テイラー博物館

テイラー博物館は、1778年、ハーレムの織物の豪商ピーター・テイラーの遺産によって建てられたオランダ最古の博物館だ。当初から博物館として設計されており中央の部屋は採光のために長楕円のドーム型をしている。物理実験器具や鉱物、骨格標本、活版印刷の発明者コステルにちなんだ印刷関係、さらに美術部門では多数の絵画も展示している(所蔵は4000枚)。



入場してまず正面を行くとオーバル・ルームの手前の部屋には圧倒的な実験装置が置かれて度肝を抜かれた。もともと教育用の博物館ではないので説明はほとんどなく、あってもオランダ語だけで最初はよく分からなかったが、しばらくしてこの装置がライデン瓶の実験装置だということが分かった。科学を専攻していたことが幸いした。



円形のガラス板は回転式の摩擦起電装置で1メートル以上はある。その電気を貯めるための一抱えもある巨大なライデン瓶が25個並んでいる。中央には放電装置らしきものがあって、実際にこれを稼働させたらド迫力にちがいない。実験を重視するオランダ物理学の神髄を見る思いがする。カナビスに対するオランダの実証主義的な取組みに共通するものを感じる。



一般には、活版印刷はドイツのグーテンゲルグ(1398〜1468)が発明したことになっているが、実際はハーレムのコステル(1370〜1440)のほうが30年ぐらい早かった。残念ながら当時のものの展示はないが、以後のハーレムの印刷産業の発展ぶりがうかがわせる組版や印刷物が展示されている。1500年代前半には印刷ギルドができて後半には市の図書館が設立されていたという。





美術部門の展示もミケランジェロやレンブラントなど有名な画家のものもあるが、昔のハーレムの日常を描いたが絵はどれも楽しくて見飽きない。おおげさに構えた貴族ではなく、スナップ写真のようにちょとした庶民の日常を切り取ったオランダの絵らしさを感じさせてくれる。







博物館は展示スペースが狭く展示品があふれかえってしまっていて説明も不十分だが、そのぶん思わぬ展示に遭遇したときの嬉しさは格別だ。ウイリー・ウォーテル・インデーカも近く、一服決めてからじっくり鑑賞することを薦める。疲れたら美しいカフェもある。



(2003年10月)