モルヒネ依存改善に

カナビスが驚くべき効果

Source: The Medical News
Pub date: 6, July 2009
The surprising effect of cannabis on morphine dependence
Author: Bruce Mirken
http://www.news-medical.net/news/20090706/The-surprising-effect-of-cannabis-on-morphine-dependence.aspx


母親の世話を受けられないようにした母性剥奪ラットでは、オピエート(モルヒネやヘロイン)に依存しやすくなるとされているが、カナビスの主要成分であるTHCを注射すると依存性がなくなることが示された。

この結果は、中枢神経疾患生理病理学研究所(UPMC / CNRS / INSERM)のバレリー・ドージュ博士のチームによるもので、神経精神薬理学ジャーナルに掲載された。この発見は、現在行われている薬物依存治療に代わる新しい治療法となる可能性もある。

精神疾患の研究では母性を剥奪した動物モデルが使われるが、誕生後一日数時間母親から引き離しておくと、世話を受けられず早期ストレスを引き起こすようになる。神経発達の活発期に世話を受けられないと脳に長期的な障害が出る傾向が高まる。

以前にドージュ博士らは、母性剥奪ラットでは、モルヒネやヘロインなどのオピエートに対する報酬効果に敏感に反応するようになり、急激に依存するようになることを示している。さらに、依存による異常行動と、オピーエートに関係した体内のエンケファリン・システムの自発運動が抑制されることの間には関連のあることも見出している。

ドージュ博士らは今回の研究で、オピエートに依存した母性剥奪ラットにTHCを注射するとその行動がどのように変化するかを調べた。

THCは、思春期に相当する35〜48日に、体重1kgあたり5または10mgまで増やしながら間欠的に投与された。ラットが成人期に入ってからモルヒネの摂取量を調べたところ、以前の実験結果とは違って、モルヒネの典型的な依存行動は起こさなくなっていた。

さらに、生化学や分子生物学的なデータもそれを裏付けていることも確認された。薬物依存に関わっている脳の線条体では、THCにより内因性のエンケファリンの生成が回復し、THCを与えられなかったラットに出るストレスも見られなくなった。

エンケファリン・システムでは、神経伝達物質である内因性のエンケファリンが生成される。エンケファリンは、オピエートと同じレセプターに結合して脳への痛みの伝達を抑制するように働く。

動物をモデルにした実験は、人間の誕生後の神経生物学的影響や行動への関連などを理解する上で有効な方法だとされているが、今回の発見は、薬物の禁断症状を緩和し依存性を抑制するための新しい治療歩の方向を示している。

今回の論文:
Adolescent Exposure to Chronic Delta-9-Tetrahydrocannabinol Blocks Opiate Dependence in Maternally Deprived Rats - Lydie J. Morel, Bruno Giros and Valerie Dauge. Neuropsychopharmacology 24 June 2009, PMID: 19553915.

日本では、ラットのTHC実験といえばすぐに カナビスによる凶暴化のビデオ が出てくるが、一時はフランスでも「カナビスの敵」を自称する ガブリエル・ナハス が得意気にラットにTHCを注射してその悪害を言い立てていた。

だが、今回はフランスの研究家がラットにTHCを注射する実験で、カナビスがゲートウエイどころか逆にオピエート依存が改善されることを示した。ここが、カナビスの悪害を立証することだけに躍起となり、まともなカナビス研究もできない日本とフランスの違いなのかもしれない。