アメリカ

精神症薬の処方が10年で倍増

Source: NORML's Daily Audio Stash
Pub date: May 5th 2009
Americans’ use of psychotropic prescription drugs more than doubled in a decade
Author: Radical Russ
http://stash.norml.org/
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急拡大した精神医薬品の利用

子供のうつの治療などに使われているダミトール(Dammitol)が21世紀の「万能薬」などとも言われていることは知っていたが、ここまで世の中に浸透しているとは思いもしなかった。

シカゴ発(ロイター) - 本日発表されたアメリカの研究者たちの調査によると、アメリカでは1996年以降ますます多くの人たちが精神症の治療に処方医薬品を使うようになってきている。これは、保険でカバーされるようになったことやプライマリーケアの医師でも気軽に処方するようになってきたことなどが影響している。

確かに、テレビには 「お医者さんに新しい医薬品のダミトールを処方してもらいましょう」 という宣伝が流れているが…

処方医薬品を使う人の数は1996年に比較して、現在では成人で73%、子供で50%も増えている。また、65才以上の人が、うつ、精神病、アルツハイマーなどの精神疾患の治療に処方医薬品を使う率は1996年から2006年までに2倍に増加している。

この調査 は、ニューヨークのコロンビア大学公衆衛生学部のシェリー・グリード教授が健康問題ジャーナルの5-6月号に発表したもので、「一言で言えば、すべての年齢層を通じて治療を受ける人が増加している」 と述べている。

また、その理由については、医療保険の適応範囲が拡大されたことにくわえて、高齢者に対する連邦の保険制度や貧困家庭の子供に対する州のこども保険制度が充実してきたことで入手しやすくなったからだと指摘している。

調査データによれば、プライマリーケアの医師に精神症と診断されて治療を受けた子供の数は、1996年から2006年の間に2倍になっている。


医薬品広告の緩和

同じ時期には、次のような興味深いことも起こっている。
  • 1989年に製薬会社が市販医薬品(DTC、direct-to-consumer)の広告に費やした費用は 1200万ドル だったが、2007年には300倍の 37億ドル にまで達している。

  • DTC医薬品の宣伝は1983年に解禁されたが、薬の商品名を示して 「お医者さんの相談してください」 というだけに限定されていた。薬の用途や患者にどう役立つのかについては触れることはできなかった。

  • 食品医薬品局(FDA)は1997年に、処方医薬品の広告に対するルールを緩和 し、現在の基準になっている。ダミトールのTV広告では、優雅な音楽と小鳥のさえずりを背景にダミトールを飲んだ人が幸福に輝いている姿が写し出され、最後の10秒間は音楽のないモノトーンの画面に変わってダミトールの副作用をそつなく早口で告げて終わる。

  • DTC医薬品の宣伝は全体の70%がテレビによるもので、全テレビ・ネットワークの広告収入の29%が医薬品関連になっている。

  • アメリカでは、一人当たりの処方平均回数は1992年の7.3から 2006年には14.3 に倍増している。

確かに、記事では、精神医薬品を使う子供・成人・高齢者の数がそれぞれ50%、75%、100%増えたと書かれているが、それだけでは一人当たりの処方平均回数が倍増していることに対する十分な説明にはならない。結局は、政府が子供や高齢者に薬をより入手し易くしたことで処方回数が増えたと考えることができる。


「自己治療社会」

レイ・D・ストランド氏は、『処方医薬品による死』 という著作の中でわれわれの社会を 「自己治療社会」 と呼び、いかにして製薬会社が宣伝によって、患者をドラッグ・シーカーにして、医師をドラッグ・ディーラーに変えたのかを描き出している。

それを引用したナチュラル・ニュースの記事 には次のように書かれている。

「医療関係の文献に掲載されている調査報告からは、患者が病院の医師にメディアの宣伝で見た特定の医薬品を名指しで要望した時には、70%以上の医師が患者の指定した薬をそのまま処方していることが分かる。」

つまり、最近ちょっと落ち込んでいるなと感じている人が、たまたまファイザー製薬の抗うつ剤ゾロフトのコマーシャルを見たとしよう。画面に映し出されたうつ病の症状を見ているうちに、自分の症状と同じではないかと気付くと、突然 「そうか、ただ落ち込んだだけではないんだ。うつだったんだ。この状態はゾロフトを処方してもらえば直るに違いない…」 と納得してしまう。

このような確信を胸に医師を訪れた患者は、「最近、本当にうつがひどいんです」 とゾロフトのコマーシャルの症状を復唱して、「自分にはゾロフトが必要なんです」 と訴えることになる。

ストランド氏によれば、このときにゾロフトが望みどおり処方される確率は70%を越えるが、この事実は、医薬品のコマーシャルがどのように機能しているのかを如実に物語っている。

確かに製薬会社は、患者を「教育」しているのであって何も説得しているわけではないと言う。しかし、直接的に消費者の行動に影響を与えて、必要だと思い込ませている。


膨大な製薬企業の利益

大手製薬会社が誘惑しているのは患者はかりではない。例えば、アメリカ心理学会(APA、American Psychological Association)の収入の 15〜20% が学会誌に掲載される製薬関連の広告収入で占められている。また、ファイザー製薬だけでも 4500人 あまりの販売員を揃えて、特別の販促活動や無料サンプルの提供などを通じて医師たちに直接働きかけている。

大手製薬会社が消費者向けに37億ドルもの広告費をつぎ込んでいることは前にも触れたが、販売員や学会誌を通じで行っている医師向けの宣伝費はその2倍ちかい 67億ドル にもなっている。

だが、それだけの販促費をかけても十分過ぎるほどの見返りを受けている。実際、2007年には合計104億ドルの販促費に対して 2275億ドル もの売上を得ている。しかも原料はタダみたいなもので、原料のコストと最終的に患者が支払っている金額の比較 では、パキシルが2898%、ゾロフト1万1821%、セレブレックス2万1712%、プロザック22万4973%、ザナックス56万9958%などとなっている。

実際フォーチュン誌によると、アメリカでも製薬業界の利益率は、通信関連とインターネット関連の業界に次いで 第3位 になっている。2008年の利益率は売上の19.3%で、3大製薬企業の利益はそれぞれ、129億ドル、81億ドル、48億ドルになっている。


カナビスが違法とされている理由

こうした事実を念頭において現在のカナビス合法化運動を見れば、それが如何に画期的なことであるか理解することはさほど難しくはない。もし、カナビスが合法的に使えるようになれば、処方医薬品の2275億ドルの売上はどうなるか?

医療カナビス患者の多くが、カナビスのおかげてオピオイド鎮痛剤の50〜75%が必要なくなったと話している。また、不安やうつに悩まされている人では、パキシルやゾロフトをはじめとする処方医薬品よりもカナビスのほうがより効果が高いと言う人も少なくない。

しかもカナビスは自分でも栽培できる。処方医薬品は便秘や吐き気、勃起不全などの副作用をもたらし、それを抑えるためにさらなる医薬品が必要になるが、何種類ものピルをカナビスという小さな植物に置き換えることによってハッピーで食欲も増してセクシーにもなる。

アメリカ医師会(AMA)やアメリカ心理学会が医療カナビスを支持したいと思っても、学会誌を通じて資金を提供してくれる製薬企業を怒らせないで済むだろうか? ネットワークTVが医療カナビスに好意的なレポートを流したいと思っても、製薬企業は黙って広告費をつぎ込んむだろうか? 医師が医療カナビスを支持したいと思っても、製薬企業はこれまでと同じように無料サンプルの提供などの便宜をはかるだろうか?

結局、カナビスが違法とされている理由は、それが人や社会に悪影響を与えるからというのでは全くなく、ビジネスに悪影響を及ぼすからなのだ。