ある癌患者の苦しみ 投稿者:しら 投稿日:2006/04/19(Wed) 18:05  No.870   [返信]

取引先の取締役である57歳の男性が癌を患った。
一昨年、手術をし、成功したが、術後の5年生存率は30%であると医師から告げられたそうだ。
彼は私が大麻で逮捕されたことを知っており、私は大麻が医療的な効果を持つことや、先進各国や欧州全般、イスラム圏、中南米の現実などを何度か話したことがある。

最近、その取締役が体調を崩した。
検査の結果、癌の再発は見つからなかったが、5年生存率30%を告げられて2年が過ぎ、あと3年以内に死ぬ確率が70%である我が身の現実に、彼は怯えている。
独り者の彼は、幼い頃に父と姉を亡くし、老いて動けなくなった母を施設に預けたままだ。

大麻に制癌効果があることは複数の研究機関で証明され、複数の国や地域で制度的に処方が受けられる。しかし、日本ではそのような制度もなく、大麻を所持していれば一律に逮捕だ。日本に大麻取締法を押し付けた米国ですら、日本のように過酷な取り締まりは行われていない。宗主国より植民地において矛盾が激化しているということなのだと思う。

取締役は、病院で大麻を処方してもらえるなら使ってみたいと言っている。だが、現実は、主治医にそんな相談をすることさえ憚られるほど、大麻に対する偏見がこの社会には根強い。

仮に、何らかの方法で彼が大麻を得たとしても、それは非合法であり、自らの癌を克服するための行為なのに、逮捕の可能性に怯えなければならない。

せめて、大麻の効果が期待できる疾病に関しては、医師の証明があれば、逮捕される心配などせずに使用できる仕組みを制度化すべきではないだろうか。

嗜好目的の大麻で逮捕しないでほしいと主張する者が医療的な話を持ち出すと、所詮は自分達が吸いたいための方便だろうと疑う者がいる。

だが、逮捕される心配なく大麻を愉しみたいという思いと、せめて治療目的に関しては直ちに制度を是正してもらいたいという考えは、全く矛盾しない。むしろ、医療効果があることを知り、それを必要とする者がいるにも拘らず、自分たちが逮捕されなければいいという考えに陥ることのほうが問題だろう。

取締役は、癌再発の恐怖と、大麻を試してみたいという思いと、逮捕の恐怖との間で、揺れている。

これは厚生労働省の責任が問われるべき日本の不幸であり、それを最高裁が認めないのは司法の機能不全であり、国家権力による生存権の侵害に他ならないと私は思う。