3. カナビス料理素材の作り方



利用できるカナビス原料
カナビス原料はカナビス・サティバやインディーカの主に雌株から作られ、その向精神作用物質はテトラヒドロカナビノール(THC)と呼ばれている。インドやその近隣諸国では、カナビス製品は大きく4つの形態に分けることができる。第1はガンジャと言われ、バッズとその樹脂でできている。第2はバングで植物下部の葉から作られ、第3はバッズから樹脂だけを集めたもので、カラスと呼ばれる。第4はハシシとして知られ、湯の中に油を入れカナビスを煮て樹脂を抽出して固めてつくる。これらの名称は地方によっては別の意味に用いられていることもあり、例えばカナビスを使った飲み物をバングとかハシシとか言っている地方もある。

欧米や日本で入手できるカナビス製品には、マリファナとハシシ、ハシシ・オイルがある。マリファナという用語は植物で利用できるすべての部位に対して使われているが、乾燥させるだけで特別な加工はしていない。この形態の製品では、バッズの小葉群が最も効力が強く、植物そのままの形をしたものが一番高価だとされている。形のくずれたものは粉状にしたり、下部の効力の弱い葉と混ぜ合わせたりする。アメリカのブラックマーケットで売られている良質とされる典形的なマリファナは、バッズ及び葉と種子とが半々に混じり合っている。

欧米で使われるハシシという用語は、インド地方のハシシとカラスの両形態を含んでいる。従ってカラスという用語はめったに使われない。時にハシシは、キッフとかポルーンハシシと呼ばれるが、キッフは本来モロッコで作られたものでガンジャと黒タバコを混ぜたものである。ハシシは出所によって異なるが、マリファナの5〜8倍の効力を持っている。

ハシシ・オイルは、ハシシやマリファナから活性樹脂を溶液で抽出したもので、精製の程度や含有 THC パーセントに依っていくつかのグレードに分けられる。茶色のオイルは最も粗い精製物であるが、それでも原料となったハシシの2〜4倍の効力に凝縮されている。さらに精製のよいものとして順に、レッドオイル、ハニーオイル、ホワイトオイルがある。

ハシシ・オイルの効力は、異性化と呼ばれる近代的な化学手法で、量は変えずにさらに強くすることもできる。この方法は最初ロジャー・アダムスによって確立された。この過程は、オイル中の不活性成分の一つを活性 THC に転換させ、同時に低活性の THC 異性体を高活性の THC に変えるというものである。こうした変換は効力を6倍以上に高めるほか、ハイの質も一層よくする。異性化がカナビスの強い催眠性を取り除き、より朗らかで高揚したハイをもたらすのである。


カナビス料理の基本材料
以下に述べる基本素材の調理法は、カナビス料理の効力を強め、発現を早めるように工夫されている。これらの素材を全部用意する必要はないが、中でも最も利用度が高く、容易に作れるのはカナバターであろう。これはインドでは聖なるギーと呼ばれ、何千年もの昔から使われてきたものである。


ギーの作り方
インド料理の多くはギーを使う。ギーは不純物を除いたバターで、同地方では水牛のバターを原料としているが、他のバターからも作ることができる。古代東洋人の発明で、冷蔵しなくてもバターが腐敗しない方法として考えられた。正しく調理されたギーは、室温又は比較的涼しい所で保存すれば何か月間も腐らない。少々バタースコッチ風のくせのあるにおいを持っているが、ろ過すれば弱くなる。

ギーの作り方は、基本的には、上澄みを取る方法と沈澱させる方法の2つがある。前者は、1ポンド以上の新鮮なバターをシチューなべに入れ、上部に泡ができる程度の中とろ火で調理する。表面にできた泡をスプーンですくって取り除き、かき回して、わずかに煮立たせながら泡が出なくなるまで繰り返す。最後の泡を取り除くためには、なべを傾けて流し出す。残ったバター油脂がギーとなる。固ってしまわないうちにビンに入れ、キャップをして涼しい所に保存する。冷蔵庫に入れておけばさらに長持ちする。このタイプのギーには強いバタースコッチ風のにおいが残る。

後者の沈殿法では、ホウロウなべを使うとよいが、どんななべでもできる。フライパンなど鉄製のなべを利用する場合には、できるだけきれいにしてから使わなければならない。さもないとギーが黒く、鍋っぽい味になってしまう。きれいにするには、なべに塩一握りとサラダオイルを少し入れて、ふきんやぺーパータオルで磨き、何度か塩とオイルを取り替えながら、ふきんに錆が付かなくなるまで続ける。この際、水は絶対に使ってはならない。

1〜2ポンドのバターをなべに入れ、中とろ火で溶かす。しばらくぐつぐつと煮ていると白い粒が表面に浮いてくる。底をこすらないように注意しながら度々かきまぜていると、バターはだんだん泡であふれてくる。この状態になったらなべを火から下ろし5分程さます。すると白い粒々は底に沈み、上部がギーとなる。液が十分落ちついたらギーだけをビンに移し替える。ギーをよりピュアーにしたかったら、冷めないうちに何重かにしたチーズクロースでこすとよい。こせばこすほど、スコッチのにおいは弱くなる。

出来上がったギーの色はやや濃い金色をしており、濃すぎるようであれば温度が高すぎる。調理中に水蒸気が上がることもあるが問題はない。当然のことながらギーの量は使ったバターの量よりも少なくなる。

バターは塩入りでもそうでないものでも使える。塩分と脂肪でない不純物は最終的に白い粒々になって取り除かれるのである。甘いバターは塩のものより高価で、フリーザーに入れておかないとすぐに嫌なにおいを発するようになる。こうなったバターから作ったギーは最悪の味で体に悪い。塩味のないバターを使ってできたギーの残留物は、濃い色をしていて強いバタースコッチのにおいがするが、蜜を加えると非常に美味になり、食べることができる。だが、塩味のバターの残留物は塩っぱ過ぎて捨てるよりほかにない。


聖なるギー、カナバターの作り方
シチューなべに1ポンドのバター、またはギーを入れて溶かし、ふるいにかけて粉にしたマリファナを100g加え、バターがグリーン色になるまで数分間煮立たせながらかきまぜる。次に細かいこし器を使ってバターをろ過する。なべ底のどろどろになった葉の残留物は、スプーンで強く押しつけて液をしぼり出す。バターの流動性をよくするのに少し加熱してもよい。液が出なくなったら、今度はふきん、または何重かにしたチーズクロースに包んでしぼり出す。しかし、これでも葉の残留物には活性のバターがたくさん吸収されており、また中にはまだ十分な樹脂が残っているので、残留物は捨ててはならない。これをミルクかウォッカで煮て、蜜や砂糖で甘みをつければ美味で効き目のある飲物になる。また、使ったふきんはミルクかウォッカで煮れば、付着しているカナバターを取り出すことができる。

カナバターの効力をさらに強くしたい場合は、出来る限り細かくふるいにかけたマリファナを新たに足して加熱する。最初のカナバターの大半はマリファナにしみ込んでしまうので、前回と同様にこし取って、残留物から可能な限り取り出す。残りは例によってウォッカかミルクで飲み物にしてしまう。

出来上がったカナバターはびんに入れ、キャップをして冷蔵庫、または冷凍庫に保存する。バターの代りにギーを使ったのであれば、冷蔵庫がなくても涼しい食器棚に入れておけばよい。カナバターの上に水を張って冷蔵庫に入れておくと非常に長期間の保存がきく。この場合、水を入れる前にカナバターと水をよく冷やしてからにしないと、バターが水面に浮き上がってしまう。カナバターの上に溜まった水は酸化防止の役割もはたす。

さらに簡単で強いカナバターは、グラスの代りにハシシかハシシオイルをバターやギーに溶かして作ることができる。グラスを使った時のように長く熱する必要はなく、材料が全部溶け込んでしまうまで熱してかき回していればよい。簡単に溶けるので、量はシェフの望みのままになる。残留物は何も出ないので、ただ溶解すればすぐに使うことも、保存することもできる。


種子から作るカナバター
マリファナの種子の外皮(包葉)は非常に THC に富んでいるので、それからカナバターを作ることもできる。種子の内部に関しては、単に蛋白質と水分と不活性の脂肪が入っているだけなので、直接役には立たない。もっとも、栄養に富んでいるために世界中で小鳥のえさになっているばかりか、ある地方では人間も食用にしてきた。良質の種子を使ってできる最高のことは当然それを播くことだが、様々な事情から現実的でないこともある。

カナバターは、種子1カップに対し1/2ポンドのバター、またはギーで5分間弱火で煮て作る。葉に比べ吸湿性がないのでバターのしぼり出しは簡単に行える。種子の内部の油脂類やテレピンなどは表面にほとんど出てこない。こうして作ったカナバターは実際に味がなく、カナビスの味を好まぬ人でも使うことができるばかりか、こっそりと両親や先生、社長や政治家、大統領さえもターンオンさせることができる。


貧乏人のためのカナバター
マリファナをふるいにかけると小枝が残るが、これも種子と同じやり方でカナバターを作るのに利用できる。大きな茎しかない場合は溶剤としてバターの代りに油を使う。

ミキサーにサラダオイル、またはココナツオイルをカップ1杯入れて、粗引きスピードでかきまぜる。茎を数センチの大きさに切ってバラし、少しずつミキサーに入れる。モーターが回りにくくなるくらいまで入ったら、シチューなべにあけ、10分間加熱する。オイルをしぼり出してミキサーにもどし、新しいオイルを少し補充する。再び茎を入れて工程をくり返す。オイルが飽和するまで数回くり返してもよい。最終的に出来上がったものはビンに入れて冷蔵庫で保存する。このオイルはカナバターを使った料理のほとんどに応用することができる。グラスをたくさん持っている友達がいたら、グラス貧乏人のために茎や種子はとっておくように頼もう。


「水+油」法
ネパールやチベットではハシシを作るのに、水の中に油とガンジャを入れて煮る。十分にかき回してから冷ますと、活性樹脂を取り込んだ油が表面に浮き出して固まってくる。不必要な残留物や葉緑素は下の水に溶けてしまうので、上の油だけをすくい取るのである。この方法は油溶性の樹脂と水溶性の不用物質を分離・抽出する一方法であるが、水を使うことでいくつかの利点を持っている。

その一つとして水の沸点が油脂類よりも低いことが上げられる。高温で油脂類を長時間煮たりすると活性物質が分解してしまう可能性があるが、水を使うと比較的に安全な低い温度に保つことができる。さらに第2の利点は水が溶液の総量を増すことである。このためにマリファナはなべの中に拡がり、十分にいきわたる。なべが油だけで満たされていたら、結果的には低レベルの THC しか含まない多量の油脂が出来るだけだが、水と油の組み合わせによって油溶性の活性物質はわずかな油層に集積してくるのである。

ある種のマリファナでは、水溶性の物質はにがみがあり、喉を刺すような味がするが、カナバターの調理に当ってはこの方法を使ってにがみを取り除くとよい場合もある。しかし、これは個人の味の好みとグラスのタイプに大きく依存しているので、常に必要というわけではない。グラスを少し噛んでみて不快な味がするようなら、次の方法で水溶性の成分を取り除くとよいだろう

まずマリファナのバッズの部分をつぶし、粉状にしてなべに1/3程入れる。水とバターまたは油脂を4対1の割合で混ぜ、なべに3/4までそそぎ込み、30分程煮ながらよくかき回す。細長いスプーンで底から不要物をできるだけ取り除き、室温でさました後、冷蔵庫に入れる。表面のバターは固化し、一塊りで取り出せるようになる。バターの代りにオイルを使ったのであれば、フリーザーに入れる必要があるだろう。

さらに効力を高めたい場合は、油分として1回目に作ったバター、または油脂を使い、新しい水とグラスで工程をくり返せばよい。別の方法は最初のバターとしてカナバターを使えばよい。

この分離法は、にがくて喉を刺激するカナバターの改良にも応用できる。カナバターと水を1対2で混ぜ10分間煮る。室温でさました後、1時間ほど冷蔵庫またはフリーザーで冷やすと、表面は純粋なカナバターの固まりになる。にがみのもとになっている物質の大半は水溶性なので、分離して取り除くことができる。

似た方法でカナビタール(次節参照)のにがみのもとになっている成分を分離することもできる。カナビタールを5倍の湯で10分間煮て、さました後、1時間ほど冷蔵庫で冷やす。フリーザーは使わないほうがよい。さもないとタールを取り出すのに氷を割ったりしなければならなくなる。冷えているうちに固形化したタールを水から取り上げる。タールを残らずすくったら、水は捨てる。


カナビタールの作り方
二重なべの方法で湯煎する。外側のなべには湯を入れ、内側のなべにはアルコール2リットルに対しマリファナ250g(茎や種子が入っていてもよい)を入れる。外側のなべを加熱し、 45分間煮る。アルコールはエチルアルコールが最もよいが、なければ代用にウォッカを使ってもよい。ウォッカは50%のエチルアルコールを含んでいる。また、最終的にはアルコール類はすべて蒸発させてしまうので、安価なイソプロピルアルコール(IPA)を使ってもよい。IPA は薬物の抽出溶液や印刷関係の調湿液として広く用いられている。

煮ている最中はアルコールがあふれ出さないように常に注意していなければならない。アルコールは水よりも低温で煮る必要がある。また、引火性があるので、ガスよりもホットプレートか電気コンロを使ったほうが無難である。

45分後、葉ガラから緑色の抽出液をこし取り、それをひとまず別の容器に移す。葉ガラには再度アルコールを加え、45分間煮て2番目の抽出液を取り、最初の液と混合する。さらに3回目の抽出をしてもよいが、葉には活性成分はかなり少なくなっているので、次回タールを作るときの第1回目の葉にまぜるほうがよいだろう。

きれいな二重なべに抽出液を半分入れ、ふたを外したまま通気性のよい所で4分の1になるまで煮つめる。それに残りの抽出液をもとの液面まで加えて工程をくり返し、すべてを加え終ったらアルコールのにおいが完全になくなるまで煮つめる。次に間題になるのは、いかにしてタールを焦さないようにしながら水分を蒸発させるかである。100%純粋のアルコールを使っていればこの間題は起らないが、ウォッカなどを使った場合はかなりの水分が残っている。これを除くには2つの実際的な方法がある。

第1は、煮出した液をオーブン用のグラタン皿に入れ、最低温にしたオーブンで1晩温める。朝、湿気が十分に除かれていたならば、温かいうちにタールをバラしてビンに入れる。湿気が残っていればさらに加熱を続ける。

別の方法はもっと面倒だが、急の時には早くできる。二重なべの外なべには水の代りにサラダオイルを入れ、少々オイルがねばるぐらいの高温で熱する。油は水よりも高温で煮える。内なべは完全に乾かしてから抽出液を入れ、焦さないように注意しながら水分がなくなるまで加熱する。蒸発し終ったら溶けたタールをビンに注ぐ。内なべに付いたカスはウォッカやミルクで洗い落として甘味を加えれば、ごきげんな飲み物になる。


カナビス クッキング ブランデー
カナビスの樹脂はアルコールによく溶けるので、それを媒介にすると食物によく浸透する。従って料理に使う最上の方法の一つは、クッキング用のブランデーやラムに溶かして用いるやり方であろう。こうすればカナビスは料理によく溶け込む。

カナビス・クッキング・ブランデーは、後述するグラス・リキュールという飲物によく似ているが、用途は全く異なっている。後者はマリファナを使って直接味付けした飲物だが、クッキング・ブランデーは、例えばミンス・パイやパウンドケーキなど、ブランデーやラムを使った料理の原料としてもっぱら利用し、直接飲んでも良い気分になるかどうかは考慮に入れていない。卵とミルクとナツメグをたくさん入れて作ったエッグノッグという卵酒の一種があるが、これなどはそのままではとても人前に出せる代物ではないのに、ブランデーを加えるとまるで変身してしまうのである。カナビス・ブランデーを棚に忍ばせておくと、手軽な味付材料になる。とりわけ一年で最高の時である休暇中は、必ず用意しておきたいものの一つだ。

このブランデーの作り方はいたって簡単である。容器は密封式のガラスビンを使う。カナビスの材料は利用できるどんなものでもよい。最高の花の部分でもよいし、葉を取った後の茎や種子、ふるいで残った小枝やマリファナの吸いがら(紙は除く)などどんなカスでもよい。これらをブランデーまたはラム、好みに合えばウォッカなどに浸し、少なくとも1週間つけっぱなしにしておく。その後、蒸気を逃がすようにふたをゆるめて30〜45分間湯煎する。熱いうちにこし取った液に新しい葉や茎を再び入れて1週間置く。この工程を3〜4回くり返すと液は樹脂を十分に吸い取り、濃くて飽和してくる。この液を容器に保存する。

不要になったハシシなどがあれば粉にして液が温かいうちに加えるとよい。同様にハシシオイルを作った時になべに付着したカスなどがあれば、少量のブランデーで洗い落とし、その液を加えるとよい。注意しなければならないのは、ハシシやハシシオイルは最終的な抽出液に加えるべきで、さもないと茎やカスに付いた分は結局捨てられることになってしまう。

最初のしぼり出しで残った材料にはまだ抽出できる樹脂が残っているので、再び新しいガラスビンに入れ、新しいブランデーに漬ける。抽出後、しぼり出した液には新しいカナビス材料を入れ、液の濃度を高めていく。2回目のしぼり出しで残ったものはさらに新しいガラスビンとブランデーで抽出してスタート液とする……。こうしていくつかのガラスビンを用意しておけば連続的な抽出が可能で、無駄になるものは何もない。

カナビスブランデーを使う際には、活性物質がビン底に沈んでいるので、よく振らなければならない。液が過飽和になっていると、樹脂は振っても溶けないで粘着性のかたまりになって沈澱してしまう。このような場合にはビンを湯につけて温め、軽くゆすって溶かしブランデーを少し加えればよい。この際ビンが割れることがあるので、湯はさまし湯を使い、直接加熱してはならない。ビンには2分間程少しずつ湯をかけて温めてから、5分程湯に入れるようにする。沈澱が溶けなければくり返す。温めるときには空気や蒸気を逃がすためにビンのふたはゆるめておく。