カナビスの肺機能リスクはタバコの5倍



神話
ニュージランドの研究で、ジョイント1本分のカナビスが肺の気道にダメージを与えて機能を低下させるリスクは、タバコの2.5本分から5本分に相当することが示されている。研究者たちは、カナビスを吸うと酸素を供給する肺の微細な気道と太い気道の双方がダメージを受けて空気の流入を妨げられ、その結果、カナビス喫煙者は喘鳴や咳に悩まされ、胸苦しさの襲われると指摘している。


事実
この研究 は、ニュージーランド・ウエリントンにある医学研究所を中心とする研究チームが実施したもので、339人の被験者を対象に呼吸器テストと高解像度CT検査を行って、カナビス喫煙グループ、タバコ喫煙グループ、カナビス+タバコ喫煙グループ、非喫煙グループの4グループ間で肺組織とその機能および呼吸器症状にどのような違いがあるかを調べている。

呼吸器テストでは、1秒間の努力肺活量(FEV1)、努力肺活量(FVC)、最大中間呼気流量(MMEF、末梢気道閉塞を表す呼吸機能指標)、総肺気量(TCL)、一酸化炭素搬出係数(TLCO/VA)、気道抵抗値(sGaw)を調べているが、このうちカナビスがタバコより劣っていたのは気道抵抗値だけで、「カナビス喫煙もタバコ喫煙もsGawを低下させるが、タバコの影響は基準範囲に収まっている」 としてカナビスではリスクになるとしている。

また、高解像度CTによる検査で、カナビス喫煙ではタバコ喫煙よりも肺組織の密度が低くなることを見出しているが、論文では、この2点をもとに、「カナビスのジョイント1本あたりで、タバコ2.5〜5本と同等の気道閉塞を起こす」 という結論を引き出している。

だが、ここでまず注目しなければならないのは、ここで言っているリスクには肺ガンや気腫のリスクが考慮されていないことだ。実際、この研究でも、カナビス・グループは気腫にならないことが示されており、またカナビスの喫煙で肺ガンにならないことは 大規模研究 でも明らかになっている。死に直結する肺ガンや気腫のリスクを無視して、気道閉塞のリスクだけを強調しても意味はない。

さらに、この研究では同じ量のタールを吸った場合の比較が前提となっているために、カナビス喫煙グループはカナビスのみをジョイントで1日に1本以上最低5年間にわたって吸っていることが条件になっているのに対して、タバコ・グループは1日に1パック(20本)以上を最低1年間吸っていることが条件になっている。

当然のことながら、全体的なリスクを比較する場合は、同じ期間の使用で起こる害を比べなければ意味をなさない。しかし、この研究では5年と1年の結果を比較している。

期間を同じにすれば、この論文の結果からもタバコの害のほうがはるかに大きくなることは単純計算で分かる。期間を1年とすれば、カナビスは1*365=365本、タバコ換算でリスクを5倍とすれば365*5=1825本相当になるが、タバコの場合は20*365=7300本になり、カナビスよりもリスクは7300/1825=4倍も大きいことになる。

また現実問題として、毎日ジョイント1本以上を最低5年間吸っているようなヘビーなカナビス・ユーザーは少なく、この研究の被験者は典型的なカナビス・ユーザーを代表しているとは言えない。実際に、この研究では当初は無作為に被験者を集めようと試みているが、該当する人が少なく、やむおえず直接リクルートして集めている。