今は家庭用常備医薬品がメイン・ゲート

Source: Nashuatelegraph.com
Pub date: 9 Feb 2009
Marijuana as gateway drug - is it still one? Was it ever?
Author: Katheleen Palmer, Staff Writer
http://www.nashuatelegraph.com/apps/pbcs.dll/article?
AID=/20090209/NEWS01/902099988


ニューハンプシャー州ナシュア地区のヘルス・センターで健康ステップ・プログラムのマネージャーをしているジャニス・ワトソンさんは、若者たちがこれまでの時代とは違ったトレンドの中で生活するようになってきていると実感している。

ドラッグとアルコール問題カウンセラーの資格を持ち、この道30年のワトソンさんは、「もはやカナビスはゲートウエイ・ドラッグではありません。いまでは家庭用の常備医薬品の棚や箱がメイン・ゲートになっているのです」 と言う。

彼女が担当するドラッグとアルコール問題の若者クライアントの半数以上が、歯の鎮痛剤やさまざまな家庭用処方医薬品を探し回ることから薬物に手を出すようになっている。

南ニューハンプシャーの若者たちがワトソンさんの観察通りであることは、最近実施された全国調査でも確認されている。連邦ドラッグ乱用研究所(NIDA)の2008年のモニタリング・フューチャー調査によれば、ティーンの処方医薬品の乱用がここ数年高率で続いており、ほとんど変化していない。

高校上級生のおよそ10%が過去1年間にバイコディンを、4.7%がオキシコンチンを使っている。どちらの医薬品も強力なオピオイド系鎮痛剤として知られている。また、12年生が過去1年間に乱用したドラッグのトップ10では、7つが処方医薬品かまたは薬局の売薬になっている。

一方、ティーンのカナビス使用については、いまだ広く使われてはいるものの減少傾向にある。過去1年間の使用では、8年生で10.9%、10年生23.9%、12年生で32.4%になっている。

いわゆる「ゲートウエイ現象」については、これまで多くの研究が行われてきた。それによると、アルコールのような合法ドラッグであってもカナビスのような違法ドラッグであっても、いったんドラッグに手を出した人たちは引き続いてより強いハードなドラッグを使うようになりやすく、カナビスを試したことのあるティーンは次第にコカイン、クラック、覚醒剤などに手を出すようになると主張している。

だが最近、アメリカ精神医学ジャーナルに掲載された研究では、従来の考え方が間違っており、カナビスやアルコールのようなゲートウエイ・ドラッグの体験よりも、生活環境の悪さや貧しい両親による無関心のほうが違法ドラッグの使用と密接に結びついているとしている。

しかしながら、そのどちらでもないと言う警察関係者もいる。警察から依頼されたドラッグの評価や分類、さらにドラッグ判定専門家 (Drug Recognition Expert、DRE)の養成などを行なっている州のコーディネーターのビル・キグリー氏は、次のように語っている。

「ヘロイン中毒者の全員がカナビスの喫煙から始まっているというのはフェアーではありません。そのような断定には承服しかねます。私は、ゲートウエイというコンセプトが1960年から70年代の抑止戦略として出てきたと思っていますが、ゲートウエイ理論を裏付けるような確かな事実にはいままで出会ったことはありません。」

「カナビスについては、社会的にも受け入れられていますが、ハードなドラッグについてはいまだにタブー視されています。実際には、逮捕されるような人たちの多くは他種類のドラッグ・ユーザーで、カナビスはそのうちの一つになっているだけなのです。」

中には、カナビスがゲートウエイ・ドラッグになっているという考え方を支持する警察官や、通常、若者が最初に試すドラッグはアルコールだと言う人もいるが、どの人でも、子供たちがいつどのようにしてドラッグを使うようになるかについては、環境が重要な要素になっているという点では一致している。


アメリカの若者のドラッグ統計
  • 10年生(高校1年生)のカナビス以外の違法ドラッグ使用率については、2007年から2008年にかけてそれぞれ、生涯使用率が18.2%から15.9%、、過去1年が13.1%から11.3%、過去1ヶ月が6.9%から5.1%へと著しく減少している。

  • 全体的には興奮系ドラッグの使用率の減少が目立っており、10年生のアンフェタミン使用は生涯・過去1年。過去1ヶ月のいずれでもが減少している。クリスタル・メソアンフェタミン(アイス)の使用も減り続けており、12年生の過去1年の使用率は1.6%から1.1%へと減少している。また、クラック・コカインについても1.8%から1.6%に下がっている。

  • 10年生のアルコール使用量も減少している。例えば、10年生の過去1年のアルコール使用は、2007年の56.3%から2008年には52.5%に減っている。

  • 8年生から12年生全体のカナビス使用に関する調査では1990年代半ば一環して減り続けていることが示されているが、横ばい状態とも言える。過去1年間の使用率は、8年生が10.9%、10年生が23.9%、12年生で32.4%になっている。

  • 処方医薬品の医療目的外の使用については、過去1年の使用率は12年生で15.4%になっている。このカテゴリーには、アンフェタミン、バルビツールなどの鎮痛剤、トランキライザー、ヘロイン以外のオピエートが含まれている。バイコディンは許容レベル以上が使われ続けている。12年生が使っているドラッグの多くは、処方医薬品が、薬局で買える風邪薬などになっている。

処方医薬品の死亡率 違法ドラッグ全体の3倍以上、フロリダ州検視調査委員会  (2008.6.14)
アメリカ・インディアナ州、処方医薬品の過剰摂取死亡が激増  (2008.6.30)

処方医薬品による死亡が急増していることに関しては、ドラッグテストと関係しているという見方もある。

連邦政府は、学校でのドラッグテスト実施のために多額の補助金を出してきているが、ドラッグテストでは、体内に代謝物が数週間も残るカナビスが最も発覚しやすいために、すぐに代謝して検知されにくいハードドラッグや検知対象になっていない処方医薬品が使われることになる。カナビスでは死亡することはないが、ドラッグテストが致死性の高い薬物の 「ゲートウエイ」 になってしまっている。

こうした懸念もあって、アメリカ小児科学会は繰り替えしてドラッグテストの中止を求める 声明 を出している。