上告趣意書


平成16年(あ)第956号 大麻取締法違反被告事件


最高裁判所 御中

被告人 白坂和彦


上 告 趣 意 書

平成16年6月28日


  下記の通り、大麻取締法は、日本国と日本国民の保護法益を侵害する人権蹂躙法であり、憲法違反であるから、原判決は破棄されるべきである。

1.大麻の事実について(医療及び嗜好目的の観点から)

 逮捕当日から、取調べでも、検事調べでも、一審でも、二審でも、大麻取締法は生存権をも侵害する憲法違反の法律だと私は主張してきました。しかし、一審判決も、二審判決も、そのことは実に見事に完全に無視し、20年も前の判例を金科玉条のごとく引っ張り出して司法判断のまやかしを正当化しています。
 大麻の無害性や有用性を証明する判例時点以降の研究データを提出しているにも拘らず、それらは都合よく一切黙殺し、新しい判断から逃げ、相も変らず司法の独立性を自ら葬っているのです。
 念のため、もう一度書きます。大麻取締法は憲法25条に定める生存権をも侵害しています。それを裁判所が黙殺し、当方の主張を否定する根拠も示さないのでは判例主義ですらなく、単に司法の思考停止であり、司法府が三権分立に死刑を宣告しているようなものです。

 以下、>印付きの行は二審判決の引用です。

> 各論旨は、いずれも弁護人の上記釈明のとおりであって、要するに、大麻取締法24
> 条1項及び24条の2第1項は憲法13条、14条、31条及び36条に違反し、無効であ
> るのに、これらを適用して被告人を有罪とした原判決には、判決に影響を及ぼすこと
> の明らかな法令適用の誤りがある、というのである。

 私は生存権(憲法25条)をも侵害していると、逮捕されたその日から主張しています。
「要するに」とかいって要約しすぎです。まるで書いてなかったかのように一言も触れずに無視する司法。これが裁判所のすることですか。なんのための裁判所でしょうか。
 大麻が各種の疾病に対し医療効果があり、歴史的にも古くから世界各地で民間療法的にも利用されており、現代ではその薬学的効果は科学的にも証明され、すでにオランダやベルギー、カナダなどでは薬剤として販売されていることは一審と二審でも述べた通りです。

 大麻にはかつて考えられていたような強い毒性はなく、カフェインと同程度であることは下記の通り米国薬害研究所(NIDA)の研究報告でも明らかです。
(taima.org http://www.taima.org/jp/main.htmから引用)

ニール L. ベノウイッツ博士(カリフォルニア大学)による格付け

物質名

禁断症状

強化刺激

耐性

依存性

陶酔度

ニコチン

3

4

4

1

6

ヘロイン

2

2

2

2

2

コカイン

3

1

1

3

3

アルコール

1

3

4

4

1

カフェイン

5

5

3

5

5

マリファナ

6

6

6

6

4

危険度 最大= 1 最小= 6

 大麻にはアルコールやニコチンほどの害もなく、カフェインと同程度の「毒性」があるのみです。大麻取締法はコーヒー愛好者を逮捕するに等しい悪法です。

> 大麻が一定の薬理作用を有することは公知の事実であり、国家が国民の生命、
> 精神の安全に対する危険を防止する見地から、法律をもって大麻の使用につな
> がる所持や栽培等の行為を規制し、その違反に対して罰則をもって臨むことには、
> 十分合理性が認められるところであって、当裁判所も、大麻取締法の前記各条
> 項が違憲のものとは考えない。

 何度も言ってるように、その薬理作用には医療効果があります。痛みが緩和する、眠れるようになる、食欲が出る。そのような効果を求める病人が、大麻を使う機会を刑事罰をもって取り締まることのどこに合理性があるのでしょうか。
 裁判所の言う「一定の薬理作用」は、何ら他者や社会の保護法益を侵害するような性質のものではないことを論証しているにも関わらず、一審・二審はそれを全く黙殺して「大麻が一定の薬理作用を有することは公知の事実である」と、ナントカの一つ憶えのように繰り返すのみです。
 大麻が一定の薬理作用を持つことは公知の事実です。そしてその薬理作用は、刑事罰をもって取り締まる性質のものではないことも公知の事実です。
 大麻を嗜好目的で利用しても侵害される保護法益はないし、使用者本人にとってもカフェインと同程度の毒性しかない。
 その大麻の所持や栽培を、最高で懲役7年という刑事罰で取り締まりることに、どのような合理的根拠があるというのでしょう。
 前提となる最新の科学的知見を認めようとせず、相も変わらず20年も前の決定に固執する司法の硬直した権威主義にはほとほと呆れ返ると同時に辟易するばかりです。
 先進各国では民間の製薬メーカーを含め、多数の研究機関が大麻の人体への影響についてさまざまな研究を行っており、産業面でも利用され、環境面からも注目されているのに、わが国では大麻取締法という足枷で研究すら禁じています。
 それこそが我が国の国益を大きく損なうものであり、大麻取締法こそが国民の保護法益を侵害しているのです。

> 所論の前提とする大麻に有害性がないなどといった主張は、過去同種事案において
> 何度も繰り返されてきたものにすぎず、その理由のないことも、原判決が引用するもの
> を含め、多くの裁判例が示すとおりである。したがって、所論は採用の限りではない。

 大麻にはさしたる有害性がないことは科学的な公知の事実であるにも拘らず、 司法はそのことを認めず、「過去同種事案において何度も」事実誤認に基づき、平穏に暮らす者たちの生活・人生を破壊する保身的な逃げの判決を繰り返してきたというに過ぎません。
 原審で判決が引用しているのは昭和60年の最高裁決定です。私は、それ以降の世界各国の、多種の研究機関の研究結果を報告書として出しているのに、それを全く無視しておいて、主張には「理由がない」と平然と言って退ける。理由を提示しているのに黙殺する裁判所。「理由がない」のではなく、明白な理由を裁判所が黙殺しているだけです。20年もの間、「同種事案において何度も」司法は誤謬に満ちた判決を下し、平穏に暮らす国民の生活を破壊し続けてきたのです。前提となる事実を黙殺したこんな判決、採用の限りではありません。

> 所論はまた、飲酒や喫煙についてほとんど規制されていないのに、それらよりも危険
> 性や有害性の低い大麻の所持や栽培について懲役刑を科すことは、法の下の平等
> を定める憲法14条のほか、罪刑が適正であることを要求する同法31条や残虐な刑
> 罰を禁止する同法36条にも違反する、と主張する。しかし、大麻の有害性が低いな
> どという前提自体が失当であることは前記のとおりであり、また、大麻取締法の法定
> 刑が過度に重いとはいえないことも原判決が説示するとおりである。したがって、この
> 所論も採用できない。

 「大麻の有害性が低いなどという前提自体が失当」であるとするなら、司法は、大麻が刑罰をもって取り締まるほど有害である根拠、下記に列挙する研究事例等を覆す根拠を示すべきです。

 一審で提出した「文字通り世界の医師のバイブルとして無数の人々の治療に役立ってきた」医学書の権威である「メルクマニュアル」(第17版日本語版)には次のような記載があります。

「マリファナを批判する人々は有害作用に関する数多くの科学的データを引き合いに出すが、重篤な生物学的影響があるとする主張の大部分は、比較的大量の使用者、免疫学的、生殖機能についての積極的な研究においても、ほとんど立証されていない」

「大麻の慢性的ないし定期的使用は精神的依存を引き起こすが、身体的依存は引き起こさない。」

「多幸感を惹起して不安を低下させるあらゆる薬物は(精神的)依存を惹起することがあり、大麻もその例外ではない。しかし、大量使用されたり、やめられないという訴えが起きることはまれである。」

「大麻は社会的、精神的機能不全の形跡なしで、時に使用できることがある。多くの使用者に依存という言葉はおそらく当てはまらないであろう。」

「この薬をやめても離脱症候群はまったく発生しない」

 また、「著者であるアイヴァーセン博士は大麻問題で英国上院委員会顧問を務め、これをきっかけに文献の総括的検討に着手することとなり、それが今回の本となって結実した」書籍、「マリファナの科学」(抜粋を「報告書4」として一審で提出済み)には次の記述があります。

「大麻の吸引によって進行癌患者が痛みに耐えることができるようになった、癌治療に使う化学療法薬によって起こる悪心が和らげられた、緑内障患者の眼圧を下げることができた、といった事例を報告する研究がますます多くなっている。」

「英国上院は大麻の是非を問う調査を行い、米国科学アカデミー医学研究所でも同様の調査が行われた。両調査とも、大麻にはプラスとマイナスの両面があるとの結論を示しながら、一般社会や立法機関に対して、あくまでバランスのとれた見方をとるように勧告している。娯楽目的での大麻の吸引には有害なケースもあるが、コカインやアルコール、タバコほど危険なものではない。」

「大麻には悪い側面と良い側面があり、適量が用いられる限り、娯楽利用の価値もあるとともに、治療上から見ても有望である。」

「マリファナの使用はヘロインやコカインの中毒につながるものではなく、吸引の慣行を促すことによってマリファナ中毒者の市場を作ろうとする動きは見られない。」

「オランダでは20年以上も前からマリファナを個人的使用のために入手でき、カナダやスイス、デンマーク、ギリシャ、スペインでもオランダと同様の方針をとる動きを見せている。」

「近年では、後天性免疫不全症候群(AIDS)や多発性硬化症など、さまざまな肢体障害をもたらす病気を患う数千人の患者が、症状を和らげてくれると確信して、非合法でのマリファナの吸引を始めている。」

「1997年秋、英国の新聞『インディペンデント・オン・サンデー』は、大麻の非犯罪化をめざすキャンペーンをはった。キャンペーンは医学界のほか、あらゆる分野から数千人にのぼる支持者を集めている。」

「中国では大麻は重要な食用植物で、五穀のひとつに数えられていたほどである。」

「大麻は現在、精神活性薬THCとの関係で論じられるのが普通だが、人間の農業活動で数千年にわたって大変重要な役割を果たしてきた多目的品種でもある。」

「大麻製品は何千年にもわたって、さまざまな文化圏で消費されてきた。古来から今日にいたるまで、その形態にはありとあらゆるものがある。」

「大麻がもつ薬効や陶酔性の最初の記述は、紀元前およそ1〜2世紀、古代中国の草本誌『神農本草経』に見出すことができる。」

「19世紀中頃〜1937年までの百年近くの間、大麻は西洋医学界で短い間だが流行している。大麻がインドの民間療法から、初め英国に、次いでほかのヨーロッパ諸国や米国に紹介されたのに続き、さまざまな医療用大麻製品が利用されるようになったのである。一方、大麻は早くも15世紀前半に、アフリカから連れてこられた奴隷によってラテン・アメリカやカリブ海諸国に伝えられている。この地域の多くの国では娯楽用薬物として、またさまざまなネイティブ・インディアンの宗教的儀式に用いる道具として、その精神活性効果を利用すべく、いたって広範に使われるようになった。」

「20世紀初頭の数十年間に米国南部へメキシコ移民者の波が押し寄せ、そのさい彼らがマリファナを持ち込んだことから、大麻は米国で初めて注目を浴びる存在となり、さらにその後の禁止へとつながっていく。(中略)連邦麻薬局長官、ハリー・アンスリンガーはマリファナを非合法化すべく、熱のこもったキャンペーンに乗り出した。彼は当時、特定の政策や党派に肩入れする役人として知られ、大麻の害悪として考えられる事柄をショッキングな風説に仕立て上げることで、ほかの官庁や世論、メディアを巧みに操っていった。1937年、米国議会はほとんど欠席裁判的にマリファナ課税法を可決する。これは医学でのマリファナの利用を事実上禁止し、マリファナを危険な麻薬として非合法化するものであった。」

「1937年の時点で、米国国内の医師が入手することのできる大麻製剤は、大麻抽出物を含有する丸薬、錠剤、シロップから、大麻とほかの薬物−モルヒネ、クロロフォルム、クロラールなど−との混合品まで、28種類に及んでいた。米国の製薬会社は、大麻製剤の研究に積極的な興味を示すようになっていた。急ぎ可決されたマリファナ課税法は、それ以降の大麻の医療利用をすべて打ち切らせ、以降25年ないし30年にわたってこの分野でのあらゆる研究に本質的に終止符を打つものであった。ラテン・アメリカから米国に到達するなり行われた大麻の悪魔化によって、それ以降北米だけでなく世界規模でマリファナに対して歪んだ見方が取られるようになっている。」

「1960年代の米国で突然、若者に間にマリファナが流行したことで、この薬の効果についての科学的調査が盛んに行われるようになった。数多く現れた研究報告書のなかには人々を混乱させるようなものも多いが、これは一部には、当初からこのテーマが政治色濃厚で、明らかに偏った見方がいくつかの研究に影響したためであった。研究者によっては、マリファナが有害な薬であることを証明しようと躍起になっていたようである。」

「1970年代と1980年代のいくつかの研究は、人類学的・神経心理学的テストを行うことで頻繁なマリファナ使用者と非使用者を比較しているが、そこに見るべき相違は認められていない。」

「ジャマイカやギリシャといったマリファナの大量使用が日常的となっている国々での長期大量使用者についても、これと同様の研究が行われているが、マリファナ使用者と非使用者の間に何ら認識機能上の相違をみいだすことができずに終わっている。」

「とりわけ有名なランブロス・コミタスの研究(1976)により、当時一般的だった大麻摂取が『無動機症候群』につながる考え方に異論を唱えるようなデータが、当時の思い込みとは裏腹に公表されている−
  言葉上の反応に示されているように、下層階級の大麻使用者が抱くガンジャと仕事についての考え方、態度は決して曖昧模糊としたものではない。一般にガンジャは無気力や行動不能につながる弱体物質などではなく、エネルギー源、原動力と考えられている。ガンジャはジャマイカでは、少なくとも観念的なレベルでは、その使用者にもっとも困難で不快な単純労働に立ち向かい、とりかかり、やり遂げさせる代物なのである。(Comitas,1976)
 コミタスはこのあと客観的な測定法によって、ガンジャ吸引者と非吸引者を比較した場合、サトウキビ刈り入れ作業の生産性にまったく差がないことを示している。」

「マリファナはその使用者をリラックスさせ、気持を落ち着かせるが、アルコールはときとして攻撃的で暴力的な行動を引き起こす。」

「大麻は何千年にもわたって医薬として使われてきた。中国で紀元前2800年頃、初めて出版された漢方薬の概説書『神農本草経』は、大麻を便秘、痛風、リウマチ、生理不順の治療薬として推奨している。大麻製剤はその後何世紀にもわたって中国の本草書で推奨され続けてきたが、特に鎮痛効果は外科手術の際、痛みを抑えるために利用された。」

「インド医学も中国と同じくらい長い大麻利用の歴史をもっている。紀元前2000〜1400にさかのぼる古代医学書『アーユールヴェーダ』はバング(マリファナをさすインド語)に触れ、その後の記述はこれにパニーニ(紀元前300年頃)が筆を加えるかたちで行われている。
 大麻は古代アーリア人のインド入植者たちによって鎮静・冷却・解熱効果をもつと信じられていたと見て間違いないようである。古代アーユールヴェーダ体系では大麻はヒンドゥー人のための医薬品として重要な役割を果たし、今日でもアーユールヴェーダ実践者たちによって利用されている。アーユールヴェーダ体系のさまざまな医学書では、大麻の葉や樹脂が鬱血除去、収斂剤、鎮静剤として、また食欲を刺激し消化を促す薬剤として推奨されている。大麻は睡眠導入剤や外科手術のさいの麻酔薬としても使われてきた。」

「アラブ医学やイスラム系インド人の医学ではハシーシュ(大麻樹脂)や「ベンジ」(マリファナ)について多くの記述が見られる。大麻は淋病や下痢、喘息の治療薬として、また食欲増進剤、鎮痛剤として利用された。」

「インドの民間療法ではバング(マリファナ)やガンジャ(大麻樹脂)が激しい活動時や疲労時にスタミナをつける刺激薬として推奨されてきた。傷や腫れ物に貼る湿布はその回復を促し、炎症(例えば痔)のさいには鎮痛・鎮静剤として働くものと考えられた。ガンジャ抽出物は眠気を誘い、神経痛や偏頭痛、生理痛を治す薬剤として利用された。今日でもインド農村部の民間療法では大麻抽出物とほかのさまざまな漢方薬からなる多種多様な調合薬が使われ、その数ある適応症のなかには消化不良、下痢、腸吸収不全、赤痢、発熱、腎疝痛、月経困難症、咳、喘息などが含まれる。」

「大麻は中世ヨーロッパの民間療法でも広く知られ、ウィリアム・ターナー、マッティオーリ、ディオスコバス・タベラエモンタヌスの本草書でも治療効果のある植物として記述されている。」

「何世紀にもわたって大麻が安全な医薬品として使われてきて、欧米諸国で何千人という患者がその薬効を信じて疑わないのに、どうしていまさら問題がありえよう。なぜ欧米諸国は、医師が患者に処方できるように大麻を合法化しようとしないのだろうか?」

「患者に安全で効果のある薬剤を認めない根拠が、果たしてあるのだろうか。」

「大麻は多くの人たちにとって、何世紀もの間、民話や民間医療に根付いてきた自然療法・薬草療法として、付加的な魅力を備えている。」

「大麻がもたらしたメリットを語る人たちのしばしば感動的な報告は抗いがたい力をもっている。これ以上、いったい何が必要なのだろうか。」

「吸引マリファナが一部の患者に実際の薬効をもたらしていることは、疑いようのない事実なのである。」

「中枢神経系のなかのカンナビノイド系が活性化することで、とくに痛みに対する感受性が低減するという動物実験の結果が、ますます数多く報告されるようになっている。」

「また大麻が持つ鎮静性は、痛みをともなう筋痙攣や頻繁な排尿の必要のために度々眠りを妨げられる患者に熟睡をもたらす効果がある。大麻が痛みをともなう様々な形態の筋痙攣の治療に役立ったという言い伝えも多い。言い伝えにはいずれも、しっかりした科学的根拠がある。」

「大麻は鬱病や不安症、睡眠障害の治療薬として推奨されてきた。西洋医学でも大麻の利用法として最初に推奨されたのが鬱病や内因性鬱病(重症型の鬱病)の治療で、現在の抗鬱剤が開発される以前、20世紀半ばまでは実際にこうした目的で大麻が使用されていた。」

「一部の科学者は大麻が有害であることを証明しようという道徳的方針のもとに研究を行っている。おおげさな警告が発せられ、大麻は染色体異常やインポテンツ、不妊、呼吸器疾患、免疫系反応の抑圧、人格変化、また永続的な脳損傷をもたらすきわめて危険な薬剤だと吹聴された。こうした警告のほとんどはその後まやかしであることがわかったが、ホリスターによるバランスのとれた論評(1986、1998)やL,ズィマーおよびJ.P.モーガンによる愉快な著作『マリファナの神話、マリファナの事実』(1997)では、これらの警告の多くが次々と効果的に論駁されていった顛末が記されている。」

「テトラヒドロカンナビノール(THC)はきわめて安全な薬剤である。実験動物(ラット、マウス、イヌ、サル)は最大1000mg/kgまでの忍容性をもつ。これは体重70kgの人間がTHCを70g服用した場合に相当し、ハイ(精神的高揚)を引き起こすために必要な容量のおよそ5000倍である。大麻の不法使用は広く行われているが、大麻の過量摂取で死亡した例はほんのわずかしかない。英国では、政府統計で1993年から95年までの間に大麻による死亡例が5件挙げられているが、くわしく事情を調べると、いずれも嘔吐物が喉に詰まったことが原因で、大麻に直接起因するものではない(英上院報告1998)。ほかの一般的な娯楽用薬物と比較すると、この統計は際立ってくる。英国では毎年、アルコールによる死亡者が10万人以上、タバコに起因した死亡者が少なくともこれと同数だけ発生している」

「どんな基準に照らし合わせても、THCは急性効果、長期的効果の両面で、きわめて安全な薬剤だと考えなくてはならない」

「動物実験から得られたデータは人間用薬剤としてのTHCの認可を正当化するに十分であり、実際に米国食品医薬品局(FDA)はTHCについて、特定の適応症に限定したかたちで認可を下している。」

「以下のような点の論争については、もはや終止符を打つべきだろう。

1.大麻はいくつかの報告が指摘しているような、動物の脳への構造的損傷をもたらすことはいっさいなく、服用をやめたあとに残る若干の認識機能の障害を除いては、人間の脳に長期的損傷をもたらすという証拠はない。

2.多量の大麻やTHCは動物の免疫機能を抑圧する場合があるが、大麻が人間の免疫機能に著しい損傷をもたらすという証拠はない。

3.多量の大麻やTHCは動物の性ホルモンの分泌を抑制するが、人間では男性の場合にも女性の場合にも、大麻が受胎能力や性機能に損傷をもたらすという証拠はない。

4.大麻の使用が染色体異常につながりうるという証拠はあるが、こうした変化はほかの一般的な薬剤(例えばタバコやアルコール)の場合に見られる変化と何ら違いはなく、生殖にかかわる生殖細胞には変化は見られない。こうした変化に臨床的な意味があるものとは思えない。」

「大麻使用と長期的な精神疾患との間の因果関係は、ほとんどの人間にとっては無縁だと考えてよさそうである。大麻の使用が分裂病を引き起こすとすれば、西洋で過去30年間にこの疾患の患者数が大幅に増加していなければならない。」

「習慣的にマリファナを吸う者はTHC含有量の高いマリファナ煙草を使うことによって健康上の危険を小さくすることができるといえそうだ。」

「平均して19年間、習慣的にマリファナを吸引した被験者の場合、一般の人たちに比べて喘息や気腫の罹患率が低いことがわかったのである。カリフォルニアのカイザー常設健康管理協会では、毎日マリファナを吸うがタバコは吸わない452名と、両方ともまったく吸わない450名を丹念に比較した結果、マリファナ吸引者では呼吸器疾患で外来患者として通院する危険の増加率が低く抑えられている。」

「テトラヒドロカンナビロールには発がん性はないものと思われる」

「がんの化学療法にともなう疾患の治療や、食欲減退やエイズの消耗症候群を抑えるための使用については、マリファナの効用について厳密な科学的証拠がある。」

「大麻の活性成分であるTHCの安全性は高い。短期的に見ても長期的に見ても毒性はきわめて低い。」

「患者によっては大麻の抗不安効果がプラスに働くのである。」

「エイズや癌、多発性硬化症に苦しむ患者たちは、これらの疾患ゆえに推定寿命がきわめて短くなっており、こうした患者にとって吸引マリファナによる長期的な健康上のリスクはもはや二義的なものにすぎないというのも尤もな意見である。既存の薬を使っても何ら効果がなく、担当医師がマリファナに効ありと認めた場合、どうして法律がしゃしゃり出る必要があろう。1998年、英上院・科学技術委員会はこうした恩情によるマリファナの考え方をとり、医師が患者を特定して処方できるよう、大麻の等級づけを改めることを勧告している。同報告では次のように述べられている

法律を変え、大麻の医療目的での利用を合法化するよう我々が勧告する主な理由は、恩情にもとづくものである。大麻の非合法の医療利用はいたって広範に行われている。それは時に黙認され、保健専門家によって奨励される場合すらある。だがそれでも尚、大麻を非合法で使う患者、そして一部のケースではその介護人までもが、刑事訴訟にともなうあらゆる苦しみを受け、重い刑罰を科される危険にさらされているのである。」

「大麻はヒンズー教やゾロアスター教、ラスタ主義、仏教、道教、スーフィズムだけでなく、アフリカのダッガ信仰(ダッガは大麻のこと)やエチオピアのコプト教など、多くの宗教で聖体として使われている。アルコールと違い、大麻はコーランでもとくに禁忌となっていないため、多くのイスラム国でアルコール代わりに使われる傾向がある。」

「ヒンズー社会ではアルコールは禁忌となっているため一般に見下される傾向があるが、大麻の使用は社会的に是認されている。」

「チベットでは、大麻は一部の仏教行事では重大な役割を担っている。インドの伝説や書物によれば、シッダールタ(釈迦の別名)は紀元前5世紀に真理を告げ、釈迦となる直前の6年間、もっぱら大麻草とその種だけを使い、食べていたという。」

「大麻の長期的使用は肉体的・精神的・道徳的な退行につながらず、継続的に使用した場合でも何ら永続的な有害効果は認められない。」

「最初の大麻禁止法はその使用が犯罪行為につながるという考え方に基づくものだったが、その後、この考え方は誤っていることがわかり、もはや理屈としても通用しない。大麻に絡んでわれわれが現在かかえる問題の多くはは1920代〜30年代にかけて大麻を等級Tの麻薬に規定した性急な政策と、この規定がその後、チャンスがあったにもかかわらず変えられなかったことに起因している。」

さらに近年は下記のような報道・報告がある。

(以下、大麻堂 http://www.taimado.comのホームページから引用)

「ドイツで進む大麻解禁の動き(毎日新聞1994年4月30日)
「ドイツの連邦憲法裁判所は28日、販売目的ではないマリファナとハシシュを少量なら使用しても罪に問わない」とする判決を下した。
 これに対し政府は、「 判決は大麻から作られる薬物の使用を完全に認めたわけではない」と国民に自制を求めている。「健康を害するたばこやアルコール飲料が法的に認められているのに、マリファナなどの使用が許されないのはおかしい」という訴えを8人の裁判官が審議。判決ではマリファナなどの使用禁止を定めた薬物禁止法の憲法上の正当性は認めたが、警察などの取り締まり当局が少量の使用を見逃してもさしつかえないとの判断をくだした。

「ドイツで大麻販売解禁の動き(1997年1月13日、時事通信ニュース速報)
 ドイツ北部のシュレスウィッヒ・ホルシュタイン州が、ハシシュなど大麻系の麻薬の薬局販売を解禁する方針を決めた。害が少ないとされる大麻と、ヘロインなどの市場とを分離し、大麻常習者がより強い麻薬に進まないようねらったものだが、乱用者が増加するとの批判も強く、実現には困難が予想される。
 同州のモー ザー保健相がこのほど独紙に語った具体案によると、販売対象は16歳以上とし、当面は三郡で試験的に行う。コード番号だけが書かれたチップカードを提示すれば、1日5グラムまで薬局で購入することができる。価格は警察当局や専門家で構成する委員会で決定するという。薬局販売の解禁には、最終的に連邦薬物医薬品研究所の特別許可が必要で、同州は今月中にも申請、同研究所はドイツ初の事例について、約半年かけて審査する予定。

「マリファナの医療用使用で法案可決(96年11月6日 読売新聞ニュース速報)
 1996年11月5日、マリファナの「医療用使用」を認める法案が、米カリフォルニア、アリゾナ両州で、住民投票の結果、賛成多数で可決された。米国ではここ数年、エイズや癌患者の間で「食欲を促し、痛みや不快感を和らげる」とマリファナの合法使用を求める動きが拡がっている。しかし、国際麻薬条約で規制されているマリファナの一部合法化を認める法案成立に、ホワイトハウスのバリー麻薬政策室長は「連邦法に反する」として、患者にマリファナをすすめた医師を逮捕する方針を明らかにしている。
 可決されたカリフォルニア州の法案は、患者とその世話をする人たちが、医師の薦めに基づいてマリファナを栽培・所持・使用した場合、刑法上例外扱いするというもの。またアリゾナ州の法案は、マリファナのほかコカイン、LSDなども含めて医師の処方があれば、治療用として使用できるという内容だ。カリフォルニア州の住民投票では、賛成56%、反対44%だった。
 住民投票は住民が一定数の署名を集めて法案を提案、賛成多数なら州議会の議決や知事の承認などなしにそのまま法律となる制度に基づくもので、医療関係者や患者らが中心になって、「一部合法化」の運動を展開してきた。カリフォルニア州の法案をめぐっては、投機家ジョージ・ソロス氏や前国務長官(日本の外務大臣にあたる)ジョージ・シュルツ氏など著名人も賛意を示し、資金提供を含めて運動を支援してきた。
 これに対し、州警察協会、検察協会、麻薬取締官協会などからなる「麻薬のないカリフォルニアをめざす市民」は、「医療効果について科学的証拠はない。法案は密売業者を潤すだけ」と反対し、訴訟に持ち込むことを含め、対応を検討している。
 マリファナの医療効果については、米厚生省が2年前、「国立健康研究所が研究を続けてきたが、マリファナ吸引が現存する薬に勝る効果を示す結果はでていない」と結論づけたが、研究者の間には「国は真剣に研究に取り組んでいない」との批判もでていた。
 法案の可決について、国連の国際麻薬統制委員会事務局は「医療という名の乱用の可能性もあり、重大な関心を持って推移を見守りたい」と話している。

さらに、以下は大麻の個人使用の非犯罪化を求める市民団体カンナビスト
(http://www.cannabist.org/index.html)のホームページから引用。

「スイス政府がマリファナの非犯罪化を確約 1999年9月2日(スイス)
 政府高官がマリファナの使用と所持の非犯罪化を確約したことにより、スイスのマリファナ禁止法は過去のものとなりつつある。18歳未満の青少年については非合法のままになっている。
 スイス政府の調査では、15歳から35歳の年齢層の27%が大麻を使用していることがわかった。
 「我々は薬物に関する問題に対して常に他国をリードする革新的なアプローチを取ってきた」とスイス連邦保険省長官トーマス・ゼルトナーは語っている。
 「禁止法によって大麻の消費を防止することは不可能である」とスイス内務省は提案の中で述べている。「薬物消費の領域において現実的な立法処置を取ることを目指している」
 提案では、大麻が「健康に与える害は比較的少なく」、特定の環境の下では「医療効果もある」とも明示している。
 さらにスイス政府はコカインなどのハードドラッグの使用に対する刑事罰の廃止も示唆している。今年6月、中毒者に対して処方箋によるヘロインの供給を認める法律に有権者は賛成している。
 「マリファナ問題に関して、アメリカがどんどん孤立していくのには驚かされる」とNORML財団代表(エグゼクティブ・ディレクター)アレン・サン・ピエールは述べている。「ヨーロッパ諸国やカナダが有意義な法改正、現代的な公序良俗の反映の起草に努めているのに対して、アメリカはこれまでにも増して、予算と『3つのP』すなわち警察(police)、検察官(prosecutor)、刑務所(prison)の権力の拡大に頼ろうとしている」
(出典:NORML News Archives)

「オーストラリアでマリファナの非犯罪化が進む  1999年11月4日(キャンベラ、オーストラリア)
 オーストラリアではマリファナの法改正が強く支持されており、マリファナの個人使用の非犯罪化に向けて着実に前進している。
 オーストラリアにおける最近の調査では、国民の約75%がマリファナの個人使用の非犯罪化を支持している。また、70%は禁固刑よりも治療を望んでいる。
 各州の指導者たちもこれに応えている。クイーンズランド州では州政府首相ピーター・ビーティーが、刑事訴追を回避できるようにマリファナの個人使用(500グラム以内)を認めるよう提案している。500グラム以下の所持が発覚した場合、使用者は更生指導の対象となる。
 そのほかの州や準州でも同様の案が既に認められている。現在のところ、サウスオーストラリア州がマリファナのプラント3本以内を認めており、ノーザンテリトリーはプラント2本または50グラム、オーストラリアキャピタルテリトリーは25グラム、ヴィクトリア州とタスマニア州は50グラム、ニューサウスウェールズ州では15グラム以内の制限がある。
 ヴィクトリア州では保健大臣ジョン・スウェイツが、政府はマリファナの個人使用の非犯罪化をさらに推し進める意向があると述べている。スウェイツの案では、公共の場でのマリファナ喫煙は100ドルの罰金の対象となる。
 「政府機関によるさまざまな調査、報告書、委員会がマリファナの法改正を支持してきたにもかかわらず、米国政府からの強い圧力によってオーストラリアは約30年間にわたりマリファナの法的地位を変えることに抵抗してきた」とNORML財団代表(エグゼクティブ・ディレクター)アレン・サン・ピエールは語っている。「しかし、こうした抵抗も遂に砕け散ろうとしている」
(出典:NORML News Archives)

「イギリスの警察官がマリファナに対して寛大な姿勢を示す  1999年11月30日(ロンドン、イギリス)
 最近行われたブリストル大学の調査で、イギリスの警察官がマリファナを無害とみなしていることがわかった。
 11種類の薬物を常用性の高い順に並べるように依頼された95人の警察官は、コーヒーに次いでマリファナを最も常用性が低いとみなした。クラック、ヘロイン、コカイン、タバコ、アルコールの5つが常用性の高い物質として上位を占めた。
 有害性については、マリファナは10番目(11種のうち)にランクされ、コーヒーより有害だがアルコールよりは無害という評価を得た。クラック、ヘロイン、コカインの3種類が最も有害な物質と考えられている。
 次に、警察官は、家を訪問した際に家主が4本の大麻草を栽培しており、目の前に収穫されたマリファナがあった場合の対処方針について問われた。警察官の3分の2は、これをありふれたケースとみなし、家主を逮捕しないと述べた。間違いなく起訴すると答えたのは僅か11%だった。10人中9人は、これをドラッグ事件として重要な問題ではないと考えている。
 「マリファナはハード・ドラッグとひとまとめに同じカテゴリーに分類されてしまうことが多々ある」とNORML出版ディレクター、スコット・コルビンは語っている。「イギリスの警察官がマリファナの犯罪訴追手続きに対して理性あるアプローチを取っていることを知り、爽快な気分だ」。
(出典:NORML News Archives)

「THCが脳腫瘍を根絶する可能性が研究によって示される  2000年3月2日(マドリード、スペイン)
 Complutense大学とAutonoma大学の科学者は、カンナビノイド受容体で作用する物質が、治療を受けたラットのうち三分の一の脳腫瘍(神経膠腫)を根絶し、残りの三分の一のラットの寿命を引き延ばしたことを発見した。
 マニュエル・グスマンの指揮のもとで行われた実験では、カンナビノイドがセラミドと呼ばれる第二メッセンジャー・タンパク質と細胞内情報伝達カスケードによってプログラム細胞死(アポトーシス)を誘発し、神経膠腫細胞を死滅させることを示唆している。
 グスマンはNature Medicine誌3月号で公開された実験について、試したのは極少量のテトラヒドロカンナビノール(THC)であり、しかもラットが死にかけた段階で投与したと述べている。もっと早い時点でTHCを与えていたら、より効果があっただろうとグスマンは予測している。
 グスマンは一年以内に人体を使った研究に着手可能となることを期待している。「我々は著しい発育阻止作用を目撃した」とグスマンは語っている。
 「神経膠腫の治療に効果があるとしたら、これはとてもエキサイティングな発見だ」とハーバード大学教授レスター・グリンスプーン医学博士は語っている。「もし、何らかの裏付けが得られたとしたら、まさに驚くべきできごとと言える。ただし、人体に対する効果については慎重に判断しなければならない」

「マリファナが多発性硬化症を抑制  2000年3月9日(ロンドン、イギリス)
 マリファナが多発性硬化症の抑制に関わっていることが、ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジの研究員により発見された。
 デービッド・ベイカーの指揮のもとに行われた研究では、多発性硬化症の動物自己免疫モデルである慢性アレルギー性脳脊髄炎を病んだマウスを調査し、合成テトラヒドロカンナビノール(THC)が震えや痙攣を減少させ、マウスの症状を改善させたことが示されている。マウスに注入された物質は神経細胞の表面にあるカンナビノイド受容体を活性化した。
 人体に対する研究はまだ行われていないが、この最新の研究結果は有望である。
 「この結果は、カナビスがこうした苦痛を伴う症状を抑制するのに役立つという多発性硬化症患者からの事例報告を裏付けるものだ」と本研究の著者の一人、グレートブリテン-北アイルランド多発性硬化症協会の主席研究員ローナ・レイワードは語っている。
 「この研究結果は嗜好目的でマリファナを使っている多発性硬化症患者にとってたいへん意味のあるものだ」と多発性硬化症専門医デニス・ペトロは述べている。
(出典:NORML News Archives)

「ワシントン州民主党がマリファナ合法化を政綱に盛り込む   2000年6月15日(スポーカン、ワシントン州)
 ワシントン州民主党は先週の州党大会でマリファナの完全な合法化を求める決議案を採択した。
 「もし本気で人々を活性化したいのであれば、彼らの関心事に対して自由を認めるべきだ」と州民主党議長ポール・ベレントは語っている。
 選挙政綱では、喫茶店、バー、州の経営する酒屋などで21歳以上の成人にマリファナの販売を認めるよう要求している。売り上げは課税対象となり、「保健や人間生活の必要物の充足に使われる」。民主党はまた、最大で2本のマリファナ草と1オンス〔28.35g〕の乾燥マリファナを個人使用目的で所持する権利を支持している。
 もう一つの政綱項目では、高い安全性が要求される職場以外でのドラッグ検査を止めるよう求めている。
 マリファナ関連の政綱項目はワシントン・ヘンプ教育ネットワークのティモシー・クローリーによって提出された。
 「長きにわたり革新的な環境でありつづけたワシントン州において、民主党がこのような案を政綱に採用したことに満足している」とワシントンNORML代表ドミニク・ホールデンは語っている。「この問題は州の一般大衆の関心事であり、多くの草の根運動が行われてきた。1998年には医療マリファナの圧倒的勝利という形で有権者の声を聞いているので、民主党がマリファナを非犯罪化しようというのも納得のいく話だ」。
(出典:NORML News Archives)

「ハワイ州知事の署名により医療マリファナ法案が立法化される 2000年6月15日(ホノルル、ハワイ州)
 6月14日、ベンジャミン・カエターノ知事(民主党)の署名により、医療用にマリファナを用いている重病患者を市や州の刑事訴追から守るための法案が法律として制定された。カエターノ知事は、ハワイ州が「太平洋沿岸地域の健康管理センター」となり、ほかの州もハワイ州の先例にならって医療マリファナを合法化するよう望んでいる。
 ハワイ州は議会で医療マリファナを合法化した最初の州となる。医療使用を合法化したほかの6つの州は、いずれも有権者の国民発案によるものだった。
 この法律は、がん、緑内障、HIV/エイズ、慢性あるいは衰弱性の疾患、多発性硬化症を含む激しい筋肉の痙攣、および保険局が認めたそのほかの病気に苦しむ患者に対して、医師の勧めがあった場合にマリファナの医療使用を認めるものである。
 患者は最大で3本の成熟したマリファナ草、未成熟のマリファナ草4本、および成熟したマリファナ草1本につき喫煙可能なマリファナ1オンス〔28.35g〕を所持できる。患者と主たる看護人は毎年1回、医療マリファナ活動家が関与しているハワイ州公安局への登録が義務付けられている。
 ハワイ州ドラッグ政策フォーラムの議長ドナルド・トッピングは、この法律はハワイ州にとって大きなステップだが、登録の問題など不十分な点もあると述べている。
 「登録は公安局ではなく保険局で行われるべきだと思う」とトッピングは語っている。
(出典:NORML News Archives)

「オランダ議会が合法的なマリファナ栽培を認める決議案を承認  2000年6月29日(アムステルダム、オランダ)
 オランダ議会は先週火曜日〔6月27日〕、合法的なマリファナ栽培を認める決議案を僅差で採択した。政府はこれによって85億ドル〔約8,500億円〕規模のビジネスと推測されている違法輸出を抑制できると期待している。
 投票の結果、73対72で議会は決議案を通過させた。本決議案は金曜日〔6月30日〕に開催される予定の内閣での審議を待つばかりとなっている。オランダのコーヒーショップではマリファナとハシシュを公に販売することが認められているが、マリファナの栽培は依然として犯罪である。
 「主たる目的の一つは犯罪を撲滅することだ」と決議案を起草した労働党議員サナシス・アポストロ−は述べている。「供給を管理することによって、誰が何を売り、それがどこに流れて行くのかを把握することができる」。
 「実行可能なマリファナ政策の策定という点において、オランダは明らかに先端を行っている」とNORML財団代表(エグゼクティブ・ディレクター)アレン・サン・ピエールは語っている。「選出された公務員がマリファナ使用者を罰しようと常に新しい手段を模索しているアメリカ合州国とは全くもって対照的だ」。
(出典:NORML News Archives)

「マリファナがHIV患者に対して安全であることが研究により証明される  2000年7月20日(サンフランシスコ、カリフォルニア州)
 HIV患者がマリファナを喫煙しても抗レトロウイルス薬の効果を阻害しないことが、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究者によって確認された。
 これは二重盲検法を使ってHIV患者に対するマリファナの効果を検査したアメリカで最初の研究である。この研究はドナルド・アブラハム医学博士の指揮の下、サンフランシスコ総合病院で行われ、67人の患者が参加した。患者のうち20人は1日に3回マリファナを喫煙し、21日間のあいだに体重が平均で7.7ポンド〔約3.5キロ〕増加した。25人はドロナビノール(合成THC)を経口摂取し、体重が平均7ポンド〔約3.2キロ〕増加した。これに対して、プラシーボを摂取した残りの21人は体重が平均2.9ポンド〔1.3キロ〕しか増えなかった。
 研究を開始した時点で検出不可能なHIV RNAレベルにあった患者36人については、研究期間を通じて変化は見られなかった。検出不可能な HIV RNAレベルにある患者26人にはレベルの低下が見られた。マリファナを喫煙または経口でドロナビノールを摂取した患者は、プラシーボを摂取した患者と比べて、HIV RNAレベルの低下率が若干大きかった。
 「マリファナやドロナビノールを使った患者の低下率が若干大きいという結果は興味深いが、統計的な優位差はなかった」とアダムスは語っている。「一方、3つのグループの間に統計的な違いが見られなかったのはよい知らせだ」。
 「実際にカナビスがエイズの減数症候群の治療に有効であり、患者に害を及ぼすことがないことなど、聞く耳を持つまともな臨床医なら誰でもとうの昔から知っている」とNORML財団議長のハーバード医学大学医学博士レスター・グリンスプーンは語っている。「騒ぎが一段落して、マリファナが米国薬局方に加えられれば、総目録の中でも最も毒性の少ない薬のひとつと見なされるようになるだろう」。
(出典:NORML News Archives)

「スイスがマリファナ所持の非犯罪化へ  2000年10月5日(ベルン、スイス)
 スイス政府は月曜日(10月2日)、マリファナの使用と所持を非犯罪化する方針を明らかにした。政府は来年にはマリファナの消費を認める法律を制定すると発表している。
 政府は国外からの「ドラッグ・ツーリスト」に対する懸念はあるものの、行政機関や地域自治会からの広範囲におよぶ支持を得たことにより、こうした決定を下すに至った。
 「意見を聞いた団体の3分の2がこの処置に賛成している」と内務相ルース・ドレイファスは語っている。
 スイス政府はマリファナ政策に関する特別委員会を設置し、マリファナの喫煙を認める最低年齢(16歳または18歳)やドラッグ濫用防止といった問題に関する助言を求めるとドレイファスは述べている。
 マリファナの栽培と販売については決着していないが、栽培者がある一定の制限を守っていれば、こうした行為も「法律的には違法ではあるが許容できる範囲だ」とドレイファスは述べている。
 「スイスが提案するマリファナ政策はオランダの25年来の政策と非常によく似たものだ」とNORML財団代表(エグゼクティブ・ディレクター)アレン・サン・ピエールは語っている。「米国政府も世界的なマリファナ法改正の動きに強行に反対する態度を考え直す時期に来ている。ヨーロッパやカナダが釣り合いのとれた分別のある法改正に向けて取り組んでいるというのに、米国がマリファナ禁止法の有用性の検討に抵抗しつづけているのは何とも不可解だ」
(出典:NORML News Archives)

「クリントン大統領がマリファナの非犯罪化を主張  2000年12月7日(ロサンゼルス、カリフォルニア州)
 今週行われたローリングストーン誌のインタビューの中で、クリントン大統領はマリファナ所持で国民を逮捕すべきでないという考えを語った。
 自らマリファナの喫煙経験があることを認めながらも肺には入れていないと主張しているクリントン大統領は、金曜日(12月8日)に発売される雑誌で「少量のマリファナは地域によって既に非犯罪化されており、そうあるべきだと思う」と述べている。
 さらに、「我々は禁固刑に関する政策全体を見直す必要がある。故意に他人を傷つける者は公共の安全を保証するために投獄しなければならない。また、重大事件に関与した者は、他者が同じことをしないよう思いとどまらせるために投獄する必要がある。しかし、多くはドラッグ問題あるいはアルコール問題を抱えているという理由で投獄され、そのほとんどは治療、教育、再就職の支援もなしに釈放されている」
 「クリントン大統領のおそろしく時期外れなマリファナ非犯罪化の支持にマリファナ法改正支持者は複雑な心境だ」とNORML財団代表(エグゼクティブ・ディレクター)アレン・サン・ピエールは語っている。「アメリカ合衆国大統領その人が責任ある成人のマリファナ喫煙者を逮捕すべきでないという長きにわたるNORMLの主張に賛成しているという喜ばしい事実がある。しかし、一方では、8年間におよぶクリントン政権の間にマリファナ逮捕者数が史上最多を数えるのを我々は見てきた---1992年から1999年の間にマリファナの罪で4,175,357人以上のアメリカ人が逮捕されている。NORMLはマリファナ戦争に終止符を打つなど、クリントン大統領がカーター元大統領と同じように大統領職完遂後の活動を社会公正問題に費やしてくれることを望んでいる」
 「はたして、上院議員に選出されたヒラリー・クリントン(ニューヨーク州、民主党)は夫のマリファナに対する新たな見解に賛成しているのだろうか?」とサン・ピエールは言及している。
(出典:NORML News Archives)

「最新の研究が「踏み石理論」の誤りを暴く 2001年2月1日(ワシントンDC)
 アメリカ公衆衛生ジャーナルに発表された最新の研究は、いわゆる「踏み石理論」に異議を唱え、1960年代以降に生まれた世代はベビーブームに生まれた世代よりもマリファナからハードドラッグの使用へと進む可能性が低いことを示唆している。
 この研究はロバート・ウッド・ジョンソン財団の薬物濫用政策調査プログラム(SAPRP)からの資金調達を得て実施されたものであり、国立開発研究所のアンドルー・ゴルーブ博士が指揮を取った。
 「第二次世界大戦以前に生まれた子供たちがハードドラッグに進むことなどほとんどなく、1960年代に生まれた子供たちと比較して、1970年代初頭以降に生まれた子供たちがマリファナからコカイン、クラック、ヘロインへと進む確率は半分程度であることを研究結果は示している」とゴルーブ博士は述べている。「最も重要な発見は、よりハードなドラッグに進む割合が今日においても減少しつづけている可能性が高いということだ」
 「全てのデータを注意深く分析した結果、踏み石現象はベビーブーム世代のドラッグ・サブカルチャーの特性を表してはいるものの、1990年代半ばにマリファナを使いはじめた世代には当てはまらない」とゴルーブ博士は続ける。
 本研究では、1979年から1997年までの間に実施された薬物濫用に関する全国世帯調査結果の100,000人を超える回答者から得られたデータを分析している。
 「マリファナと医学---科学的基準の評価」(Marijuana and Medicine: Assessing the Science Base)と題する1999年の医学研究所(IOM)の報告書は、マリファナの作用とその後の他の違法ドラッグの使用との間の因果関係を示す証拠はないと結論づけている。
(出典:NORML News Archives)

「マリファナがアルコールや疲労ほど運転に悪影響を与えないことが研究により明らかになる
2001年2月22日(クローソン、バークシア州、イギリス)

 最新のイギリスの輸送研究所(Transport Research Laboratory: TRL)の発見によると、マリファナはアルコールよりも運転能力に対する有害な影響が少ないようだ。この結果は、相対的に見て、マリファナによる陶酔は自動車事故の大きな原因にはならないという米国、オーストラリア、その他の地域で行われた調査結果を再確認するものである。
 この結果は決して意外なものではないとNORML財団代表(エグゼクティブ・ディレクター)アレン・サン・ピエールは述べている。「マリファナは精神運動能力に対して軽度の障害を及ぼすが、処方薬や機能を衰弱させ得るその他の合法的な要因など、一般的に安全性が認められているものと同等の範囲内であることが研究に次ぐ研究により明らかになっている。今回の最新の調査結果でも、やはり違いは見られなかった」
 TRLの調査では、15人の志願者に対して、マリファナの少量使用、大量使用、未使用時の運転能力を精巧な運転シミュレーターを使って試験した。本調査では、マリファナは車を精密に操縦する能力(「追跡能力」と呼ばれる)に対して悪影響を与えるが、反応時間およびその他の運転能力基準には影響しないことが確認された。さらに、被験者は能力が低下していることを認識しており、「ゆっくりと運転するなどして、困難な作業に対応しようと試みる」と言及している。
 著者らは「公道での安全性という意味では、カナビスによる影響下での運転が危険でないと結論づけることはできない。しかしながら、アルコールと比較すると、アルコールが運転に必要な高度な認識プロセスに与える影響、特に大量に消費している場合はマリファナよりも危険である」
 以前行われたTRLの同様の試験では、アルコールや断眠はマリファナよりも運転能力に悪影響を与えることが示されている。他国での試験でも同様の結果が出ている。1998年5月に行われた2,500人の事故で負傷した運転手に対するオーストラリアでの調査では、マリファナが事故の過失に「大きな影響」を与えないと報告している。米国家道路交通安全局による1992年と1993年の研究では、運転能力に対するマリファナの影響は「相対的に小さいもの」であることが確認されており、「実際のところ、マリファナが交通事故の原因になるという確証は得られていない」と結論づけている。
 最新のTRLの研究は、英国環境省、運輸省、自治省からの委託により実施された。
(出典:NORML News Archives)

「スイス政府がマリファナの使用、栽培、販売を認める考えを示す  2001年3月15日(ベルン、スイス)
 スイス政府当局者は最近、警察に対して少量のマリファナの栽培と販売を禁止する法律の施行中止を勧告する法案を承認した。こうした動きは、人口の四分の一がマリファナの使用経験があり、54%がマリファナ法の緩和を支持していることが全国的な世論調査によって明らかになったことがきっかけとなっている。
 「カナビスの使用とそれに至るまでの行為を非犯罪化することは、社会的現実と警察や裁判所の負担を減らすことを考慮した結果である」と7人のメンバで構成される連邦審議会の代表者は発言している。審議会のメンバは最初に国内の各州、政党、輸出委員会から意見を聞き、マリファナに対する議会の姿勢の緩和に強い支持を得た結果、法律の改正の提案に踏み切った。
 政府当局者によると、提案している政策は、オランダのコーヒーショップと同様の私設営業所で少量のマリファナを販売することも許可するという。1999年、スイス連邦ドラッグ問題審議会はマリファナの所持と使用を合法化し、「カナビスを合法的に購入可能とする」政策を実施するよう議会に勧告した。
 マリファナ法を緩和する今回の政府の決定は、先月、スイスのドラッグ政策が寛容すぎると非難した国連当局からの圧力を無視したものである。
 ヨーロッパではここ数年の間に、イタリア、オランダ、ポルトガル、スペインを含む七カ国がマリファナの所持と使用を禁止する刑法の施行を中止した。今年一月には、ベルギーがマリファナを非犯罪化している。ドイツの裁判所も少量のマリファナ所持を犯罪とすべきでないという判決を下しているが、連邦議会はまだこうした意向を反映する法律の改正を行っていない。
 「1970年代以降、ほとんどのヨーロッパ諸国は、使用者を逮捕して罰則を与えるというアメリカのマリファナ政策とは正反対の政策を実施してきた」とNORML財団代表(エグゼクティブ・ディレクター)アレン・サン・ピエールは述べている。「それにもかかわらず、アメリカ人がマリファナやその他の違法薬物を使う割合はヨーロッパ諸国のほぼ二倍となっている。アメリカの行政指導者もこうした経験から学ぶよう努力すべきだ」
(出典:NORML News Archives)

「下院議員が医療マリファナを合法化する法案を再提出   2001年4月3日(ワシントンDC)
 下院議員バーニー・フランク(民主党、マサチューセッツ州)は本日(4月3日)、医療マリファナの供給を可能とする法案を第107連邦議会に再提出した。この法案は「医療マリファナの州権に関する法律」と題されている。
「重病に苦しみ、マリファナによって苦痛を軽減している人々が犯罪者として扱われることなく、マリファナを使用可能とするべきだ」とフランク議員は発言している。「この法案は保守的な議員たちに、州権の問題に関して首尾一貫した立場を取りたいと思っているのか、連邦政府が各州の行政に対して口をはさむべきと考えているのかを選択する機会を与えている」
 法案の内容は次の通りである:
「規制薬物法あるいは...連邦食品医薬品化粧品法の各条項は、下記の行為を禁止または制限するものではない---医療目的に医師がマリファナを処方または勧めることが州の法律により認められている州において、
(A) 医師が医療目的に処方または勧める行為、または
(B) 個人が医師の処方または勧めによりマリファナを取得し、用いる行為、または
(C) 医師による医療目的での処方用に薬局がマリファナを取得し、保管する行為」
 この法案は連邦法のレベルで、マリファナをスケジュールIからスケジュールIIに再分類する。こうした再分類により、レクリエーション目的での規制を保ちつつ、マリファナの医療価値を正当に認め、医師が合法的に処方することが可能となる。
 1996年以降、医師の指導の下に重病患者が医療マリファナを所持または使用することを認める法律が、アラスカ、アリゾナ、カリフォルニア、コロラド、ハワイ、メイン、ネバダ、オレゴン、ワシントンの9州で施行されている。これらの法律は患者を州の刑事罰から保護しているが、連邦政府の起訴からは保護することはできず、また、合法的に医療マリファナを供給することも認められていない。本日、連邦議会に提出された法案は連邦法から患者を保護し、医療マリファナ供給システムの設置を望む州に対して合法的にその権利を認める内容となっている。
 NORML代表(エグゼクティブ・ディレクター)キース・ストロープは、この提案をマリファナを必要とする人々のための現代的な苦心作と呼んでいる。「歴史的に見て、連邦政府よりも有権者や州議会の方が医療マリファナ問題に関する理解を示してきた」とストロープは説明している。「この提案はこうした現実に目を向け、連邦政府が医薬品としてマリファナを入手可能とすることを望む州政府の邪魔になる障害を効果的に取り除いている」
 連邦レベルでのマリファナ事件の訴訟においても、患者や医療マリファナ供給者が「医療の必要性」を理由に正当防衛を主張することに対して最高裁判所が懐疑的な態度を見せていることから、これまでにも増して連邦法を改正する必要に迫られているとストロープは語っている。「数名の裁判官から出ている質問の内容から判断して、最高裁が医療の必要性による正当防衛を否認する可能性が高い。そういった意味で、この法案が通過するかどうかは非常に重要だ。これによって、医師の指導の下で医療マリファナを使用している患者が連邦レベルでも保護されるようになり、薬を必要とする患者のために各州が合法的にコントロールできる医療マリファナ供給システムを設置する機会が与えられる」
 フランク議員に加え、タミー・ボールドウィン(民主党、ウィスコンシン州)、アール・ブラムナウアー(民主党、オレゴン州)、ジョン・コンヤーズ(民主党、ミシシッピ州)、ピーター・デファジオ(民主党、オレゴン州)、ジェラルド・ナドラー(民主党、ニューヨーク州)、ジョン・オルバー(民主党、マサチューセッツ州)、ナンシー・ペロシ(民主党、カリフォルニア州)、ピート・スターク(民主党、カリフォルニア州)、リン・ウルジー(民主党、カリフォルニア州)の各議員がこの法案を支持している
(出典:NORML News Archives)

「看護婦協会ジャーナルが医療マリファナの合法的な入手の認可を支持  2001年5月3日(ニューヨーク、ニューヨーク州)
 マリファナは安全かつ有効な医薬品であり、看護婦は合法的な入手の認可を支持すべきであると米国看護婦協会(ANA)の公式ジャーナル、米国看護婦協会ジャーナル4月号の論評は主張している。
 「患者はカナビスを安全に使用するための専門的な指導を必要としており、また、合法かつ純度の高いものを入手可能としなければならない」と「医療カナビス:患者の擁護問題」と題された記事は結論づけている。アメリカ国内で約250万人の看護婦がこの出版物を購読している。
 「カナビスによる恩恵を得ている患者からの報告を聞いたり、カナビスに対する患者の反応を観察したことがあれば、誰もがその医療価値に気づくことだろう」と著者の登録看護婦メアリー・リン・マスリーは書いている。治療薬に関する歴史をひもといてみると、カナビスは世界中で治療薬として広く使われており、アメリカでは医学的な理由ではなく政治的理由により禁止された。安全性と健康面での潜在的効果を再検討してみれば、こうした治療法を禁止し続ける根拠がないことが解るだろう」
 ここ数年、看護婦協会は医療マリファナ法改正の支持を率直に述べるようになってきている。1994年以降、アラスカ、カリフォルニア、コロラド、ハワイ、ミシシッピ、ニューメキシコ、ニューヨーク、ノースカロライナ、ヴァージニア、ウィスコンシンの各州の看護婦協会は、いずれも患者による合法的な医療マリファナの入手の認可を支持する決議している。
(出典:NORML News Archives)

「マリファナスプレーが多発性硬化症患者の痛みとけいれんを緩和することが研究により確認される
 2001年5月3日(ロンドン、イギリス)

 最近イギリスのGW製薬が完了した第二相臨床試験の結果によると、マリファナ抽出薬の舌下への適用は多発性硬化症患者の痛み、筋肉のけいれん、膀胱障害を大きく緩和する。
 この研究には70人の被験者が参加した。患者はマリファナを飲み込まずに吸収できる舌下スプレーの形態で摂取した。患者は摂取後2分から3分で症状の改善が見られたとGW製薬スポークスマン、マーク・ロジャーソンは述べている。
 「マリファナスプレーは痛みを除去する」とロジャーソンはBloombergニュースに語っている。また、肢の制御が可能となり、「多発性硬化症患者の手足のコントロールを助け、安眠をもたらす」。さらに、医療マリファナにより患者の神経機能も改善したとロジャーソンは語っている。
 GW製薬は間もなく第三相臨床試験を開始することに加え、カナダでも予備試験を行う予定であると発表している。
 1999年の米医学研究所(IOM)の報告書は次のように結論づけている:「基礎的な動物実験は、...カンナビノイド受容体が脳の運動機能を制御する部位に多く存在し、カンナビノイドが動物および人間の運動機能や体位に影響を与えることを示している。こうした観測結果は、カンナビノイドには潜在的な抗痙攣性効果があるという見解と一致しており、...筋肉のけいれんに対するカンナビノイドの効果を見極めるための慎重に計画された臨床試験の実施を検討すべきである」
 GW製薬は1997年からイギリス内務省当局とともに研究用の医療マリファナを栽培しており、2003年までに医療マリファナスプレーの製品化を目指している。
(出典:NORML News Archives)

「世論調査の結果、医師の二人に一人がマリファナの処方を支持  2001年5月3日(ロサンゼルス、カリフォルニア州)
 アメリカ嗜癖医学会の年次総会で公表された全国調査の結果によると、アメリカの医師の半数近くが医薬品としてのマリファナの合法化を支持している。この調査は960人の医師を対象とし、1996年に州の有権者が医療目的でのマリファナ使用が合法化に賛成するようになってから初めて実施されたものである。
 プロヴィデンス・ロードアイランド病院の研究者は、薬物嗜癖精神医学、一般精神医学、産婦人科、家族医療、内科の5つの分野を専門とする医師に対して調査を行った。医師の36%は「治療薬としてマリファナを合法的に処方可能とすべき」と答えている。調査対象者の38%はそれに反対し、26%は見解を示さなかった。
 がんの専門医は、他の医師と比べて、医療マリファナの処方に賛成している比率が高いと研究者は報告している。
 この結果は「医師が最適な治療を受けていないと考えている患者が相当数存在する」ことを示しているとNORML役員リック・ドブリンは述べている。しかしながら、調査のサンプル数が少ないことを認めるとともに、調査対象に選ばれた5つの専門分野についても疑問視している。「今回選ばれた対象者は、医療マリファナを使用している患者との接触が必ずしも多いとは言えない」とドブリンは言及している。ドブリンは1990年に1,000人の臨床腫瘍学者を対象に実施された調査の共著者であり、ここでは48%が連邦法で認められれば患者にマリファナを処方すると回答している。
 また、イギリスの医療サイトMedix UKによる調査では、イギリスの医師の80%以上が、合法であれば、がんまたは多発性硬化症患者にマリファナを処方すると答えていると5月3日のBloombergニュースは報じている。
(出典:NORML News Archives)

「カナダ、イギリスの医師がドラッグ法改正を支持
---CMAJ誌はマリファナの非犯罪化を主張、Lancet誌はアメリカのドラッグ戦争を批判
  2001年5月17日(ワシントンDC)

 世界的な主要医療ジャーナル2誌が、北米のドラッグ法改正を支持する意向を示している。
 カナダ医師会ジャーナル(CMAJ)編集者は最新号で、マリファナのレクリエーション使用はもはや刑事罰として取り締まるべきではないという見解を述べている。逮捕されたり犯罪記録に残るという負の結果と比較して、マリファナによる健康面および社会的なリスクは非常に小さく、早急に法律を改正すべきであると議会に対応を求めている。
 CMAJ編集者は次のように書いている:
 「個人使用目的での少量の(マリファナの)所持は非犯罪化すべきである。適度な使用が健康にもたらす影響が最小限のものであることは、レクリエーション目的でマリファナを喫煙している150万人のカナダ人によって証明されている。実際の害は副次的にもたらされる法的および社会的影響である。カナダにおけるドラッグ関連の逮捕者数の約半分は少量のマリファナの単純所持によるものだ。...多くは実刑判決または罰金を科され、その結果、決して消すことのできない犯罪記録に残るという社会的タブーを負う。これは、単にポケットの中にモノをしのばせていたという理由で捕まったことがある人にとって、就職時や医学校の面接の際、『これまでに有罪判決を受けたことがありますか?』という質問一つで志望目標が立ち消えになってしまうことを意味する」
 編集者はまた、国内で約400,000人の患者が医療目的でマリファナを使用していることについて言及し、一定の条件下での患者によるマリファナの医療使用を体系化しようとする最近の保健衛生カナダ(Health Canada)の決定を称えている。編集者はカナダ医師会(マリファナの非犯罪化を支持しているが、医師の監視下での医療使用を支持するまでには至っていない)などの専門組織に対して、「患者から助言を求められる機会が急増している医師に対して、早急にガイドラインを設ける」よう強く求めている。CMAJは国内の50,000人の医師を代表している。
 司法の統計からは500,000ものカナダ人がマリファナ所持の犯罪記録を持つことが明らかになっている---これは一年間にマリファナ所持で逮捕されるアメリカ人の平均人数よりも若干少ない値である。CMAJの勧告は、マリファナ所持の刑法からの除外を支持しているカナダ警察署長協会の意見と一致している。
 イギリス最大の医学ジャーナルLancet誌5月31日号に掲載された別の編集記事では、ドラッグ禁止法の無益さと現在のアメリカの反ドラッグ政策についても批判している。「現在のアメリカの『ドラッグ戦争』を公衆衛生面から再考する」と題された記事の中で、編集者はアメリカの政治家に対して、「現在、法律の施行に充てられている多くのリソースを他のことに割り当て」、依存者の治療を拡大するなど危害を削減する政策を追求するよう提案している。
 編集者は次のように言及している:
 「1970年代以降、アメリカ合衆国はドラッグの流入を食い止めるという無駄な努力に膨大な費用を費やし、数十万人もの男女を刑務所に入れ、そのうちの多くは軽犯罪にしては長い刑期を科されている。さらに、効果の疑わしいメディアや学校での教育キャンペーンにも多大な資金を注ぎ込んでいる。
 これに対する代替策として、ドラッグ乱用を公衆衛生問題として扱うべきである。...これまでの研究結果は全て、治療と予防処置に基づいて対処した方が、現在よりも安いコストで多くの人々を助けることができると結論づけている。アメリカも倫理的な撲滅運動から脱却し、より成功する可能性が高く人道にかなった、ドラッグ乱用問題を公衆衛生面から捕らえるアプローチを採用すべき時期にきている」
 これらの編集記事はアメリカのドラッグ戦争に対して独自の批評を下したものだとNORML財団代表(エグゼクティブ・ディレクター)アレン・サン・ピエールは語っている。「世界的および科学的な見地からは、アメリカがマリファナ使用者に対して仕掛けている戦争には効果がなく、現存するさまざまな証拠によっても否定されている」

「カナダで医療マリファナが合法化---患者にマリファナの使用を認める最初の国となる
 2001年7月5日(オタワ、オンタリオ州、カナダ)

 カナダ政府は今週水曜日(7月4日)、患者に条件付きで医療目的でのマリファナの栽培と所持を認める法令を最終承認した。この新しいガイドラインは7月30日から実施される。
 保健大臣アラン・ロックは今回の決定について、「末期患者や衰弱性の疾患で苦しむカナダ人に医療目的でのマリファナの入手を可能とするために努力を続けてきた我々にとって、画期的な出来事だ。今回の判断は病気を病んでいるカナダ人の生活の質の向上に寄与するだろう」と述べている。
 カナダは医療マリファナの所持と使用を認める政策を国家レベルで採用した世界で初めての国となる。
 新しい法律の下では、末期患者や重病による様々な症状に苦しむ患者は、患者自身または特定の介護者に最大30日分のマリファナの所持を認める国家免許を申請できる。末期患者でない場合、他に有効な治療法がないことを証明する医師または医療専門家からの推薦状が必要となる。
 カナダ保健省はまた、エイズ患者の消耗性疾患に対するマリファナ喫煙の有効性を確認するための臨床試験に着手することに加え、押収したマリファナの種子を使って研究目的用にマリファナを栽培すると発表している。カナダ保健省はアメリカからのマリファナの種の輸入を計画していたが、アメリカ政府は輸出を拒否した。
 カナダ政府は12月までに臨床試験用に185キログラムのマリファナの収穫を期待している。
(出典:NORML News Archives)

「ポルトガルがマリファナとドラッグ所持を非犯罪化---EUは米国に背を向け、反ドラッグ政策の支持へ
 2001年7月5日(リスボン、ポルトガル)

 先週金曜日から施行が開始された新しい法律の下では、マリファナや他のドラッグ軽犯罪者は起訴されなくなる。昨年11月にポルトガル政府が採択した法改正は、欧州連合(EU)に見られるドラッグ使用や非暴力なドラッグ使用者に対する許容度拡大の傾向を反映し、危害削減政策を支持するものである。
 新しい法律の下では、警察は最大10日分のカナビスや麻薬の所持を刑事犯罪ではなく行政上の問題として取り締まることになる。ドラッグ違反者は医師、弁護士、ソーシャルワーカー(社会事業家)などから成る特別委員会によって、カウンセリングにまわすか治療にまわすべきかの判断を受ける。委員会は罰金を科すこともできる。
 尚、警察に見つかった大麻や麻薬は全て没収される。
 「EU全般、その中でも特にポルトガルは、賢明にもドラッグの使用を犯罪ではなく健康問題として取り組むことを選択した」とNORML代表(エグゼクティブ・ディレクター)キース・ストロープは語っている。「彼らの選択は米国や国連が傾倒する『ドラッグをやる者は皆、投獄』というアプローチに対する明確な批判である」
 当然ながら、犯罪としての取り扱いを基本とするドラッグ法を緩めることは使用者に誤ったメッセージを送ることになると主張している国連の反ドラッグ当局者からも直ぐに反応があった。「この法律は事実上、麻薬を使うことは問題ないと言っているようなものだ」と国連国際麻薬統制委員会(INCB:事務局ウィーン)副事務局長フジノ・アキラは述べている。さらに、「西ヨーロッパでは麻薬の使用や所持を非犯罪化し、常用者を患者として扱おうとする傾向が顕著に見られるが、...我々はこうした傾向に懸念を抱いている」
 この新しいポルトガルのモデルは、既にスペインやイタリアで実行されている非犯罪化政策と類似している。今年始めにベルギーとルクセンブルクはマリファナ喫煙者を刑事罰から免除する法改正を行った。現在、EUでマリファナの使用に刑事罰を科しているのはフィンランド、フランス、ギリシャ、スウェーデンの4カ国だけとなっている。
 ポルトガル政府は今回の新しい政策により、過去10年間に国内で急激に増加している麻薬常用者やHIV感染者の数が抑制されることを期待している。
(出典:NORML News Archives)

「イギリス警察はマリファナ違反者を取り締まり対象から外し、税関はハードドラッグに焦点を移す
 2001年7月12日(ロンドン、イギリス)

 政府は警察官と税関吏に対して、密輸業者や売人を含め、マリファナ違反者を標的標的から外すように指示した。こうした処置は近年のイギリスのドラッグ政策史上、最も急進的な方向転換と歓迎されている。
 日曜日(7月8日)のガーディアン紙に掲載された特別記事によると、内務省、外務省、国防省、国家犯罪特捜班、警察所長連合を含むイギリス政府および取締機関の代表者らが禁止政策の改正を支持した。
 「カナビスを見つけても押収しないということではない」と税関のシニアスポークスマンは記者に語っている。「ただし、クラスA(ハード)ドラッグに焦点を移すということは、カナビスの押収は副産物であり、それ自体が目的ではなくなる」
 昨年、約96,000人のイギリス人がマリファナ違反で逮捕されたとガーディアン紙は報告している。
 今回の発表はイギリス国内で大々的に進んでいる一連のドラッグ政策改正の最新結果である。ロンドン警視庁は最近、ロンドン南部ではマリファナ違反者を逮捕する代わりに口頭での警告に止めると発表している。それ以来、内務大臣デーヴィッド・ブランケット、前トーリー党副代表ピーター・リリー、辞職した刑務所検査官警部デーヴィッド・ラムスボサム爵、前ドラッグ政策閣僚マージョリー・モーラムなど数名の政府高官がマリファナの非犯罪化または合法化に対する支持を表明している。辞職した麻薬政策局長キース・ヘラウェルは最近、マリファナ政策に関する全国的な討論会を要求しており、マリファナが他の違法薬物への入口になるとはもはや信じていないと表明している。
 「多くのヨーロッパ諸国と同じように、イギリスもまた責任ある成人による使用を非犯罪化することが合理的なマリファナ政策であることに気づいたということだ」とNORML財団代表(エグゼクティブ・ディレクター)アレン・サン・ピエールは語っている。「アメリカの政策立案者も同じ教訓から学ぶよう努力すべきだ」
 先週日曜日のインディペンデント紙による世論調査では、イギリス人の約半数がマリファナの合法化を支持しており、16歳から34歳までの年齢層では過半数を超えている。この割合は1996年の同紙の調査結果から大きく変わっており、当時、合法化を支持していたのは僅か26%であった。
(出典:NORML News Archives)

「マリファナに治療効果があり、長期使用による有害作用もないことが研究により確認される
 2001年8月9日(ミズーラ、モンタナ州)

 最近行われた研究の初期結果によると、長期にわたり合法的に医療マリファナを喫煙している患者に対する一連の医学検査では、マリファナによる身体あるいは認識能力に対する損傷は見られなかった。検査を受けた4人の患者は全て食品医薬品局(FDA)/国立薬害研究所(NIDA)の治験新薬個別療法(IND)プログラムの参加者であり、米国政府が栽培したマリファナを10年以上にわたり日常的に喫煙している。
 「今回のデータは、1970年代にジャマイカ、コスタリカ、ギリシャで行われた長期使用に関する調査結果と合致している。これらの調査でもカナビス喫煙者の健康に大きな害は見られなかった。今回の研究は、信頼のおける配給元から得た一定の効力を持つ医薬品を使い続けている患者に対してカナビスの長期使用による影響を調査した初めての研究である」とこの研究を率いたイーサン・ルッソは語っている。
 ルッソは、4人の患者のうち3人の「肺機能に若干の変化」が観測されているが、いずれも軽微なものであり、悪性であるという事実もないと言及している。ルッソはこうした変化について、政府が栽培したマリファナが繊維質を多く含み、効力が弱いことが原因ではないかと疑っている。
 磁気共鳴映像法(MRI)脳シンチグラム、胸部エックス線、神経心理学試験、免疫検査、脳波検査を含むその他の検査でも、マリファナによる際立った副作用は見られなかった。
 これに加えて、本研究では様々な症状に対するマリファナの医療価値が確認されている。研究結果は、緑内障、慢性筋骨格痛、痙攣および吐き気、多発性硬化症による痙性麻痺の治療に有効であることを示しているという。4人の患者の健康状態はいずれも良好であり、医療カナビスを使用する前と比べて、医薬品の使用量も減っていると主張している。
 今回の研究は、INDプログラムで医療マリファナを使っている患者の健康状態を包括的に検査した最初の研究と言われている。INDプログラムは1976年から患者への医療マリファナの配給を開始したが、1992年に新規申請の受け付けを中止した。現在、本プログラムの参加者は7人生き残っているが、それぞれの健康状態については個別の医師により管理されている。食品医薬品局も国立薬害研究所もこれらの患者に対する追跡調査について発表したことはない。
 本研究は、MAPS(The Multidisciplinary Association for Psychedelic Studies)、ジョン・ギルモアとプレストン・パリッシュの二人の慈善家、ジマー・ファミリー財団などからの補助金を得て実施された。
(出典:NORML News Archives)

「ジャマイカ国家ガンジャ委員会がマリファナの非犯罪化を政府に勧告
 2001年8月23日(キングスタウン、ジャマイカ)

 ジャマイカ政府によって正式に任命された国家ガンジャ委員会は、数ヶ月間にわたってジャマイカ全島で実施された公開・非公開の公聴会の結論として、ジャマイカは成人によるガンジャ(=マリファナ)の個人使用および宗教目的の聖礼典〔サクラメント=洗礼、聖餐など『神の恩恵を信徒に与える儀式』〕における使用を非犯罪化すべきであると勧告した。「人々の間では万能薬あるいは精神性を高める物質としてマリファナの評価が確立しており、文化として根付いているとみなすべきである」と委員会のレポートは評している。
 P.J.パターソン首相は9ヶ月前にこの国家委員会を設立し、キングストンのウェスト・インディーズ大学社会科学部学部長であるバリー・チェヴァンス教授を、7人のメンバーから構成される委員会の委員長に任命している。
 通説として、ジャマイカの全人口260万人のうち20%から40%の人々がマリファナを喫煙していると考えられており、そのうちの多くは公然と使用している。マリファナをジャマイカに持ち込んだのは19世紀のインド人からの年季奉公人たちであると考えられているが、痛みの緩和のためにガンジャ・ティーとして飲まれたり、ラム酒に浸したマリファナを咳止めや風邪薬として用いられる等々、薬草としての使用がプランテーションの労働者たちの間で急速に広まった。しかし'60年代〜'70年代頃になると、ボブ・マーリーらレゲエ・ミュージシャンたちの台頭によって、それまで貧困層のものであったマリファナは広く一般の人々からも受け入れられるようになった。
 全てのオブザーバーがこの委員会答申レポートに満足しているという訳ではない。「ガンジャ関連の犯罪はここ何年にも渡って、裁判所の業務を滞らせる負荷となっており、また警察当局が本来取り組むべきクラックやコカイン等の深刻な犯罪にまで手が廻らない状況の原因ともなっている」と、与党「People's National Party(人民国民党)」幹部ポール・バーク氏は言う。「このレポートは、歓迎すべき第一歩ではある」としながらも、「これほど多くの人々がガンジャを使用している国家としては、あまりにも物足りないものだ。ガンジャは我々の文化の一部だ」とバーク氏は付け加えている。
 現行法の改正には議会の承認が必要となる。現時点でまだほとんどの議員たちがこのレポートに対してコメントしていないが、パターソン首相の側近閣僚の一人は「私としては、この勧告内容に従うことになると思う」と述べている。
 当然のことながら、ジャマイカの米国大使館スポークスマンは「米国としては、マリファナの非犯罪化には反対である」との声明を発表している。
(出典:NORML News Archives)

「USA Today紙/ギャラップ世論調査--- アメリカ国民によるマリファナ合法化の支持率が過去最高に
 2001年8月30日(ワシントンDC)

 先週〔8/3〜5〕実施された本年度のUSA Today紙/ギャラップ世論調査の結果によると、3人に1人を超えるアメリカ国民がマリファナの使用を合法化すべきと考えている。1995年度の結果では25%であったのが、今回は34%に上昇しており、これはギャラップ世論調査における過去最高の比率となっている。
 「アメリカの世論は〔全てのドラッグを無条件に根絶すべしとする、いわゆる〕"ドラッグ戦争"政策にはうんざりしており、もっと別な代替政策を模索している」と、NORML代表(エグゼクティブ・ディレクター)キース・ストロープは言う。「〔成果の少ない規制に要する〕コスト削減、危害の削減〔ドラッグ使用よりも取締による危害の方が大きいという意見〕、そして子供達を守るためにもアメリカ国民は以前にも増してマリファナの合法化を支持している」
 アメリカにおけるマリファナ合法化を支持する世論の急激な高まりは、最近のイギリスおよびカナダでの上昇気運に追随するものである。英国インディペンデント紙の日曜版で実施された7月の世論調査によれば、おおよそ半数のイギリス国民がマリファナ合法化を支持している --- 1996年の 26%から大きく増加。カナダでは現在、成人の47%がマリファナ合法化に賛成しており、1990年時点と比較して倍に増えている。両国政府はいずれも、最近になってマリファナの非犯罪化を科学的に研究するための委員会を設立している。
 USA Today紙/ギャラップ世論調査結果によれば、マリファナの合法化を支持する意見は18歳〜49歳の年齢層、米西海岸エリアの住民、無党派層の間で最も多かった。逆に合法化に反対する人々は中高年層、熱心なキリスト教信者、共和党支持者などの間で最も多く見られた。この世論調査には1,000人以上の成人に対して行われた。
(出典:NORML News Archives)

「研究報告--- 大麻に対する罰則の廃止は国際協定に違反しない  2001年8月30日(ロンドン、イギリス)
 ロンドンのシンクタンク〔各分野の専門家から成る総合研究組織〕が今週〔8/27の週〕発行した法的研究報告によると、各国政府は国際協定により規定されている責務に反することなく、大麻所持やその他の薬物事犯を非刑罰化することが可能であるという。
 この研究報告を発表したDrugScopeのロジャー・ハワード委員長(チーフ・エグゼクティヴ)は「国連協定によっていかなる法改正も制限されていると信じられてきたことが、長年にわたりドラッグ法改正の障害となっていた」と述べている。「この研究により、各国政府が国連協定によって厳格に縛られているという誤った認識が払拭され、各国がそれぞれ自身のドラッグ法の抜本的な近代化を図るために、国連協定の範囲内でもかなり柔軟な対応を取れるということが示された」
 この『ヨーロッパのドラッグ法 --- その政策の余地』と題された研究報告では、EUの6カ国、フランス、ドイツ、オランダ、イタリア、スペイン、スウェーデンのそれぞれ異なるドラッグ政策を調査・検討している。研究報告の作成者グループは、これら各国のドラッグ政策は国連のドラッグ関連協定に準拠してはいるものの、幾つかの政府はドラッグ所持や小規模の供給〔入手すること、購入など〕に対する処分から懲役刑を除外することに成功している点に着目した。国連協定のいかなる条項も加盟国に対して個人のドラッグ所持を規制する手段として刑法の適用を義務付けてはいないと報告書は結論づけている。
 研究報告グループは、政府は逮捕や拘束といった刑事的措置ではなく、むしろ罰金など科すことでドラッグ使用者を規制する方が望ましいとしている。これと同様の政策は、イタリア、ポルトガル、スペインなどで既に実施されている。
 NORML財団の法務責任者ドナ・シーアは「米国の11の州、及び多数の自治体は既に少量のマリファナを非犯罪化している。それが国家単位での非犯罪化であっても、国連協定に違反するものではない」と説明している。
(出典:NORML News Archives)

「研究報告--- マリファナの神経保護作用が確認される  2001年9月6日(ユトレヒト、オランダ)
 今週号のニューロサイエンス(神経科学)ジャーナル誌の中に発表された研究報告によれば、マリファナに含まれる幾つかの化合物は、頭部への急性外傷に際して脳細胞を保護する劇的な作用を示したという。研究者の報告によれば、脳内にTHCを注入されたラットは、「投与しなかった対象群と比べて、...神経組織の損傷が著しく減少した」。
 科学者らは「これらの結果は、カンナビノイド系には脳の神経変性を食い止める作用があることを証明するものだ」と結論づけている。
 NORML財団代表(エグゼクティヴ・ダイレクター)アレン・サン・ピエールは、この調査結果によってマリファナが脳に有害だという誤った俗説が払拭されるだろうと述べている。「この研究は、むしろ事実は全くその逆であることを示している」と彼は言う。
 『マリファナ』の著者でもある前NORML財団委員長レスター・グリンスプーン博士は、今回の研究は以前イスラエルや米国で実施され、カンナビノイドを効力の高い抗酸化物質と結論づけた研究結果が正しかったことを裏付けるものであると述べている。彼はさらに、喫煙により摂取した場合でも、おそらく同様の神経保護作用があるだろうと付け加えている。
 米国医学研究所(IOM)による1999年の報告書『医薬品としてのマリファナ --- 科学的根拠に基づく評価』の中で、著者らは「カンナビノイドの新しい用途として最も突出しているのが、外傷によって引き起こされる細胞死から神経組織を守る『神経保護物質』としての利用法である」と述べている。
(出典:NORML News Archives)

「医療用マリファナスプレーが臨床試験で80%の改善率を示す  2001年9月20日(アーリントン、ヴァージニア州)
 アメリカ鎮痛アカデミー(AAPM)の本年度の定例会で、あるロンドンの研究者が発表したデータによれば、英国での研究試験に参加した多発性硬化症患者および脊髄を病む患者の80%近いケースでマリファナ抽出物による改善が見られたという。
 「実に不思議なことだが、カナビスと人類の長い進化の歴史を経た結果として、この『奇跡の医薬品』が生まれた」GW製薬の会長(チェアマン)ジェフリー・ガイは、研究発表のキーノートスピーチでこのように述べている。マリファナの栽培および医療マリファナの臨床試験を実施するための免許を取得しているロンドンの製薬会社、GW製薬では現在、幾つかの医療用カナビス抽出薬の試験評価を行っており、プラセボを使った二重盲検法による無作為化管理下試験で異なる品種のカナビスの品質、安全性、効力などを評価している。この試験では、被験者はカナビス抽出薬を舌下スプレーとして自己投与する形で摂取している。
 ガイ会長によれば、GW製薬でもっとも最近実施された臨床試験に参加した53人の患者のうち、41人〔=77.3%〕にカナビスの「臨床的にみて顕著な治療効果」が認められた---痛み、痙攣、膀胱の疾患、震えが緩和されたことに加え、アヘン薬〔麻酔薬〕の使用が50%削減された。ガイ会長は、今回の実験に参加した患者の多くが「これまで治療が難しいと考えられてきた病状」による苦痛から解放されたという点において「非常に有望である」とこの第一次結果を評価している。
 ガイ会長は、改善の見られた41人の患者全員が、臨床試験終了後も継続して長期的に医療用カナビス抽出薬を使用することになったと語った。最近になって、英国医薬局(MCA)--- 米国の食品医薬品局(FDA)に相当 --- は、GW製薬の医療用カナビス抽出薬の安全性を認めるとともに、GW製薬が患者に継続的に投与可能な期間をこれまでの12ヶ月から24ヶ月に延長した。
 GW製薬では今秋、英国とカナダにおいて、慢性の痛みに対するカンナビノイド系の治療効果に関する連続的な第三相試験〔多数の患者を対象とした効果と安全性の確認、フェーズIII〕の実施を予定している。なお、現時点において、GW製薬が米国内で臨床試験を実施できる目処は立っていない。
 本年度のAAPM定例会ではガイ会長の他にも、「医療カナビスジャーナル」編集長イーサン・ルッソ、「ペイシェンツ・アウト・オブ・タイム」〔『時間の残り少ない患者』、死期の迫った患者の緩和ケア療法におけるマリファナ使用を訴える非営利団体〕の創立メンバーの一人マリー・リン・マーサー、「コモンセンス・フォー・ドラッグ・ポリシー」〔米国ドラッグ政策の見直し/適正化を訴える非営利団体〕代表(エグゼクティヴ・ディレクター)ケヴィン・ジース、1999年のIOMレポートの作成メンバーの一人である米国医薬研究所(IOM)研究員ジャネット・ジョイらが、医療マリファナに関する発表を行った。
(出典:NORML News Archives)

「研究結果---大麻の長期喫煙者に対する認知機能への影響は見られない  2001年10月18日(ボストン、マサチューセッツ州、米国)
 米国医師会刊行の精神医学アーカイヴ10月号に掲載された調査結果によると、長期マリファナ喫煙者(試験前の一週間以上は喫煙を中断)に対する認知機能テストの成績は、非喫煙者のそれと比較して、実質的な差が認められなかった。
 調査を実施した研究者グループによれば、長期にわたって日常的にマリファナを喫煙してきた被験者群に対する「10回からなる一連の神経心理学のテストの結果、(生涯を通じてマリファナ喫煙の経験が50回以下の)対照群と比較して、殆ど顕著な差が見られなかった」。かつてのヘビーユーザでテスト実施前の3ヶ月間は殆どあるいは全くマリファナを吸わなかった被験者群もまた、テスト期間中のどのテスト結果を対照群と比較しても特に顕著な差は見られなかった。
 ヘビースモーカーの被験者については、使用を中断してから7日目までは、単語の羅列を記憶するテストの結果が対照群より劣っていたと研究者グループは指摘している。
 ジョン・ホプキンス大学の研究グループによって以前実施された長期マリファナ喫煙者が受ける影響の可能性に関する調査では「1,318人の被験者群を15年間以上にわたり調査した結果、マリファナのヘビースモーカー、ライトスモーカー、あるいは全く吸わない人たちの間で認知機能の低下における顕著な差異は認められなかった」と結論づけられている。
 NORML理事会メンバーであり、「マリファナにまつわる神話と真実」の著者の一人でもあるジョン・P・モーガン医学博士は「たとえ長期間かつ日常的な使用であっても、マリファナの使用が記憶あるいは他の認知機能に悪影響を与えるという信頼に足る証拠はない。...過去30年間にわたる研究でも、重度のマリファナ常習者と全く吸わない者との比較ではせいぜい軽微な認知機能の差が認められるという程度のことしか解っておらず、それぞれの研究結果にはかなりのバラツキがある」とコメントしている。
 この研究結果の全文〔英語版〕は精神医学アーカイヴのウェブサイトで参照できる。
(出典:NORML News Archives)

「英国がマリファナ所持者の逮捕を廃止する方針案を発表---マリファナの法的な再分類を来春までに実施すると英国政府当局トップが言明  2001年10月25日(ロンドン、イギリス)
 過去30年間にわたるイギリスの大麻取締法の歴史において初の抜本的な緩和を記す動きとして、内務大臣デイヴィッド・ブランケットは火曜日(10/23)、「マリファナ所持は、もはや逮捕に相当する法律違反ではなくなる」と発表した。新しい政策の下では、マリファナはクラスC、いわゆる「ソフトドラッグ」に再分類され、抗うつ剤やステロイドなどと同じカテゴリーに入れられることになる。
 ブランケット大臣は「我々はハードドラッグの取り締まりに注力すべきであるが、現在のところ警察はその時間の大半をマリファナ違反者の処理に費やしている」と述べており、全英のドラッグ違反の逮捕件数の実に70%近くがマリファナ関連であると指摘している。「正当かつ常識的なやり方で、本当に深刻な害をもたらすドラッグに焦点を移す時期に来ている。こうした取り締まりの現状と、カナビスがヘロインやコカインなどのクラスAに分類されるドラッグとは明白に違うものだという事実を踏まえた上で、私は...カナビスを現在のクラスBからクラスCへと分類し直したいと考えている」
 法律上、厳密にはクラスCドラッグの所持も最大で2年の禁固刑となり得るが、現実にはイギリスでは少なくとも禁固5年以上に相当する法律違反しか逮捕の対象になっていない。それ故に、マリファナ喫煙者は今後、少量のマリファナ所持によって捕まった場合でも、口頭による警告や裁判所への呼び出し以上に深刻な法的処分を被ることはまず起こりえない。「警察は引き続き国民の行動に歯止めをかける強制力を持ち続けることに変わりはないが、マリファナ所持はもはやその対象ではなくなるということだ」とイギリス内務省のスポークスマンはガーディアン紙に対してコメントしている。
 NORML代表(エグゼクティヴ・ダイレクター)キース・ストローブはブランケット大臣の決定を称賛し、実現しつつあるイギリスの政策を「事実上の非犯罪化の実現だ」と称している。「分別ある成人のマリファナ喫煙者に対する逮捕や懲役刑を廃止することで、警察の人員や刑事裁判に要する労力をより深刻かつ暴力的な犯罪に向けることが可能となる」とストローブは述べている。
 英国の大麻取締法改正は立法府によって制定されるものではなく、行政命令という形で実現されるとBBCは報じている。この新法〔行政命令〕は来年(2002年)の早い時期には発効となる見通しだ。
 今週〔10/23〕の内務省の発表はヨーロッパ各国における一連のドラッグ政策改正の中で最新のものである。今年〔2001年〕の初めにはベルギー、ルクセンブルグ、ポルトガルの各国政府がマリファナの使用と所持を非犯罪化している。これとは対照的に、米国FBIは今週月曜〔10/22〕に、昨年度〔2000年〕のマリファナ違反による米国人逮捕者数は過去最高の734,498人であったことを明らかにしている。
 「マリファナ喫煙者を標的にし、非難するという選択を取っているアメリカ合衆国は急速に孤立しつつある。米国の議員らは、ヨーロッパの同盟各国の貴重な教訓から学ぶとことに留意したほうが賢明ではないか。そして、合理的かつ公正なマリファナ政策とは、分別ある成人による使用を非犯罪化することが基本であると認識すべきだろう」とストローブは語っている。
(出典:NORML News Archives)

「カナダ政府議会がマリファナの非犯罪化を検討
--- 議会の過半数はマリファナ喫煙による逮捕を撤廃する法案に賛成していると下院議員がコメント
 2001年11月8日(オタワ、オンタリオ州、カナダ)

 カナビス非犯罪化の連邦法案の発案者は水曜日、下院議会で第1回討論が開始されている法案に議員の過半数が支持していると公表した。
 マリファナに対する刑事罰則を罰金処分に置き換える法案C-344の発案者、下院議員のキース・マーティン議員(カナダ改革保守同盟)はこう語る。「恐ろしく長い間、取締当局と裁判所の人的資源は少量のマリファナ所持違反者の逮捕と起訴の手続きに無駄に費やされてきた。この無益な努力に我が国の人的資源が浪費されている現実に対して下院議会は沈黙を続け、警官達がもっと本当の犯罪を追求できる様に助力することを拒み続けてきた」
 かつて刑務所の看守や、医師として緊急治療室に勤務していた経歴を持つマーティン議員は、今回この法案C-344に対して議員の2/3が支持を表明していると語っている。マーティン議員が下院議員たちに説明した提案は以下のようなものである。「マリファナの所持が見つかった場合、所持者はその回数に応じて、初回は$200、2回目は$500、3回以上の違反の場合は$1,000の罰金を科せられる〔全てカナダドル、$1=\78程度〕。検挙者が法廷制度で裁かれて有罪判決を受けることはなくなるので、犯罪記録にも残らない」
 カナダ警察署長会やカナダ王立騎馬警察隊、カナダ医学会、キリスト教評議会などの警察団体や保健団体がマリファナ取締法の緩和を支持している。さらに、76パーセントのカナダ国民がマリファナ所持は刑事事犯とすべきでないという考えに同意している。
 カナダ下院議会は年明け早々にもこのマーティン議員の法案を採決する可能性がある。
(出典:NORML News Archives)

「研究結果--- マリファナ喫煙後の認識機能・行動の正確性には影響が出ない  2001年11月8日(ニューヨーク、ニューヨーク州、米国)
 神経生理薬理学の専門誌「Neuropsychopharmacology」11月号に掲載されたコロンビア大学の研究結果によると、慣れているユーザーの場合、マリファナ喫煙は反応時間・記憶・暗算などを含む複雑な認識機能テストの作業成果に対して、実質上ほとんど影響しないという。
 認識機能における柔軟性、論理的思考、あるいは暗算(能力)などのテストでは、マリファナ(の使用)によって課題を解くまでの時間が長くなったり、早とちりをするケースが増えるが、「正確さ」への影響は見られなかったと本研究は結論づけている。マリファナ摂取の即時的反応により精神運動や単純な認識機能の調査で「正確さ」に比較的軽度の減退が見られたことは、これまでの他の研究結果とも一致する。今回の研究結果はそれら過去の結果に対して、より複雑な認識機能においてはマリファナ喫煙の影響は軽微なものであることを示している。
 18人の被験者が、この3つのセッションからなる研究に参加した。それぞれのセッションの中で、被験者たちはまず反応時間、集中力、記憶、空間視覚の処理、論理的思考、柔軟性、および暗算など様々な領域にわたる、コンピュータを使った一連の認識機能テストを実施して基準値を得る。その後、被験者たちに0%〜3.9%のTHCを含むマリファナジョイントが2重盲検方式で投与され〔誰に何%のジョイントが渡されたか、渡した方も渡された方も判らない〕、その20分後に再度、認識機能テストを行う。
 この研究では、マリファナ喫煙後のテストで正確さについては変化が見られなかった。研究報告者は「今回の研究結果の総括として、...マリファナ喫煙によって認識機能に関する正確さに影響が見られなかったということは、日常的なヘビーユーザーであっても『DSM-IV、精神疾患の診察および分類マニュアル第4版』に記されているマリファナ中毒の従来の判定基準である「複雑な認識機能において減退が認められる」という要件を満たさないことになる」と結論付けている。
 今回の研究結果は、先に「精神医学アーカイヴ」10月号に掲載されたハーバード大学の研究者らが発表した「一週間以上使用を中断すると、マリファナの長期喫煙者が示す認識機能テストの結果は非喫煙者と同じレベルに戻る」という結論に続くものである。以前にボルティモアのジョン・ホプキンス大学の研究グループが発表したマリファナと認識能力に関する調査では、1,318人の被験者群を15年間以上にわたり調査した結果、マリファナのヘビースモーカー、ライトスモーカー、あるいは全く吸わない人たちの間で認識機能の低下における顕著な差異は認められなかったと結論づけられている。
(出典:NORML News Archives)

「西オーストラリア州政府がマリファナの非犯罪化を導入すると州首相が発表
 2001年11月27日(パース、オーストラリア)

 西オーストラリア州政府は本日、個人使用目的でのマリファナの所持と栽培を非犯罪化する法律制定に関する計画を発表した。
 ジェフ・ギャロップ州首相(労働党)は「州政府としては、取るに足らないマリファナユーザーたちに刑事犯の有罪判決という不名誉な烙印を押すべきではないという見解に同意する」と語った。ギャロップ州首相は、来年施行されるこの新しい法律の下では「個人使用目的での少量のカナビス所持は罰金の対象となり得るが、犯罪記録には残らない」と説明している。
 ギャロップ州首相によると新法施行までの期間、州政府は西オーストラリア州全域において25グラム以下の大麻所持あるいは2株までの大麻栽培を「刑事事件として扱わない警告システム」を導入するという。このようなシステムはかつて、西オーストラリア州の都市圏に限り実施されていた。
 近年では、実質的にオーストラリアの8つの州すべてにおいて、何らかの形でマリファナの軽微な違反に対する非犯罪化が導入されている。
(出典:NORML News Archives

「調査結果 --- カジュアルなドラッグの使用は有害性が低い  2002年3月28日(ロンドン、イギリス)
 ロンドンの外交政策センター(Foreign Policy Centre)のシンクタンクは、マリファナを含む薬物の使用者のうち、有害な影響を受けている者はほとんどいないとす)る報告書を発表した。レポートはFrom War to Work: Drug Treatment, Social Inclusion and Enterprise(戦争から仕事へ:ドラッグの治療・社会と企業への受け入れ)と題されており、ドラッグの取り締まりの焦点をカジュアルなドラッグユーザーから治療不能な麻薬依存者および特定の麻薬犯罪へシフトさせることを提案している。
 著者のロウェナ・ヤング(カライドスコープ麻薬治療所長)は、 「ドラッグ使用者の大半は深刻な問題を経験することなくドラッグを使用している」と言及している。報告書は、ほとんどの違法ドラッグ使用者はドラッグの使用が自制できなくなる前に自ら使用を絶つことができていることについて言及するとともに、「国家および国際レベルで、真に問題のある麻薬の使用と麻薬に関連した犯罪に専念し、問題に発展する可能性の低い嗜好品としてのドラッグ使用者に対しては、取り締まりを緩和する」ように取り締まり当局に対して勧告している。
 外交政策センターの発表の数日前には、イギリス国会の「ドラッグ誤用に関する国会協議委員会」(ACMD: Parliament's Advisory Council on the Misuse of Drugs)が、内務省が進めているマリファナを所持しても逮捕に至らないクラスに再分類する努力をサポートする報告書を公表した。さらに、内務省の委員会が公表を予定している報告書でも、マリファナ、場合によってはエクスタシーを含む他のドラッグに対しても同様の勧告がなされることが予想されている。この報告書は今年の晩春に公表される予定である。
(出典:NORML News Archives)

「研究結果--- 大麻の自動車運転能力への影響は微小  2002年3月28日(バークシャー、イギリス)
 イギリスとオーストラリアで最近実施された、2つの研究の結果、大麻が運動機能におよぼす影響はアルコールと比べても低く、ほとんど交通事故の原因になっていないことが確認された。
 イギリスの交通研究所(TRL:Transport Research Laboratory)により実施された研究では、大麻の影響下にある運転手の方が、アルコールの影響下にある運転手よりも高い運転能力を示す結果が得られた。研究員の報告によると、大麻は運転手が正確に車を操作できる能力に影響を与えるものの、運転手の反応速度やその他の運転能力を示す数値には影響を与えなかった。また、アルコールの影響下にある運転手とは異なり、大麻の影響下にある運転手は自らの運転能力の低下を自覚しており、慎重に運転することによって運転能力の低下を補おうと試みる傾向があることが明らかになった。
 約一年前に、同様の準備試験がTRLにより実施されたが、今回の試験は準備試験で得られた結果を肯定する結果となった。
 オーストラリアのUniversity of Adelaide(アデレード大学)臨床薬理学部による研究でも同様の結果が得られている。「アルコールは圧倒的に最大の交通事故の要因となっている。...一方、...大麻は交通事故の要因にはほとんどなっていない」という事実が確認された。また、交通事故による負傷者2,500人に対する過去の調査結果でも大麻が原因となっていたことがほとんどなかったことが明らかになっている。
 NORMLの財団エグゼクティブ・ディレクターのアレン・サン・ピエール氏は、イギリスとオーストラリアで得られたこれらの結果は特に驚くべきものではなく、「大麻が運動機能へ及ぼす影響は、処方薬や疲労をもたらす他の合法的な要因と同じレベルのものであるという我々の認識を肯定するものだ」と発言している。
(出典:NORML News Archives)

「カナダでのIQ調査結果--- 過去の大麻使用は知能に悪影響を及ぼさない 2002年4月4日(オワワ、オンタリオ州、カナダ)
 今週のカナダ医師会ジャーナルに掲載された調査結果によれば、マリファナの喫煙は、たとえそれが長期にわたるものであっても知能に害を及ぼさない。
 調査グループは、かつて平均して過去38週間に5,793本のジョイント〔≒1日に5本〕を吸い続け、現在では使用していない被験者群の知能指数(=IQ)に測定し得る悪影響が出ていないことを報告している。現在も1週間に5本以上のジョイントを吸い続けているヘビーユーザー群には僅かながらIQ値の減少が見られたが、それでも彼らのスコアは同年齢層の平均値を上回っていた。
 レポートの報告者はマリファナがIQに与える悪影響が軽微であることを「特筆すべきもの」と言及しており、「マリファナは知能全般に対して、長期にわたる悪影響を及ぼさないと結論づけられる」と書いている。
 過去に実施された、認知機能に対するマリファナ使用の影響を評価した調査でも同様の結論が出ている。最近では、米国の「精神医学ジャーナル」に掲載された研究結果によって、マリファナ喫煙を中断後一週間以上経過した被験者の認知機能テストのスコアとノンスモーカーのスコアの間には差異が見られないことが確認されている。さらに、1999年にアメリカ疫学ジャーナルが1,300人のボランティアを対象に行った調査では、過去15年間にわたるマリファナのヘビーユーザー、ライトユーザー、およびマリファナを全く使用しなかったノンユーザーの間で認知機能の低下に関する顕著な差異は見られなかった、と結論づけている。
(出典:NORML News Archives)

「英国下院がマリファナ再分類を支持--- マリファナの有害性に関する「誇張」を止めるべきと下院特別委員会がコメント  2002年5月23日(ロンドン、イギリス)
 昨日発表された内務省自治委員会による報告書の中で、英国下院議会はマリファナ所持を「逮捕をされ得る違反行為」の対象から外す具体案を承認した。この政策提案は、2001年10月の内務大臣デイヴィッド・ブランケットによる提言および今年3月に下院議会の薬物濫用防止委員会(ACMD)から出された要望に応えるものである。
 「我々は...マリファナをクラスBからCへ再分類する内務大臣の提案を支持する」というのが委員会の結論である。この計画では、「マリファナの所持はもはや『逮捕され得る違反行為』ではなくなる。すなわち、令状なしでの敷地内に侵入したり、捜索するといった逮捕に伴う様々な捜査上の強制力も発生し得ないことを意味する。また、警察にとっても、限られた時間と労力を他のより危険なドラッグへの対策に充てられるようになる」
 イギリスの法律では、違法薬物の中でクラスCが最も有害性が低いものとして分類されている。厳密にはクラスCの違法薬物の所持は最長で禁固2年の刑事罰となり得るが、イギリスでは禁固5年以上の刑事罰に相当する犯罪でなければ「逮捕され得る違反行為」にはならない。
 下院議員らによれば、今回のマリファナの再分類は、コカインやヘロインなどのハードドラッグとは違い、マリファナの健康へのリスクが最低限のものであるという事実を認めるものだという。「マリファナの有害性をことさらに誇張しても何ら得るものはない。むしろ逆に、こうした誇張によって、より有害なドラッグに関して我々が伝えたいメッセージの信憑性を落とすことになる」と英国下院は判断した。
 下院薬物濫用防止委員会は3月の時点でこれと同様の結論を出していた。「現在のマリファナの法的分類は、マリファナに内在する有害性およびマリファナと同じクラスBに分類されている他の薬物(アンフェタミン等)の害と比較して、明らかに不釣合いなものとなっている」
 下院議会は7月までに正式にマリファナをクラスCへと格下げする予定である。
 内務省自治委員会からの提言には今回のマリファナ再分類の他にも、マリファナを原料とする医薬品の使用の認可や、非営利目的のドラッグの供給および譲渡を起訴しないことなどが含まれている。
 自治委員会はまた国連に対して、現在の世界的な反ドラック協定の妥当性について再考し、「世界的なドラッグ問題のジレンマに対して真正面から取り組むために、合法化という選択肢も含めた」代替政策を検討するよう勧告している。
(出典:NORML News Archives)

「マリファナの非犯罪化以降ロンドンでの路上犯罪が半減  2002年5月30日(ロンドン、イギリス)
 南ロンドンでは、自治区の警察が軽微なマリファナ違反者に対する逮捕を止めて口頭による警告のみに留めるようになって以降、路上強奪や恐喝などの件数が50%近くも減少した。司法当局は昨年秋から、マリファナに関しては「口頭注意のみ」とすることで、警察の人的資源をもっと深刻な犯罪へと割り当てる方針を実行に移している。
 BBCの水曜日のレポートによれば、ランベス警察署の管轄内における路上強盗、恐喝の発生件数は昨年10月の916件に対して、今年4月は468件だった。加えて、今年に入ってからの路上強盗の発生件数は昨年比で18%減少しており、これは英国における路上犯罪としては最高の減少率となっている。
 英国の取締当局、警察、政治家たちは、今後マリファナの規制レベルを再分類し、マリファナ所持を逮捕され得る違反行為から除外することに公式に賛成を表明している。この変更(=再分類)は、7月には実施される予定である。
(出典:NORML News Archives)

「研究結果--- 妊婦によるマリファナ使用と神経行動的障害との間に関連は見られない
 2002年5月30日(デトロイト、ミシガン州、アメリカ)

 米国小児科学会(Pediatrics)により発表された研究では、妊婦によるマリファナの使用は、新生児の低出生時体重や認知障害との関連性がないことが明らかになった。
 本研究では、生後6.5ヶ月、12ヶ月、13ヶ月の新生児を対象に実施された一連の神経行動的試験の結果、妊娠中のマリファナ使用が、新生児の精神発達、反応時間、複雑な遊びや情報処理能力に悪影響を与えないことが報告されている。また、妊婦によるマリファナの使用が出生時体重や妊娠期間に悪影響をおよぼさないことも明らかになった。対照的に、妊婦によるアルコールの使用(週に約7杯)は認知能力の低下との関連が見られ、コカインの使用は出生時体重の低下と関連することが確認されている。
 今回の研究結果の著者は、「アルコールの影響とは対照的に、我々の発見は他の研究で得られている結果と同様に、妊婦によるマリファナ使用が新生児の成長や神経行動的悪影響を与えないことを示している」と結論づけている。
 妊婦によるマリファナ使用に関する過去の研究でも同様の結果が得られている。NORML財団の会長であり、『マリファナにまつわる神話と真実』の著者の一人でもある、ジョン・P・モルガン博士も「新生児、乳児、子供を対象とした研究では、出生前にマリファナにさらされることと、身体、発育、または認識機能への悪影響との間に一貫した関連性は見られない」と同書に記している。
 モルガン博士は、「妊娠中の女性にはあらゆるドラッグの使用を慎むようにアドバイスするのが賢明であるが、最新の科学的証拠の大勢はマリファナが人間の胎児に直接的な害を及ぼさないことを示している」と結論づけている。
 米国小児科学会の報告書の概要は下記からオンラインで参照可能:
http://www.pediatrics.org/cgi/content/abstract/109/5/815
(出典:NORML News Archives)

「カナダ法務大臣、マリファナの非犯罪化を呼び掛ける---「現行の規制は効果がみられない」
 2002年7月18日 (オタワ、オンタリオ州、カナダ)

 カナダ法務大臣マーティン・コーションは、マリファナの所持に対して科されている刑事罰を廃止する呼びかけを再開した。さらに彼自身もマリファナ喫煙の経験があり、非犯罪化を支持していると公表した。
 「現行の制度を見ても、マリファナを犯罪として扱い続けることはあまり効果的ではない」とコーション法相は語っている。さらに、カナダ警察が必要以上にマリファナ違反の取締りに時間と経費を費やしていることも付け足した。
 カナダでの薬物事件のうち、マリファナだけの所持違反が全体の3分の1以上を占めている。
 コーション法相は軽微な違反者に対して禁固刑や前科を与えないように、カナダのマリファナ取締法改正を勧告した。カナダ医師会、カナダ警察署長連合、カナダ教会協議会も法改正を支持している。また全国的に実施された世論調査の結果によると、カナダ国民4人のうち3人以上が非犯罪化に賛成しているという。
 カナダ上院規制薬物対策特別委員会が5月にまとめた予備報告書では、マリファナは比較的害が低く、社会の安全に対してほとんど悪影響を及ぼさないと結論付けられている。さらに、マリファナを刑事犯罪として取り扱う現行の取締法が、マリファナ使用の増減にほとんど影響を与えていないという傾向も示されている。特別委員会は下院議会においても発足しているが、上下院の特別委員会は年末までに、正式な報告書の発行を予定している。
(出典:NORML News Archives)

「研究結果---大麻の有効成分が睡眠時無呼吸症候群の改善に劇的な効果  2002年7月27日 (シカゴ、イリノイ州、アメリカ)
 米国睡眠薬アカデミーと睡眠研究協会が共同で刊行する学会誌『Sleep』に今月発表された研究報告によると、マリファナを原料とする医薬品が将来、睡眠時無呼吸症候群を含む睡眠障害の改善に役立つようになるかもしれない。
 睡眠時無呼吸症候群では睡眠中に呼吸が止まる無呼吸の状態が断続的に繰り返される症状が見られ、頭痛、高血圧、不整脈、心臓発作、脳卒中など数多くの深刻な病気と関連付けられている。
 イリノイ州立大学の『睡眠と通気障害センター』の研究員は、マリファナの有効成分であるTHCと内因性カンナビノイド(オレアミド)をラットに投与した結果、睡眠中の無呼吸が劇的に改善されることを発見した。報告書の著者は、幾つかのカンナビノイド類が睡眠中の自律神経系を安定させる重要な役割を担っている可能性があると結論付けた。
 マリファナとその成分には、睡眠を促進する効果があることが昔から知られている。過去の研究結果では、THCがメラトニンの分泌に関与することが明らかにされ、カンナビノイドCBD(カンナビジオール)が不眠症の治療に高い効果を発揮することも確認されている。
 『Sleep』誌に掲載された報告書の概要は下記からオンラインで参照可能:
http://www.journalsleep.org/citation/sleepdata.asp?citationid=2104.
(出典:NORML News Archives)

「大麻を合法化し、管理すべきだ---カナダ上院特別委員会の報告書から  2002年9月5日 (オタワ、オンタリオ州、カナダ)
 特別報告:大麻はアルコールやタバコより有害性が低い---許可を受けた上で、医薬品および嗜好品としてのマリファナ供給システムが必要。
 カナダ上院の規制薬物対策特別委員会のメンバーは満場一致で、医薬品および嗜好品としてのマリファナ所持および使用を、一定の規制を設けた上で認めるように連邦法を修正すべきであると議会に対して勧告するとともに、600ページにわたる報告書を昨日発表した。   
 「科学的な証拠は疑いの余地なく、大麻が実質的にはアルコールよりも害が少ないという事を示している。大麻はこれ以上犯罪として扱うのではなく、社会あるいは公衆衛生の問題として扱うべきである」特別委員会で2年越しの調査を指揮してきたピエール・クロード・ノーリン上院議員は言う。「大麻の個人使用は、個人が選択できるべきものであって、刑事罰の対象とすべきものではない。従って我々の達した結論は、非犯罪化の次にはワインやビールと同じようにドラッグのひとつとして、国が規制を設けた上で合法化すべきだというものである」
 これ以前にも幾つかの政府によって設置された委員会、たとえば米国の「マリファナと薬物の濫用に関する全国委員会(シェイファー委員会)」、あるいは「医療目的以外のドラッグ使用に関するカナダ政府調査委員会(ル・ダイン委員会)」などがマリファナの非犯罪化を勧告した事がある。いずれの勧告も使用と所持は刑事罰対象から外すべきであるが、販売については引き続き違法とすべきだ、というものであった。ところが今回のカナダ上院規制薬物対策特別委員会の場合、恐らく政府が召集した委員会のなかでは初めて完全な合法化を勧告している。
 委員会のレポートは「カナダ社会は既に、責任を伴う手段で大麻使用の規則を運用できるに足る状態になっているというのが私たちの意見である」と結論づけている。「我々がカナダ政府に対して勧告するのは、現在の規制薬物に関する法令を修正して刑事罰の免除規定を設けること、その規定において大麻の生産と販売を認可制にすること、16歳に達した者であれば大麻およびその製品を、課税販売許可証を交付された販売センターで買うことが出来るようにすることなどである」
 委員会はまた、個人使用のためのマリファナ生産に対しても同様の免除規定を設けること、現行法および過去の法律にもとづいて大麻所持により有罪判決を受けた者に対する恩赦適用を求めている。委員会の調査によればカナダの薬物事犯のうち半数以上がマリファナによるものだという。カナダ一般市民のうち30%はマリファナ使用経験があり、おおよそ50%の高校生が過去1年間のうちにマリファナを使用した事を認めている。「こうした若年層および若い成人による大麻使用の傾向を見る限り、現在の政策は効果がないという事を認めざるを得ない」とレポートは締め括っている。 
 医療目的でのマリファナ使用とその際の規則について、委員会はマリファナの吸引が慢性の体の痛み、多発性硬化症などを含む様々な病状に対して「明白な治療効果がある」と裁定した上で、カナダ保健省に対して医療マリファナの使用資格、マリファナの生産および販売に関する新たなルールを整備するよう勧告している。カナダは昨年、許可を受けた患者による医療マリファナの使用と栽培を合法化したが、マリファナ供給システムに関する規則を確立する公約については、履行していなかった。
 その他に委員会がレポートで言及している調査結果は以下:
マリファナはハードドラッグ使用へのゲートウェイではない。
---「大麻それ自体が他のドラッグ使用の原因になっていない。この点から我々はゲートウェイ理論を否定する」
マリファナの使用は犯罪行為を誘発しない。
---「大麻それ自体は非行や犯罪の原因にも、暴力行為の原因にもなっていない。」
マリファナユーザーが依存に陥る可能性はほとんどない。
---「大多数のユーザーには依存に陥る危険性の兆候が見られない....マリファナ経験者のうち大多数は、その後に継続的なユーザーとはならずにマリファナの使用を止めている。過剰なマリファナ使用はカウンセリング治療が必要な精神的依存に陥る可能性があるが、マリファナに対する依存が発生することは、アルコールやタバコその他の向精神作用のある物質と比較して稀であり、またその依存の度合いも深刻ではない」
マリファナの使用は自動車の運転に際してほとんど影響しない。
---「マリファナ単独の使用は、とりわけ軽いストーンの状態では、自動車の運転に関する能力にほとんど悪影響を及ぼさない。マリファナによって通常よりも用心深く運転するようになる。マリファナはある事柄を判断するのに要する時間の長さや、精密に運転する能力などに対して悪影響を及ぼすが、それら効果によって、マリファナの影響下にあるドライバーが交通安全上のリスクの元凶となるということではない」
マリファナの自由化によって使用者数が増加する可能性はほとんどない。
---「マリファナに対し寛容的な政策を導入した諸外国のデータをみる限り、長期的な視点でマリファナユーザー数の増加は見られない。我々の出した結論として、政府の政策はマリファナ使用の傾向に対してあまり影響しておらず、これら各国の多様な状況を説明する上では何かもっと込み入ったもの、あまり良く解明されていない要因による影響の方が大きいと考えられる。」
マリファナの禁止は、マリファナの使用よりはるかに大きな保健上のリスクをもたらす。
---「マリファナの禁止を続けることは、マリファナそれ自体あるいは管理されたマリファナ市場取引の存在と比較して、はるかに大きな度合いでカナダ国民の健康と快適な暮らしを脅かすものであり、またマリファナを犯罪として扱うことは『権利と自由のカナダ憲章』に規定される基本的な価値をないがしろにしていると我々は信じる」
今回の委員会レポート「マリファナ:カナダ公共政策における我々のスタンス」の全文(英語)は、下記よりオンラインで入手できる。
http://www.parl.gc.ca/illegal-drugs.asp
また、米国連邦政府によって招集された委員会のレポートは下記にて参照可能。
http://www.norml.org/index.cfm?Group_ID=3382
(出典:NORML News Archives)

「RAND研究所がゲートウェイ理論を否定---マリファナ取締りの正当性が揺らぐ
 2002年12月3日(ワシントンDC、アメリカ)

 アメリカの国家安全保障戦略や先端科学技術政策に重要な役割を果たしているシンクタンク、RAND研究所が2002年12月2日に公表した調査結果で、若者によるマリファナの使用はハードドラッグ濫用に繋がらないことが示された。この結果として、マリファナがハードドラッグ使用のきっかけになるとする、いわゆる「ゲートウェイ理論」が否定されるとともに、それを根拠としている取り締まり政策の正当性が揺らぐことになる。RAND研究所公安法務部次長のアンドリュー・モーラル上席研究官は「これまでゲートウェイ理論は通説として広く受入れられてきたが、科学者たちは常に懐疑的であった。今回の分析は、その疑問が正しかったことを示した」とコメントしている。
 今回の研究ではまず、アメリカ政府が実施した薬物濫用に関する世帯調査のデータを細かく分析した。その結果、ハードドラッグを使用しているティーンエイジャーたちにはマリファナ経験の有無とは関係なく、もともとハードドラッグを使用してしまう素因があると結論付けた。
 モーラル上席研究官は「素因としてハードドラッグを使用しやすい傾向をもっており、さらに実際にドラッグを手に入れやすい環境にある者は、マリファナとハードドラッグの両方を使用する可能性が通常よりも高い。その際、まず最初にマリファナから始めるというのが典型的だが、これは単にマリファナが最も手に入れやすいドラッグだからに過ぎない」と、データが示す事実関係について述べ、「これらの事実をRANDのデータ分析用数学モデルに組み入れてみると、若者によるドラッグ使用状況の実態を示しているに過ぎない情報が、いかにしてゲートウェイ理論の根拠として使われてきたのかを全て説明できる」と語っている。
 モーラル上席研究官は、マリファナがゲートウェイドラッグだという「間違った前提」を基に方針が決定されているアメリカのドラッグ政策に対して、今回の分析結果はその正当性に重大な疑問を投げかけるものだと説明している。「例えば、マリファナの供給を断つことを目的とした施策は、ハードドラッグ問題の解決にはまったく効果がないという事を、この分析結果は示唆している」
 NORML財団代表(エグゼクティブ・ダイレクター)アレン・サン・ピエールはRAND研究所の分析結果を称えた上で、これまでの統計からも、ほとんどのマリファナユーザがハードドラッグに移行しないことが示されていることを付け加えている。「統計的に見ると、104人のマリファナを経験したことのあるアメリカ国民の内、コカインを使用している者は1人だけだ。ヘロインに関しては、もっと少ない」と説明し、「マリファナユーザの大半にとって、マリファナは『終点』であり、『入り口(=gateway)』ではないのだ」と主張する。
 さらにサン・ピエールは、マリファナユーザーのうち少数はハードドラッグに移行していく場合があるということについて、それはマリファナ自体に問題があるわけではなく、マリファナがハードドラッグと同様に取り締まられており、同じ「違法ドラッグ」として、しばしば同一の供給元から提供されていることに原因があると推測している。「マリファナのほかにハードドラッグも入手できる環境に置かれ続けていると、マリファナユーザーがハードドラッグも試してみようとする可能性はそれだけ高くなる」という。
 過去にゲートウェイ理論を否定した調査では、2002年にカナダ上院で発表されたレポートの他に、米国科学アカデミーの付属機関である医学研究所(IOM:U.S.National Academy of Sciences Institute of Medicine)が1999年に発表した「IOMレポート」がよく知られている。
(出典:NORML News Archives)

「ベルギー議会がマリファナ法改正を批准  2003年2月27日(ブリュッセル、ベルギー)
 DPA(Drug Policy Alliance)のプレスリリースによれば、ベルギー議会はつい先日、個人使用のためのマリファナ所持と栽培を合法化する法案を通過させた。
 ベルギー議会は多数決で、レクリエーション・ユーザーの5グラム以下のマリファナ所持、及び一本までのプラント栽培を認め、刑事罰を適用しないことを決めた。今回の法改正は、2001年に検察当局と裁判所に対して「何の危害も、また依存も見られない個人マリファナ・ユーザーたちの生活をこれ以上、妨害しないこと」を命令した、議会の公式な申し立てに続くものである。
 新しい政策のもとでは、大量の栽培と販売は積極的な取り締まりの対象となる。また、公共の場所や未成年がいる場所での喫煙も禁じられている。
(出典:NORML News Archives)

「オランダ政府が医療マリファナの処方を合法化---薬局で購入可能・医薬品処方マリファナ栽培は免許制に
 2003年3月20日 (ハーグ、オランダ)

 3月17日から施行された新しい連邦規定により、オランダでは薬局が合法的に医療大麻を仕入れ、医師の処方箋がある患者に対して販売することができるようになった。この法改正で、オランダは医療大麻を正式に一般の処方薬と同じ扱いで使用できる最初の国となった。
 NORML財団代表(エグゼクティヴ・ダイレクター)アレン・サン・ピエールはこのオランダの政策変更を称賛して次のように語った。「カナビスにも他の医薬品と同じく、その危険性や有効性を正当に評価した上でそれに応じた規制を適用するべきであり、このたびオランダ政府が決定した規制はずっと以前より導入されてしかるべきものであった。不幸なことに米国では、政府がマリファナの相対的な安全性や医療用途の有効性を認めることを拒み続けている。患者たちはその結果として、本当に必要とする医薬品を非合法市場に求めなければならず、逮捕されるリスクを押し付けられているのだ。明らかにオランダモデルのほうが安全で有効、かつ温情ある解決法だと思う」
 新法の施行により、オランダ政府の保健担当部門から許可証を交付された医療用マリファナ栽培者が、医薬品等級のマリファナを薬局に供給することになる。栽培許可証の発行はオランダ保健省医療マリファナ局(BMC)の管轄で、4月初旬より交付が始まる見通し。BMCは医療マリファナの研究と使用基準の確立を目的として2000年に設置された。
 また医療マリファナの購入に際して、健康保険割引が使えるようになる。(オランダでは民間企業が健康保険サービスを提供)
 オランダ保健省スポークスマンのバス・クイックはAP通信に対して、今回の法改正によって医療用品質のマリファナが、安定して患者に供給されるようになると説明している。「いずれにせよ、今日でも既に医師たちは患者に対してマリファナを処方している。数多くのマリファナを必要とする患者がいて、実際に使用している。ならば、国もきちんとした基準を設けるべき」
 カナダでも同様な規定が2001年に制定され、認定された患者に対して州政府が医療マリファナを栽培し、供給できるようになった。しかしカナダ保険省は今日まで、州政府により収穫されたマリファナの供給を許可していない。
(出典:NORML News Archives)

「オーストラリア最大の州で、臨床的な医療大麻の利用が認められる  2003年5月22日 (シドニー、ニューサウスウェールズ州、オーストラリア)
 ニューサウスウェールズ(以下NSW)州の保健局が今後4年間にわたって実施する予定の臨床試験では、慢性的な身体の痛みや多発性硬化症等の深刻な病状に苦しむ患者達に対して合法的に医療目的の大麻を提供することが可能になると、ボブ・カー州知事が今週発表した。試験に参加するボランティアは喫煙用の大麻、もしくは舌下から投与できる大麻抽出物を受け取ることが出来る。また今年後半にはイギリスの製薬会社が、大麻抽出物を医療薬品として販売する認可を取得することも見込まれている。
 今回のカー州知事による発表は、NSW州政府により任命された医療目的大麻政策作業部会(Working Party on the Use of Cannabis for Medical Purposes)が今から約3年前、医療大麻の比較臨床試験の実施、および医療目的で大麻を使用した患者に対する刑事処分の停止を勧告して以来の進展である。
 「大麻が苦痛の症状をやわらげることに有効であるという主張は、医学的な根拠により支持されている。我々には人的な苦痛や苦しみを可能な限り低減させる義務がある」とカー州知事はコメントしている。オーストラリア医師会のNSW州支部もこの臨床試験実施を支持しており、現時点で違法な薬物であっても、患者の苦しみを和らげる目的や研究促進のためには特定の病例について合法化すべきであるという立場を取っている。
 大麻の臨床試験実施を認める法律制定は来年までに実現される見込みだ。
(出典:NORML News Archives)

「メリーランド州の法廷にて医療大麻が抗弁措置として法的に認められる
 2003年5月22日 (アナポリス、メリーランド州、アメリカ)

メリーランド州知事ロバート・アーリック(共和党)は、医療大麻を使用する患者が法廷にて「医療的必要性」を抗弁として用いることを認める法案に署名し、法律として成立させた。
この法律はメリーランド州における医療目的での大麻の栽培と使用を合法化するものではないが、州が起訴するマリファナに関連した裁判において、被告である患者が大麻の医療的必要性を抗弁として用いた場合、この法律は法廷に対して刑罰の軽減を考慮するよう求めている。現行のメリーランド州法では、大麻の所持に対して1年以下の懲役と1,000ドルの罰金を課しているが、被告人の大麻使用が医療的に必要であったことが立証できれば、罰則は100ドルの罰金にまで軽減される。
大麻の医療用使用を「不道徳」で「ひどいでっち上げ」などと主張する麻薬取締対策局長ジョン・ワルターやブッシュ政権からの厳重な圧力に屈することなく法律を成立させたロバート・アーリック州知事の決断について、NORML代表(エグゼクティヴ・ダイレクター)キース・ストロープは「患者のニーズを派閥政治より優先させた」と称え「他の8州の同様な医療大麻に関連した法律と比較すると、さらなる改善の余地があるが、今回の法緩和により多くのメリーランド州民の患者が法的に保護されることになった」とコメントした。
(出典:NORML News Archives)

「THCがアルツハイマー病の治療に有効  2003年5月29日(ボルティモア、メリーランド州、アメリカ)
 5月初旬にアメリカ老年医師会の月例ミーティングで紹介された臨床試験データにより、人工的に合成されたTHC(=テトラハイドロカンナビノール、マリファナの有効成分)が、アルツハイマー病患者の動揺を和らげ、また体重の増加を促進する効果があることが示唆された。
 臨床試験には、アルツハイマー病による痴呆症状を患う9人の患者が参加した。10mg以下の合成THC処方を1ヶ月間実施した結果、9人のうち6人の患者に動揺の軽減が顕著に見られ、また9人全員に体重の増加が認められた。THC処方の前には9人全員が食欲不振により体重を減少させていた。アルツハイマー病ではよく見られる症状の一つである体重の減少は、患者の死亡の前兆となる一つの要因でもある。
 THC処方において、副作用による問題はまったく報告されていない。
 1997年に実施された前回の臨床試験には12人のアルツハイマー病患者が参加したが、その際にもネガティブな感情の高まりを抑え、体重を増加させるという効果が確認された。1999年発表のIOMレポートでは、マリノール(=合成THC、商品名)の処方を受けている者の5パーセントから10パーセント程度は、アルツハイマー病の症状を緩和する目的でマリノールを使用していると見積もっている。
(出典:NORML News Archives)

「ニュージーランド国会委員会が大麻規制法の緩和を勧告- 節度ある成人の使用は健康被害に結びつかない
 2003年8月14日 (ウェリントン、ニュージーランド)

 ニュージーランドの代議院衛生委員会(House Health Committee)は、8月初頭に公表した報告書の中で、国会に対して「高い優先順位」で大麻の法的分類を見直して、初犯者を含む軽微な違反者に対して刑事罰が科されなくなるよう勧告した。報告書の結論は、大麻の適正な法的分類について判断することを目的に、委員会が3年間の期間にわたり実施した、大麻が健康に与える影響の調査結果に基づいている。
 報告書によると、現在ニュージーランドの規制薬物に関連した逮捕のおよそ95%が大麻によるもので、大麻の所持には最高3ヶ月の懲役と500ドルの罰金が科される。
 カナダ政府とイギリス政府により実施された調査結果からも、同様な大麻の再分類、あるいは非犯罪化が勧告されたばかりだが、ニュージーランドの場合、ニュージーランド衛生特別委員会(New Zealand Health Select Committe)が1998年に国会に対し「大麻が精神的に及ぼすとされている悪影響は誇張されている可能性がある」と指摘し、現行の法律の妥当性を再調査することを勧告したのが発端となった。 
委員会による今回の調査結果のまとめ:
 ・大麻の効能が著しく強まっているということはない
「過去25年の間に、大麻の効能が著しく強まったことを示す証拠はない」(p.19)
 ・大麻は青少年の非行に繋がらない。
「大麻の使用が行為障害の原因にはならないこと、また、もともと逸脱行動を起こす素因をもっている青少年たちが高い確率で大麻を使用していること、などが結果から示唆された」 (p.19)
 ・大麻は凶暴な行動を引き起こさない。
「大麻の使用と暴力の関連性について議論がなされているが、最新の研究結果から判断する限りその関連性は存在しないと理解される」 (p.19)
 ・大麻は長期的な認知障害を引き起こさない。
「大麻が脳に回復不能な損傷を引き起こすことを示す証拠はない。長期にわたって使用された場合は認知能力の変化について懸念があるものの、大麻使用者と未使用者を比較した研究結果では、大麻の使用を中断した後の後遺的な認知能力の変化は、ごく僅かであるか、あるいは未使用者との差異が見られなかった」(p.18)
 ・大麻統合失調症を引き起こさない。
「大麻が統合失調症を引き起こすという説得力のある証拠は存在しない」(p.17)
 ・大麻は精神的障害を引き起こさない。
「研究結果を見る限り、大麻と精神的障害の関連性は実証されていない」(p.17)
 「大麻使用についての公衆衛生の方針と最適な法的分類に関する調査(An inquiry into the public health strategies related to cannabis use and the most appropriate legal status)」と題された今回の委員会による報告書の全文(英語)は、下記リンクより参照できます:
 http://www.clerk.parliament.govt.nz/Content/SelectCommitteeReports/i6c.pdf
(出典:NORML News Archives)

「フランスも非犯罪化に向けて前進  2003年10月22日(パリ、フランス)
 ジャン=ピエール・ラファラン首相が、大麻所持に対する罰則を反則金のみに軽減する法律改正案を支持していることが、総合週刊誌「L'express」により報じられた。
 1970年に制定された現行の取締法では、軽微な違反に対する罰則を1年以下の懲役刑と定めているが、ラファラン首相がこの法律を改正することを約束したという。改正案が制定された場合、違反者には懲役の代わりに小額の罰金の支払いが科されることになる。フランスでは大麻事犯が起訴されるケースは10%未満となっているが、これは当局がすでに大麻を容認するという方針を実践しているとも言える。法改正が制定された場合、現在の大麻容認の方針が正式に批准されることも意味する。
 フランスは公式な形では大麻非犯罪化の手続きを取っていない、ヨーロッパでは少数となった国の一つである。
(出典:NORML News Archives)

「アラスカ州−4オンス(110-120g)までの大麻所持は「合法」
 2003年9月11日(アンカレッジ、アラスカ州、アメリカ)

 アラスカ州上訴裁判所は8月29日に公表した判決により、州最高裁判所がかつて1975年に下した、「成人による個人目的の大麻所持・使用に対して何らかの罰則が課されることは、州憲法によって保障されている個人のプライバシー権の侵害となる」という判決を是認した。この判決により1990年に承認された「大麻再犯罪化」の発議は州憲法に違反するとして無効となった。
 上訴裁判所のデイヴィッド・スチュワート裁判官ほか全員一致による判決には、「成人による自宅での個人使用目的の大麻の所持に関して、規制法は4オンス(約110g)以上の所持を禁止するものとして解釈されるべき」と明記された。さらに、個人使用目的の大麻栽培も許可される旨が示された。
 今回の上訴裁判所による判決は、ノースポールの自宅で友人とバーベキューをしている際に大麻を吸っていたとして、逮捕されたデイヴィッド・ノイ氏(41)の訴訟に対して下されたもの。
 1975年のアラスカ州最高裁判所の判決(Ravin v. State)は、自宅における大麻の個人的使用は、アラスカ憲法第1条22項(「州民のプライバシー権については、これを侵害することを認めない」)により保護されているとした。さらに数年後の1982年の州議会では、個人使用量の上限が4オンスと定められた。ところが、1990年に当時のビル・ベネットDEA(アメリカ麻薬取締局)長官による積極的な働きかけにより、アラスカ州でも51%の僅差で「大麻再犯罪化」の発議投票が承認され、再び量の多少を問わず、すべての大麻所持・使用に対して再び刑事罰則が課されることになった。
 実際、その後もアラスカ州の弁護士たちは、州憲法の判例を抗弁として用いることにより、大麻の個人使用に対する訴訟の却下に成功してきた。これに対し、これまで州政府側があえて上訴することはなかったが、それは主に「上訴したが、再び敗訴したという不名誉な前例」を作ることを避けるためだと見れる。今回のノイ氏の審判は、初めて上訴裁判所に訴訟されたケースであり、さらに州最高裁判所にも上訴されることが予想されている。
 今回ノイ氏の弁護を担当したビル・セッターバーグ弁護士は、13年の歳月を経てようやく、アラスカ州上訴裁判所にて1990年に承認された「大麻再犯罪化」の発議に対して異議申し立てをする機会を得ることができたと語り、「アラスカ州が今回、訴訟を却下せずに、あえて上訴したのは、彼等の立場からすれば最悪な判断だったと思う。」と付け加えた。
(出典:NORML News Archives)

「シアトル有権者による住民投票での採択−大麻規制の優先度を最低レベルに
 2003年9月18日 (シアトル、ワシントン州、アメリカ)

 警察が大麻の取り締まりに費やす時間を最低限に抑える投票議案を、シアトルの有権者は圧倒的な支持率で承認した。
 10中、約6人のシアトル有権者が、「発議75号」と呼ばれている今回の投票議案を支持する票を投じた。この発議は、成人のマリファナ所持違反に対する捜査、逮捕および訴追を、市の法執行の中で最低レベルの優先度にするものであり、発起人である「聡明なるシアトル市民連合(Sensible Seattle Coalition)」によると、予算の無駄使いを無くすと同時に、より深刻な犯罪へのリソースの集中を可能とする。
 ワシントン州の州法では、1グラム程度のマリファナ所持に対して、90日間の禁固刑とともに罰金1000ドルが科される。
 シアトルのほかにも、これまでにカリフォルニア州のサンフランシスコ、オークランド、マサチューセッツ州のアマースト、ミシガン州アナーバー、ウィスコンシン州マディソンなどで、同様にマリファナ規制の優先度を下げる条例が制定されている。
(出典:NORML News Archives)

「カナダで大麻非犯罪化法案が議会に提出される - 逮捕は止め、違反チケットのみに
 2003年5月29日 (オタワ、オンタリオ州、カナダ)

 現クレティエン政権が5月27日にカナダ下院議会に大麻非犯罪化法案を提出した。この法案ではカナダ連邦の大麻規制法を改正するとともに、およそ2億4,500万カナダドル(約200億円)がドラッグ教育および研究費に割り当てられることになる。
 昨年、上下両院委員会からそれぞれ出された2つの報告書で、国の大麻規制法に対する大幅な緩和が強く要請された事が今回の法案提出の推進力となった。
 この大麻非犯罪化法案「C-38」で最も注目すべき条項は、15gまでの大麻および1gまでの大麻樹脂について、その所持と使用に対する罰則を「違反チケットによる罰金のみ」に引き下げたことである。さらに大量の場合、30g以下までであれば、違反者に対して違反チケットを切るか、それとも刑事法廷への呼び出しを求めるかを決める裁量権が警察に与えられる。
 この法案では、チケットに対して罰金を支払わないことを理由に刑法犯扱いされることはない。また、違反チケットに対しては不服申し立ての裁判を起こす事も可能だが、たとえ敗訴して有罪が確定したとしても、それが刑事事件として扱われることはない。
 NORML財団会長(エグゼクティヴ・ダイレクター)アレン・サン・ピエールは法案C-38の大麻非犯罪化に関する条項を称賛して、次のように語った。「大麻の所持を刑事事件として取り締まることは、責任ある成人の大麻使用で何らか発生するかもしれない危害と比較した場合、まるでバランスが取れていない。今回の法案提出は、大麻を取り締まることで発生している害悪のほうが、大麻そのものの危害よりも遥かに大きいということを、カナダ政府が認めたことにほかならない」
 米国の12の州でも、同様に少量(28g〜100g程度)の大麻所持を罰金のみの違反行為とする大麻非犯罪化法が制定された。1999年に米国医学研究所(IOM)が発表した「IOMレポート」によれば、大麻が非犯罪化されている州の若年層における大麻使用率は、大麻を犯罪として取り締まっているほかの州と比較しても決して高くなっていない。
 今回の法案では他に、大麻の栽培に対する罰則の強化が示されており、50本以上の栽培者に対しては従来の禁固7年以下から、最長で14年以下まで引上げられている。プラント3本以上の栽培について、その栽培場所が子供のいる施設内であるなど「悪質」なケースでは、禁固刑を課さないという場合その理由を示す事が求められることになろう。
 この事についてサン・ピエールは、栽培に対して厳しすぎる取締りを行えば、医療目的で大麻を栽培する患者たちにとって好ましくないという事、また多くのユーザーたちが大麻の供給をブラックマーケットに求めることになりかねない、と釘を指している。
(出典:NORML News Archives)

「アメリカ大統領選挙−立候補者が過去の大麻経験を認める
 2003年11月5日 (ボストン、マサチューセッツ州、アメリカ)

 11月4日にCNNで生放送された番組「Rock the Vote」のディベートにて、電子メールによる視聴者からの大麻喫煙の経験に関する質問 に対して、番組に出演していた2004年大統領立候補のジョン・エドワーズ(ノースカ ロライナ州、民主党)、ジョン・ケリー(マサチューセッツ州、民主党)、ハワー ド・ディーン(前バーモント州知事)いずれの立候補者も「経験がある」と回答し、放送スタジオの観覧客から拍手喝采を浴びた。
 NORML代表(エグゼクティヴ・ダイレクター)キース・ストロープは、今回の大統領選立候補者たちが大麻喫煙の経験があることを認めたことは、様々な分野で勤勉に活躍している多数のアメリカ国民が大麻を嗜好品として使用していること、犯罪者として扱われるべきではないことを明瞭に表していると語った。
 ストロープはさらに「ただし重要なことは立候補者が、ビル・クリントン前大統領やアル・ゴア前副大統領、ニュート・ギングリッチ下院議長などの政府要人を含む約半数のアメリカの成人と同様に、ただ大麻喫煙の経験を認めることだけではない。問題の核心は、立候補者自らが過去に経験したのと全く同じ行為によって、多くの善良なアメリカ国民が検挙され投獄されていることについてどう考えているのか、という点だ」とコメントを付け加えた。
 大麻喫煙の経験を認めた3人の候補者は、いずれも大麻の非犯罪化について賛否を明確には示さなかった。ケリー氏は重症患者による医療大麻の使用を認めることを強く主張しており、エドワーズ氏は過去に、州法に基づき医療大麻を使用している患者の逮捕を法務省に対して要求することは「無責任」なことだと発言したことがある。だがディーン氏については2002年にバーモント州議会にて認定された患者による医療大麻の使用を合法化する法案の可決を頑なに拒んだという。
 一方で、同じく番組に出演していた立候補者のデニス・クシニッチ(オハイオ州議員、民主党)は「大麻の経験はない」と回答したが、大統領として当選したら「非犯罪化する」と付け加えた。また、クシニッチ氏は以前、医療大麻の使用が認められるように大統領命令を発令することを約束しており、現政権による「War on Drugs」と呼ばれているドラッグ撲滅政策によって発生している弊害について厳しく批判している。
 クシニッチ氏と同様に、番組に出席していた立候補者のウェズリー・クラーク氏、アル・シャープトン氏とジョー・リーバーマン上院議員(コネチカット州、民主党)は大麻の経験はないと回答した。キャロル・モズリー・ブラウン氏は質問に対しコメントせず、ディック・ゲッパート議員(モンタナ州、民主党)は番組に出席しなかった。
(出典:NORML News Archives)

「大麻の成分が腫瘍の成長を抑制する  2003年11月20日(ミラノ、イタリア)
 大麻の成分であるカンナビノイドの一種で、意識や感覚には作用しないカンナビジオール(CBD)の投与により、ヒトグリオーマ細胞(脳腫瘍)の成長が抑えられることが実証された。「Journal of Pharmacology And Experimental Therapeutics」誌の2003年11月14日号で発表された臨床試験データによると、ヒトグリオーマ細胞の成長に対する効果はin vitro(インビトロ=シャーレ培養)でも、細胞株を動物に移植した場合でも確認された。
 今回のミラノ大学の研究員によって実施された試験により、細胞培地にCBDを添加した際、濃度に比例してヒトグリオーマ細胞のViability(生存性、生存能)が著しく低下することが確認された。また、これは今回初めて確認されたことだが、CBDによるガン細胞の増殖を抑制する効果(antiproliferative effect)は、機能的細胞死(アポトーシス)の誘発(*)と相互に関連があるということが実証された。
 さらにCBDがマウスに投与された場合、皮下に埋め込まれたヒトグリオーマ細胞株U87の成長が抑制されたことを確認した。意識や感覚に作用しない大麻の成分であるカンナビジオールは細胞培地でも生体内でも、ともに抗腫瘍活性を発揮し、これによってCBDが制癌剤(antineoplastic agent)として使用できる可能性が示された、と今回の臨床試験は結論付けている。
 ちょうど今回の研究結果が報告される約1ヶ月前に「Nature Reviews Cancer」誌に掲載された臨床調査の結果からも、カンナビノイドには癌患者の痛みを抑える効果があり、また数種類の悪性腫瘍の成長が抑制されたことから、癌の治療薬として役立つ可能性が示唆されたばかりだった。
 南カリフォルニア大学(USC)医学部教授であり「Understanding Marijuana: A New Look at the Scientific Evidence」の著者でもあると同時に、NORML諮問委員会のメンバーでもあるミッチェル・アーリーワイン医学博士は、イタリアの研究チームによる成果を称えた。「カンナビノイドの研究からは、いつも癌治療への途方もない可能性が示され続けている」と語り、さらに「こうした研究の大部分は、アメリカ以外の国々によるものだ。ときには予算や科学技術の面でアメリカの医療研究機関のように潤沢とはいえない国々の研究機関が、次々と成果を上げている。わが国のドラッグ政策がこれ以上、アメリカ人の死因の第2位である病気との闘いを邪魔することがないよう切に希望する」とも付け加えた。
 今年初めに発表された研究結果でも、大麻とその誘導体には悪性神経膠腫や皮膚癌を抑制する効果があり、ラットに移植された腫瘍が退化することが確認されている。
 「Antitumor effects of cannabidiol, a non-psychotropic cannabinoid, on human glioma cell lines(精神作用を有さないカンナビノイドであるカンナビジオールのヒトグリオーマ細胞株における抗癌作用)」と題された今回の研究成果の概要は、下記リンクから参照できます:
http://jpet.aspetjournals.org/cgi/content/abstract/jpet.103.061002v1
(出典:NORML News Archives)

「大麻の有効成分THCが、トゥレット症候群の治療に有効  2003年10月22日(ハノーバー、ドイツ)
 アシュレイ出版が刊行する医学専門誌「エキスパート・オピニオン(=専門家の意見)」シリーズの一つ「薬物療法のエキスパート・オピニオン」10月号で紹介された臨床試験の紹介記事によると、大麻が意識や感覚に作用する中心物質である△-9-THCに、トゥレット症候群の治療における「臨床上の十分な有効性」が認められたとの事。
 記事では、2つの異なる条件の被験者群でそれぞれ無作為試験を実施し、いずれもTHC投与でチック症状が著しく減少するという良い効果がみられたこと、その際に深刻な副作用や神経心理学的な機能障害はどちらの被験者群でもみられなかったこと、などが述べられている。
 「成人患者の場合、既知の治療薬ではチック症状の改善が見られない、あるいは改善は見られるものの副作用が重すぎるという場合がある。そんなケースにはΔ-9-THCを使った治療を是非とも試してみるべきだ」と筆者は述べている。また筆者は今回使用した合成THCだけでなく、大麻草そのものでも治療効果があると推測しているが、大麻草と合成THC製薬の比較実験はまだ実施されたことがないと注釈をつけている。
 トゥレット症候群とは神経の病気で、顔、首、肩などの突然の痙攣、いわゆるチック症状によって特徴づけられる。
(出典:NORML News Archives)


以下の情報は医療大麻掲示板(http://www.hihanzaika.org/sog/iryo_taima/mbbs.cgi)から引用。

「マリファナの成分が脳腫瘍を"消した"−ラットで  2000年/04月/05日 日経ヘルス
 スペインのコンプルテンス大学の科学者たちは、マリファナの主要成分である「カンナビノイド」(cannabinoid )が、脳腫瘍に対して有効に作用することを動物実験で確かめた。
 同大学のマヌエル・グズマン博士らが行ったこの実験では、脳腫瘍の細胞を注入されたラットを2つのグル−プに分け、一つのグル−プにカンナビノイドを腫瘍に直接注入する形で与えたところ、15匹のうち3匹の脳腫瘍が完全に"消えた"という。また、9匹は最高35日間生きた。一方、カンナビノイドを与えなかったラットは、すべて18日以内に死んだ。
 この研究は、医学誌「ネ−チャ−・メディスン」3月号で発表された。
 同博士は、使ったラットの数も少なく、さらに実験を重ねる必要があることは認めているものの、この研究成果は、マリファナの医学利用に新しい展望を開くといい、1年以内に人間で試験してみたいと話している。
 カンナビノイドは、マリファナの吸引した人を"ハイ"な状態する成分だが、一方で、痛みや吐き気を押さえる効果がある。そのため、現在がんやエイズ患者の間で薬として使われている。
 アメリカでは、最近、連邦政府がマリファナの医学研究を公式に認めたことから、各地でマリファナの成分を使った研究が盛んになっている。

「オランダ、大麻を治療薬として認可 薬局でも販売  2003/年09月/01日 共同通信 産経新聞
 アムステルダムからの報道によると、オランダ政府は1日、大麻を治療薬として認可した。今後は医師の処方せんがあれば、薬局でも購入できる制度が導入される。
 医療目的の大麻販売は、カナダでも認められているが限定的で、オランダの方が進んだ制度となる。
 購入できるのは、がん、エイズ、多発性硬化症などの患者。薬の副作用が強い場合などに、痛みや症状を軽減するために医師が処方する。
 オランダでは、1人1回5グラム未満なら大麻を専門店で購入でき、政府は、現在約7千人が医療目的で大麻を使用していると推定。新制度によって全国約1650の薬局で購入できるようになるため、利用者は倍以上になるとみている。

「ベルギー:来年にも大麻販売を解禁 保健相が明言   2003/11/01 毎日新聞
 【ブリュッセル】ベルギーのドゥモット保健相は、1日までに毎日新聞の取材に応じ、がん患者の鎮痛剤などとして、来年にもベルギーの薬局で大麻販売を解禁すると明言した。同様の政策はオランダが9月から導入しており、ベルギーの追随で、大麻販売の「是非」が再び問われそうだ。
 同相によると、5カ月以内に製薬会社が販売許可を申請する予定で、政府の承認後、早ければ8カ月後にも販売が開始される。オランダでは政府が大麻栽培から販売まですべてを管理するが、ベルギーの場合、製薬会社に政府が販売認可を与える方式をとり、オランダ同様、医師の処方せんをもとに薬局で購入できるようにする予定という。
 同相は大麻に含まれる物質「THC」の薬効を強調。「THCが、エイズ患者などの苦痛を軽減することが、ベルギーなどの研究で判明している」と述べた。また、「大麻に含まれる物質に、エイズなどの疾病自体の治療効果がある可能性があり、数年前から政府で研究を続けている」とも話した。
 大麻を薬局で販売する是非について同相は「大麻の成分を薬事的に使用することと、快楽のために大麻を吸うこととは別次元の問題だ」と発言。モルヒネなどの麻薬物質も、世界中の病院で末期がん患者の治療などに使われていることを指摘し「倫理的な問題を議論すべきではない」と話した。
 大麻 クワ科の1年草。葉などを乾燥させ吸飲するのがマリフアナで、中枢神経を刺激し幻覚作用があるため、日本では法律で禁止されている。主成分はTHCで、快楽を誘う一方、がん患者の苦痛の削減や食欲増進、多発性硬化症のけいれん治療に効果があるという研究がある。

「マリファナの活性成分を合成して脳損傷の進行を阻止  2003/11/17 WIRED NEWS
 マリファナに含まれる活性成分には、いわゆる「ハイ」になる以外にも、頭部外傷など緊急事態に際して脳を守る効果があることが明らかになった。
 この大麻の活性成分を化学的に合成した物質が、頭部の怪我に引き続いて起こる一連の損傷から脳を守ってくれる、世界初の薬になるかもしれない。
 転倒や交通事故などで脳が外傷を受けると、損傷はそのときの傷だけにはとどまらない。脳細胞は死ぬとき、近辺の細胞にも信号を送って同様に細胞死を促すため、損傷は広がり続け、抑制が利かなくなる。このドミノ効果とでも呼ぶべき現象を阻止する方法を見つけようと、何十年もの間、研究が続けられているが、効果的な方法はまだ見つかっていない。
 ニュージャージー州イセリンに本社を置く製薬会社、ファーモス社の研究チームは、合成大麻成分の注射薬で有望な成果をあげている。米ファイザー社や独バイエル社といった大手製薬会社が頭部外傷の緊急治療法の開発に失敗しているなか、ファーモス社は成功への自信を表明している。
 『デキサナビノール』(Dexanabinol)と名付けられたこの薬品は、大麻に含まれる活性成分『テトラヒドロカンナビノール』(THC)の別バージョンだ。研究チームは、THCを鏡に映したような、構造が逆向きの分子を合成して作った。この分子構造の場合、運動機能や血圧の低下といったハシシやマリファナが元来持っている望ましくない副作用が起こらない。
 ファーモス社のガド・リーゼンフェルド会長兼最高業務責任者(COO)は、「ハシシが健康にいいのか、と今質問を受けたなら、まあそういう場合もあるかもしれないと答えるだろう。しかし研究結果は、かなり問題を含んでいる。われわれがデキサナビノールを選んだのは、動物実験での作用と効力、そして第2段階の臨床試験で効果を観察できたからだ」と述べた。現在は、第3段階の臨床試験が行なわれている。米食品医薬品局(FDA)による承認を受けるには、3段階の臨床試験を通過しなければならない。
 さらにリーゼンフェルドCOOは、この程度の量のTHCを投与した場合、深刻な低血圧を引き起こす危険性があると付け加えた。脳が損傷を受けたときに血圧が下がると、とくに問題が生じるケースがある。
 炎症など脳の外傷の1面だけを対象にした試みは、これまでに他社でも行なわれてきた。しかし外傷による脳損傷の場合、3つの基本的なプロセスがある。炎症、ニューロンの死、そして「興奮毒性」と呼ばれるニューロン間の連絡が破壊される現象だ。ファーモス社のデキサナビノールは、この3つすべてに効果がある。
 ファーモス社は、重傷の外傷性脳損傷の患者100人に対して第2段階の臨床試験を実施した。この結果、デキサナビノールによる治療を受けて、完治した患者と、外傷の6ヵ月後に多少の障害が残っている程度の患者を合わせて約30%にのぼった。一方、偽薬を投与された患者では、この数字は15%だった。
 「グラスゴー・スケール[意識障害の程度を表す尺度]で良好な結果が得られる患者数を10%増やす程度でも、FDAの承認は得られると考えている」とリーゼンフェルドCOOは述べた。
 ファーモス社の第3段階の臨床試験では、世界中80ヵ所の診療所の900名におよぶ重傷の外傷性脳損傷患者が対象となる。米国内では15の診療所で実施されるが、現在までに750人の患者が集まっている。
 試験の実施を難しくしているのが、外傷を受けてから6時間以内にデキサナビノールを注射しなければならないという制約だ。6時間もあれば十分余裕があると思われるかもしれないが、その患者にその治療を施すかどうかを決める手続きをしていると、時間は飛ぶように過ぎると、ある医師は言う。とりわけ臨床試験中の薬品を試用する際には、インフォームド・コンセント(納得診療)用の書類にサインをもらわなければならない。
 「6時間は長いようだが、『ABC』[気道、呼吸、血液循環を確認する基本的なチェック作業]を実施し、近親者探しに取りかかる(たいていの患者は意識を失っているため)となると、あっという間に時間は過ぎる」とカリフォルニア大学サンフランシスコ校の救急神経科、特別研究員プログラム責任者のデビッド・ボノビッチ氏は述べている。
 それでも、6時間は投与するまでの期限として適当だとボノビッチ氏はコメントする。6時間以上経過してからでは、よい効果が期待できないかもしれないからだ。
 『米疾病管理センター』によると、米国では毎年約150万人が外傷性脳損傷を受けているという。このうち約15万人が、デキサナビノールの投薬対象になるとリーゼンフェルドCOOは言う。巨大な市場ではないが、1回の治療につき4000ドルから7000ドルになる見込みだという。
 研究者たちは以前、低体温療法によって脳損傷の進行をスピードダウンできるかもしれないと期待を寄せていた。体温を下げると、すべての身体プロセスが遅くなるからだ。NINDS(米国立神経疾患・脳卒中研究所)がスポンサーとなって実施された『NABISH』(重傷の脳損傷を持ち、低体温療法を受けている患者を対象にした全米規模の症例研究)と呼ばれる大規模な研究には、大きな期待がかかっていた。
 しかし、この臨床試験は結局、はかばかしい成果を残せなかった。それでも研究者たちは、はじめから体温が低い患者には低体温療法が効果があることを示す証拠をいくつか確認できた。このため、この条件を備えた患者だけを対象にして、『NABISH 2』という臨床試験を引き続き実施している。
 ファーモス社の研究チームは、これよりも良好な結果を引き出せる可能性が高いと考えている。過去に失敗した実験から細心の注意を払って教訓を学びとり、デキサナビノールの効果が高いと見込まれる患者を特定し、適切な投与量と投与期間を検討しているという。ファーモス社は、2004年後半には薬の承認を受け、2005年初めに発売したい考えだ。
 さらにファーモス社のロバート・クック最高経営責任者(CEO)によると、脳損傷は心臓手術後に発生することもあるが、これをデキサナビノールで予防する実験も行なわれているという。この場合、医師はデキサナビノールを予防薬的に投与することになる。

「カタルーニャ、中央政府にマリファナを治療目的での使用を認めるよう求める  スペインニュース.コム
  昨日カタルーニャ地方議会では、マリファナを治療目的で使用することができるとする提案が承認された。議会では自治政府に対し、中央政府へ使用を承認するよう働きかける要望を提出した。
 社会主義政党からの提案に、「マリファナの使用が治療上有効であるという研究結果が出ていない上、もっと効果的な治療方法が存在する」と当初PPが支持することを拒んでいたが結局は賛成するに至った。マリファナはガンやエイズなどの患者の痛みを押さえるのに効果的であるといわれ、現在行われている化学療法による吐き気や食欲不振などの副作用を軽減する作用もあるという。
 1998年にカタルーニャ議会では同様の提案がERCより行われたが、その当時は、PP、CIU、PSCなどが反対し、同時にマリファナの使用が人体にどのような影響をあたえるかを研究する調査委員会を発足させた。
ERCでは、たとえマリファナの使用が違法だとしても多くの医者は重症患者が苦しむ激しい痛みを和らげるための使用を薦めている、と話している。

「マリファナ様物質から新しいせき止め薬   2000/11/16 日経ヘルス
 イタリア、ハンガリ−、米国の国際研究チ−ムが、マリファナの成分に似た物質に鎮咳作用があることを突き止め、新しいせき止めが開発される見通しが立ったと報告した。
 もともとマリファナは、ぜんそく患者の咳を止めるが、ぜんそくでない人では咳を引き起こす、という2つの異なった作用があると言われていた。
 そこで、イタリアのナポリ大学、ハンガリ−のブダペストにある実験医学研究所、米国のワシントン大学(シアトル)が共同で、この謎を解明した。
 11月1日発売の科学誌「ネ−チャ−」に掲載された報告によると、この物質は「アナンダマイド」(anandamide)で、マリファナの活性成分である「カンナビノイド」(cannabinoid)と化学的に類似している。
 研究リ−ダ−のダニエリ・ピオメリ博士によると、動物実験の結果アナンダマイドは、呼吸器の筋肉が緊張状態にあって咳が出る場合には咳を静め、気道が緩んだ状態では逆にけいれんを引き起こして咳き込ませるという、2つの異なった反応を起こすことがわかったという。
 また、この両方の働きをコントロ−ルしているのが、肺の神経の末端にあるカンナビノイドの受容体(receptor)であることもわかった。
 そこで研究チ−ムは、この受容体を目標にして咳をコントロ−ルする方法を考えている。「人体での試験がまもなく始まる。そう遠くない将来に新しい薬の開発にこぎ着けるだろう」(ピオメリ博士)。
 今後この研究が進めば、新しいタイプのせき止めができることになる。気道にある細胞の受容体に直接作用するため、副作用も少ないと期待できるという。なお、従来からあるコデインなど麻薬系の鎮咳剤は、脳に働きかけて咳を止めている。

「合成マリワナはアルツハイマー病患者の興奮を鎮める  2003/11/30 Bio Today
  50歳以上のアルツハイマー病患者54人を対象にした63日間の第2相オープン試験の結果「マリワナの有効成分(delta-9-tetrahydrocannabinol、delta-9-THC)の合成品・Marinol(dronabinol)はアルツハイマー病患者の興奮状態を鎮める作用がある」とわかりました。

「マリファナを常用しても脳に悪影響はない=米研究者グループ - 2003年/06月/28日 AFP通信 MSNニュース
 【ロサンゼルス27日】米カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究者グループはこのほど、マリファナを常用しても長期的には脳に害はないとの研究結果をまとめた。この結果は、成人の神経認知能力に対するマリファナの長期的な影響を検証するため、高学歴の若者を対象に行った15件の調査から引き出したもので、国際神経心理学協会の機関誌の7月号に掲載される。
 この調査に参加したのはマリファナ常用者704人とこれまでに試したことがない者500人。
研究者グループの責任者グレー教授は、「われわれは神経学的な観点から、マリファナを常用した場合、長期的に安全かどうかという問題に関心があった」と説明した。
  研究結果によると、マリファナは短期的には記憶と学習に悪影響を与えるものの、長期的にみると脳への害はなかった。同教授は、「影響があったとしても、非常に小さい」と語った。
  カリフォルニア州では1996年以降、精神科医が一部の患者向けに大麻を処方することが認められている。米国では現在、大麻の影響と医薬品としての使用を検証する研究がいくつか行われている。〔AFP=時事〕

「米と新たな火種?カナダが大麻"合法"化へ  2003/07/01 読売新聞
 カナダが少量の大麻所持については、罰金は取るが犯罪とはしない政策を打ち出したのに対し、隣国の米国が「米国への大麻流入を助長する」と抗議の声を強めている。米国は対抗措置を強化して「非犯罪化」を阻止する姿勢だが、カナダのメディアはそんな米国への反発を隠さない。イラク戦争などをめぐり両国関係がギクシャクしているだけに、大麻問題は新たな火種になる恐れもある。(カナダ・バンクーバーで、森田 清司)
 バンクーバー中心部に近いコーヒーショップ。歩道のテーブルで男性があたりはばかることなく大麻をふかしていた。近くには「(大麻の)種子あります」という看板を掲げる大麻ショップが。すべてが堂々としており、拍子抜けするほどだ。
 店内の一角にガラスで仕切られた「大麻喫煙コーナー」を設けているカフェで、マネジャーのロン・マクニールさん(30)が「もちろん今は大麻は犯罪。でも警察もよほど多量に所持していない限り逮捕しないよ」と言う。バンクーバーではすでに大麻は野放しのように見える。だがクレティエン政権はさらに、15グラム以下の大麻所持については刑事訴追をせず、交通違反なみに違反切符を切るだけにするという法案を5月末に議会に提出した。
 この趣旨について与党・自由党メンバーで元閣僚のヘディ・フライ氏は「大麻で中毒になる人はごく少数。政府は取り締まりよりも、健康情報を国民に提供し判断してもらうことに力を注ぐべきだ」と話す。
 だが米国は即座に「『非犯罪化』したら、国境の関税検査を強化せざるを得ない」と表明。その理由について米麻薬取締局の広報担当者は「メキシコやコロンビア以外にカナダからも大量の大麻が米国に流入しているのは明らか。『非犯罪化』は組織犯罪の助長にもつながる」と説明する。
 伝統的に対米関係を最重視してきたカナダだが、保守回帰が目立つ米国とは対照的に、同性愛者の結婚を法的に認める方向に動くなどリベラルな政策が目立つ。イラク戦争に際しては、国連の合意なき開戦を支持しない姿勢を見せ、米国をいらだたせた。
 大麻問題についても、カナダのメディアはおおむね「非犯罪化政策」を支持し、米国の「横やり」に反発する論調が目立つ。

「イギリス、『大麻』規制緩和スタート  2004年/02月/02日 TBS JNN
 イギリスでは2年前に、大麻を中毒性が低い薬物として、取り締まりを緩和する法改正を行いましたが、先月29日にこの規制緩和法が施行されました。
 ロンドンの繁華街の一つ、カムデンタウンでは、大麻の密売は日常茶飯事となっています。大麻を買った若者たちは自宅のホームパーティーなどで仲間同志で大麻を吸うと言います。  
 その大麻をめぐって、イギリス政府は2年前、酒やタバコなどより中毒性が低いとして、取り締まり対象薬物の中では一番ランクの低いC級薬物に大麻の扱いを緩和しました。C級とはいっても、18歳以下は禁止。パブや学校の近くなど公共の場所でも禁止です。  
 しかし、29日に施行された法律では、18歳以上であれば、個人に限り、持っていても吸っていても、警察官による積極的な取り締まり対象からは外れます。例外は常習者、公共の場所、販売目的の所持。中でも、販売目的の所持は最高で懲役14年という厳罰に処されることになりました。  
 「若い子の中には、この法律では大麻は危なくないことになっているから、1回くらい試そうとする子もいるだろうね。非常によくないことだと思うよ」と話す学生もいます。  
 イギリスの規制緩和策の基本哲学は、大麻のようなものを取り締まるために警察官の仕事を割くより、殺人や強盗事件など凶悪事件に捜査の時間をかける方が社会のニーズにあっているという考え方です。  
 イギリス政府が一番怖れているのは、青少年らに「大麻は禁止薬物ではない。大麻は合法である」と誤解されることです。このため、政府は2億円の予算でラジオ放送やパンフレットを作成、引き続き、「大麻は違法で人体にも悪影響がある」というキャンペーンを行うことにしています。

 以下は大麻ニュース(http://www.taima-news.org/index.php)のサイトから引用。

「米大統領候補、『連邦法は大麻をアルコールと同等に扱うべき』 2003年12月4日(米ワシントンDC)
米大統領候補デニス・クシニチ氏(オハイオ州、民主党)は公約で、嗜好品としての大麻使用の刑事罰を廃止し、アルコールと同じように規制する国のガイドラインを制定することを自身の選挙活動ホームページで明らかにした。
  クシニチ氏は「Marijuana Decriminalization(大麻非犯罪化)」と題した論文で「現在のドラッグポリシーは全ての薬物使用者を乱用者として扱っており、結果として不必要に犯罪者を増やしている」「クシニチ政権は現在の『すべての使用は乱用』という位置付けを撤廃し、大麻使用に関しては現在のアルコールと同等のより現実的な規制ガイドラインを設ける。」という。
  クシニチ氏はこれまでも医療目的での大麻使用の解禁を強く訴えており、2003年11月4日にCNNが生放送した大統領候補討論会でも大麻の非犯罪化を支持する発言をした。
  「全米で約50万人の薬物犯罪で服役している人の多くが非暴力的大麻使用者であり、多くの場合は暴力的な犯罪で服役している者よりも刑期が長いことがある」という。「このような厳刑を科し続ける理由は不可解である。統計的に見ても、大麻使用者の行動パターンはアルコール使用者と似ており、大半の大麻使用者は責任ある、安全で嗜好的な使い方をする。こういった人は普通の生産的な生活をし、キャリアを持ち、家族を養い、一般的な市民生活を送っている。」
「さらに大麻は様々な病気の治療にも有用であり、末期症状にある患者の苦痛を緩和する。いずれの場合でも、刑罰をもって規制をする理由はない。不必要な逮捕と裁きは刑務所を過密にし、司法の場を詰まらせ、より凶悪な犯罪捜査を手薄にする。刑事罰を伴う規制をやめることで、より強固なコミュニティーと安全な町を作ることができる。」
  NORML Foundactionのエグゼクティブ・ディレクターのAllen St. Pierre氏によるとクシニチ大統領候補はJimmy Carter元大統領以来初めて大麻の非犯罪化を大統領選の公約にかかげた人物と言う。過去において、クシニチ氏、マサチューセッツ州議会員のジョン・ケリー氏、そしてハワード・ディーン氏はそれぞれ医療大麻使用に関して支持する意見を出していた。しかし、2002年のベルモント州知事時代、ディーン氏は特定患者の大麻使用を合法化する法案を頑なに拒んだ経緯もある。クシニチ氏の選挙活動ホームページによると、当選した時点で医療大麻の解禁と、DEA(麻薬取締局)による医療用大麻提供者への手入れを止める命令を発行するという。
(上記ニュースはNORMLから承諾を得てTaima Newsで翻訳、掲載したものです。このニュース記事の全ての著作権はNORMLに帰属します。)

「大麻非犯罪化で年間約4300万ドル節約、米バージニア  2003年12月11日(米バージニア州)
NORMLの報道によると、ジョージ・メーソン大学の調査結果で米バージニア州の大麻に関連した逮捕と裁判費用が年間4340万ドル(約46億円)にものぼることが明らかになった。これらは全て税金からの支出で、ヴァージニア州の法務関連予算の5%にも相当するという。
  調査結果の著者によると「大麻の単純所持者を検挙することで、より重要視されている犯罪の捜査や摘発を妨げている。」といい、「州内の地域別予算や逮捕率の違いによって大麻単純所持者の逮捕に必要なコストが不均等になっている」とした。
  調査の結果、著者陣は大麻単純所持の初犯を軽犯罪法で裁き、懲役を含む刑事罰ではなく罰金刑にすることを勧めた。米国では既に12州(アラスカ、カリフォルニア、コロラド、メイン、ミネソタ、ミシシッピ、ネブラスカ、ネバダ、ニューヨーク、ノースカロライナ、オハイオとオレゴン)において大麻の単純所持者に逮捕や懲役刑を含む刑事罰を科しておらず、今回の調査報告はこれに準じた結論に至った。
  大麻の単純所持者を軽犯罪法の取り締まりのみに替えることで「州や地方自治体の予算をより有効に使い、かつ若者を不必要に刑務所に入れる必要がなくなる」という。
  調査結果によると2001年にヴァージニア州で逮捕された大麻所持者は11,384人で、これに関わる費用は一人あたり平均で3,003ドルとなった。逮捕された者のうち、64%は25歳以下だったという。
  ボストン大学が11月に発表した類似した調査結果によると、大麻の非犯罪化によってマサチューセッツ州で年間2430万ドル(約26億円)の経費削減が可能だという。
NORMLエグゼクティブ・ディレクターのAllen St. Pierre氏は「多くの州政府が予算問題に直面している今、大麻の非犯罪化を前向きに検討するのは有意義なことである」と語った。
(上記ニュースはNORMLから承諾を得てTaima Newsで翻訳、掲載したものです。このニュース記事の全ての著作権はNORMLに帰属します。)

「大麻喫煙は運転技術を低下させないとの研究結果  2004年1月29日(ロンドン)
  NORMLの報道によると、イギリスのEvening Newsが伝えた実験で大麻使用被験者と非使用被験者を比較した運転シミュレーターによる実験の結果、大麻使用者の方が非使用者よりも運転技術が優れていたという。
  実際の自動車運転を模したビデオゲームを使った実験には20名のボランティアが参加した。被験者の半数は大麻タバコ1/2本に相当する量を吸ってから参加した。
 「実験の結果、大麻を喫煙した被験者は非喫煙被験者に比べ80%がより優れた反射を示した;60%は1周のタイムが優れていた;70%がより少ない衝突回数だった;60%がゲームでより高いレベルに進めた」という。
  大麻喫煙者と非喫煙者で行われた1対1のレースでは、10回中8回、大麻喫煙者の方が優勢だった。ただし、喫煙量が大麻タバコ2本分とした時に1対1のレースをした時点で非喫煙者の方が大半の勝利をした。
  過去に実施された運転シミュレーションでも同様の結果が出ており、大麻喫煙が運動神経を鈍らせるものの運転手は大麻の影響下にあることが意識でき、その影響を補うことができることがわかった。最近では、カナダ議会の研究結果では「大麻のみの少量使用においては、自動車運転への影響は微小である」とした。
(上記ニュースはNORMLから承諾を得てTaima Newsで翻訳、掲載したものです。このニュース記事の全ての著作権はNORMLに帰属します。)

「大麻喫煙がHIV関連の神経障害治療に有効  2004年2月19(サンフランシスコ)
  NORMLの報道によると、サンフランシスコで開催された第11回年次レトロウィルス会議で、試験研究の結果、大麻喫煙がHIV関連の神経障害を患った人の痛みを軽減する効果が大きいと発表された。
  医療試験にはHIV関連の神経障害(神経痛)を患った被験者16人が参加した。試験ボランティアは1日3本の大麻タバコを7日間喫煙した。参加者の痛みの軽減は視覚的に0から100のランクで記録された。
  週の終わりには参加した16名の被験者のうち、12名において痛みが30%以上軽減された。30%の痛みの軽減は医学的に有用とされている。
  大麻が痛みを軽減するという逸話は多くあるものの、人間に対しての医学的実験はあまりされたことがない。しかし、1997年にアメリカ神経科学学会が行ったカンナビノイドを利用した痛みに関する一連の動物実験の結果「大麻の利用、または大麻の成分に酷似したものの利用は毎年何らかの痛みを訴える9,700万人のアメリカ人が恩恵を受けられる可能性がある」と結論付けた。
  これに加え、1997年アメリカ国立保健研究所の医療大麻ワークショップもまた「現在の鎮痛剤は神経障害関連痛の治療には過大評価しても薄いと言える。現在十分な治療が施せていないものの、Delta-9-THCはオピオイド(訳注:阿片由来薬)やNSAIDS(非ステロイド性解熱鎮痛消炎剤)とは異なる働きをするため治療に有用かもしれない。」と結論付けている。
  今回の研究を受けてサンフランシスコの医療大麻研究センターは近く、被験者が大麻か偽薬をランダムに投与される医学試験を行うという。
(上記ニュースはNORMLから承諾を得てTaima Newsで翻訳、掲載したものです。このニュース記事の全ての著作権はNORMLに帰属します。)

「西オーストラリア:大麻非犯罪化が法律に 2004年3月25日(パース、オーストラリア)
  NORMLの報道によると、今週に入って個人使用目的での大麻の所持及び栽培が刑罰から反則金に引き下げられる法律が施行された。
  新しい州法では、最大30グラムの所持及び大麻草2本の栽培までは刑罰の対象外となる。法律では水耕栽培の禁止が言明されている。
  1998年以降、西オーストラリア州では大麻に関する軽微な違反は警察による「警告」のみとしていた。今回この基本姿勢がはっきりとした法律になった。
  近年になってAustralian Capitol Territory, Australian Northern Territory, South AustraliaとVictoria等オーストラリアのいくつかの州は大麻の非犯罪化を適応し始めている。
(上記ニュースはNORMLから承諾を得てTaima Newsで翻訳、掲載したものです。このニュース記事の全ての著作権はNORMLに帰属します。)

「大麻含有物質で細胞残存が増す 2004年3月25日(ナポリ、イタリア)
  NORMLの報道によると、カンナビジオール(大麻に含まれる精神作用のない物質、通称CBD)の投与により、培養されたラット細胞の残存が増すとの報告が4月発行予定の神経化学ジャーナル(Journal of Neurochemistry)でなされるという。
  ナポリ大学の研究チームは「カンナビジオールの投与により、細胞の残存率が飛躍的に向上した」と結論付けた。「研究の結果、カンナビジオールは毒性に対する神経保護、抗酸化、そしてアポトーシス制御作用(悪性細胞における計画細胞死の一貫)の複合作用を有している。」著者らはさらにカンナビジオールの抗酸化作用がアルツハイマー病の治療に重要な役割がある可能性を示唆した。
 1998年にProceedings of the National Academy of Sciences (PNAS)で発表された研究結果ではCBDが通常の抗酸化剤よりもラットの脳細胞傷害に対して保護作用が強いとした。1999年のNational Academy of Sciences' Institute(IOS)のレポートでは大麻の神経保護作用が「もっとも大きな医学的利用法である」と結論付けた。
  ミラノ大学の研究者は去年発表されたレポートで、アレチネズミへのCBD投与が脳虚血(脳への血流が減少し脳細胞死を引き起こす)を防いだとした。
  今週始め、イスラエルの製薬会社Pharmosが複数国において合成カンナビジオールであるデクサナビノール(Dexanabinol)の外傷性脳損傷や脳卒中への有用性を検証する第3層臨床試験を実施するための被験者登録を完了させたという。試験結果は2004年後半に出るもよう。
(上記ニュースはNORMLから承諾を得てTaima Newsで翻訳、掲載したものです。このニュース記事の全ての著作権はNORMLに帰属します。)

「大麻がルー・ゲーリッグ病の症状緩和に有用との研究結果 2004年4月2日(アメリカ、ワシントン州、シアトル)
  NORMLの報道によると、American Journal of Palliative Care紙の3月/4月号に掲載された研究結果で、筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis、通称ALS)患者が大麻を喫煙すると症状が緩和されることがわかった。
  ワシントン大学のMDA/ALSセンターがALS患者に対して行った匿名アンケートの結果、回答者は大麻が「食欲減退、鬱、痛み、痙攣と涎などの症状に対して適度に効果がある」と答えた。また、患者によると鬱症状の緩和は2〜3時間持続したという。
  今回のアンケート調査はALS患者における医療目的での大麻使用に関する初めての試み。ルー・ゲーリッグ病とも称されるALSは随意筋をコントロールする中枢神経における神経細胞が徐々に変質するもので、慢性的で死に至る病気。
  患者によると大麻使用は言語発声や嚥(えん)下運動、性的障害などの症状改善には効果がなかったという。
  過去に行われたALSの症状に対するマリノール(合成THC)の有用性を調べた研究では、食欲や睡眠、筋肉の緊張に関連した症状が和らぐことがわかった。
(上記ニュースはNORMLから承諾を得てTaima Newsで翻訳、掲載したものです。このニュース記事の全ての著作権はNORMLに帰属します。)

「大麻抽出物が慢性的痛み、睡眠に有用との研究結果 2004年5月6日(イギリス、オックスフォード)
  NORMLの報道によると、慢性的神経痛で苦しんでいる患者に対する医学臨床試験で大麻抽出物を投与したところ、痛みの緩和、気分の高揚、そして睡眠質の向上が見られたとの研究報告が5月号のAnaesthesia誌に報告されたという。
  34人の被験者を無作為に選びダブル・ブラインドで偽薬と真薬のクロスオーバー試験を行った。被験者は精神作用のあるテトラヒドロカンナビノール(THC)、精神作用のないカンナビジオール(CBD)、そしてその両方を投与された。被験者はこの抽出物又は偽薬を舌下スプレーで自己投与した。
  研究報告をした著者によると28人の患者では有用な結果が得られたとし、特にTHCを投与された患者は痛みの緩和と睡眠質の向上が見られたという。また「既存の治療法ではとても厄介だった脊髄手術の失敗による痛みを訴える患者の治療では、被験者8人全員において有用な結果が得られたことは素晴らしい結果であり、今後の研究にもつなげていける」という。
  大麻抽出物の副作用は軽微なもので「痛みの緩和に利用されてきた精神作用のある既存の医薬品に比べて大きな差はなかった」と結論付けられた。
  英国医薬品庁(Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency)は現在、GW Pharmaceutical社から「Sativex」の商品名で発売予定のTHC/CBD混合新薬の医薬品申請レビューを行っている。
(上記ニュースはNORMLから承諾を得てTaima Newsで翻訳、掲載したものです。このニュース記事の全ての著作権はNORMLに帰属します。)

「アンケート:多発性硬化症患者によると大麻は有用 2004年5月13日(オーストラリア、カンベラ)
  NORMLの報道によると、Multiple Sclerosis誌(訳注:Multiple Sclerosis = 多発性硬化症)4月号に発表されたアンケート結果によると、多発性硬化症患者は一定して大麻が症状の緩和に有用であると答えたという。
  約2,500人の患者に対してインターネット上で無記名アンケートで「症状を緩和する外的要因」を質問したところ、「一定して大麻、冷水風呂、瞑想、食事バランスといった答えが多くみられた」という。
  2002年にイギリスで行われた多発性硬化症患者に対するアンケートでは、43%の患者が医療目的で大麻を使用していたという結果が得られた。現在も利用している患者の75%は大麻が痙攣を抑制すると答え、さらに半数は痛みの緩和に有用だったと答えた。
  さらに、Journal of European Neurologyによって1997年に行われた調査では、有効回答者の97%は大麻が痙攣、慢性的な痛みや震えといった症状に有用だと答えた。
  最近ではカルガリー大学が2003年に行った調査によると「大麻を使用した多発性硬化症患者の大半で客観的症状緩和がみられた」という。
(上記ニュースはNORMLから承諾を得てTaima Newsで翻訳、掲載したものです。このニュース記事の全ての著作権はNORMLに帰属します。)

「大会期間中は大麻OK - ポルトガル 2004年6月11日(イギリス)
  イギリスのThe Guardian紙インターネット版の報道によると、ポルトガル警察はサッカーのユーロ2004大会期間中は大麻の喫煙を黙認するとの発表をした。
  イングランドのサポーターが暴徒化するフーリガン問題対策の一環として、ポルトガル警察は大麻の喫煙を見逃すと発表した。酒を飲んで暴徒化されるよりも、大麻を喫煙してのんびりしてもらう方が遥かに良いことからこの決断を下した。
  ポルトガルでは個人使用目的程度の少量の大麻所持は既に非犯罪化されているものの、その使用は厳密にはまだ非合法のままとなっており、公共の場での使用は逮捕に値する。オランダで開催されたユーロ2000大会では、サポーターの大麻喫煙率が高かった事も手伝い、イングランド戦においても大きなトラブルがなかったという。反面、オランダと比較して大麻が規制されているベルギーで行われたイングランド対ドイツ戦では、酒に酔ったサポーターによる多くの暴力事件が発生した。オランダ警察当局からポルトガル警察当局へのアドバイスという形で今回の「黙認」が遂行される形となったが、フーリガンを未然に防ぐためにもポルトガル警察は積極的に今回の大麻黙認を発表しているようだ。
  ポルトガル警察のスポークスマン、イサベラ・カネラスによると、大会期間中は警察も大忙しで、無事に大会が開催できる事に注力する必要があるという。「ドアの後ろで誰かが大麻を喫煙するのを待ち伏せしている余裕などない。サポーターが互いを蹴飛ばしたり殴り合ったりせず、大麻を喫煙しているだけだったら目くじらを立てる理由もない。他人に迷惑をかけていない限り、我々のプライオリティーは大麻ではなくアルコールです。」
  大麻の販売に関しては「(大麻の)販売は別問題。道端で大麻を売っている人を見かけたら、取り締まります。」とのことだ。
  オランダ警察のヨハン・ビーラン氏によると、ユーロ2000大会において大麻喫煙はポジティブな面が多かったという。「大麻は、みんなが共に楽しいひと時を過ごせるための恰好の材料だった。」
(このニュースはイギリスのThe Guardianインターネット版の報道を元にした大麻ニュース独自の記事です。オリジナル記事はThe Guardianの著作物です。)

「医療大麻薬「Sativex」の臨床試験結果続々 2004年6月23日(イギリス)
  過去のニュースでもお伝えしたイギリスのGW Pharmaceuticals社の医療大麻薬「Sativex」の臨床試験が今月に入って続々と好結果を出していることが、GW Pharmaceuticals社の複数のプレスリリースで明らかとなった。
  GW Pharmaceuticals社は大麻の有効成分であるTHCの他にもカンナビノイドやカンナビジオール等、大麻に含まれる成分を一種類だけ抽出するのではなく、カンナビノイドやカンナビジオールなどを総合的に抽出した「トータル植物薬」を開発している。
  6月5日付けでGW Pharmaceuticals社のホームページに掲載されたプレスリリースによると、同社がリューマチ性関節炎に関する臨床試験が好結果を出したことについて同社カンナビノイド研究所ディレクターのフィリップ・ロブソン氏は「これらの結果が特に素晴らしいのは、これがコントロールされた環境下で行われる関節炎に関する初のカンナビスベース医薬品の臨床試験だからだ。これまで多発性硬化症や神経痛といった症状にSativexが有効であるという結果は得られており、この痛みと症状の緩和がリューマチ性関節炎に対しても有効だという事がわかった。今後の研究においてはリューマチ性関節炎の症状緩和のために最適なカンナビノイドの比率を調べる事で、第三層臨床試験に使う試薬の選択が行えるだろう」と語った。
  同氏は「この臨床試験はカンナビスを元にした医薬品が広範囲に様々な病気の治療や症状緩和に有効であるという私達の考えを裏付けることになる」とも語った。
  6月15日付けのプレスリリースでは神経痛に関するSativexの第三層臨床試験の結果が発表された。これによると、痛みの軽減に大きく貢献しただけではなく、安全性と副作用が軽微である事も確認された。この臨床試験は異性痛(通常は痛みを伴わない刺激による過敏反応、例えば洋服が皮膚と擦れる状態、糖尿病患者や帯状疱疹後神経痛など多くの病気に見られる)患者に対して行われたもので、同社によるとこのような神経痛は慢性的な痛みの中でも最も治療が難しいとされ、Sativexの効果は既存の治療薬と同等かそれ以上の結果をもたらすことができると証明されたという。
  6月21日付けのプレスリリースによると、多発性硬化症を対象にした第三層臨床試験も同様の好結果が得られ、痙攣に対する効果が認められたという。また、安全性も同様に問題がないとされた。多発性硬化症に関するSativexの第三層試験では過去にも3例あり、全て好結果だったという。現在は多発性硬化症による膀胱機能不全を対象とした第三層臨床試験の準備を行っているという。
  Sativexは上記の症状に対する治療薬として現在イギリスとカナダでの承認手続きを行っているという。承認された後にはイギリスとカナダにおいてはバイエル製薬が販売元になる事が確定している。
  Sativexを開発しているGW Pharmaceuticals社はイギリスにある大麻草を利用した医薬品の開発を主事業とする製薬開発会社。現在、イギリス南部において国からの免許を受け、非公開地においてコンピューター制御されたガラス製温室で約4万本の大麻草の栽培を行っているという。
  Sativexは大麻草の花と葉を10:1の割合で混合し、成分を抽出して作られているという。
  日本国内における多発性硬化症患者の数は約10万人に0.8〜4人と推定されており、リューマチ性関節炎においては全人口の3%が何らかの症状があるという。
  日本国内においては大麻取締法により大麻の所持、栽培、譲渡等は免許制となっているが、医療目的の大麻研究は禁止されている。
(SativexはGW Pharmaceuticals社の登録商標です。)
−引用終わり−

 以上のような世界の医学者たちの研究を認めようとせず、「大麻の有害性が低いなどという前提自体が失当である」と言い張るなら、最高裁はその根拠としての科学的事実、研究結果を示すべきである。まさか、この期に及んで20年前の判例ではあるまいな。

> 所論はさらに、本件大麻の栽培には医療利用目的も含まれており、大麻取締法
> がこのような医療利用目的の場合にまで大麻の栽培等を規制するのは不当であ
> る、と主張する。しかし、仮に、被告人が医療利用目的をもって大麻を栽培してい
> た(このこと自体、何ら裏付けがあるわけではない。)としても、被告人は医学や薬
> 学等の専門知識を有する大麻研究家ではないのであるから、そのような目的で大
> 麻を栽培等することが危険、有害であることはいうまでもなく、それが規制されるの
> は当然といわなければならない。

 「医学や薬学の専門知識を有する大麻研究家ではない」から「危険、有害」だという判断こそ、上記、多々引用した通り、ありもしない大麻の危険性、有害性を前提としており、それこそ根拠がない。
  医学や薬学の専門知識を有するコーヒー研究家ではないのだからコーヒーを栽培して飲むのは危険で有害だと言うに等しい。

 また、大麻取締法は薬として大麻を施用すること自体を禁じてしまっているからこそ、私は生存権の侵害だと主張しているのであり、たとえ私が薬学の専門家や医者であったとしても、大麻を必要とする患者・病人に大麻を施用した時点で犯罪なのである。
 本件において、私が大麻の専門家であるかどうかが問題になるのは、適用違憲の主張部分に限られる。法令違憲の主張に関しては、私が大麻の専門家であろうがなかろうが、大麻取締法の違憲性には全く関係がない。
  判決は、前提となる大麻の事実を歪曲したうえ、法令違憲の論点を欠落させて憲法判断を避けるもので、到底納得できない。

 一方、判例当時から現在に至るまで、厚生労働省(旧厚生省)は大麻を有害だとする研究データを持っていない。
 この問題の専門家である丸井英弘弁護士が昭和61年9月10日に伊那地裁で厚生省麻薬課長市川和孝氏(当時)を証人尋問している。そこでは、立法の根拠や、大麻が国内においてなんら社会問題化したことがないことが、次のようなやりとりでも明白となっている。

(以下、「地球維新 vol.2 カンナビ・バイブル/丸井英弘 中山康直 著(明窓出版 )」から抜粋)

弁護人「(前略)現在の大麻取締法の制定の過程についてお聞きしたいんですけれども、これは厚生省が所管の法律と考えてよろしいですね。」
証人「はい、結構でございます。」
弁護人「そうしますと、立法の際の提案者といいますか、それは厚生省で考えてよろしいわけでしょうか。」
証人「・・・・・・。」
弁護人「政府提案の場合は厚生省のほうで原案を作られるということでよろしいわけでしょうか。」
証人「そうでございます。(後略)」
弁護人「現行の大麻取締法ですが、途中で改正もあったようですが、これは昭和23年に制定されたものですね。」
証人「ええ、現行法は23年に制定されております。」
弁護人「それ以前は大麻規制はどのようになっていたんでしょうか。」
証人「これは私も文献的に調べる以外に手がないんでございますけれども、ずいぶん古いようでございまして、一番初めは大正14年に通称第二アヘン条約と言われます条約が出来まして、それで大麻の規制をしようという条約が出来ましたのを受けまして、昭和5年に当時の麻薬取締規則というものの中にこの大麻の規制が取り込まれたと。ですから昭和5年が一番初めということでございまして、それ以降昭和18年に薬事法という法律の中に法律が整備されまして取り込まれたというふうに文献は示しております。それ以降昭和20年になりましてポツダム省令で国内における大麻を含めまして、いっさい禁止の措置になったと。それでは産業上非常に困ってしまうということがありまして、昭和22年に大麻取締規則というものが出来たと。さらにその大麻取締規則が昭和23年に至って現行の大麻取締法というものに代えられたということでございます。」
弁護人「すると、昭和4年の麻薬取締規則は第二アヘン条約を受けてできたものであるということですか。」
証人「文献上そのような経過の記録になっております。」
弁護人「そうしますと、国内的にわが国で、当時大麻の使用によってなにか弊害とういものがあったから出来たのか、それとも国際条約を批准したという関係から一応作ったのか、その辺はどうなんでしょうか。」
証人「これは、多分当時国内において大麻の乱用がみられたということはなかったんではないかと思います。むしろその国際的な条約を受けまして、そういう規定が出来たというふうに考えます。」
−中略−
弁護人「国内で栽培もしくは野生で生えておりますいわゆる麻ですけれども、これは規制の対象にはなっていたんでしょうか、昭和5年の規則では。」
証人「当時は規制の対象になっていなかったと思います。」
弁護人「ところで、昭和23年に現行法が出来たわけですが、これは具体的にはどういうような経緯から立法されたんでしょうか。」
証人「ポツダム省令というものを受け、22年に大麻取締規則というものが出来たわけですが、当時そういった法律を更に整備していくという過程のなかで、法律化されたのではないかというふうに思うんでございますが、実はその規則ができまして、それが更に法律に形を整えられていったという過程の記録等につきまして、私今回、かなりいろいろ課の者達に手伝ってもらいまして捜してみたんですが、その間の経緯は記録文書上かならずしもはっきりご説明できるものが見当たりませんでした。」
弁護人「実は、私が読んだ資料の中では内閣法制局長官をされていた林修三さんが、「法律のひろば」で大麻取締法の制定当時の事情を書いてる文献を読んだことがあるんですが、私の記憶ではいわゆる連合国占領国ですね、GHQの強い要望で出来たんだと、日本国政府としては特別に規制するという必要性というのは特別になかったんだ、というような趣旨ですけれども、その辺はどうなんでしょうか。」
証人「私も林修三さんという方が書かれた文章は読んだ記憶がございますが、戦後ポツダム省令等に基づいて作られました各諸法令をさらに整備していくという過程の中で、大麻取締法という法律がいるかどうかということについてのご議論があって、法制局サイドではその必要性について若干疑問を持ったと。しかし、当時の厚生省はまだそこまでの踏ん切りがつかなかったということ、しかし今になってみるとそこまでしなかったほうが良かったんじゃないかと、いうような一つの随想といいますか、エッセイのようなものを読んだことは記憶がございます。」
弁護人 「昭和20年から23年当時ですけれども、日本国内で大麻の使用が国民の保健衛生上問題になるというような社会状況はあったんでしょうか。」
証人 「20年代の初め頃の時代におきまして、大麻の乱用があったということは私はないんではないかというふうに思います。」
弁護人 「そうしますと、この大麻取締法を制定する際に、大麻の使用によって具体的にどのような保健衛生上の害が生じるのか、ということをわが国政府が独自に調査したとか、そういうような資料はないままに立法されたと考えてよろしいわけですか。」
証人 「これは推定するほかないんでございますが、そういう資料はなかったんではないかと。(後略)」
−中略−
弁護人「この大麻ですけれども、医薬品として認められていたということはなかったでしょうか。」
証人「かっては、医薬品として認められていた時期があったようでございます。」
−中略−
弁護人「その医薬品として認められていたものは、インド大麻チンキと言われているものじゃありませんか。」
証人「はい、インド大麻が原料で作られていたと思います。実際のものはですね。」
弁護人「そうすると、国産の麻は特に規制はなかったわけですから、特別に医薬品としてもし使うとしても民間の漢方程度で使っていたと、こういう程度でしょうか。」
証人「それは戦前においてという意味でございましょうか。まぁ、そう推定するほかはないと思うんです。現実にそういうものが国産のものが使われていたかどうかということは、私ちょっと承知致しておりません。」
−中略−
弁護人「で、薬局方では、昭和27年頃まで、インド大麻は医薬品として認められていたわけですね。」
証人「・・・・・・。」
弁護人「それでよろしいですか。」
証人「1950年代から60年代の初めくらいまでではなかったかと思うんですが。」
弁護人「1951年の第5改正薬局方までは収載されていたというようなことはどうですか。」
証人「・・・・・・。」
弁護人「それで第6改正薬局方において削除されたと。」
−中略−
弁護人「この第6改正薬局方で、インド大麻が削除された理由なんですけれども、それご存知すか。」
証人「私、承知致しておりません。」
−中略−
弁護人 「この薬局方で認められていたインド大麻草エキスとかチンキとか言われるものですけれども、喘息の薬とか鎮痛・鎮静剤で使われていたようですが、その使用による具体的な弊害というものが何かあったわけでしょうか。」
証人 「そういう用途での弊害がどの程度あったかということについて、私今までデータを見たことがまったくございません。」
弁護人 「そうしますと、イント大麻草が医薬品として使われる際に副作用とかその乱用が問題となって、これは取り締まらなくちゃいけないというような証拠というものはないと考えてよろしいわけでしょうか。」
証人 「当時医薬品として使われていたものが、正規の用途以外に横流れしまして乱用されたということはないんじゃないかと思います。もしそういうことがあったとすれば、何らかの形でやはり一つの薬物乱用の歴史として残るんじゃないかと思うんでございますが、そういうものを私、今まで読んだことはございませんです。」
弁護人 「このインド大麻チンキを治療で使ってる際に、その為にその患者さんに悪い影響がでるといいますか、禁断症状が出るとか、それを使ったために判断力を失って人に危害を加えるとか、そういうような事例というものはあったんでしょうか。」
証人 「私、承知しておりません。」
弁護人「ところで、昭和23年の制定当時の法律ですけれども、法規制の内容としましては罰金刑というものは当初ありましたか。」
証人「ありました。」
弁護人「内容は大体どのような。」
証人「罰金刑といたしましては、栽培等については当時の法律では、3000円から5000円以下の罰金という規定があったと思います。」
弁護人「所持とか譲渡の場合も大体同じですか。栽培・所持と輸出入と分けてますね。」
証人「ちょっと、私今・・・・・。資料は持っておりますけれども。」
裁判官「資料ご覧になりながらで結構です。」
弁護人「昭和23年の現行法の制定当時の刑の内容です。」
証人「23年当時というふうに仰られるんですが、今私が持って参りましたのは28年の改正分以降のものですから、ちょっと正確性に欠けるかもしれませんが、所持・栽培につきましては38年の改正が行われる以前におきましては罰金刑がございまして、3万円以下ということが書いてございます。3年以下の懲役または3万円以下の罰金に処するという規定でございます。この際には所持・栽培・譲り受け・譲り渡しというものがその対象になっております。」
弁護人「現行は所持・譲渡・譲り受け・これは懲役5年以下ですね。栽培・輸出入が懲役7年以下というふうにかなり重くなったわけですね。」
証人「はい。」
弁護人「昭和38年に罰金刑を廃止する、かつ懲役刑についても3年以下のものを5年とか7年にするというふうにかなり厳しくされたわけですが、これはどういうような理由からなんでしょうか。」
証人「この当時の法律改正の背景と致しましては、昭和30年代末期にわが国ではご存知の通り、ヘロインを中心と致します薬物乱用がずいぶん流行りまして非常に深刻な社会問題として受け止められていた状況がございました。(中略)当時は、大麻の乱用事例というのは私はそう多くはなかったと思いますが、罰則を強化することによって薬物乱用を一掃しようということで、この法律改正がはかられたというふうに考えます。」
弁護人「そうすると、昭和38年当時に大麻使用による具体的な弊害というようなものはあったんでしょうか。」
証人 「具体的な弊害がどの程度であるかということについては、私は承知しておりません。」
弁護人「乱用の事例はあったということですが、乱用というのは要するに法律に違反するような事例があったということですね。」
証人「そうですね。法律に違反するような使用があったと、それから医学的目的と申しましょうか、そういう用途以外の用いられ方で使う場合も私ども乱用というふうに考えておりますけれとも、そういうものがあったということだと思います。」
弁護人 「では、38年当時、そのような乱用によって具体的に保健衛生上の害が起こるというようなことはあったんでしょうか。」
証人 「それは、ちょっと私、具体的にはつかんでおりませんです。承知しておりません。」
弁護人 「大麻取締法は立法目的が法文上は明記されておりませんが、厚生省としてはどのようにお考えになっているわけですか。」
証人 「厚生省としましては、この大麻取締法というものは国民の公衆衛生の向上と申しますか、保健衛生上の危害の防止ということが、主たる目的だというふうに考えております。」
弁護人 「そうしますと、今言われたような立法目的に反するような弊害というものが、昭和38年当時及び立法当初の23年当時にはあったんでしょうか。」
証人 「当時、多分、日本ではこういう大麻の乱用というものはほとんどなかったと思います。(後略)」
−中略−
弁護人 「ところで、この大麻によって具体的にどのような保健衛生上の害があるのかということについて、厚生省として調査研究はされているんでしょうか。」
証人 「厚生省として今まで大麻の保健衛生上の危害ということについて、特別に研究したということはあまりないと思います。ただ、私どものほうでは、海外で行われている研究レポートと申しましょうか、時々いろいろな形で研究をレビューしたものといいましょうか、出てまいりますので、そういったものでフォローしているということでございます。」
−中略−
弁護人「摂取した場合の、まず身体に対する影響、例えば肝臓とか内臓が弱るとかそういう問題、あと致死量ですね、そういう薬としての強さですね、こういうものを比較した場合はどうでしょうか、大麻とアルコール。」
証人「例えば、アルコールと大麻と比べた場合に大麻は吸煙といいましょうか、そういう形での使用法でしょうし、アルコールの場合はそういう使用法はないわけでして、一般的には経口的に摂取されますから摂取量としてもアルコールのほうがずっと多くなるといいましょうか、あるものの重さという形で比べて煙でという場合には、量的には限界が出てくると思いますんでですけれども、いずれにしましても、アルコールの場合には動物実験等で致死量というようなものはわかるかと思うんでございます。で、大麻の場合にはそういう意味でこれまでの文献なんかを見ましても致死量というような記載はあまり見当たらないというふうに思います。」
弁護人「たばこですね、ニコチンはどうですか。」
証人「ニコチンは文献上の話で、私自身は、そういった研究やったことなどもちろん一度もないんですが、ご存知のとおり非常に毒性が強い。ニコチンそのものは極めて毒性の強い物質でございまして、かなり少ない量で呼吸筋を麻痺するとか、あるいは呼吸中枢を麻痺するとか、そういった作用のある物質でございます。」
弁護人「あと催奇形性とか、いわゆる染色体に対する問題ですけれども、アルコールとかニコチンはこういう催奇形性等があるんだという疑いが出てるんじゃないですか。」
証人「ちょっと、私、催奇形性がアルコールなりニコチンの作用であるかどうかということについては承知しておりません。」
弁護人「大麻はどうですか。」
証人「大麻についても催奇形性があるというようなことは、少なくとも証拠は得られてないんじゃないかと思います。(後略)」
−中略−
弁護人「そうしますと、身体的な作用の内容としましては、アルコール、タバコと大麻を比較しますと、アルコールやタバコ、つまりニコチンですけれども、よりも、その弊害が少ないということは言えないんでしょうか。」
証人「これは、ちょっと比較は先程申し上げましたように、私、非常に難しいと思います。(中略)ただ、タバコの害というのは単にニコチンの害というだけでとらえられているわけではないと思いますので、もちろん煙そのものによる気道に対する影響、それから煙の中に入っているタール分とか、そういったものの影響とかいうこともございますので、そういう点で比較すると、これも比較的新しくアメリカあたりで出されている大麻の関係の報告書なんかによりますと、特に大麻がタバコに比べて安全という話ではなくて、むしろかなり肺機能に対しては低下せしめる作用があるとか、それから大麻のタールの中の芳香族の炭化水素の含有量は、タバコの場合よりもかなり多いとかいうようなことが報告されておりますので、それが直ちに人の場合に、じゃどのくらい影響を及ぼすかということは、明確には分からないにしても、タハコと同じような意味での危害といいましょうか、は、あるというふうに考えております。」
弁護人「それは、煙として吸うということにおいて喉を刺激すると、もしくは煙の中に有害物質が入っている可能性があると、そういうようなことでしょうか。」
証人「煙として吸った場合にそこから炭素の微細粉末が飛び出してきて、肺に沈着するとかいうことも含めまして、肺活量がすみやかに低下してしまうというような問題だと思います。」
弁護人「それは当然タバコでも起こるし、場合によれば魚なんかを焼いて焦げたものを食べると発がん性のものが入っているというようなこと言われますね。そういうような問題ではないんですか。」
証人「そうだと思います。(後略)」
弁護人「そうしますと、アルコールやタバコと比較しまして、大麻のほうが特に保健衛生上の害があるというような証拠というものはあるんですか。」
証人「私、特に害があるとかないとかいうことよりも、むしろ大麻の場合のにはアルコールだとかタバコとはやや異質な作用があるんじゃないかということが、一つの問題であろうというふうに思います。」
弁護人「それは何ですか。」
証人「それは、大麻そのものの使用目的でもあろうかと思いますが、私がここで申し上げるまでもなく、さまざまな文献上にこれは載っていることですが、精神変容作用と申しましょうか、いうものが大麻にはあるということでございまして、それは多分かなり特徴的な作用だというふうに思います。」
弁護人「そうすると、逆に言えば、精神変容作用があることが大麻取締法により規制している根拠だというふうに考えられるということですか。」
証人「現在の大麻取締法に関して申し上げれば、私は、こういうことが言えると思うんでございます。これは私の説明としてお聞き頂きたいんでございますが、元々こういうものがどうして規制を受けなければならなくなってきたかという点に関しては、先程申し上げました、他の国での使用経験と申しましょうか、こういうものは規制の必要があるんだということが国際的にかなり古い時点で認識されたわけですが、実際のその大麻の生物学的あるいは心理学的と申しましょうか、そういったものについて、個別具体的にどういう作用があるかというものの研究が行われるようになってきたのは、時代としてみれば比較的近年になってからではないかと。そういう中でさまざまな作用がはっきりしてきましたし、それから今後なお解明すべき問題というのも、非常に多いということも又研究の結果としてはっきりしてきているということかと思います。」
弁護人「証人のお考えでは、精神変容作用があると、これが問題であるということですね。」
証人「これまでに、大麻について明らかにされてきている問題というのはそれだけではないですね。例えば、呼吸器官に対してはどういう作用があるかとか、それは決して人間の身体にとってよい方向での必ずしも作用というふうには考えられませんし、ぞさから、最近ではまた、例えば生殖系統に対してどういう作用があるかというふうなことも、新たに報告されるようになってきおりますし、それから精神科の領域におきましては、私はこれは別に専門家というわけではございませんが、大麻を使うことによって報告によればかなり少量でも、非常に感受性の高い人は幻覚が出るとか、そういった作用を起こすことがあると、更に大量に使っていった場合には、大麻の中毒性の精神病を起こすことがあるという報告が現にあるわけでございますから、そういう意味で大麻が国民の健康にとって現在の時点で好ましいものだというふうな理解はとうていできないけでございまして、これは、やはり人間の身体にとってさまざまな角度からも見ても、今わかっている範囲内でも見ても、けっして影響がないということにはならないと思います。」
弁護人「一般的に食べ物でも食べ過ぎれば有害になるわけですから、そういう一般論ではなくて具体的に比較したいんですけれども、アルコールでも今おっしゃったような同様な弊害はありますね。」
証人(うなづく)
弁護人「例えば、精神が変容すると、いわゆるアルコールの酔うということは、まさに精神が変容することですし、酔った結果として人身事故等多数出てるわけですし、又、その染色体とかそういうものへの影響についても大麻以上に明確にその影響があるんだというような報告もあると思うんですね。そういうことからして大麻のみを厳しく規制している立法根拠、もしくは行政上の必要性というものは、何でしょうか。」
証人「私はそこに至るまでの背景には薬物というものに対して、これは一つの社会の規範作りというか、法というものは規範作りという意味を持っておるわけですから、そういうものが社会の中でどう受け止められているか、ということがかなり大きいと思います。(後略)」
−中略−
弁護人「あるいは、あと、こういうような批判はないですか。例えばですね、人口1000人当たり何人くらいの人間が精神病になるのかというような社会的なデータがあるとしますね。で、大麻使用者1000人とって、それから何人くらいの人が精神病になるかと、大麻使用してない方1000人とって何人くらいになるか、というふうに比較をした場合に、大麻を使用してる人のほうに、精神病の発生率が多い、というようなデータはないと、むしろ少ないんじゃないかというような意見も、私、読んだような記憶があるんですが、その点はどうですか。」
証人「そういう記載があることも事実だと思います。(中略)ご指摘のような報告書の記載も、私、読んだ記憶がございます。」
−中略−
弁護人「アルコール症の数からすれば、大麻によるいわゆる依存症というんですか、中毒的な依存症というのはほとんどないと言ってもいいんじゃないですか、わが国の場合ですよ。」
証人「数は、少ないと思います。」
−中略−
弁護人「大麻の作用がはたして懲役刑をもって規制する程度のものなのかどうかという観点から少しお尋ねしたいと思いますが、今までの証言をお聞きしてよく分からないんですが、端的に言って、どういう点が一番問題なのでしょうか。」
証人「大麻の害は、先程来申し上げましたが、かなり、さまざまな作用を持っていまして、人間の体に対しては、生物学的な影響それから心理学的な影響と申しますか、そういった作用を持っているわけでございます。(後略)」
弁護人「具体的な弊害というのは、どういうものがあるんですか。」
証人「具体的なものというのは、私はむしろこれまで、さまざまなところから出されているレポートでご覧頂いたほうがよろしいかと思うんですが、私の記憶の範囲内で申し上げれば、繰り返しになるかもしれませんが、例えば呼吸器系に対する害がある、好ましくない作用がある、それから最近では生殖系に対しても害が――、懸念されている、というふうに言うべきかもしれませんが、懸念されている、それから更に精神的に見ましても害が見られる――害が見られるという言い方では充分じゃないかせしれませんが、精神的に見ますと先程申し上げましたように、急性の症状としては非常に感受性の高い人ではかなり少量でも幻覚等の作用をもたらすことがある。それから、そういうひとつの酔いというんでしょうか、大麻の作用が精神的に脳に働いている時間、あるいは、それを超えて何時間か経ったとしてもなお、その間において、複雑な作業をやる能力が損なわれるというような報告もございますし、従いまして、そういう機会において非常に高度複雑な機械の操作というものについては、危険性が予測される、あるいは非常に長期間そういうものを使っていた場合にはかなり重篤な精神障害をもたらす事例があるというような観点から、好ましくないと考えられるわけでございます。」
弁護人「精神作用について、少し内容的にお聞きしますが、幻覚が生じるというふうにおっしゃいましたけれども、それはどういうことなんでしょうか。」
証人「これは、私はレポートの記述を申し上げているわけでありまして、具体的に、じゃ幻覚の何が中身かということについては、私は承知をいたしておりませんが、報告上ではやはり幻覚が生ずる、またもっとその前段においては、一般的に感覚、例えば視覚だとか、聴覚あるいは味覚、そういったものが非常に過激な状態になるというような作用がまず出てくる、それから非常に鋭敏な人では、そういった幻覚のような症状が出てきて精神的な一時的な混乱を生ずることがある、しかもそういった作用は用量というものにどうも依存していく、用量と相関性があるということが報告されているところだと思います。」
弁護人「その精神作用のいわゆる感覚に対する影響ということですがね、これは例えば、気持がリラックスするとか、音楽がよく聴こえるとか、そういうことを私の経験ではよく聞くんですが、そういうような内容のことではないんですか。」
証人「そういうことが、感覚鋭敏化のひとつだと思います。(後略)」
弁護人「私は、今まで10年以上にわたって、数十件担当しましたし、関係者を見れば大体正確に見れると思っているんですけれども、大麻を使用して、そのために幻覚が生じたり、また極度に不安な状態になるというような事例は見たことはないんですけれども、証人はそういうものを具体的にご覧になったことがありますか。」
証人「私、ございません。(後略)」
−中略−
弁護人「次に、幻覚ということですけれども、かなり大量に吸ったら幻覚が生ずることがあるということですね。」
証人「はい。」
弁護人「幻覚の内容として、証人はどのように理解されていますか。例えば精神が落ち着きますと、例えば弓の名人なんかが的が大きく見える、すると的中率が高くなるということがあるようなんですが、この的が大きく見えるということは幻覚なのかどうか、ということがあるんですけれども、そういう状態は幻覚といえるわけですか。」
証人「一般的にはそういうことを幻覚というふうに私は言うと思えませんが。」
弁護人「そうすると、証人が使う幻覚が起こるというのは・・・。」
証人「私は申し上げましたように、そのような文献上の記載がある、報告書にそのような記載がありますよ、ということを申し上げているわけでありまして、その中味についてどういう幻覚かということはまさに、個別症例に当たらなければ出てこない話だと私は思います。」
弁護人「日本では毎年1000人以上大麻取締法で逮捕されていると思いますけれどもね、その中で幻覚が生じた例というのはありましたですか。」
証人「個別症例の中味について、個々の臨床上の所見がどうであったかということまでは把握しておりませんので、中味については承知しておりません。」
弁護人「先程、乱用という言葉を使われたんですけれども、この乱用というのはどういう意味で使われたのか、厚生省が乱用という場合にはどういう意味なのかおっしゃっていただけますか。」
証人「私ども、乱用というふうに一般的に使う場合、これは法律上定義があるということではないんでございますけれども、社会的に正当と認められている目的外に使うことを、私どもは通常乱用という言葉で呼んでおります。」
弁護人「具体的に言えば、医療用の目的以外に使う場合を乱用と。」
証人「薬物の場合ですと、一般的にはそのようにご理解いただいてよろしいと思います。」
弁護人「そうすると、大麻について言えば、大麻を使用して、具体的にそういう弊害が出るのかということとは関係なしに、要するに法律があって、法律に反してる、従ってこれは乱用であると、そういう形式的な定義の仕方と考えてよろしいですか。」
証人「私ども、大麻の場合、そのような形で乱用という言葉は使っておると思います。」
−中略−
弁護人「私は法律家として10年以上いろいろなケースを見てきましたけれど、やはり、当事者を説得する資料がないと−説得する材料がなくてただ、守れというだけでは、これは法律の権威の上から言っても問題があると思うんですね。そこで、大麻使用の例を見てみますと、気持が穏やかになるとかリラックスする、ということはあるんですけれども、それ以上のことはないものですからね。そういう現実を私、見ておりますので、そういう観点からすると、もう少し実態を見ていただいて、法律の運用をそれに沿って検討するということも必要かと思うんですけれどもその辺はどうですか。」
証人「これは、繰り返しになりますが、私の意見にしか過ぎないと思いますが、薬物乱用の問題というのは非常に世界的にも大きな問題になっております。で、先程ちょっとご引用のありました麻薬に関する単一条約というものが1961年にできて以来、ことあるごとに国連であれ、あるいは麻薬に関するあらゆるレベルの国際会議におきまして、単一条約というものを積極的に受け入れていくのが、一つの流れでありまして、そういう中で批准する国がどんどん増えていきまして、現在では117国くらいに達していると思いますが、そういう一つの国際的な流れを見ましてもこの条約の中で、大麻はそれでは適用除外しようかというような国際的な世論が出てきたというふうなことについては、全く承知しておりませんし、そういう話を聞いたこともございません。(後略)」
−中略−
弁護人「国際的な大麻の使用の状況ですけれども、証人は台湾の状況を知っていますか。」
証人「私、わかりません。(後略)」
弁護人「これは、私、伝聞なんですけれども、台湾では大麻をスープにして飲む習慣があるようですね。そういうことを聞いたことはありませんか。」
証人「ございません。」
弁護人「私の知り合いの友人が台湾の医者をやっているんです。けれどもその方のお話ですと、台湾ではちょうど今頃ですかね、大麻をスープにして飲む習慣があって、お月見とか、いろいろな会合でそれが出る。地元の警察署長とか、地元の名士の方がそれを楽しみにしていて、みんな参加する習慣があるということを聞いたんですけれども、そういうことはお聞きになったことはありませんか。」
証人「私は全く聞いたことがございません。」
弁護人「インドとか、ネパールでは国民が国内で使うことについては規制がないんではないですか。」
証人「伝統的に使っている国では必ずしもそういう規制はしていなようです(後略)」
弁護人「スペインでは2年ほど前に、大麻使用については成人が自宅で持っている程度は処罰しないというふうに法の運用が変わったんじゃないですか。」
証人「私、承知しておりません。」
弁護人「オランダの事情はどうですか。」
証人「承知しておりません。」
−中略−
弁護人「あと、アメリカですけれども、アラスカ州では自宅で大麻を栽培したり、所持しているものについては規制していない、という取り扱いになっているんじゃないですか。」
証人「ええ、そのように聞いております。」
弁護人「それはどのような事情からそうなったかご存知ですか。」
証人「アメリカの場合には1970年代の初めでしょうか、大麻の乱用というものが拡がりまして、その中で種々論議が行われ、いくつかの州で、少量所持と申しましょうか、そういうものについて州法の改正が行われる中で、アラスカ州ではこのような改正が行われた、というように聞いています。」
弁護人「そのきっかけになったのは、裁判で無罪を言い渡される、というようなことがあって、それがきっかけになったんじゃないですか。」
証人「そのきっかけについては、私、詳細には承知しておりません。」
−中略−
弁護人「大麻についても実際の作用を具体的に厚生省として調べるというようなご計画はないんですか。」
証人「私ども麻薬課としてもいろいろ研究は進めておりますが、私ども現状で申しますと、研究のプライオリティというのは覚醒剤の問題においておりまして、ここ2、3年を見ましても覚醒剤中毒患者のケーススタディだとか、覚醒剤の脳内での作用のメカニズムの研究だとか、主として覚醒剤の問題を現状では取り上げているというのが実情でございます。やはり予算というものがある規模で決められているわけですから、やはりプライオリティの問題があるわけでございまして、私どもは現在は覚醒剤の問題に力を注いでいるというのが実情でございます。」
弁護人「厚生省としては年間1000人以上もの逮捕者が出ていますし、これに要する税金−法を執行するための費用ですね、というのも警察官の人件費から始まって多大な支出になると思うんですが、そういう税金の適正な執行という観点からしまして、例えばアルコール、タバコ並みの規制に代えるとか、そういう観点からする調査というものをされる予定はないんですか。」
証人「現在のところそういうことは考えておりません。(後略)」
−中略−
被告人「厚生省の発行した「大麻」なんかでも、ものすごく悪いようなことが書いてあって、幻覚があるとか、公衆衛生の問題があるとか、いろいろ書かれていますけれども、僕が体験した中では、僕自身、酒なんかもやめたし、人と仲良くなくようなことがあっても、人に迷惑かけたり危害を及ぼすようなことは何もしていないんです。だから今日来ていただいたわけですけれども、はっきり言って、どこがどういうふうに悪いのか何一つ出し切れていないように思うんで、もう一度どこがどういうふうに悪いのかはっきり言ってほしんです。」
証人「どこが悪いということについて、私としては先程来申し上げたわけですけれども、それは私の一種の記憶の範囲で申し上げていることでございまして、実際にはもっと詳しいさまざまな−もちろん確定しているもの、確定していないもの含めてですが、多くの文献というものが、日本国内では比較的少ないですけれども、特に多用されている外国では出ているわけでございます。私はそういうものに基づいて、自分の理解している範囲でご説明したつもりでございます。(中略)私のほうとしては、主として諸外国で出版されている文献について私なりの説明をさせていただいたというふうに考えております。」
被告人「刑事罰でもって規制するというのは、内容に比べて厳しすぎるんじゃないか、実際、タバコよりも害がないし、酒よりも害がないし、農薬なんかに比べたらはるかに安全だと思うんですが、法律でもって懲役刑という形になっているわけで、ちょっと厳しすぎるんじゃないか、僕だって職を失ったり、そういうことからいけば、誰にも迷惑をかけていないし刑事罰でもって規制するほどのものじゃないんじゃないかと思うんで、その辺、立場を抜きにしてどう思われるか。」
証人「繰り返しになるかもしれませんが、私は、薬物の乱用というものは、人々の健康を守ろうという上おいては、やはり、なくす必要があるという考え方を持っております。(後略)」
−中略−
裁判官「アメリカの政府なんかの動きを見ますと、大麻使用の実態とかあるいは、具体的な使用者に出てくるいろいろな身体的、精神的な症状であるとか、そういうデータを取締機関とか医師とか、そういうところから積極的に集約して、今後の方針に役立てようと、かなりしているようですけれども、日本では特にそういうことはしていないわけですか。」
証人「そうですね。大麻については、そういうことをしたということはありません。もちろん外国のそういった報告については、全部フォローはしているつもりです。」
裁判官「フォローというのは、具体的には、文献を集めて内部で翻訳して読むということですね。」
証人「そうです。私ども、そういう意味での研究をやってるのは、むしろ覚醒剤・・・。」
裁判官「覚醒剤を今優先的にやっているということでしたけれども、大麻についてはなさっていない。」
証人「はい。」
−中略−
裁判官「成年が少量を使用するというふうな場合には格別弊害もないんではないか、というような議論がよくされていると思うんですが、今の使用の実態との関係で、そういうような使われ方の場合にどの程度マイナスがあるのか、あるいはその規制についてどの程度、どういう形で規制なり処罰をするのが望ましいのか、こういうふうな使用実態に即した検討と言いますか、つまり大量に長期間用いた場合の弊害というのと、また別にそういうふうな角度からの検討というのは−これはアメリカの動きの中心になっているようですが、日本では具体的に格別にはしておられないということでしょうか。」
証人「はい。私ども、これまでそういう視点での検討というのはしたことございません。(後略)」
−引用終わり−

 また厚生省麻薬課長に対する丸井弁護士の証人尋問からほぼ20年後の今日、大麻の非犯罪化をめざす市民団体カンナビストの会員が行った厚生労働省に対する情報公開請求への回答によっても、依然として同省が大麻の有害性に関するデータ、海外の研究事例についてのデータすら持っていないことが明らかにされている。

(以下、前述のカンナビストのホームページから引用)

【大麻が原因の二次犯罪に関する請求】
 まず、大麻が「犯罪の原因となる場合もあります」に、日本国内の事例があるのかを確認するため、厚生労働省に以下の内容で情報開示請求をしてみました。

・日本国内で発生した、大麻摂取による精神錯乱が原因の二次犯罪に関する一切の情報。但し、薬物事犯、アルコールを含む他の薬物との併用による事例、余罪としての大麻所持等を除く。

 ところが、約30日後に「行政文書不開示決定通知書」が送られてきました。
 不開示の理由は「開示請求に係る行政文書を保有していないため」でした。つまり大麻を摂取したことにより精神錯乱を起こし人を傷つけたり、事故を起こしたりしたような二次犯罪があったというような記録はゼロだというのです。
  これにより、「日本国内で大麻が原因の二次犯罪は過去に一例も確認されていない」ことを厚労省が認めたということになります。

【大麻の身体的影響に関する請求】  次に、以下の記載内容を見てください。
■大麻の身体的影響
脳に対して;
心拍数が50%も増加し、これが原因となって脳細胞の細胞膜を傷つけるため、さまざまな脳障害、意識障害、幻覚・妄想、記憶力の低下などをを引き起こします。また、顕著な知的障害がみられます。
(参照:http://www.dapc.or.jp/data/taima/3-3.htm)
--------------------------------------------------------------
*1971年にイギリスの研究グループにより「マリファナの常習は脳に損傷を起こす」という研究結果が発表されましたが、すべての対象者がマリファナ以外の薬物を使用しており、比較グループの適正及び診断技術に疑問があると非難された上、その後の各国での数度にわたる同様の研究で同じことが証明されず、現在は大麻による脳の構造的損傷に関する論争にはほぼ終止符が打たれています。
--------------------------------------------------------------
 これについても、日本国内に確認された事例があるのかを確認するため、厚生労働省に以下の内容で情報開示請求をしてみました。

・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の脳の構造的損傷に関する一切の情報。

 しかし、これについても「行政文書不開示決定通知書」が送られてきました。
  不開示の理由は、二次犯罪についての請求と同じく「開示請求に係る行政文書を保有していないため」です。これについても前項同様、大麻摂取が原因で脳の構造的損傷が起きたというケースはゼロだということを厚労省が認めたということになります。
  さらに、いろいろなケースについて質問をしてみました。以下の17件の請求についても同様に「開示請求に係る行政文書を保有していないため」に不開示となりました。

・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の白血球の減少に関する一切の情報。

・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の免疫力の低下に関する一切の情報。

・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の副鼻腔炎に関する一切の情報。

・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の咽頭炎に関する一切の情報。

・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の気管支炎に関する一切の情報。

・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の肺気腫に関する一切の情報。

・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の慢性気管支炎に関する一切の情報。

・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の心不全に関する一切の情報。

・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の不整脈に関する一切の情報。

・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の胸痛に関する一切の情報。

・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の狭心症に関する一切の情報。

・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の胎児の大麻中毒に関する一切の情報。

・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の流産に関する一切の情報。

・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の死産に関する一切の情報。

・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の精子数の減少に関する一切の情報。

・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の月経異常に関する一切の情報。

・日本国内の医療機関により確認された、大麻摂取が原因の肺癌に関する一切の情報。

 これらの厚労省からの返答から、「『ダメ。ゼッタイ。』などで述べられている大麻の身体的影響について、日本国内で確認された症例が一例もない」ということが分かりました。これらは厚労省の正式な返答ですので、「ダメ。ゼッタイ。」の説明には遺憾なことに根拠がないということが明らかになったのです。

【海外の最新情報に関する請求】  「日本国内の事例がないかもしれないが、大麻の危険性については海外の研究や文献で確認されているのではないか」と考える人もいるかと思います。しかし、最近の海外の政府機関などが発行している信頼できる文献を見ると、大麻の有害性は低いという結論で一致しており、少量の個人使用については非犯罪化する国が増えています。

 そこで、こうした事実について厚労省がどのような認識を持っているのか確認するため、海外の最新の研究報告書や非犯罪化の事例の厚生労働省内での扱いについても開示請求しました。以下に質問項目を列挙します。(実際の開示請求書には英原文題名、英語による正式機関名が付記されています)

1999年の米国アカデミー・プレス、医学研究所、神経化学および行動科学局の報告書「マリファナと医学---科学的根拠の評価」についての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。

2002年の違法薬物に関するカナダ上院特別委員会の報告書「大麻:要約レポート:カナダの政策に関する見解」についての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。

2002年の英国下院、英国下院内務委員会の「内務委員会第3報告書」についての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。

2001年の総理府ガンジャに関するジャマイカ国内委員会の「ガンジャに関する国内委員会報告書」についての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。

1999年のスイス公衆衛生局、スイス連邦薬物問題委員会の報告書「スイス連邦薬物問題委員会による大麻レポート」についての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。

1998年のニュージーランド議会健康特別委員会の報告書「大麻の精神衛生上の影響に関する調査」についての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。

1994年の豪州保健高齢福祉省、オーストラリア政府出版サービスの「オーストラリアにおける大麻に関する立法上の選択肢:連邦政府からの委託による報告書/州薬物政策閣僚評議会」についての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。

2002年のジョーゼフ・ラウンドトリー財団の「クラスB薬物としての大麻の取り締まり」についての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。

2000年の英国警察財団の「薬物と法律:1971年の薬物誤用法に関する自主調査報告書」についての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。

「少量の大麻製品の非常習的な自己使用目的の行為については、訴追を免除すべきである」と判示した、1994年3月9日ドイツ連邦憲法裁判所第2法廷決定についての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。

1997年の世界保険機関、精神衛生および薬物乱用防止局の報告書「大麻:健康に関する展望と研究課題」についての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。

2003年3月オランダで施行された新しい連邦規定により、薬局が合法的に医療大麻を仕入れ、医師の処方箋がある患者に対する販売することを可能としたことについての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。

2003年2月、ベルギー議会が多数決で、レクリエーション・ユーザーの5グラム以下のマリファナ所持、及び一本までのプラント栽培を認め、刑事罰を適用しないことを決定したことについての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。

2001年7月、カナダ政府が、患者に条件付きで医療目的でのマリファナの栽培と所持を認める法令を最終承認、7月30日から実施したことについての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。

2001年1月、ベルギー政府が大麻の個人使用を原則として訴追しない方針を閣議決定したことについての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。

2003年10月イギリス下院議会が大麻の法的分類をクラスBからクラスCに引き下げ、大麻の所持を「逮捕に値しない法律違反」とすることを承認し、2004年1月29日より施行開始したことについての厚生労働省内の連絡・報告・検討に関する一切の情報。

 以上16項目の質問に対し、最後のイギリスの事例に関する開示請求を除き、すべて「開示請求に係る行政文書を保有していないため」に不開示となりました。前述したように質問項目に該当する行政文書を保存していないということは、それらについての情報を何も持っていない、知らないということを意味しています。

 イギリスの事例についても「2002〜2003年海外情勢報告」なる小冊子の、ほんの一部分であり(現在開示手続中)、それが「連絡・報告・検討に関する一切の情報」とのことです。

 これにより「政府当局は海外の最新の研究報告書や非犯罪化の事例について連絡・報告・検討は(ほとんど)していない」ということが遺憾ながら明らかになりました。

【国内の研究に関する請求】
 また、以下の開示請求も同時に行いました。

・日本国内の研究機関によって行われた、大麻が人間に及ぼす危険性についての研究に関する一切の情報。但し、動物実験とそれに基づくもの、海外の研究の翻訳・海外の研究を単にまとめたものは除く。

これについては
「大麻乱用者による健康障害」(依存性薬物情報研究班)のうち、「IV 大麻精神病」の部分
「大麻乱用事例の特徴」(依存性薬物情報研究班)
 が該当する行政文書に当たるとのことです(他は日本国内の研究ではないとのことです)。本件については「法第13条の規定に基づき第三者から提出された意見書の検討等を行うことにより、開示・不開示の審査に時間を要するため」に開示決定期限を30日間延期されました。
------------------------------------------------
*情報公開法条文:
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H11/H11HO042.html
------------------------------------------------
 今後、開示されるであろう内容については

・大麻精神病とされている疾患は大麻が原因であると証明されたものなのか
・大麻精神病とされている疾患は他の精神疾患(分裂症など)ではないと証明されたものなのか

  といった点に注目したいと思います。
  また、場合によっては開示された行政文書に基づき新たな開示請求を行う予定です。

【まとめ】
 冒頭でふれたように、「(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センター」は厚労省所管の公益法人であり、そのホームページ(「ダメ。ゼッタイ。」ホームページ(http://www.dapc.or.jp/))は厚労省の委託を受けて運営されています。そこで大麻は危険な薬物であると述べているからには、それを裏付ける確かな情報があって然るべきです。それを確かめようとして上記のような36件の情報開示請求を厚労省に出したのですが、34件が「開示請求に係る行政文書を保有していないため」に不開示となりました。

 結局、「ダメ。ゼッタイ。」で述べられている大麻が危険な薬物だという見解には、裏付け、根拠がないということが明らかになりました。国民に対し「社会問題の元凶ともなる大麻について、正確な知識を身に付けてゆきましょう」などと呼びかけていながら、自らの知識の方が不確かだったという無責任さには到底、納得できません。

 「(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センター」は、国民の税金を使いながら、このような不確かな情報・知識を広め、大麻についての誤解と偏見を助長し続けていく姿勢を早急に改めるべきではないでしょうか。

 また国(厚労省)は、大麻が人体に与える影響に関する海外の最新の研究報告書や非犯罪化の事例について、連絡・報告・検討など(ほとんど)していないということが明らかになりました。EU(欧州連合)をはじめとする世界の主要先進国で行われた研究や調査について情報がないというのでは、自らの職務について怠慢の誹りを免れません。

 厚労省は、一方で大麻取り締まりを行っていながら、大麻の有害性がそれほど高くないということが明らかになってきた海外の新しい研究や調査のことは知らないというのでは、公正さを欠いているのではないでしょうか。厚労省がそのような硬直した官僚組織体質を改め、大麻問題について公正な検討をはじめるよう望みます。

−引用終わり−

 上に引用したカンナビスト会員氏の情報公開請求に対する厚生労働省の回答を確認する意味で、私は「(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センター」の「薬物乱用防止 ダメ。ゼッタイ。ホームページ」にある大麻に関する記述について、その根拠を確認すべく、公開質問状として下記の通り問い合わせた。

「麻薬・覚せい剤乱用防止センターへの公開質問状」
--------------------------------------------------------------
財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センター御中

平成16年6月15日

白坂 和彦
住所/携帯電話番号

 「薬物乱用防止ダメ。ゼッタイ。ホームページ」を閲覧し、下記に疑問があるのでご教示頂きたく、お願い申し上げます。
私は大麻取締法で逮捕され、現在公判中の者です。
 お返事頂いた内容は裁判の資料として利用するのと同時に、インターネットでも公開しますので予めお伝えいたします。

 下記URLに記載の内容についてご教示下さい。
 http://www.dapc.or.jp/data/taima/2.htm
「大麻とは」の項に次のような記述があります。 これについて教えて下さい。

第1点
「大麻(cannabis、カンナビス)を使用しますと短時間の記憶力や理解力が低下したり時間感覚に変調を来したり、車の運転などのように、身体各器官の調整や神経の集中を要求するような仕事を行う能力が低下します。研究結果によりますと、学生が(大麻で)「ハイな状態」(恍惚状態)になっているときには、知識を記憶できていません。動因(motivation。心理学用語で欲求の満足や目標の達成に向けられる行動を抑制する力の総称)や認識に異常を来たし、新たな知識の吸収を困難にします。大麻も偏執病等の精神病を引き起こすことがあります。 」

 上記、「研究結果」とありますが、いつ、なんという機関が行った研究かご教示下さい。
 また、その研究結果が発表されている媒体をご教示下さい。

第2点
「長期間乱用していますと精神的な依存ができあがり、同程度の効果を得るためにより多くの大麻を必要とする状態になります。この薬物が彼らの生活の中心を占めるようになるのです。 」

 上記の耐性向上についての記述の根拠となる研究結果をご教示下さい。
 いつ、なんという機関が行った研究かご教示下さい。
 また、その研究結果が発表されている媒体をご教示下さい。

第3点
「大麻の煙に直接接触している部位以外の場所にも様々な危険が存在しています。心拍数は50%も増加し、これが原因となって脳細胞相互の伝達に重要な役割を持つ小さな髪の毛状に長く伸びた脳細胞の細胞膜を傷つけるため、脳障害が発生します。更に有毒成分はその他の脳細胞にも蓄積されます。長期間の乱用では再生不良性の脳障害を生じることがあります。また免疫性も著しく低下します。人格や性格の変化もみられます。重度の乱用者にあっては、偏執病的思考を示し、労働の生産性、学業の成績、運転能力はいづれも低下します。 」

 上記の記述の根拠となる研究結果をご教示下さい。
 いつ、なんという機関が行った研究かご教示下さい。
 また、その研究結果が発表されている媒体をご教示下さい。

第4点
「マリファナは、生殖能力にも障害を生じさせますので、遺伝子の異常や突然変異をもたらします。男性ではテストステロン(性ホルモン)を44%も低下させます。また女性では生殖細胞に異常を生じます。(大麻の有害成分は)胎盤関門(母胎血液と胎児血液の間に胎盤膜によって形成されている半透過関門)をも通過して胎児にも影響を及ぼしますので、胎児の大麻中毒や流産、死産の原因にもなります。」

 上記の記述の根拠となる研究結果をご教示下さい。
 いつ、なんという機関が行った研究かご教示下さい。
 また、その研究結果が発表されている媒体をご教示下さい。

裁判資料で使う都合上、6月25日までのご回答をお願いいたします。
よろしくお願いします。

以上
----------------------------------------------------------
 上記の質問状を郵送すると同時にファックスでも送付した上、同センターに電話をしたところ、元厚生大臣官房付・糸井専務理事は私に対し、「10年くらい前のさまざまな研究を要約した」とのあいまいな説明をするのみで、その根拠を示さず、「当センターは公益法人だから裁判に使う資料ということになると、お答え申し上げることができないかもしれない」と、公益法人であるからこそ根拠を明確に示すべきであるのに、意味不明な回答をするばかりであった。

 さらに同センター糸井専務理事から本年6月25日に電話での回答があった。私は「言った、言わない」の誤解を避けるため、文書での回答を要求したが、文書では回答しないとのことで、その電話での口頭による説明をもって回答とする旨、通告された。その電話による口頭での回答は下記の通りであった。

 同センターのホームページに記載がある大麻の説明については、同センターで発行している「薬物乱用防止教育指導者読本」という冊子から引用・編集したとのことで、その冊子の現行版は2001年に改定されたものであり、初版は1996・7年頃だそうだ。

 この冊子の元になっているデータは、米国の「ドラッグ プリベンション リソース インコーポレーション」発行のブックレット、「ドラッグ エデュケーション マニュアル」であるという。このブックレットの発行年月日は不明だとのこと。

 日本国内において、大麻の有害性をプロパガンダする担当省およびその委託を受けて運営されている「(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センター」は、自ら垂れ流している大麻有害論について、根拠となるブックレットの発行年月日すら明示できないのである。大麻弾圧の総本山ともいうべき、「動物園の猿のほうがマシ(フジテレビ系列ニュースジャパンで報道された米国内での一評価)」なジョージ・ブッシュ率いる戦争中毒国家米国で発行された一冊の冊子のみを根拠に、多数の研究が否定している大麻についての有害性を、税金を使って流布していることが明確である。

 同センターの冊子に記載の大麻に関する内容が近年の海外の研究者による研究結果と著しく異なり、正確ではなく、現在は大麻にそれほど毒性がないことが明らかになっており、医療分野でも利用されている現状について問うと、元厚生官僚糸井専務理事は、「各国によって事情が異なりますから。オランダなどでは他の薬物なんかが蔓延している事情もございますし」としか答えられないのである。
 同センター独自に、または厚生労働省として、大麻についての学術的研究を行っているのかという質問に対しては、「そのような研究を独自に行っているということはない」そうである。

 大麻の有用性、低害性について、海外で行われている近年の研究結果を反映させた記載に改定する必要があると思うが、その予定はないかと糸井専務理事にお聞きしたところ、「現在のところ改訂の予定はない」とのこと。それは、税金を使って間違った情報を垂れ流し続ける行為を止めるつもりがないということである。
 つまり、「動物園の猿のほうがマシ」なジョージ・ブッシュ率いる米国発行の一冊の冊子以外、日本の行政当局は大麻の有害性に関する根拠を持っていない。各国の研究者によって既に科学的に否定されている内容の、発行年月日や出典不明のブックレットのみを根拠に大麻を取り締まっているのである。

 そして、それを司法は「大麻に一定の薬理作用があることは公知の事実である」と盲目的に追認している。

 20年前、厚生省麻薬課長の証言では、大麻に関する情報は海外の文献に頼っているとのことだった。
 2004年現在、厚生労働省および(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センターは、大麻の有害性を証明する独自の調査はまったく行っておらず、大麻有害論の根拠は発行年月日も不明だという米国で発行されたブックレット一冊のみなのである。
 現在、海外で行われている多種多様の研究は、ますます、大麻にはカフェインと同程度の毒性しかなく、その使用は短期的にも長期的にも極めて安全で、犯罪の原因になることも、暴力的になることもないことを明らかにしている。
 それにも関わらず、日本の司法当局は、「大麻に一定の薬理作用があることは公知の事実である」と、その薬理作用についての内容も検証せず、20年前の最高裁決定にのみしがみついている。

 医療的にも有効性が確認され、産業面からも、環境面からも、大いに注目されている大麻を、厳しく取締り、逮捕し、懲役刑を課すことは、国家権力による人権侵害以外のなにものでもなく、我が国の産業や環境といった国益・保護法益を著しく損なうものである。

> 以上のほか、所論がるる主張するところにかんがみ、更に記録を調査、検討しても、
> 大麻取締法が違憲無効であるとする根拠はなく、各論旨はいずれも理由がない。

 判決は、大麻取締法が生存権を侵害しているという私の主張をまったく黙殺したうえ、出典を明らかにしたうえで明示している近年の大麻研究の報告についても読んでいないかのごとく完全に無視し、その一方で、20年も前の判例に拘泥し、根拠も示さずに大麻有害論を是認しているだけだ。判決の各論旨にはいずれもまったく根拠がない。あるのは20年前の判例だけである。
 量刑は運用によってなんとかなるし、立法の方で扱う裁量権の問題だし、といった司法の逃げ腰が、今日のような大麻取締法による人権蹂躙を増長させている側面があることを、この際、あなたたち最高裁の判事さんたちには自覚してもらいたい。

2.人権侵害の実態について

 以下、取締当局や裁判所が、大麻取締法を盾に、税金を使って、どのような人権蹂躙を行っているか、その実態の一部を、私自身が参加するニッポン マリファナ ラヴァーズ
(http://nipponmarijuanalovers.fc2web.com/index.html)の「逮捕者の手記」から引用する。

■ hightimerのケース(当時33歳,男性)

・ 捜査の端緒
    弟の友人が家宅捜索を受け(覚醒剤所持容疑)、冷蔵庫内より私が譲った大麻バターが発見されたため。

・ 当時の社会的環境
   父の飲食店(一階)を手伝いながら、自分で開いた飲食店(二階)が、3年目を迎えていた。
   家族構成は妻と3人の子供達(当時7歳、5歳、1歳)。

・ 前歴の有無
   過去に逮捕された事は一度も無い。

・ 他の規制薬物との絡み
   捜索にきた刑事から「覚醒剤があるだろう」と言われたが、他の薬物などは一切使用、所持はしていなかった。

・ 捜査の過程
 刑事達がきた時、私は父の店を手伝っていた。譲り渡したのが二階厨房内だったため、営業時間中(午後8時頃)に6人の刑事が二階店内及び実家(棟続きで二階厨房内より出入りできる)を捜索。ちょうど私の店に客は居なかった。そしてアルバイトに一階の父の店を手伝うように伝えた。
 閉店にする事も許されず、捜索途中に客が入って来たりしていたので、そのたびに断っていた。「大麻(乾燥物)を出せ」と言われたが、既に無かった。座敷が3部屋あり、真中の部屋に座らせられ、一人の刑事が対座していた。
 何かいろいろ聞かれたが、何も覚えていない。他の刑事達は、何か目ぼしい物があるとその部屋に持ってきて、対座した刑事がそれについて質問していた。
  厨房の天井に屋根裏収納への入り口があり、何があるか聞かれたので、栽培中の大麻があると言った。
  栽培室からクローンされた9本の大麻草が発見された。その他、冷蔵庫から大麻バターも見つかる。
 同時に自宅も捜索されていた。妻の母に来てもらい、子供を連れて行ってもらったと妻から聞いている。全てを引っ掻き回され、気持ち程度に元に戻す程度だったらしく、何がどこにあるか全くわからなくなったと妻が言っていた。自宅からの押収物は、大麻に関連している書籍だけだった。

・ 逮捕
 逮捕状は大麻取締法違反容疑(当初は所持と売買の容疑)だった。取調べを重ねていくうちに、栽培記録などから、栽培の罪に切り替わった。

・ 逮捕時の様子
 大麻草確認のため水溶液に葉っぱをちぎって入れる。ほんのりと色が変わった事を私に確認後、現行犯で逮捕される。真っ黒な冷たい手錠をその場でかけられた。
 立会人として父が上がってきていた。彼は平静を努めていたんだと思う。私は大きな声で父に「ごめんなさい」と言えなかったのが今でも悔やまれる。

・ 弁護士の選任  
 金銭面でとても私撰は無理だと思い、警察署内での簡単な確認作業中(到着が夜遅かったため)に、国選で頼むと伝えた。その後友人も逮捕され(私の栽培していたクローンの親株を発芽させた栽培罪)、その両親が知人の紹介で私選弁護士を頼んだ。
 私は拘置所に移管された日にその弁護士が面会に来て、妻に頼まれたと言って、友人と私の私選弁護人であることを知った。紹介があったと言う事で、30万円の弁護費用を2人で折半する事になった。

・ 勾留中の取り調べ      
 事件の内容を把握し、裏付けが取れるまで毎日取調べを受けた。最初の数日間は朝から夕方時には夜という事もあった。生まれてからのデータを集めるかのようにいろいろ聞かれた。
 2日目には朝から大声で怒鳴られる。それは私から聞きだすための手段(自供させるための嘘)だった事がわかり、その場で刑事に注意した。この事件では他に逮捕者が3人いて、彼らの正しい証言と、警察の知りたい情報を質問に織り交ぜられながら、脅されたり(実刑になる・裁判に不利・大声で怒って聞く等)宥めたり(全部言ってきれいになれ・やり直しが聞く・お前の事を心配している、信用している等)されながら聞かれた。
 私は出された人名や事実については嘘をつかず話した。警察側の知りたい質問には「知らない」で通した。

・ 逮捕後に反省の色を示したか否か
 自分では反省をしていたつもりだった。しかし、担当刑事の取調べや検事調べで、大麻を理解して欲しいという気持ちがあった。そのために、そういった話をしたことが、反社会的で反省の色が無いととらえられた。
 接見禁止が解けて、妻が接見にきた時にその事を言われ、一緒に逮捕された友人の事もあるのだから「しっかり反省して」と涙ながらに言われた。主犯である私によって友人に迷惑をかけられないと思い、裁判を争うという考えは無くなった。

・ 起訴      
 拘留延長によって最長の20日間(実質15日ほど)の取調べを受け、拘留が切れる日に起訴状を留置場にて確認する。私の友人は拘留延長されずに私と同罪で起訴された。事件の発端となった弟とその友人は、起訴猶予で10日間で釈放されていた。

・ 保釈      
 友人は私撰弁護士により2週間ほどで保釈金100万円で保釈された。
 私の場合、弁護士が保釈申請が通らないかもしれないと伝えられていたが、逮捕後約一ヶ月で保釈金120万円で保釈された。弁護士料は全額返還(裁判をきちんと受ければ全額戻る)された際にそこから支払った。

・ 公判      
  罪状認否と判決の2回開かれた。供述した事をすべて認め、早く結審して欲しいと思った。保釈され、現実社会への生活に戻り、改めて反省している事を強調した。

・ 求刑      
   一年六ヶ月。本人は全く反省しておらず、再犯の恐れがある。

・ 判決      
 懲役一年六ヶ月、執行猶予三年。大麻は精神的作用があることに違いなく、法で規制されている事を知っていて栽培した罪は重い。

・ 事件による被害 
 逮捕時の「お前の人生どーにでもできるんだ」と言われた事や、「新聞にも出るぞ」と言われ、一万人そこそこの小さな町の大きな事件だったため、全てを失った、人生が終わったと思った。
 始めの二日間は、取調べを受けていない時に、起きていながら夢を見たりしていて、心が壊れていくようだった。
 子供が私の件でいじめにあった。子供本人は泣きながら帰ってきたが、理由は決して言わなかった。担任にはその事を伝えたが、知らなかったらしい。
 幼稚園に迎えにいくと、子供達が帰りに遊ぶ約束をするのだが、はっきりと避けられたり、挨拶をされなかったり、親が遊ばせないようにさせていた。
 小さな町なので、自分自身で街中での行動を不自由に感じていた。そのため人目につかない通りを選んで通り、買い物など人の多いところにはめったに行かなくなった。
 なぜかテレビの娯楽番組に全く興味を失い、笑う事が無くなった。
 判決を受けて一年半以上経つが、未だに人目が気になる事がある。
 最近の事を挙げると、母が仙台に住む叔母から連絡を受け、心配していたと言っていた。話を聞くとテレビで顔写真つきの報道をされていたという。私はそれを聞いて絶句した。
 その他妻が言われた事で、逮捕後二ヶ月経ったころ、夏祭りに子供を連れて歩いていた時の事を「よく人前に顔を出せた」と言われたという。
 私はいつも、どんな悪い事があっても良い方に考える馬鹿のつく楽天家だったが、自分の住む町の住人のほとんどが、そんな風に私の事を思っているのではないか、と思うようになってしまっているのが悲しい。しかし一番の被害者は子供達である事は言うまでも無い。

  子供達へ
  パパはこれからも君たちをしっかりと愛していきます。
  守ってやれなくて本当にごめんなさい。


■ バングラッシーのケース

 私は20代前半の頃、休日は海で過ごしていた。それはウインドサーフィンというマリンスポーツが大好だったからです。そんなある日、本場ハワイに行っていた海の先輩が、大麻を土産に帰ってきた。海の仲間達は海外旅行経験者もいて、大麻を見てもひどく驚く人はいなく、興味のある人は喜び、興味のない人まったくはそっけなかった。
 大麻はソフトドラッグである事実を、いつ仕入れたのか記憶にありませんが、知識として持っていて「これは清涼飲料水ってとこかな」と言いながら、何の抵抗も無く自分から求めたのを今でもハッキリ覚えている。これが私の大麻初体験となった。
 海上で波と風を相手に遊ぶのはとても楽しい!日が暮れて浜に戻り道具を片付けている時に、たまに回ってくるジョイントは最高で夕日を見ながら将来のことや彼女のことを話しあった。そんなことをしていながらも、いつしか海に行く足も遠退いていた。
 その頃は、私を含め友達3人で大麻栽培に夢中になってました。友達2人はサファーではなかったが、経験知識は十分備えていた。ホームグロアー3人組は違法行為である事を認識していたので、掟として

1、外に持ち出さない
1、他人に渡さない
1、他人に話さない

 これを3原則とし誓った。
 皆この掟をしっかりと守っていたようだ。こうした中で私達は、会社での昇進、結婚と人生を一歩々歩んでいた。
 大麻の使用目的方法は、私的な時間場所で、寝る前、雨降ってる休日の朝とかに、リラックス効果を求めるものでした。方法は煙にして口から摂取していた。
 逮捕原因は3人組の一人であるM夫婦の間に亀裂が生じた。それは性格上の不一致が原因にも関わらず、Mの妻は離婚を有利に進める為、警察に「夫が大麻を吸って暴力を振るう」と通報した。なんと身内から通報されたのであった。
 Mは決定的な夫婦喧嘩の後、通報を察知し緊急に連絡してきた。私達は身辺整理を早急に行なった、H6年7月中旬の出来事だった。
 その後、普通に生活をしていましたが、H6年9月下旬に、M家族の方から2日前大麻取締法違反で逮捕されたと聞かされ、背中が凍りついていた。Mは身辺整理をすべてしていなかったようだった。
 私達3人組はもし最悪の事態(逮捕)が発生した場合、自分一人の事件として裁判を受けようと誓い合ったが、不安は拭い去れるものではなかった。だがMはきつい取り調べにも屈する事無く、誓いを貫き通した。

 11月中旬に保釈されたMであったが、自分の妻からの通報と言うことでショックは隠しきれず、随分痩せていた。あまり多くを語りたがらなかったMだったが、必要最小限の事は話した。私とIの名前はM妻の通報からすでに出ており、否認するのが大変だったらしい。貫き通した理由は、「自分の家庭のトラブルが原因で、私とIに迷惑をかける訳にはいかない。」と強い気持ちがあったという。警察に名前が出ているので気をつけろと涙ながらに警告していた。
 かくしてMは、一人の事件として法廷に挑んだ。12月中旬の第2回公判で判決が下り懲役6ヵ月執行猶予3年であった。(初犯)
 Mの判決が下りこの事件は決着はついたと思えていた。それは、2人以上の自供がないと逮捕状を裁判所に請求できないなどと勝手な思い込みをして、自身を慰めていた。その頃から留置所に放り込まれる夢を見るようになりスッキリしなかった。だが、それは正夢となった。
 平成7年1月14日
 仕事を終え、多少風邪気味だったので病院に寄った。帰るコールをすると「山田さんから電話があった」と知らされたが、山田という人に心当たりが無い、いやな予感がした・・・・
 夕食の最中にその山田が尋ねてきた、玄関を開けると見知らぬ人物がいた。(PM8:30頃、ガサは早朝とは限らない)
 穏やかに私の名前を尋ね、本人と確認すると、態度を豹変させ大麻取締法違反の逮捕状を突き付け大麻を出せと迫った。私は否認した。すると玄関の外に待機していた4人の捜査員が傾れ込むように入って来た。

「何故来たて思う、理由も無く来る訳がないだろう」とえらい剣幕だった。

 出さないのなら家宅捜査をするという事でした。身辺整理を済ませていたので、弁護士の立ち合いなしでの捜査を承諾した。(弁護士不在は後々悔やむことになった)
 捜査員が妻に強い口調で何か質問している。この時妻は妊娠五ヵ月の身重な体で、とても不安な表情をしていたので空かさず「俺への逮捕状で妻は関係無い、妊娠五ヵ月の大事な時だから質問するな」と抗議したが、その3倍位な大声で「令状がある」の一声で聞き入れてもらえなかった。
 すると、奥の物置部屋を調べていた捜査員に呼ばれ、「これはなんだ?」見覚えがある封筒があった。私の身辺整理は完璧ではなかった。
 栽培中に大きなリーフができたので4枚位ちぎってのこしていた・・・すっかり忘れていたものだった。自分が所持していたと認める。証拠物件が挙がったので、0.912gでの大麻不法所持現行犯逮捕であった。生まれて初めての手錠、初犯での逮捕となった。もう逃れることはできない・・・

 捜査員は逮捕状を示した時に、私が否認したことを怒っていて、喫煙具を出せと怒鳴り散らしての捜査となった。キセルはすでに処分していたので、苦し紛れに市販されているたばこに詰め替えて喫煙したと自供した。バッズ部分のところならまだしも、効果のあまり無いリーフでの逮捕ということで、なんとも嫌な感じだ。だが大麻に変わりは無い、残念無念だった。
 大麻吸飲で私自身が被った害は無く、また被害者も存在していない。私的な時間場所で大麻を吸うのと、妊娠五ヵ月の身重な妻の前で大声で怒鳴り散らすのと、どちらが罪であるかとその時強く疑問を感じていた。
 二世誕生の喜び、夢、希望、充実感すべて絶頂の時だけに、そのギャプたるもの天と地ほどの差があった。連行される時、手錠姿で妻の体調を心配することは、とてもとても辛かった。
 警察署に向かう道中に捜査員が、逮捕成功で安心したのか、サウナに行く計画話をしていた。私の感情を逆撫でする会話であったが、犯罪者を逮捕した緊張感はまったく感じられなく、こちらも罪の意識は薄れる。
 警察署に到着すると報道陣がいた。ギョッとして上着を被ろうとすると、暴力団の賭博事件の取材と知らされホッとした。捜査員から「こんなちゃちい事件で報道は集まらない、張り合いがないわ。」と言葉を浴びせられ、しばし呆然となり複雑心境になった。

 署内に入ると職業、職歴、家族構成、素裸身体検査、両手足の指紋、前後左右斜めの写真撮影をされ、逮捕から48時間以内に送検、24時間以内に拘置決定と、ベルトコンベアーに乗せられた状態だった。
 移動の際には冷たい手錠腰ひも、むかで行進にどどめ色の護送車である。地検で「どうして警察が来たと思う」の質問に「分かりません」と答えると、「それでは取り調べをするので拘置を認める」と単純すぎる。
 留置所では当然檻の中、小さな小窓から食事が入れられる。ブタ箱とはよく言ったものだ。男性2班に分けられていて、こちらの班は12人ほどいて、半数は暴力団関係者だった。素人で初犯の私にとって、それはそれは別世界の所であった。
 覚せい剤、窃盗、傷害、恐喝、放火、賭博、詐欺、強盗、薬物売人、不法滞在、色々な罪名の被疑者がいる。留置所だから当たり前の事か。
 それよりも、極寒での1月〜2月の拘置生活で、この寒さには閉口した。暖房がないのは言うまでも無い。思考能力はどんどん低下した。就寝時間には房に布団を敷いて寝れるのだが、布団にはシーツなど無く、人間の油と垢ほこりでテカっているほどで、悪臭も放っていた。毛布も掛け布団も同様だった。
 日本国民に生まれ育ち、泣いたり笑ったり、それなりに努力してきた。被害者無しの犯罪と言われているが、法のハードルを越えるとこんな仕打ちを受ける。
 どこかの房からすすり泣く声が聞こえてきた。私も色々な思いがあったが、泣いてる訳にはいかない。この最悪の生活状態で、きつい取調べに挑まなければならない。自分を見失ってはいけないと自身を奮い立たせていた。
 Mは生活保安課での逮捕だったが、私は刑事課だった。取調べでは、令状を突き付けた捜査員がそのまま取調べの担当刑事となった。
 最初に、自分が不利になる事、言いたくない事は言わなくてよい事と、弁護人を依頼する権利がある事が告げられる。
 言いたくない事は言わなくてよいと言ったわりには、机をドカドカ叩いて精力的だった。取調べの内容は通り一遍なものであり(何がどうしてこうなった?のしつこい取調べ)、どういう訳か客の名前を言え、一服もった奴の名前言えなど、最初は何故こんなこと聞いてくるのか訳が分からなかった。とにかく警察は罪を作りたいのだろうか?
 印象強かったのは、摂取目的で栽培、所持を認めると「何故、違法行為と認識があって、法律を破ったのか?」との質問には調書を書く手に力が入り、目が鋭い。「好奇心があった」と答えると、「それだけじゃないだろう」としつこく何か言わせようとする魂胆が見える。
 誘導尋問には要注意だ。法律を破った理由調書は、裁判の審理で重要なポイントとなると弁護士から聞かされた。
 種子の入手経路は黙秘した。自分が栽培し一人での事件と貫き通した。こう書くと簡単にくぐり抜けたように見えるだろうが、交友関係、特にMとIの関係の追求はとても厳しかった。Mは誓いを貫き通している。私が落ちれば彼は再逮捕されイモ吊る式逮捕となり、共犯者MとIと私の自供が一致するまでズルズル長い取調べになるのは分かり切っている。そんなことは冗談ではないと思っていた。
 刑事は私とMとの会話内容まで突き付けてきた、証拠もない質問をしてくる。これでは誰が通報したのか丸分かりだ、「知らない」と貫き通す。刑事の焦りの色が見えていた。
 ある日取調べで呼び出され、「MとIの事話す気になったか?」といきなり切り出され、「知らん」と答えるとすぐに「房に帰れ」と言われた。煙草とコーヒーは貰えないのですか?と聞くと「知らん」とやりかえされた。これは辛い、煙草とコーヒーが同時に味わえるのは取調べ中だけだ。
 だがこの時、後で知った事だが、私がMとIの事に対し、落ちないと判断するとIの逮捕状を裁判所に請求したようだった。ところがIの身辺整理は完璧であったようで、逮捕という最悪の事態は免れていた。I君はさすがである。
 刑事には法を破った者を反省させる使命も課せられているらしく、取調べ中に大麻の規制理由を、阿片戦争に例を示し説明し始めた。
 使用した本人が滅び、家族が滅び、最後に国が滅びてしまうと話した。私は大麻取締法で検挙された、阿片とは話が違うと言うと、薬物は皆同じ、そんなこと言ってると実刑だと脅かされれる。
 私が有害説を否定するような発言すると、明確な回答はせず「順法精神」を問われ、実刑判決だとしか言ってくれない。あまりにも傲慢だと感じたので、黙り込んだ。この日の取調べは黙り込んだまま終わった。
 私も一人で起こした事件として、きつい刑事調べを終了した。そして最終の検事調べに挑んだ。県警本部で行なわれ、刑事調べより上の、検事さん直々の取調べということでカチコチになって向かった。
 さぞ厳しい取調べと覚悟していたが、私の場合証拠として挙がった大麻所持、栽培を認めていて、弁護士の指示通り反省を示しているので争点は無い。これも通り一遍の調べでした。
 MとIに関しての調べは多少くどかったが、検事調べ無事終了?警察署に戻る車中で刑事にどうだったと聞かれたので、MとIの話がくどかったと答えると、道中にもかかわらず「お前正直に話せや、取調べのやり直しの指示が出るぞ」と怒鳴ってきたので、さすがに腹が立ち「いつでも受けて立つ」と怒鳴り返した。怒鳴り返したのが原因ではないが、起訴された。
 これで被疑者から被告人となった。
 接見(面会)は所持量の少なさと、栽培所持を逮捕時に認めた事からなのか接見禁止ではなかった。
 母が暖かそうなスエット上下、靴下、下着の差し入れを持ってきてくれた。法律を破った息子だが、寒い檻の中に掘り込まれているのを不憫に思ったのだろうか・・・
 強化プラスティック版越しでの対面は映画さながらである。母は私の体調をとても心配してくれていた。15分の接見時間はあっと言う間に過ぎてしまう。
 母の心情を察するとすごく辛い。妻も接見に来て皮コートを差し入れくれた。
 後日に気がついたのだが、袖の内側に蛍光インクで薄く「がんばって」と書いてあった。これを見た時には涙が溢れ、毛布を被り声を殺すのが大変だった。接見の話はこれくらいにしとこう!

 弁護士は過去に駐車場で車の接触トラブルで弁護士会に相談に行った事があり、名前をフルネームで覚えていた弁護士に託そうと決めていた。取調べでMとIの事になると、さすがにきつくなったので依頼した。弁護士から何故もっと早く連絡してくれなかったと「令状を示された時に依頼すべき」と厳重注意を受けた。何故だか話を聞くとなるほど納得!
 あまり話せないが同時期、歌手の長淵剛が大麻で逮捕されている。確か2g位の所持だったと記憶しているが、処分保留で釈放された。結果不起訴を勝ち取っている(私より所持量は多い)。
 微妙な時の流れだろうか、この時期1g位の所持の場合、自供により不起訴になるケースが存在していた。話を聞かされ悔しい思いがあった。弁護士の依頼は早急に行なうべきだった。弁護士費用(私選)30万円。保釈金150万円。保釈金は裁判に出廷すれば9割返金される。
 私の事件を担当した刑事課は、取調べも終了し起訴されているのに、取調べ室ではなく、刑事課室に呼び出し、他の大麻仲間の名前を出せと茶菓子を勧めながら迫ってくる。人の心を玩ぶ行為に、絶対納得できなかった。弁護士に相談したが、刑事は「雑談してるだけ」と言い張る。
 留置仲間の組員は刑事課は、暴力団対策課よりしつこいと言っていた。この行為がまかり通っていると知ると、ひどく落ち込んでしまった。それも束の間でした。すでに起訴され取調べも終わっているので警察署には用事は無く拘置所に護送される。見送りに来た担当刑事に「お前は友達思いだな、よく頑張ったな、体に気をつけてな」と少し、悔しげな表情も見せていた。
 相変わらず冷たい手錠に腰ひもで、むかで行進をさせられる。どどめ色の護送車は、市内の各警察署に、起訴済みの被告人を集めながら拘置所に向かう。じゃばらのカーテンの向こう側に見慣れた風景が見え隠れしてた。つい先日この道を通った記憶がよみがえったりする。自販機があっても何も買う事は出来ない。
 拘置所に到着。正門を通り鉄城門を護送車はくぐった、後方でガシャーンと扉が閉まった音がする。社場に戻さないぞーと叫びにも聞こえてしまった。ここ拘置所では名前ではなく番号で呼ばれる。私は237番だった。
 身体検査が行なわれる、10人ほど並べられ手上げ、足上げ、肛門を曝すカンカン踊りをさせられる。かなり凹んでしまった。
 新入りは、取りあえず独居房に入れられ、昼食は変わる事はなく小窓から受け取る、留置所の食事より味噌汁が暖かい。ごはんは麦飯なので少し黄ばんでいる。(ばくしゃりと言う)頭の隅を刑務所がかすめまくる。

 新入りのしおりを呼んでいると、担当が鉄扉の前で止まった。「237番出ろ」と強い口調だった。
 この時、絶望が込み上げた。もう一人警察に名前が出ているIが逮捕され、私とMの名前を言ったと思った。余罪が出てしまったのかと体が小刻みに震える。警察署に逆戻りして取調べのやり直しをさせられると感じていた私は固まってしまっていた。
 ところが「保釈だ」と聞かされホッとした。母が保釈申請をするよう弁護士に頼んでくれていた。私は黙秘の部分があり、留置仲間の暴力団員から、黙秘があると保釈は無理と聞いて諦めていたのですごく嬉しかった。
逮捕から約1カ月半(50日)ぶりの社場となった。統計から見るとかなり早い保釈である。思い起すと留置所を後にする時、私が入れられた時先に留置されていた人が起訴もされず、長い取調べを受けている者もいた。
 迎えに来てくれた兄に頭をコツンとされた・・・母と妻の顔を見るのがとても辛い(父は他界)。実家に向かうと妻も待っていてくれ、暖かく迎えてくれました。母は「お前を信じている」と涙ぐんでいた。父の霊前に帰宅報告をした。何も言いようが無い、何も言えなかったのが本音かな・・・
 MとIに会う、ここでは健闘を讃えあうかたちとなった。すでに執行猶予判決で決着がついているM。家宅捜査を無事乗り切ったI。
 Mは、『お前を信じていた』と言うが、内心不安があったと思う。交わす言葉は必要ない、堅い握手を交わした。
 Iは元々気が小さい面もある、捜査員の「また来るからな」の捨て台詞に縮んでしまっていた。

 お互いの家に行き親御さんには全てを話し謝罪し詫びた。悪友ではなく親友としての今後を誓ったが、親は皆同じ意見で、もう会わないでほしいと願われてしまった。私達は親を安心させる選択をした。やはり3人集まれば、さぞ心配する事だろう。友情は永遠だが、引き裂かれる感がありとても辛い。お互いエールを送りながら解散をした。
 家での暮らしは多少ギクシャクした生活を送りながらも、平成7年3月3日初公判を迎える。大麻取締法違反(所持、栽培)裁判。開廷の時間だが、なんと裁判官が現われない。こちらの弁護士は私の裁判のあと、すぐに民事裁判が控えているのでイラついていた。
 裁判官が到着し、弁護士が時間を守れと詰め寄ると、前の裁判が難しく少し延長したと説明している。検察官も加わり、打ち合せをしているような感じで話し合っている。「早く済ませるから」と言う言葉が聞き取れた。まともに審理ができるのか疑問が感じられた。
 大急ぎで罪状認否、審理が行なわれた。検察、弁護士、裁判官でテキパキ進められる。
 検察側は「自供には信憑性が無く、反省しているとは言えない」とまとめた。
 弁護側は、事件を大筋で認めていて反省している事と、家にあった人命救助の表彰状を示し、弁護してくれた。以外にも共犯と疑われ、黙秘してた種子の入手には触れられなかった(種子は鳥の餌屋にも置いてあり違法では無いのでと、後で弁護士は説明した)。
 私本人が出る幕はあまり無い。検察官は、まくしたてて話すタイプの女性でした。納得いかなかった事がある。職歴の事で、4回の転職経験を指摘されたのだ。検察は、被告人は職を点々とし、落ち着きが無い。再犯の可能性が多大にしてあると裁判官に主張した。
 私は私なりによく考えての転職であり、前職の経験は十分現在に活かされていて人生の肥やしになっている。中には倒産してしまった会社もあり、また到底付いていけない経営者もいた。検察の主張は民間の事をまったく理解してなく、分かってもいないのではないだろうか。あの女性検察官には、私の努力してきた人生まで否定されてしまった。妻も法廷の証言台に立ち、今後は夫の行動に注意し生活していくので、どうか夫を返してくださいと裁判官に哀願した。

 検察は懲役6ヵ月の求刑を示す。3月24日第二回公判は判決公判となった。
 裁判官は主文を読み上げ、人命救助と本件は関係ないとして、共同である市営住宅での栽培は大胆不敵と事件を締め括り、判決で懲役6ヵ月と言い渡した。長く間をおいた後、3年間の執行猶予期間を与えると読み上げた。一瞬実刑判決ではないかと天を仰いでいた・・・。
 猶予を与えてもらい感謝したが、なんとも最後の最後まで意地が悪過ぎる。ここまで人権を侵害されてしまい、辛い裁判所を後にした。
 事件を振り返ると私の場合、不幸中の幸いと言いましょうか、新聞報道、解雇はありませんでした。
 報道される事により、偏見の目で見られてしまい、失職し家族崩壊を招く場合の方が多い現実が存在します。人権を侵害されたと感じる人がいる以上、その声には真剣に耳を傾けなければなりません。
  読んでいただいた皆様には、大麻問題に関する真実と現状の違いを認識され、かつまたこの問題に対する理解を深めていただければ幸いです。

 最後まで読んで頂き、ありがとうございました。


■ tatharaのケース/20代/女/ 凍りついた法律による別世界の存在

 ある年の秋の始め 朝6時に玄関のブザーが鳴り、「下の階の者ですが」と若い女性の声で起された。
 うちの集合住宅は皆顔見知りで、下の人の声ではないので、娘さんが来てるのかな?こんな早朝に何ごとかと思い、「どうしたのですか」となんの警戒もなしにドアを開けてしまった。すると外には7〜8人の見た事もない男性が立っていた。先頭の人が、私が閉めないようにドアを手で押さえたのを見て、ようやく尋常ではない事態であることを察知した。

「××××さん(私の名前)だね?」
「そうですが、何か」
「◯◯警察だが、あんたに大麻取締法違反の容疑がでてるから、部屋の中を調べさせてくれるか?」
 と捜査令状を見せられた。起き抜けだったこともあり、頭が大混乱して
「ちょっと着替えさせて下さい」
 と部屋に入ろうとしたら
「そのままでいいから動かないで」
 と玄関に立たされたまま全員が入ってきた。さっきの声の主である若い女性捜査官に衣服検査をされ、そのあと検査用に尿も採取された。その間に他の捜査官達は部屋中を探し始め、あえなく一人の捜査官が「ありました」とベランダで栽培中の大麻を発見した。
「なんで捜査に来たと思う?」
 と聞かれ、全く解らず黙っていたら、
「誰かに譲っただろ?」
 といわれ、
「マズイ・・これは誘導尋問に違いない」
 と感じ、まだトボけていたら
「△△知ってるだろ?こいつに譲ったろ?」
 と捜査官のほうから切り出したので
「はい・・」
 と正直に答えた。
「終わった・・」
 と心底絶望し、喉がカラカラになった。

「何時何分、大麻草発見」
 と復唱したり、私に大麻を指差すポーズをさせた写真を撮ったりして、
「この他にはもうないのか」
 と聞かれたので
「あります」
 と収穫していた分を出すとまた同じくその場で指差し写真、証拠品(栽培に使用した肥料、園芸用具などと、吸煙に使用したパイプ、ネット、ライターなど)もすべて指差し写真を撮り、押収品目録にサインし
「多分長くなるから、冬服を持って行ったほうがいいよ」
 とアドバイスなどを受けた。
「電話を2件、友人と会社に掛けさせて下さい」
 と捜査員に頼むと
「逮捕の様子などは話すな」
 と事前に注意されたので、友人には
「大麻で逮捕されてしまった。捜査員がたくさん来ている。今から◯◯警察に連行されます」
 としか伝えられず、詳しいことは何も話すことができなかった。
 友人は非常に驚き動揺していたが、それを押さえて緊張しているのが伝わってきた。制限された私の数少ない言葉から、捜査の状況や私の心の中を、一生懸命読み取ろうとしていたのだと思う。署に連行されるにあたって衣類や洗面具諸々を準備させられた。捜査の間中、一人の年輩の捜査員が
「いい歳して結婚もせずにこんなことして・・嘆かわしい・・」
 としきりにため息をつきながら何度も呟いていた。
「じゃあ、◯時◯分、××××、大麻取締法違反の罪で、逮捕するからな」
 と逮捕状を出され、玄関を出る時に手錠と腰縄を掛けられた。建物を出る時、何人かの通行人が見ていた。こうして私は逮捕され、その先2ヶ月半の勾留生活が始まったのだった。
 1box車に乗せられ管轄の警察まで向かう途中、空が恐ろしいくらい青かった事をよく覚えている。本来ならちょうどその日から、引き抜きされたクライアント会社で働く筈であった。ますます絶望的になってしまった。
 私が逮捕された前日のお昼頃、知人の△△さんが逮捕されており、その後取り調べでわかったのだが、△△さんには以前から警察の内偵調査が入っていて、何日も前から張っていたということだった。
  もちろんそんなことは知る由もなく、私は軽い気持ちで自家製大麻を彼に譲渡してしまった。調べで△△さんはずっと「そこらで売人から買った」と言い張っていたそうだが
「お前、これは見るからに自家栽培じゃないか。これの指紋とったらすぐわかるんだぞ」
 という言葉に
「もうこれ以上隠しようがない」
 と判断して、正直に私の名前を吐いたということである。
 話しによると、通常ならば家宅捜査令状(裁判所の許可)は警察が申請してから48時間かかるらしいが、事件によっては最短で8時間というのがあり、私の場合それが採用されたもよう。
 営利目的で栽培している組織の恐れがあると判断されたのではないかと思う。だから大勢で来てみてさぞガッカリしたことだろう。プランターに数本だったので。
 警察署に到着し、指紋掌紋と写真を撮られ、最初の取り調べ。出身地や履歴、家族構成などが主で、私は緊張によりその間3回ほどトイレに立った。もちろん婦警さんが腰縄をもってドアの外に立っている状態での用足し。
 留置場では、まず更衣室のような場所で入院患者のような服に着替えさせられ、身体の特徴(入墨や手術痕など)を調べる。「担当さん」という総称で呼ばれる留置係の婦警さんが、持ってきた衣類などをこと細かくチェックし、ひとつひとつリストにしていく。[長袖丸首Tシャツ、緑色、おもてに黒で『HAPPY』とプリント、タグに『UNIQLO』と記載]といった具合。それを見ていて、あぁ、お役所なんだなと感じた。
 夕方それらが終わり、いよいよ留置房に入れられる。担当さんから
「これから、××××は◯◯番と数字で呼ぶからな。同室の人のことも番号で呼ぶように。」
 と告げられ、ここでは名前もないのだと思うと悲しくてならなかった。初めて入った留置房は、ビックリするくらい壁が白くて、蛍光灯がさんさんと眩しく、6帖の畳敷き(ビニール製)に頑丈な格子戸だった。中にある和式トイレはドアと壁で仕切られてはいるものの、ガラス窓があり担当さんから上半身は見える仕組みになっていた。
 何をしていいのかわからず、支給されたアクリル毛布にくるまって横になった。夜中も監視のため蛍光灯は1本だけ点灯したままで、私は普段電気を全て消し真っ暗にして眠るので異常に眩しく感じた。
 次の日、初めて裁判所と検察庁に行く事になり、なぜ裁判所に行くんだろう、もう裁かれるのだろうかと不安になっていた。私は逮捕自体が初めてのことで、流れが全く把握できなかった。
「弁護士は国選にするか私選にするか」
「何のことか解らないのですが」
「裁判は弁護士をたてないとできません」
「わからないので後日答えます」
「あなたが逮捕され現在◯◯警察に身柄を拘束されていることを誰かに知らせますか」
「誰にも知らせないで下さい」
「・・・普通は親族に通知するのですが」
「知られたくありません」
 私は長くても2〜3週間で釈放されると思い込んでいた。まだ、まさか自分がこの先長期勾留されるとは信じられなかったのだ。だからその間、家族には内緒にしておこうと思ったのである。しかし押し問答の末、裁判所側の説得により母に知らせる事になった。私は家族だけは悲しませたくなかったが、そういうわけにはいかなかった。この決断をした時が、逮捕された瞬間より百倍つらかった。留置所に戻って、逮捕されて初めて泣いた。そして母に手紙を書いた。

 親子の縁を切られても仕方のない事をしてしまいました。
 ただ、人様の者を盗んだり、人を傷つけたりということはしていないので安心して下さい。お体に気を 付けて、さようなら、お元気で。

 と、まるで遺書めいた手紙を出した。
 事件の詳しい事は家族でも話してはいけない決まりになっているので、何で、どういういきさつで逮捕されたのかがわからず、その間家族や友人たちは大変心配していた。
 留置生活は、全てが時間割通りである。7時起床、布団の片付け、洗面、歯磨き、部屋の掃除、8時朝食、〈この間に『運動』という名の喫煙タイムがある。収容部屋からコンクリート囲いの裏庭に出て一度に2本立て続けに吸って終わりだが、一日のうちこの時間だけ外気に触れられ、金網越しの空を仰げるので、喫煙者でなくてもみんなで出て、ボーッとしていた〉
 12時昼食、6時夕食、8時半頃布団敷き、歯磨き、なぜかお茶、そして9時消灯、就寝。でも時計はないので前述のスケジュール以外の時間帯は「今だいたい10時半くらいかな」などと予測するだけ。この留置場の食事は、3食とも異常に白飯の量が多く、おかずも油ものばかりでいつも残していた。気分的にも食べたくなかった。
 風呂は週2回で、うち1回はシャワーのみ。時間も決められていて約15分間。とにかく頭がカユくて、いつも掻きむしっていた。
 留置での初めての取り調べに現れたのは私の事件の担当刑事だというA刑事と、見習いの警察学校生のB君だった。
 最初に、いきなり世間話や趣味の話をしたりするので驚いていた。和やかムードでかなり打ち解けてきた頃、実にフレンドリーに
「大麻ってのは、吸ったらどうなるんだい?」
 と聞いてきたので
「ゆったり楽しい気分になり、ちょっとしたことが可笑しかったり、音楽が良く聞こえたり、食べ物が美味しく感じたり、色彩が鮮やかに見えたりします。最後は眠くなります」
 と細かく表現してしまった。すると早速
「しょっちゅう仲間とやってるんだろ。そうじゃなかったらそんな具体的な表現はできないはずだ」
 と指摘され、青ざめた。グルグルと目眩がしてきて、
「いいえ、一人でやってそう感じました」
 と苦しみつつ答えると、
「みんなそう言うんだよ。いいか、俺の取り調べで今後、嘘の証言したら承知せんぞ」
 と冷たく脅され、頭ががんがんしていた。こんな取り調べがこの先続くのかと思うと、これからは気を引き締めて取り調べに臨もうと決意した。その日の午後、電話をした友人が初めて接見に来てくれた。
 普通、大麻で逮捕されると接見禁止が付くのだが、私は何故か逮捕から3日目にはこうして接見が認められた。
 憶測だが、共犯者が既に逮捕されていて、その他に繋がる者が特に該当しなかったからかなと思った。友人は伝達事項や必要な物等をメモして帰って行った。メモを持つ手が大きく震えていた。その時の友人の心境を思うと本当に申し訳なかったという思いでいっぱいである。友人には今も心から感謝している。
 「捜査の際おまえんちの本棚を調べたが『マリファナ・ハイ』などの大麻関連の書籍などが1冊もなかったが、大麻栽培の知識は誰から教わったのか」
 との質問もあった。幸い、私は暗室も、照明も、ヒーターも何も使わず、成長を横へ広げることもせず、ただ窓からの日光でまっすぐ伸ばしていっていたので、
「ハーブを育てるのとおなじ要領で発芽させ、栽培した。まったくの自己流であり、大麻栽培の専門的な知識はない。栽培中も秘密にしていて誰一人知らなかった」
 と主張した。その後日の調べで、共犯者と私とを繋ぐ友人の名前が上がって
「こいつもやってるんだろ」
 と言われ、心臓が止まりそうになり
「この人はまったく関係ないです。やってるわけがない、第一私の逮捕を心底驚いていたし」
 と声を荒げて主張した。私は自分の顔が真っ赤になるのを感じ、心臓が激しく脈打つのを生まれて初めて自覚し、恐くて手が震えた。刑事に悟られないよう膝の上で握り締めていた。刑事は、
「大麻をすると、さらに大きな快楽を求めてそのうち覚醒剤に手を出す奴がいるんだ。一発打ったら廃人だよ。覚醒剤は金がかかる。クスリ欲しさに傷害事件を起したり大きな事件につながるんだ」
「留置はつらいだろ?そんな辛い思いをお前の友達にさせたくないから名前をいわないのはわかってる。でもな、そうさせたくないのだったら今の時点でその友達に目を覚まさせ、反省させるのがいちばんいい方法だと思わんか?友達が覚醒剤に手を出したらいやだろ?まだ今なら救えるんだ、友達。」
 と、とにかく大麻と覚醒剤を直結させたり、交友関係を調べられる際に仕方なく友人の名を出すと、全員疑惑の対象に挙がり、心情に訴えかけては繋がりのある人間を芋づるに挙げようとしているのが感じられた。そのうち
「誰でも良いからお前が知っている限りの大麻関連者の名前を置いて行ってくれよ、そしたらお前も楽になるしそいつも救えるから」
 という流れに移り、私の事件なのに誰かを謳えというのはおかしいと感じ、納得できない私は結局最後まで誰ひとりチクらなかった。このような調べが、逮捕から連日のように行われた。刑事は調べの度にパソコンで調書を作成し、その場で読み上げて私に聞かせ、異存がなければサインと指紋を捺印した。
 調書は、私が言ってもいない台詞や心境の脚色がしてあり、どこまで「それは違う」と言っていいのかわからず、「だいたい合っているな」と思ったら承認捺印していた。常に調べでは気を張り詰めていて、終わって女子房に戻った時には毎回グッタリしていた。
 実際、調べ中に誰かを警察にチクると刑が軽くなるのは本当のようだ。
 ある時の検事調べで順番を待つあいだ同室になった、他の管轄からつれてこられた、暴走・傷害・公務執行妨害・覚醒剤反応の出た勾留20日目の20歳の子がいた。他の暴走グループの子の名前を数人出したところ、なんとその場で不起訴・釈放になったのである。そんなことがまかり通るのかと心底驚き、しばらく怒りが治まらなかった。彼女は
「あんたもウタッたら(チクッたら)いいんだよ」
 と勧めてきて、複雑な思いであった。
 検事調べとは、ある程度の刑事調べが終わると行われるもので、刑事調べと同じ内容を検察庁が行う。供述に間違いがないかを確認しているのだった。検察官は鉄仮面のような無表情な人で、この人は普段もこんなに冷たい表情なのだろうかとぼんやり思いながらも毎回緊張していた。
 そんな中、9日目に突然釈放された。わけが解らず出ると担当刑事が立っていて、特に説明もなく、服を着替え、荷物を全て持って刑事に連れられ、手錠腰縄なしで外に出た。
 歩道に出たところで「大麻草栽培・所持容疑」で再逮捕された。しかも通行人の非常に多い場所で。
 写真を撮られ、一人の刑事はその場で手錠を取り出し私の手に掛けようとしたが、さすがにもう一人の刑事が「車の中でしろ」と指示を出した。
 たぶんそうだろうとは思っていたけれど、まさかこんな公衆の面前で・・・と大ショックだった。後でその写真を調書の中で見たが、たとえようのない悲しい顔をした私が写っていた。
 その後別の管轄の留置所に移され、前の所とのギャップに驚いた。担当さんは全員男性で、部屋はとにかく薄汚なくて臭くて狭く、電気も薄暗く、壁には手でインク汚れが擦り付けてあり、支給されたボロボロのアクリル毛布には髪の毛が大量にこびり着いており、男の収容者の大声がひっきりなしに轟き、しばらく声を殺して大泣きした。本当に惨めだと感じた。
 しばらくして調べに出ていたらしい同室の女性が戻ってきたようで自己紹介などをした。こちらでは番号で呼ぶことはせず普通に名前で呼んでもいいようで、管轄によって色々違いがある事を知った。まずこちらはビックリするくらい食事が貧相であった。ごく少量の黄色い御飯(玄米などではなく、単純に黄ばんでいて、しかもクサイ!)と、居酒屋の突出しのようなおかず1・2品とか、酢飯のみ・おかずナシとか、悲惨だった。
 汁ものもなく常に飢餓状態で、情けない事に私はいつも食べ物のことばかり考えていた。飢餓状態というのは本当に辛いもので、時間の流れが非常に遅く感じられる。こんな食事なのに、だいたいその時間になると「まだかな」と思ってしまう自分がほんとうにイヤでたまらなかった。
 前の留置ではベビーローションやリップクリームは購入できたが、こちらではそういったものは、化粧品に当たるものとみなされ使用は認められず、私は乾燥肌なので非常に辛かった。唇が割れて血が出たら、ようやくオロナインを塗ることのみが許される。朝食に出る給食用マーガリンをこっそりトイレに隠して、それを唇に塗ってしのいでいた。「前の留置所に戻りたい」と毎日思っていた。
 この留置所は女子房は一室のみで、仕切り板で見えない配慮はしているものの、実は形だけで、取り調べや運動の時間に姿を見られていて、彼等に「××チャンかわいいね、顔見たよ」と壁越しに言われたり、同じ留置所内や他の留置所の男子から「文通しませんか」という手紙が次々届き恐ろしくなった。
 フルネームも、罪名もバレていた。中でも他の留置所から「新聞で君の事件を読みました」という手紙が届いた時は絶句した(房内で新聞は読めるのだが、当留置所に収容されている者の事件の報道記事部分は切り取られて読むことが許されない)。
 新聞報道があったのをこんな形で知ったが、中には適当なことを書いて、返事が来る確立を高くする者もいるらしいので、本当に報道されたは定かではない。
 仕切り板のあいだから、角度によってはある男子房からなんと女子房内はおろか、トイレが見えるので、その男子房内からこっちをモロに見ている男の姿に常にビクビクして過ごさなければならず、私はいつも男子から見えないであろう位置の壁にへばりついて耳を塞いでいた。
 男子は留置所内で毎日大声で他の房の人に話し掛けていた。
 低俗な話、所属する組関係の話、覚醒剤の話、自分の事件の判決の予想話、飯が最悪だという怒り、喧嘩も絶えず勃発し、騒がしい事このうえなかった。
 留置所内での会話は証拠にならないので、みんなビックリするような事実を普通に話していた。覚醒剤を買うなら俺んとこで買えとか、実は余罪があってバレないように気をつけているとか、担当さんがいてもお構いなしである。
 覚醒剤中毒者も数回収容され、幻覚に悩まされ夜通し一人でブツブツ喋ったり叫んだり暴れたり、それを聞いてて、私は「あーほんとに覚醒剤って最低だな!」とつくづく思った。
 大麻と覚醒剤を一括りに薬物指定とする警察の方々には、もっと真剣に勉強してもらいたいと心から願う。
 収容されている人たちは本当に単純明解で、喜怒哀楽がマンガみたいにハッキリしていた。でも時々真剣な話もしていた。
「俺、今回のは実刑確実だから最低でも7年食らうんだよ」
「あんまり落ち込むなよ、7年なんかすぐだから」
「家族が心配、ガキも小学生になっちまうし」
「頑張れよ!」「元気出せよー!」
 といった具合に、ここの留置ではみんな励まし合って日々のつらさに耐えていた。私に対しても
「大麻なんかすぐ出れるよ。しかし気の毒だなぁ、そんな屁みたいなものでこんなとこ入れられて」
「絶対に弁当持ち(執行猶予のこと)で帰れるから元気出せよ!」
 と大勢で私の事件は楽勝だと励ましてくれた。この時ばかりは本当に心強く思い、彼等の開けっぴろげで解りやすい性格に感謝した。一度、親の話になり、「階段から母親を突き落とした」と自慢げに話をした人に対して、他の人たちが「お前は鬼だ」「最低だ」「親を粗末にするな」と非難の声が留置所内にこだました。留置所内で道徳的なディスカッションをしているなんて誰も考えてないであろう、でも私はそのやりとりに素直に感心していた。
 しかしやはり逮捕され留置所に入れられる人間というのは、再逮捕を繰り返しては人生の大半を留置・拘置・刑務所で過ごしているような、性格も攻撃的でしかも幼稚だったりまともな話ができない人が多いそうで、私のような、一見してどこにでもいそうな普通の人間は少ないらしい。
 担当さんはそういう荒くれ者の面倒を見てきてるので、「××さん、あいつらが話し掛けてきても相手にしたらダメだよ」といつも念押しされた。最初は担当さんも厳しいのかと思っていたけれど、留置生活の中で話をできるのは同室の人か担当さんくらいしかいないわけで、後にも書くが精神面で助けられた事もかなりあった。
 もちろん皆がみんな手厚いわけではない。病院ではないから、実際病気になっても最低限の看護しか認められない。私は逮捕されてから釈放までの間、生理が止まったままで、粗末な食事により中枢神経に支障をきたしていた。
 留置内で重病を患い、明らかに緊急入院すべき状態の人が数時間放置される悲惨な場面もこの目で見た。
 その他、担当さんではない事務員のような女性が私の身体検査や室内点検をする際に、まるで汚物を触るような手つきとオーバーな嫌悪の表情や発言をすることもあった。同じ女性であり同じ人間なのに、犯罪者というだけでゴキブリのような扱いしか受けられないのか・・と心底やりきれなくなった。
 後日友人にそのことを手紙に書いた。しかし「そこに入っている以上は仕方ないから・・」という返事だった。冷静に考えると確かにそうだなと思い、以後はそういう扱いに耐えることにした。惨めだった。

 しばらくして両親が初めて接見に来てくれた。
 接見室のドアを開けると、アクリル板の向こう側に両親が着席していて、それを見て、正直このまま死んでしまいたい心境であった。事件のいきさつをそこで初めて明かした。私は両親に対して始終敬語だった。普通に話せなかった。母は「(お前を)信じていたのに・・・!」と突っ伏して嗚咽しながら大泣きした。年老いた小さな母が号泣する姿はとても辛くて見れなかった。普段無口な父が静かに口を開き
「弁護士はどうするつもりなんだ?」
 と聞いてきた。
「これ以上ふたりに迷惑はかけたくないので国選にします」
 としか言えなかった。私選にすると、裁判で有利な方向へ導いてくれたり、何といっても保釈(仮釈放)が可能であるというメリットがある。しかし裁判が終わるまで、費用が数十万〜300万円ほどかかるのである。
 それに対して国選を選ぶということは、保釈なしで裁判までずっと留置所と拘置所にいるということを意味する。両親をこんなふうに悲しませ、こんなところにまで来させた事を考えると、私はこのままここで不自由な生活を送る制裁を受け反省してしかるべきだと判断した。
 泣かないつもりだったのだが、父があんまり私の目をまっすぐ見るので「これまで父とこんなに向き合って話した事はなかったな・・」と気付いた瞬間、急に目が熱くなり涙が溢れてきて、うつむいたまま両親に「ごめんなさい」と謝った。涙が後から後からボロボロこぼれ落ちた。色々な思いが交錯し混乱した。
 こんな純朴な家族を悲しませるとは何という親不孝者だろうと自分自身が憎らしい思いで一杯になった。

 逮捕から21日目、最初の譲渡の罪で起訴された。これで正式に犯罪者である。前科一犯となった。しかし、栽培・所持の件についてはさらに取り調べが行われ、49日目に追起訴となり、一気に前科三犯となった。
 栽培していた大麻草は鑑識にまわされ、茎や根などの不要な部分も換算され、総量が数十グラムを越えていた。もうこのあたりにくると諦めの境地に入っていて、それに対して「根や茎は外してくれ」と主張する元気は残っていなかった。
 吸引についてはなぜか起訴されなかったのが未だに謎である。
 追起訴も終わり、もう調べ自体は終了したので後は拘置所に送られるのを待つのみの身となった。1日中留置場を出ない日も増えてきて、とにかく何もする事が無いうえ男子房は相変わらずうるさい事このうえないのでノイローゼ一歩手前になってきた。
 刑事も良く分かっていて、調べと称して担当刑事以外の年輩の刑事が取調室に出してくれることもあった。実際もう書類は出来上がっているので、世間話などをするのである。
「あんたはこんなところに来るような人間じゃないんだから、もう二度と来たらダメだぞ」
 と注意されたり。取調室の窓からは外の世界が見え、太陽や青空や木々や鳥を見て、吹き込む風を感じて、私は何度か泣いた。この時ほど自由であることの尊さを思ったことはなかった。涙を流す私を見て、年老いた刑事は静かに席を立って一人にしてくれた。
 普段は辛いことがあっても、極力おもてに出さない性格なのだが、この生活の中では堪えきれずに泣くことが本当に多く、しかしそれを友達たちになるべく感じさせないように、接見や手紙では努めて明るく振る舞った。でないと外の世界にいるみんなに申し訳なくてそうする以外なかった。私の事件のことは少しの間でも忘れてもらいたかったのだった。
 留置生活中に、悲しいできごとがあった。友人が亡くなってしまった。手紙でその事を知り、しばらく呆然とし、そのあと号泣した。正直言うとこの時まで、
「なぜ大麻ごときで私なんかが逮捕されなければならなかったのか」
 と警察の体制を恨む気持ちばかりが強かったが、
「友達に最期のお別れすらできなかった・・バカな事をした、大麻なんか育てるんじゃなかった」
 とお通夜にも葬儀にさえも行けない我が身を心から呪った。
 嗚咽しながら泣いていたら、担当さんの一人が通り掛かり、すごく心配して慰めてくれた。この担当さんは日頃から実に良くしてくれた方で、私が拘置所に移ってからも、このことをすごく気にしていて、拘置所にいる私宛てに長い手紙を頂いた。
「君の人生はまだやり直しがきくから、諦めずに頑張って下さい」
 という内容だった。それを読んでまた泣いてしまった。頼れる人がいないこの状況では、警察官である担当さんですら自分にとっての心の支えになってしまうのである。
 私は国選弁護人を選択したため、とうに起訴されているにもかかわらず、なかなか弁護人が接見に現れず、「もしかしたら裁判の前日ごろに決まるんでは」という不安でいっぱいだった。拘置所に移される数日前にやっとCさんという国選弁護人が接見に来て下さり、私は裁判にあたって不安で胸がいっぱいであることを切々と訴え、裁判はどういう心構えでいるべきなのかを聞きまくった。Cさんはひとつひとつに的確に答えて頂き、裁判でのあらかたの質問や進行も教えてくれた。
 逮捕から57日目、拘置所に移管される日が来た。担当さんに感謝の気持ちを述べ、護送車に乗せられた。
 すでに季節は冬の始めになっていて、足早に道行く人々のコート姿や、冷たく澄み切った青空と、木々の散りかかった紅葉とのコントラストがとても印象的だった。
 ほどなく拘置所に到着し、気を付けの姿勢で大声で名前と罪名などを告げ、また指紋、写真を撮られ、女子房のある棟に向かった。
 またそこでも所持品の検査、身体検査、その際の身体検査は留置の時とは違い、いきなり全裸にされ脚を開いて立たされ、そのまま天橋立をみる格好をさせられ、肛門や性器に何か隠していないかを覗き込んで検査され、大きなショックを受けた。
 そして、赤ちゃん用のようなちいさな浴用桶に押し込められ、監視されながら身体を洗わされ、衣服の検品が終わるまで確定囚人用の服に着替えさせられ、2帖ほどの独房に移された頃には精神的に参ってしまい、しばらく身体の震えが止まらなかった。そのまま2日間独房で過ごし、3日目にようやく5〜6人の雑居房に移されホッとした。
 雑居房では、殺人や放火などの罪で入れられている人たちが同室だった。
 罪名だけ聞くと、どんな荒くれ者かと思われるかもしれないが、そこが拘置所だということを忘れてしまうくらい普通に明るい人たちだった。
 しかし「私は初犯だけど、殺人だからムショ行きは確実なの」という話をされると、いやおうなしに暗くて悲しい雰囲気が部屋中に流れたりした。
 拘置所は留置所と違い、刑務所の管轄下にあるので、刑務官が担当さんの役目をしているのだが、大変厳しい口調なので、いつも怒られている気分だった。
 実際、通路を通る際に別の雑居房の人に小さく手を振ったところ
「お前! 何してるんだ!! バカか! 独房入れるぞ!!」
 と激しく怒られたこともあった。確かにバカなことをした。
 拘置所では、就寝時間以外は寝転んではダメで、かといって立って部屋の中をウロウロしてもダメ、暖房も無いのだが毛布をかぶってもダメで、自分の定位置を決められていて他の人の位置に座ってもダメなのである。
 することがなくて、みんな手紙を書くことに没頭していた。私は家族と友人宛てばかりだったが、驚いたことに、拘置所や留置所の男子と文通している人もいた。
 しかも赤・青鉛筆と黒マジックだけで、ものすごい綿密なイラストを描いていたり。これは結構みんなしていることらしく、味気ない白封筒や便箋を少しでも華やかに見せる涙ぐましい努力だった。
 なんと文通がきっかけで結婚する人たちもいるそうで、ある意味すごい世界だなと感心した。
 食事は留置よりずっとましだった。麦飯だが量も多くて、なによりも温かい食事を食べられるのが有り難かった。留置は3食とも冷や飯のうえ、量が少ないせいもあり食べ終わっても身体の芯から冷えきっていた。
 ここは、もう調べもなくただ裁判をこなし判決を待つための機関であり、交通の便も悪いうえ、接見の時間もたったの5分間なので、家族や友達には「もう接見には来なくていいよ」と伝えた。
 だからこの数週間は完全に世の中から完全に隔離されてしまったような気分だった。「私はもう普通の生活はできないかもしれない」という恐怖感と孤独感が日に日に強まり、しかしこの生活に段々慣れてゆく自分がまた恐ろしくもあり、精神的なバランスを保てなくなってきていた。
 なぜか、拘置所では毎晩必ず夢を見た。しかも起きてからもその内容を正確に鮮明に覚えていて、夢の内容はほとんどが旅をしている自分だった。多分、ここから出て遠くに行きたい、自由になりたいという願望充足だったのだろうと思う。
 逮捕から62日目、いよいよ第1回目の公判(裁判)が行われた。◯◯地方裁判所の第◯号法廷へ、手錠・腰縄で刑務官に連れられて入った。テレビのニュースなどで見たことのある、裁判官、書記、弁護人、傍聴席などのあの光景だった。
 しかし何故だか意識がボンヤリとしてきて「これは私の裁判なんだ、しっかりしなくては」と気持ちを引き締めることに努力した。緊張するというよりも、まるで夢の中のような感覚がずっと続いていた。
 まず、私の事件の発端となった共犯者の件を検事側が説明、その時初めて共犯者が10日間勾留で起訴猶予で釈放されていることを知った。私はてっきりその人も起訴されていて、保釈で出たのだとばかり思っていたので、こんな惨めな裁きを受けている人が私の周囲には私以外に誰もいないのだと思うと、心から安心した。
 そして私の逮捕劇の写真や書類をドッサリ提示され、私が大麻栽培・研究の免許を持っていないことを証明する英文の証明書類や、刑法の抜粋、調書などを読み上げ、私が栽培した大麻草の原物や鑑定書を見せられ、間違いがないかを訊ねられた。
 素直に「間違いありません」と言うほかなかった。
「何故大麻を使用してはいけないのか」という質問に対しては
「労働意欲の喪失・さらに悪質な覚醒剤等の薬物を使用するきっかけになるから」
 という弁護士のアドバイスに基づいた返答をしました。弁護側から「好奇心からの栽培で、営利目的ではない、本人も大変反省している」との弁明、そして両親から裁判官宛ての手紙の提出があった。私は、自分の言葉を述べる際、亡くなった友人のことを思い出して辛くなり、また泣いてしまった。
「本当にバカなことをしたと大変反省しています」
 と心に浮かんだ正直な思いを述べた。その時は本当にそう思った。罪状認否が終わり、最後に
「見つからなかったらいいだろうという姑息な考えを持っているという見解により、求刑2年を申し立てる」
 という検察側の要求で、第1回目の裁判は終わった。
 それから約2週間後、逮捕から76日目、第2回目の公判。この間、私は拘置所で同室の人から聞いた「最近は、大麻の初犯でも実刑食らうことあるらしいよ」という言葉と「量も数十グラムと割と多かったし、もしかしたら実刑かもしれない」という言い知れない不安に押しつぶされそうになっていた。自分が懲役を食らっている姿を想像しては眠れなくなり、1本だけ煌々とともった蛍光灯を見つめたまま朝になることもあった。
 2回目の公判は、いきなり「判決」だった。これで家に帰れるか、懲役に行くかが決まる。ちょうど私の前は50歳くらいの男の人の判決で、私は手錠・腰縄の状態で後ろの席で見ていた。
「では、被告人、前へ。・・・◯◯◯◯、□□□□の罪により、実刑・懲役7年、執行猶予なしを申し渡す」

 と彼の刑が確定した。それを聞き、目の前が真っ暗になっていった。他人の判決なのに「私も、もしかしたら・・・」と、ひとごととは思えなかった。
 いよいよ私の公判が始まった。前回の陳述などに間違いがないかの確認をし、すぐに「では、被告人、前へ」となり、もう何も考えられないくらい胸が高鳴っていた。1回目の時とは違い、心臓が張り裂けそうなくらい緊張していた。確定囚となり、服役している自分の姿がリアルによぎり、頭がしびれてきたとき−−−
「××××、大麻取締法違反の罪により、実刑・懲役1年6ヶ月」
−−−頭を殴られたような感覚が・・・しかしすぐ後に
「−−−ただし執行猶予3年付きを申し渡す」
 と付け加えられた。時間にしてたったの4〜5分のあっけない公判だった。しかし私はその瞬間、心の中で声にならない叫びをあげた。弁護人のCさんに深々とお辞儀をし、手錠も腰縄もなしで刑務官と法廷を出た。
 「自由」という2文字が頭を駆け巡り、家族や友人の顔が沢山浮かび、急に心地よい脱力感に見舞われた。
 拘置所に荷物を引き揚げに向かう車の中からみた海や山の景色は、判決が出る前と後とで何一つ変わらないが、確実に私の中では『手を伸ばせば触れられる自然』に変わっていた。こうして、2ヶ月半に渡る私の勾留生活は幕を閉じた。季節はすっかり冬になっていた。
 出られてから、まず両親に電話をした。母は「よかったね・・」と言ってくれたが、緊張により声がうわずっていることに気付き、両親を深く傷つけてしまっていることを悟った。バスに乗り、電車に乗り、一人で自分の街まで戻った。
 街はすっかりクリスマスムードで、はじめは嬉しかったが、しばらくするとすべてが偽物の世界に思えた。何故そう感じたのかはその時はわからなかった。友人に会い、釈放を喜び、私は心配と迷惑をかけたことの謝罪をした。しかし、まだ頭の中は釈放の嬉しさでいっぱいで、まともな謝罪の言葉を伝えられなかった。本当は一人ずつ抱き締めたかった。
 拘留中にくれた沢山の手紙は、今はまだ読み返す勇気はない。だけど、手紙が届く度に「まだ私にはこうやって心配してくれる友達が外の世界にいるのだ、だから頑張ろう、耐えなければ」と本当に助けられた。
 決まっていた栄転も逮捕によって流れたので、かろうじて見つかった雑用のアルバイトで生計を立てるという苦しい日々を送る現実が待っていた。年齢の関係もあり、再就職はこの御時世では本当に厳しい。
 人生設計は大きく変わってしまった。変わったと言えば、私自身の中にもそれが見受けらる。
 流行に対し、興味がなくなった。テレビのバラエティ番組にも。万人を盛り上げようとする企画に何の興味もなくなっているのだ。
 前述の釈放後すぐに街の賑わいを嘘っぽいと感じたのはそのためだと思う。しばらくして役所に行き、未払分の国民年金・国民健康保険料の免除申請、及び貧困のため裁判費用支払免除に必要な無所得証明書類の発行申請をしたところ、窓口で「理由を言わないと書類は発行できない」と言われ、仕方なく「警察に勾留されていた」と言うと明らかにジロジロ眺められ怒りが込み上げた。
 その目は、留置所で私を汚物扱いした署内の女性職員と同じ目だった。いたたまれなくなり、手続きを済ませると大急ぎで役所を後にした。
 また、ふとした拍子に勾留の思い出が蘇ってきて冷や汗が吹き出したり、動悸が激しくなったり、テレビドラマなどで逮捕・勾留に関するシーンを見ると胸が締め付けられることがある。
 今でも留置所・拘置所生活や、再々逮捕されたり、さらに脱走したり服役している悪夢にうなされ、真夜中に汗びっしょりで目が覚めて涙が出るようなこともある。
 毎晩のようにそんな夢を見ていた釈放後まもない頃は、人と会うのが恐くて、初対面の人はもちろんの事、仲の良い友人にさえ言葉がうまく出てこなくてどもったりして、そういう軽い言語障害が出ている自分を見られたくなくてますます引きこもった。
 こんなに良くしてくれた友人たちに一線を引かれている気持ちが大きくなってしまい、そう感じる自分も嫌になり、実はある晩突発的に、生まれて初めて自殺を試みた。
 舌を思いきり噛んだ。が、口腔に血が広がり、途端に物凄く痛いことに気付き情けなくて号泣した。
「こんな自虐的なことをして何になる。誰が喜ぶ。私はこんなに気弱な人間ではなかったはずだ。これではいつまでたってもこのままだ」
 と思い直し、そんなバカな行為を反省した。今は積極的に外に出かけることにしている。逮捕者の社会復帰には人の何倍もの努力がいるのだ。それを忘れてはならないのである。逮捕のつらい思い出は歳月が経つにつれ、少しは緩和されるだろう。
 しかしこの先、私の『逮捕者・前科三犯』という烙印が消えることは一生ない。これからも就職や結婚などの際に大なり小なりの障害にぶつかっていくのは明白だ。
 平和を愛し、自然を愛し、すべてのいきものが幸せに暮らせる穏やかな世界を理想郷としている人間が、一転して犯罪者と呼ばれ、厳しすぎる社会的制裁を強いられるのが今の日本の現状なのだ。本当に残念で、かなしい。

 法律を犯すということは、人としてあるまじきことである。しかし、その法律の内容は果たして・・。
 より良い日本になるのだろうか?
 これからの世界を担う私たち若者が真剣に考えて行くべき問題ではないだろうか。大麻は私にとって、遠い存在となってしまった。遠いけれど、私の心を解放してくれたものとして、今も胸の奥に、あるのだ。狭かった視野を一気に広げ、自然に対し、生き物に対し、大きく言えば宇宙に対し敬意を払うことを教えてくれた。しかしその行く手には法律という大きな山が隆々とそびえ立っている。私はその山の大きさを忘れて無防備に栽培してしまった。失ったものは大きすぎる。
 大麻による逮捕者がこの先一人も出ないことを心から望んでいる。私の受けた制裁を、もう誰にも味わってほしくないのだ。

−引用終わり−

 以上、3例を見たが、上記3名がいったい誰に、どのような加害を為し、どのような保護法益を侵害したというのか。いったい被害者は誰なのか。
 大麻取締法違反事件には被害者がいない。被害者は、逮捕された本人と、それ以上にその家族である。

 他者や社会の保護法益を侵害した事実もなく、ただ大麻を愛好していたというだけで、平穏に暮らす者の生活を滅茶苦茶にし、自殺を思うまでに個人を追い詰める大麻取締法の執行実態こそが、国民の基本的人権を踏みにじる、国家権力による加害の実態である。

 基本的人権は「公共の福祉に反しない限り」最大限尊重されなければならない。とりわけ刑事罰、特に懲役刑は人の身体、行動の自由に対する重大な制約であり、人権保障の観点からして必要最小限のものでなければならないことは当然である。大麻取締法が憲法13条(幸福追求権)や31条(適正手続の保障)に適合するためには、その保護法益が具体的で明確であり、かつ法定刑も適正なものでなければならない。ところが、大麻取締法の保護法益はきめわて抽象的であり、しかも大麻はカフェイン程度の毒性しかないのだ。

 大麻取締法の罰則規定は、幸福追求権(憲法13条)を侵害し、その制約は必要最小限のものではなく、さらにその法定刑は過度に重いから、憲法31条(適正手続の保障)にも反し、違憲である。

3.予断と偏見に基づく判決について

 控訴趣意書にも書いたが、これも黙殺されたので再度書いておく。
> 被告人が大麻についていかなる考え方を持とうと被告人の自由であり、
> 大麻取締法の違憲性を主張してその改廃を求める運動を展開するのも
> 何ら非難されるべきことではない。

 一審論告で検事は上記の通り述べている。ところが、一審判決は「量刑の理由」として、

> 被告人は、捜査、公判を通じて、大麻取締法の非合理性を主張するなど、
> その態度はよくなく

 と述べている。
 大麻取締法の非合理性を主張することそれ自体は、まったく非難されるべきことではないにも関わらず、判決はそれを「態度はよくなく」と「量刑の理由」としているのである。これが思想と良心の自由に対する侵害であることは明白であろう。

 大麻取締法に使用罪はない。それなのに、「大麻の使用につながる所持や栽培等の行為を規制し、その違反に対して罰則をもって臨むことは、十分合理性が認められる」と裁判所は言う。昔、学校で「罪刑法定主義」という言葉を教わったような記憶があるが、「罪刑法廷主義」の間違いだったらしい。

 大麻取締法には使用罪がないにも拘らず、それにつながる行為として所持や栽培を罰することのどこに合理性があるのか。それは裁判所による法外な解釈でしかない。このことは辻褄の合わぬ大麻取締法の欠点を露呈している。司法はそのことをこそ、立法府、行政府に対して指摘すべきである。

 「大麻取締法の非合理性を主張するのは態度がよくない」とは、司法自身による思想と良心の自由への明白な侵害である。こんな予断と偏見に根ざした判決はとてもじゃないが「採用しえない」。


4.大麻の使用と思想の自由について

 大麻の使用は、それ自体がひとつの思想である。
 大麻とさまざまな宗教が密接に関係していることは、先に引用した通り、公知の事実である。

 大麻の肯定的価値を確信する者にとって、大麻の使用は、思想、良心、表現、感性の、潜在的可能性を引き出す具体的行為に他ならない。

 大麻が、アルコールやタバコ以上に他者や社会の保護法益を侵害する危険性を持たず、カフェインと同程度の「毒性」しかないことが科学的にも明らかな以上、大麻を取り締ることは、思想の自由、良心の自由、表現の自由、感性の自由を取り締ることと同義である。

 大麻取締法は、憲法19条に定めた「思想及び良心の自由」をも侵害する悪法である。

 裁判員制度で裁かれてれば、私は無罪、大麻取締法は違憲だろう。
 かつて、中世のヨーロッパではコーヒーが厳しく取り締まられ、魔女狩り的に弾圧されていたという。今回の裁判を経験し、大麻に対する弾圧は現代日本における三権共謀の魔女狩りのようなものだと私は実感している。

 そういえば、私が関連先として逮捕されることになった桂川氏や私の大麻を使用していた癌を患っていた者がしばらく前に亡くなったそうだ。亡くなる前、病床で、私たちの逮捕の事情を知った上で、仲介していた者に、「なんで麻を持ってきてくれねぇだ」と力なく冗談を言っていたそうである。

 これからもずっと、何度でも言う。
 大麻取締法は人権蹂躙法であり、憲法違反の糞法である。

 最高裁の判事さん諸氏、あなたにとって正義とは、人権とは、公平とは、人生とは、なんですか?
 高い所で威張ってるばかりが能じゃないでしょう。


 この邦に生まれ育ったことを感謝している一人として、怒りを込めて、以上、上告する。



 

←表紙