カナビスの酔いのレベル




GRASS (Great Revolution American Standart System)
by Jack Herer and Al Emmanuel
Jack's Hemporium


カナビスの酔いを表現するキーワードとして、「バズ (buzz)」、「ハイ (high)」、「ストーン (Stoned)」 が使われる。
  • 「バズ」 は、カナビスの効き始めの状態を示めす言葉で、なんとなくざわざわして、いつもと違う感覚になっていることに気付く。慣れてくると、この時の状態で吸っているカナビスの特徴や効力がわかる。

  • 「ハイ」 は、カナビスが効いて気分が高揚して、友だちと話が弾んだりして、笑ったり、ゲームを楽しんだりして身体的にも活発な状態を示している。

  • 「ストーン」 は、ハイがさらに高まって感覚が鋭くなる一方で、みんなと話すよりも自分の世界に入って体もあまり動かさなくなる。

●酔いのレベル

カナビスの酔いのレベルは通常のニュートラルな状態を基準にして、上に6段階、下に2段階に分けることができる。上に行くほどカナビスの影響が大きくなるが、カナビスの摂取量とも密接に関連している。

しかし、カナビスの酔いはセットやセッティング、摂取方法などさまざまなことに影響を受けるので、酔いのレベルと摂取量が単純に比例しているわけではない。また当然のことながら、こうしたレベルは概念的なものであって実際は明確に分けられるものではなく、感じ方も一面的ではなく時間とともに相反したり動的に変容する。


6  Stoned Stoned
ストーンド・ストーンド
宇宙との一体感

5  Very Stoned
ベリー・ストーンド
スローモーション、家の中で迷子になる、神秘体験

4  Stoned
ストーンド
繊細な感覚、浮遊感、幻想的、予知能力

3  High
ハイ
最高にリラックス、食欲、おしゃべり、セックス、コンサート、デジャブ、ひらめき

2  Mild High
マイルド・ハイ
リラックス、音楽が心地よい、クリエイティブ

1  Buzz
バズ
ざわざわ、いつもと違う

0  Neutral
ニュートラル
普通の状態

-1  Homeostasis
ホメオスタシス、恒常性
気分がすぐれない、落ちつかない、眠れない、ADHD

-2  Pain
痛み
慢性痛、けいれん


下のグラフは、アムステルダムとサンフランシスコの調査で、リクレーショナルでカナビスを使う人がどのレベルの酔いを体験しているか示している。大半の人は、意識的に自分をコントロールができる2.5〜3.5レベルくらいに吸う量を自己調整していることがわかる。最も頻繁に使っている時期には高いレベルを求めようとする傾向が見られるが、その時期を過ぎると半数以上の人が3レベル以下で楽しむようになっている。

4レベル以上になるとコントロールにはある程度慣れが必要で、意識でコントロールしないで無意識に自分をコントロールする方法も体得する必要がある。


Cannabis in Amsterdam and in San Francisco
Reinarman, et al., American Journal of Public Health , May 2004, Vol 94, No. 5


また、最近 オランダで行われたカナビス・ユーザーの調査 でも、カナビスの使い方は次の3タイプに大別できるとされている。
  1. 最も効力の強いカナビスを求めるタイプで吸引も深い。主に若者。使用頻度は多い。
  2. 比較的効力の強いカナビスを求めるが、吸引の深さや吸い込む回数でハイを調整するタイプ。使用頻度は多くない。
  3. 決まった効力のカナビスを使うタイプで、通常は一人で吸っている。中年以降に多い。吸引の深さなどは特に調整しない。


カナビスの医療利用

下の2段については、カナビスを医療利用する場合のレベルを表している。カナビスの医療利用では、リクレーショナルのための利用と違って、痛みなどの悪い状態を緩和してニュートラルな普通の状態になることを目的としている。

一般に、カナビスの医療効果はバズの状態以下で現れるので、ハイにまでにはなる必要はなく、行き過ぎると逆効果 にさえなることが知られている。

「ストーン (Stoned)」 の意味合い

バズ、ハイ、ストーンという言葉の起源についてははっきりしないが、アメリカでは1937年にカナビス禁止法が制定される以前から使われていたと考えられている。そうした古い言葉が現在も生き残って使われているのは、これらの言葉がカナビスの酔いの状態を単なる観念としてではなく、実体験したときの実感によくフィットしているいるからだ。

ストーンという言葉 については、カナビスの酔いが強くなると筋肉がリラックスし、感覚が鋭く繊細になる一方で、あまり動きたくなくなってじっとしていると重力を実感して体が石(ストーン)のように重く感じるようになることから出てきたものと思われる。英語では、このような状態になったことをストーンした(stoned)という風に完了動詞的に使われる。

また、stone には、「石」 だけではなく、「石を投げつける」 という意味もある。こうした意味合いをもつストーンという言葉を巧みに表現した曲としては、ボブ・ディランの 『Everybody must get stoned』 がよく知られている。(アルバム・タイトル 『Rainy Day Women #12 & 35 (雨の日の女)』)
Well, they'll stone ya when you're trying to be so good,
They'll stone ya just a-like they said they would.
They'll stone ya when you're tryin' to go home.
Then they'll stone ya when you're there all alone.
But I would not feel so all alone,
Everybody must get stoned.

あんたがよくなろうとする時、やつらは石を投げつけるだろう。
やつらは言ったとおりに石を投げつけるだろう。
あんたが家へ帰ろうとすると、やつらは石を投げつけるだろう。
あんたがひとりぼっちでいる時でも、やつらは石を投げつけるだろう。
でも、わたしそんなにさびしくはないだろうし、誰もが一発やられるべきなんだ。
(片桐ユズル訳)

この曲が発表された1966年のことを考えれば、当然、”Everybody must get stoned” には、「誰でもがカナビスでストーンすべきだ」 というメーセージが含まれている。実際、アルバムのタイトルになっている 「Rainy Day Women」 は、当時、カナビスを示す隠語としても使われていた。また、アルバムに付けられている番号12*35が 『420』 の起源だという説もある。

一方、聖書のヨハネ福音書には、「姦淫の女」 という有名な話がある。イエス・キリストが神殿で説教していると、ユダヤの律法学者やパリサイ派の者たちが姦通の罪を犯した女を連れてきて、「モーセの十戒の6番目には、姦淫した女は石打の刑で殺せとなっているが、あなたはどう思うか?」 と問いかけた。

これに対して、イエスは、「あなた方の中で罪を犯したことのない者だけが、この女に石を投げつけよ」 と答えた。するとみんなは沈黙し、やがて去っていった。誰もいなくなると、イエスは女に向かって 「誰もおまえを罰しない。家へ帰りなさい」 と言って赦した……。

この曲は、こうした点からもきわめて暗示的で隠喩に富んでいる。