カナビジオール・ナウ!

CBDで変わる医療カナビス・ディスペンサリー

Source: Counter Punch
Pub date: 13, Mar 2009
Cannabidiol Now!
Author: Fred Gardner
http://counterpunch.org/gardner03132009.html


カリフォルニア州に最近設立された医療カナビス・ラボの分析で、比較的高濃度のカナビジオール(CBD)を含んだカナビス品種が2種類見つかった。ラボは全く別々の2箇所で、品種もそれぞれ異なっている。


医療カナビスのパラダイムの変化

イースト・ベイにあるラボは昨年の12月から活動を開始し、カナビスに生えた病原性のカビの存在と、3種類のカナビノイド成分であるTHC、CBD、CBN(カナビノール)の含有量を測定している。

THCはカナビスの主要な精神活性物質で最もよく知られている。CBDはさまざまな医療効果を持った魅力的な物質で、最近では特に注目を集めるようになってきた。また、CBNはTHCが分解した後に生成される物質で、カナビスの保存期間を示すインジケータになっている。

医療的な面から見た場合、CBDが多く含んだ品種は非常に重要な位置を占めているが、長い間カリフォルニアではTHC濃度の高いカナビスの栽培が目標とされてきたために、CBDはほとんど注目もされることもなかった。

このラボでは、オークランド・ハーバーサイド・ヘルスセンターが用意したカナビス・サンプルを1日に10種類ほど検査している。ハーバーサイド・ヘルスセンターの経営者である ステーブ・デアンゲロ氏 は、ラボの設立にもベンチャー資金を提供している。ラボでの検査結果は、ラベルにされてヘルスセンターの店舗の医療カナビスに添付されている。

従って顧客は、例えば、ペトリ皿に入ったきらきら輝くラズベリー・クシのバッズ香りをチェックし、アスペルギルスなどのカビの危険のないことや、THCが14.3%含まれている情報を得てから購入できるようになている。現在ではほとんどの場合、CBD、CBNの含有量については丸められてゼロになっているが、今後は、CBDの量が重視されるようになってくるに違いない。

デアンゲロ氏の第一の目標は、業界全体に通用するような安全基準を設けることにある。「現在行っている分析ラボのプロジェクトはそのベータ段階とも言えるもので、他のディスペンサリーから参加したいという要望が強くなる前に問題点を見つけ出して取り除いておこうとしているわけです。この過程を通じて、誰が医療カナビスのパラダイムの変化について真剣に考えているのかが判ります。」


扱っているのは医薬品

ラボを運営しているのは30才代の起業家の二人で、準備に一年間を費やし、その間にこの事業に関心を抱いてる大学の化学者のもとでみっちりと検査方法などを学んできた。一人がガスクロマトグラフ質量分析を操作し、もう一人がディスペンサリーとの連絡を担当している。彼らは今後、農薬の有無のテストや、カナビスの効果に関係している芳香成分であるテレピン類の検査も加えていくことを計画している。

テスト・ラボの出現は、医療カナビス業界の姿をまったく変えてしまう可能性を秘めている。現状で繁盛している栽培者や卸業者であっても、製品に含まれる毒性物質についてきちんと示す文書が求められるようになるだろう。ラボでは、衛生管理が不十分だとみなされるカビや大腸菌のレベルも証言から割り出している。

デアンゲロ氏は、「実際には、家族全員と友人、そして犬たちの全部が居間に集まって座っているようなようなことはないでしょうが、要は、犬のトリムをする場所や物をしまって置く場所は清潔に保ち、動物に触れるような場所ではカナビスを扱ってはならない、と言うことです」 と説明する。

「クリーンな部屋を用意して、入るときには専用の服に着替え、手をよく洗ってテフロンの手袋を使う。つまり、扱っているのは医薬品なのです。ですので、医療カナビスは医薬品として扱う必要があるのです。」

ハーバーサイドのことをよく知っている売買エイジェントのリック・プフロマー氏は、ラボの参入の結果、栽培者たちは清潔の気をつけるようになってきていると言う。「カナビスにカビがある栽培者の大半は、取り入れる空気にフィルターを使っていないのです。見かけは素晴らしいカナビスであっても、空気に含まれているものは何でも取り込んでしまうのです。でも、今はみんながフィルターを使うようになってきています。」

ラボで農薬の検査が始まると、室内栽培者はダニや害虫を殺すために化学薬品を使うのではなく有機栽培するようになるだろう。しかし、安全基準に合わせるつもりのないディスペンサリーもあるので、従来のものも細々とは売られ続けることになる。実際、バッズに少しぐらい残留農薬があっても誰も傷つけることはないと主張する人もいる。


CBD効果の発見

野性に生えているカナビスや繊維ように栽培されているヘンプでは、一般的にCBDの含有量のほうがTHCよりも多いが、植物を精神活性目的で栽培する場合には遺伝的にTHCの優勢な品種を使い、さらにCBDがTHCに置き換わるように育てる。これら二つのカナビノイドは化学構造が非常に近いので、条件が整えばお互い同士に変化する。

ヨーロッパやイスラエルで行われた研究によれば、CBDには、抗炎症作用、抗けいれん作用、抗精神病作用、抗酸化作用、神経防護作用などを持っている。また、一部の癌細胞を直接的に抑制する働きも持っている。

カリフォルニア太平洋医学研究センター(CPMCRI)の生化学者であるシーン・マカリスターとピエール・デスプレッツ研究員たちは、2007年の予備実験で、原発巣の乳癌細胞を体内に拡散するするのはId-1と呼ばれる遺伝子の働きをCBDが抑制することを見出している。今年の冬からは乳癌のマウスをつかった実験が開始され、順調にいけば2年以内に臨床試験も予定されている。

またイギリスのバイオ会社であるGW製薬では、CBDとTHCそれぞれを高濃度に含むカナビス品種を栽培して成分を抽出し、お互いを混ぜ合わせてサティベックスという舌下スプレーを開発している。サティベックスは神経障害疼痛の薬としてカナダで認証を受けているほか、各国で認証のための臨床試験が行われている。

CBDには、THCの鎮痛効果を促進しながらも精神効果を穏やかにする働きのあることがいろいろな実験で示されている。深刻な痛みに悩む患者では、GWの高濃度THCよりもCBDを混ぜたサティベックスのほうが鎮痛効果が著しく高くなるとも報告されている。


カリフォルニアでも高いCBD品種が見つかる

だが現在までのところ、一部の例外を除いて、カリフォルニアのカナビスのサンプルからはごく微量のCBDしか検出されていない。

その最初の例外が2月末にベイサイドのラボで発見されたもので、ハーバーサイドから提供されたサンプルの一つから、高いレベルのCBDの存在を示すスパイク状のグラフがコンピュータに映し出された。この品種はサンフランシスコで室内栽培されたもので、さらに詳しく調べてみるとCBDの含有量は4.2%(THCは8.9%)もあった。

カナビスの場合は、特定の品種からクローニングして苗を育てれば容易に同じ遺伝子の植物を作ることができるので、デアンゲロ氏はすぐに栽培者にもっと多く作るように手配した。数ヶ月以内にはハーバーサイドの店でも普通に扱われるようになるが、デアンゲロ氏は、「遺伝的な事柄を内密にしておくことは倫理に反する」 と述べている。

2番目の例外はこの記事の締め切り直前に伝えられたもので、メンドチーノ郡で室外栽培された。CBDの含有量は5%を少し越えている。


新しい時代のおとずれ

こうした変化にともなって、医療カナビス運動や関連産業は新しい時代に突入しつつある。

医療カナビスの栽培者は高CBDのカナビスの生産を求められるようになることは間違いない。また、長い間CBD品種の出現を待ち望んでいたカナビス専門医たちも、高CBDのカナビスにどのような利点があり、どのように使えばよいのかを知るために基本的な臨床試験を行う計画を進めている。

CBDには、THCによって引き起こされる不安を和らげる働きがあるために、カナビスのハイが好きになれない人たちでも、高CBDのカナビス品種ならば気持ちよく使えるようになる可能性がある。また、多量のカナビスが必要な疾患でも、摂取が容易になる。

ジェフリー・ヘルゲンレイター医学博士は、「癌や潰瘍性大腸炎、クローン病、突発性疾患などの患者さんの中には、血液中のCBDレベルを高く保つ必要のある人もいますが、従来の高THC品種ではその実現は難しいという問題がありました。高CBD品種の開発は、そのような人たちにとっては生死を分けることなのです」 と語っている。

現在までのところ、カナビスに反対する人たちの間からは、カナビス愛好者たちが自分で吸いたいために医療カナビスの運動に加わっていると強く主張されているが、臨床試験の結果がどうであるにせよ、より精神活性の少ないカナビスの開発が行われているという事実自体が、そうした悪評を払拭することにもつながるだろう。

そして、リュマチ関節炎などで高CBDのカナビスの治療効果が確認されれば、年老いたカリフォルニアの住民もこぞって医師を訪れて、カナビスのことを尋ねるようになるだろう。

この記事を書いたフレッド・ガードナーは、カナビスの臨床実践を扱った オションネッシー・ジャーナル の編集者で、カリフォルニアの医療カナビスに精通している。

オランダからの報告によると、コーヒーショップ・カナビスのカビ・コロニー数は、医療許容限度以内のものはなく、医療的にみればすべて汚染されている。これは、政府の医療カナビスにはガンマ線照射が義務づけられているという事情もあるが、コーヒーショップのカナビスは主に品種で値段が決まってしまうので収穫後の後工程に対する評価があまり重視されておらず、そのために後工程の技術が成熟していないという事情も反映している。


(左図)Cannabis and Cannabinoids, F.Grotenhermen & E.Russo editor. 339p
The Haworth Integrative Healing Press, New York, 2002
(右表)An evaluation of the quality of medicinal grade cannabis in the Netherlands
Arno Hazekamp,Cannabinoids 2006;1(1):1-9
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現在、オランダ政府 は、薬局向けの医療カナビスとして、高THC品種のベドローカン(THC18%)、ベドノビノール(THC11%)、多発性硬化症患者向けにハイになりにくい高CBD品種のベディオール(THC6%、CBD7.5%)の3品種を開発して販売している。

しかし、重篤な患者を除けば、医療カナビス患者の多くが慢性的な疾患を抱えて日常生活を営んでいる人たちで、必ずしも製品の清潔度に神経質なわけでもなく、単に品質が安定していてバクテリアや異物混入などの危険のない医療カナビスを提供しただけでは満足しない。

実際、医療の提供側の多くの人たちは、単純に、政府が正式に医療カナビスの提供を始めれば、患者の大半がコーヒーショップやストリートでカナビスを買わなくなるはずだと言っていた。だが、政府の医療カナビス利用者は見込みよりもずっと少なく,これまで何回も中止が検討されている。

オランダ、医療カナビスの販売継続へ、販売量増加と外国からの購入打診も  (2007.10.13)
オランダ政府、医療カナビスの販売中止へ、売上げ不振で思惑外れる  (2005.6.7)

高CBD品種については、カリフォルニアからオランダに活動拠点を移したデビッド・ワトソンとロバート・クラークの2人が早くから開発している。クラーク氏は、カウンター・カルチャーの読者を対象に、カナビスの栽培法や品種改良について科学的に詳しく説明した 『カナビスの植物学』 という本を初めて書いたことでも知られている。

二人は、カナビスのオスとメスの2種類の違った染色体の自殖技術を独自に開発して、2組の染色体が同じである同型接合体のカナビスをつくることに世界で初めて成功し、THCが98%、CBDが98%の植物も開発している。

また、二人がオランダに設立したホルタパームは、GW製薬に種を提供していることでも知られている。

カナビス・ドクター・コネクション ホルタパームの歴史とGW製薬との接点

Connoisseurs of Cannabis  (2007.4.22)
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