法務大臣宛「情願」


(2003.10.31.注記)
大阪拘置所未決収容者の独房には、「生活心得」と題された冊子が備え付けられている。そこには「第8 苦情及び不服申立て」として、「情願はあなた自身に対する拘置所長の責任においてなされた処遇に不服がある場合に、法務大臣又は巡閲官に対して不服の申し立てができる制度です。<「生活心得」 「2 情願(1)」>とある。また「(2)法務大臣に対する情願は、書面でいつでもできます。一方、巡閲官に対する情願は巡閲官が来所した際、口頭又は書面によって申し立てることができます。巡閲官の来所は放送などであらかじめ知らせます。」ともある。
そこで、私は情願用紙を看守にもらい、2003年9月4日、下記、情願を出した。


<法務大臣殿>

<情願書>

<提出日>    平成15年9月4日
<収容施設名> 大阪拘置所
<氏名>      白坂和彦

<申立事項>

<年月日> 平成15年8月22日
<施設名> 大阪拘置所

<不服とする処置の内容>
朝日新聞か毎日新聞を購読したい旨、申し出たところ、読売新聞か産経新聞しか購読できない、購読できる新聞はアンケートで決めている、と言われた。

<申立ての理由>
新聞は各社によって、政治的・思想的な立場に独自性があり、同じ政治課題であっても、その報道の内容や解説は社によって異なります。どの新聞を購読するか、購読したくないかは、読者にとって政治的・思想的表現であり、それは監獄の中でも同じです。アンケートで決めるべき事柄ではありません。業務上の煩雑を回避するためとの説明を受けましたが、パンやジュースは1日8点までの購入が認められています。が、人はパンのみにて生きるにあらず。読売と産経は世評右寄りとされており、朝日・毎日はその反対とされています。これでは全くバランスを欠くと言わざるを得ません。これは大阪拘置所だけの問題ではないと思います。次回、どこかに拘留されたとき、朝日や毎日も購入の選択肢としたく、当所のみでなく、全国の監獄で最低三大紙とされる読売、朝日、毎日の各紙を購読できるよう改善を要求します。


(2003.10.31.注記)
この情願を出す前、読売と産経しか買えないことを不服に思い、俺は看守に他の新聞を買いたいと申し出た。だが、それは収容者へのアンケートで決められているとの答えだった。そのアンケートは直近でいつ取ったのか聞くと、あいまいな返事しかなく、俺が「2年前?3年前?」と聞いても、はっきりした返事はなく、そのようなアンケートを見たことがある、という不明瞭な言葉しか帰ってこなかった。

「生活心得」に情願という仕組みが書いてあったのを思い出し、やってみることにした。だが、この情願に対する当の法務大臣からの回答は、収容者が出所してしまった場合には得ることができないことも書いてあった。当時の森山法務大臣からの回答が来る前に、俺は保釈された。

 

←表紙