長期的にカナビスを喫煙しても

肺機能は低下しない


参考Source: NORML's Daily Audio Stash
Pub date: August 18th, 2009
Chronic marijuana smokers’ lungs no worse than non-smokers’ lungs
http://stash.norml.org/
chronic-marijuana-smokers-lungs-no-worse-than-non-smokers-lungs/


ヨーロッパ呼吸器ジャーナルの最新号に掲載された 研究 によると、長期的にカナビスを使っている人の肺機能は低下せず、非喫煙者とほぼ同じであることが示された。

この研究はニュージランド・ダニーデンのオタゴ大学の研究チームが中心になって行ったもので、1037人の住民をコホート対象にして、18、21、26、32才時点でのドラッグ使用と肺機能の関係を調べている。

最もドラッグ使用の結果が累積された32才時点では、肺機能と各々のドラッグの関係を調べるために、肺気量、容積変化を測定するプレチスモグラフィー、一酸化炭素搬出係数について測定を行った。

他のドラッグとの交錯因子を調整した結果、長期的にカナビスを使用してきた人では、努力肺活量、全肺気量、機能的残気量、残気量が高くなる傾向が示された。また気道抵抗値も高くなるが、一方では1秒間の努力呼気容量・努力呼気率・一酸化炭素搬出係数については関連が認められなかった。

この結果について研究者たちは、「カナビスを使用している人の肺機能はタバコを吸わない人と同じようなものであることが分かった」 と結論づけている。

「これに対してタバコの使用者では、気道抵抗値は変わらないものの、1秒間の努力呼気容量・努力呼気率・一酸化炭素搬出係数が低下し、安静時の肺容量は増える… 肺機能に対する影響については、カナビスはタバコとは異なっている」 

非喫煙者に比較して、カナビスの喫煙が肺機能を低下させないことはすでに1997年のカリフォルニア大学ロサンゼルス校の 研究 でも示されているほか、最近では今年の4月に発表されたカナダのブリティシュ・コロンビア大学の 研究 でも、「カナビスを吸引しても、呼吸器症状や慢性閉塞性肺疾患(COPD)のリスクは増加しない」 と報告している。

また、2007年の内服薬アーカイブ・ジャーナルの2月号に掲載されたメタ分析でも、カナビスの長期喫煙は、咳や痰、喘鳴といった呼吸器系の合併症を引き起こすリスクを高めるが、肺の機能を低下させないことが明らかにされている。

今回の論文:
Effects of cannabis on lung function: a population-based cohort study R.J. Hancox, et.al, Eur Respir J , August 13, 2009

カナビスのタールはタバコの4倍もあるので、肺癌や慢性閉塞性肺疾患(COPD)のリスクが大きい、とマスコミばかりではなく医療関係者からも頻繁に言われているが、これは、タバコで起っていることがカナビスでも起るはずだという類推(アナロジー)からきている。

しかし、カナビスとタバコの煙には似たような成分が含まれているからといっても、実際に吸い込んだ時の生理的な反応に大きな違いのあることを無視している。

この問題に限らず、特にカナビスそのものについての知識が乏しい医療関係者は盛んに他のドラッグや医薬品のアナロジーを使ってカナビスの害を言い立てるが、そうした言動には惑わされないように注意する必要がある。カナビスのユニークさは、単純なアナロジーや常識が通用しないところにある。

カナビスと肺癌研究の第一人者、今ではカナビス合法化を支持 (2009.6.9)
カナビスの煙に発癌性はない

肺に対する最も重大な懸念は、肺癌とCOPDにある。これは肺癌とCOPDが原因となった死亡件数が疾病全体で大きな割合を占めているからだ。

COPDは慢性的に気道が閉塞することに特徴がある。その最も顕著なものは肺気腫で、いったん壊れた肺胞組織は健康な元の状態に戻ることはない。この点では、タバコで肺気腫になることは珍しくもないが、カナビスでは肺気腫を起さないことが知られている。

慢性気管支炎では、気管支に慢性の炎症が起こって痰が過剰に分泌され、それを排出させるために咳や喘鳴が出てくるが、カナビスは慢性気管支炎になってもタバコと違って閉塞性をともなわないという特徴がある。今回の研究は、そうした事実を追認するものになっている。

また、カナビスの喫煙で肺癌のリスクが増えないことは大規模な疫学研究で何度も示されている。

カナビスの長期喫煙、呼吸器合併症は軽微で肺気腫は起こさず  (2007.2.15)
害を軽視するカナビス害報道、ジョイント1本の害はタバコ5本分? (2007.8.7)
神話 カナビスは肺癌を引き起こす

カナビスの煙では気道の閉塞が起らないというのは、タバコの煙とは違ってカナビスの煙は細い気道に入り込まないからだと考えられている。これは、カナビスの煙の匂いがタバコよりも強烈であるにもかかわらず、タバコの喫煙者の息が長いあいだ臭うのに対して、カナビスの場合は比較的すぐに消えることもそれを反映している(?)。

また、研究者たちは、「カナビス使用による肺容量の増大は、気道の障害による肺の高度膨脹や気道抵抗値の上昇を疑わせるものではあるが、気道や搬出係数に障害があることを示すエビデンスはほとんど見られない」 と書いているが、肺容量の増大は、カナビスを吸引するときに大きく深く吸い込む習慣と関係しているのかもしれない。

オランダでは、コーヒーショップのことをしばしばコフ(cough)ショップと呼んだりしているが、カナビスを吸って咳き込む人をよく見かける。これは熱い気体を大きく深く吸い込むからで、煙の場合だけではなく、少ないながらも同じことはバポライザーで気化した蒸気でも起る。

煙にしても蒸気にしても熱い状態で大きく深く吸い込めば、その結果として慢性気管支炎になりやすい。だが、グラビティ・ボング や ボルケーノ・バポライザー などで燃焼・気化と吸引の過程を明確に分離して、十分に温度を下げてから何度にも分けてゆっくり浅く吸うようにすれば、慢性気管支炎のリスクを軽減することができる。