ポルトガルの教訓

ドラッグの全面非犯罪化が成功

Source: Salon.com
Pub date: 14, Mar 2009
The success of drug decriminalization in Portugal
Author: Glenn Greenwald
http://www.salon.com/opinion/greenwald/2009/03/14/portugal/


ポルトガルは、2001年にすべてのドラッグを非犯罪してそれを現在でも続けている。そのような国はEUでもポルトガルしかない。

私は、昨年、アメリカの保守系シンクタンクとして知られているケイトー研究所の仕事でこの国を訪れ、コカインやヘロインまでが対象になっている非犯罪化法の成果を調べるために、ポルトガルだけではなくEUのドラッグ政策を担当する当局者やアナリストたちにインタビューした。幸いなことに、1993年からEU加盟国のドラッグ政策全体をモニターしているセンター (EMCDDA) も首都のリスボンにあった。

その結果、現実的で妥協のない観点からしても、ポルトガルの非犯罪化政策は成功していると言える。実際、関連するあらゆるカテゴリーに関して改善され、刑事犯罪としてドラッグの取締りを続けている西側諸国の大半に比較しても、ドラッグの使用率などのドラッグ問題を上手に管理することができている。

各国の当局者たちはうわべしか触れようとはしないが、ドラッグ問題の現実を厳しく検証した結果からすれば、ドラッグ使用に対する刑事犯罪アプローチである「ドラッグ戦争」は、実態をさらに悪化させただけで悲惨な失敗の終わったことに疑いの余地はない。現在では、そうした認識はアメリカ自身の含めて世界中に広がってきている。

「ドラッグ問題の現実を厳しく検証」 という意味は、次のことが行われているかどうかという点を問題にしている。
  1. 大人が自分で選んだドラッグを使ったことに対して、投獄することが妥当かどうかがイデオロギー議論になっていないか
  2. ドラッグを刑事犯罪化することで、憲法や市民の自由を奪っていないか
  3. 尋常ではない資金が、国内と国外のドラッグ戦争につぎ込まれていないか

ドラッグ政策について検証しようとする議論も多くなってきている。ごく最近でも、ラテンアメリカの3人の元大統領が、『ドラッグ戦争の失敗』 を宣言する報告書を発表している。また、最新のエコノミスト誌の論説 では、全面的なドラッグ合法化を呼びかけている。

アメリカで行われた 世論調査 では、カナビスの合法化を求める人たちが着実に増えてきていることが示されている。また、カナダでの調査 ではすでにカナビス合法化に賛成する人は過半数を越えている。

オバマ政権が選挙キャンペーンでの公約を守って、医療カナビス・ディスペンサリーに対するDEAの強制捜査を終結させる決定したほか、政治の表舞台でも、ドラッグ事犯に対する厳しい だけで 中身のない 刑事制裁を見直そうとする動きが多く見られるようになってきている。オバマ大統領が、初回のドラッグ事犯者には刑務所ではなく治療を行うことを支持しているのもそうした動きのひとつだ。

しかしながら、特にアメリカでは、刑事犯罪化アプローチに対する支持も依然と根強く、「ドラッグ戦争」の極限的で破壊的な見方を支持する人さえ少なくない。だが一方では、理由はさまざまだが、これまでタブー視されてきたドラッグ戦争についての議論が以前よりもずっとオープンにできるようにもなってきている。

こうした点で、特に1990年代になって、刑事犯罪化アプローチは貧困に根ざしたドラッグ爆発的危機を増大させるだけで何の役にも立たないという認識が語られ始めるようになったこともあって、ポルトガルのドラッグ全面非犯罪化の成功は非常に教訓的な側面を持っている。

現在、ポルトガルでは、ドラッグを非犯罪化すれば以前よりもドラッグ問題を上手に管理できるというコンセンサスが形成され、非犯罪化に反対する人たちが強く主張していた悪夢のシナリオは、実際には全く幻想であったことが明らかになっている。

ドラッグの刑事犯罪化アプローチが逆の悪影響をもたらすことは、少なくとも、ポルトガルの非犯罪化以前と同じ状態にある 現在のアメリカを見れば明らかだ。イデオロギー的な信条を乗り越えて刑事犯罪化の妥当性を見直せば、ドラッグ政策では、何が機能して何が機能しないかを客観的な現実にもとづいて決めることができるようになる。

ポルトガルがドラッグの全面非犯罪化を始めてから7年が経過するが、その決定の影響を偏見のない目で検証すれば、理性的で実施可能なドラッグ政策とはどのようなものなのかを知るよい機会を与えてくれる。

今回の調査については、『ポルトガルのドラッグ非犯罪化』 と題する50ページの報告書にまとめられて、来る4月3日にワシントンDCの ケイトー研究所 で発表されることになっている。この発表会には一般の人も無料で参加できるほか、オンラインでライブ配信もされる。

筆者のプレセンのあとには、ドラッグ非犯罪化法の支持者として知られているメリーランド大学犯罪学部の ピーター・ロイター教授 が、報告書にコメントをする予定になっている。その後、参加者からの質問も受けつける。

発表されたレポート:
Drug Decriminalization in Portugal: Lessons for Creating Fair and Successful Drug Policies

ケイトー研究所は、1977年にサンフランシスコで設立された保守系シンクタンクで、リバタリアン的な立場から、公共政策にアメリカの伝統を取り戻して、「小さな政府、個人の自由、自由な市場経済」を取り入れることを提言している。ケイトーは、古代ローマの政治家であるケイトー・ザ・ヤンガーにちなんで名付けられた。

リバタリアンにとっては、ドラッグの全面合法化はごく普通の主張になっている。 ドラッグ合法化を主張するリバタリアン経済学者ジェフリー・ミロン  (2008.9.25)