もう一人の自分

カナビス酔いのユニークさ


イギリスの環境交通地域省(DETR)の依頼で行われた交通研究所(TRL)の 運転シュミレーターを使った実験 では次のように結論を書いている。

「カナビスの喫煙では、総合的に見て、特に動体を追跡視認するといった精神運動能力に測定可能な影響を受ける可能性が認められるが、運転時に必要な分散した操作を行うといった高次の認知機能への影響については決定的の損なわれるとまでは言えない。カナビスの影響下で運転しているドライバーは、自分の機能が損なわれていることを意識しているので、運転が難しくなるとスピードを落としてそれをカバーしようとする。」

このように、カナビスでハイになっている人は、アルコールで酔っている場合と違って、カナビスの影響下にあることがわかっているので自然に自分の行動を調整しようとする。

実際、大半の人はハイがピークの時は、自分の時間や空間の感覚がいつもと違っていることがわかっているので、たとえ運転に重大な障害になるとまでは感じなくとも、より慎重になって自動車を運転しようとしなくなる。


体験者としての自分、観察者としての自分

このようにカナビスの酔いでは、ハイを体験している自分と、その自分がカナビスを使ってそのような状態になっているのを見ている 「もう一人の自分」 がいることを自覚できるというユニークな特徴がある。

アルコールなどの場合は深く酔うと自分を見失ってしまうが、カナビスの場合は、たとえ酔いのレベルが高くて話をしたり体を動かすことができなくなっていても、そうなっている自分とそれがカナビスによるものだと観察している不可分の自分が二人いる。

たぶん、精神科医ならこの状態をすぐに精神分裂とか離人・離脱症と診断するかもしれないが、実際にはそんな対立的なものではない。相互補完的で安心感があって心地よく、一体感があって何も矛盾を感じない。自分が自分でないと感じるようなこともないし、分裂して葛藤するようなこともない。


カナビスの 「幻覚」 と統合失調症の幻覚の違い

おそらく、カナビスでは暴力的にならない のは、このこととも関係している。ストーンして体が動かないという面もあるが、運転の場合と同じように、「もう一人の自分」 が自分の行動を抑制している。

また、カナビスでは性感が増したりセックスをしたくなったりするが、デートレイプがない という特徴もある。このことはアルコールの場合と全く違っているが、これも 「もう一人の自分」 が自分を抑制しているためだと考えられる。

しばしば、カナビスでも 「幻覚」 を見るので統合失調症になるという主張もあるが、その共通性を認めたとしても、病識がないとされる統合失調症と違い、カナビスの場合はそのことを自覚している自分がいるという点が決定的に違う。また、カナビスでは酔い過ぎて眠ってしまうことはあっても、アルコールのようにブラックアウトして後で何も思い出せなくなるというようなことはない。


バッドトリップでは 「もう一人の自分」 を意識することが重要

カナビスで酔っているときに、実際には、いつもいつも 「もう一人の自分」 を意識するわけではなく、むしろ、かなり経験を積んだ人でもこのことに気付いていないこと人が多い。

普段では、無意識のうちに自己コントロールするようになるが、バッドトリップ に陥った時には、「もう一人の自分」 を意識することが大変役に立つ。

「もう一人の自分」 を通じて、カナビスでトリップ中であることを自分に言い聞かせ、カナビスでは死ぬようなことは絶対にないと言い聞かせ、1〜2時間でピークは過ぎることを言い聞かせる、ことで冷静さを取り戻せば自分をコントロールできるようになる。


注意すべきアルコールとの併用

だが、カナビスとアルコールを併用している場合 には、アルコールの影響で 「もう一人の自分」 が隠れてしまう。しばしば、アルコールを飲みながらタバコのようにカナビスを吸っている人を見掛けるが、こうした場合は、カナビスの効果を自己コントロールできずに吸い過ぎてバッドトリップに陥ることがある。

また、カナビスの抗嘔吐作用でアルコールを飲み過ぎることもあり、このような場合は簡単にバッドトリップに対処できないばかりか、危険も非常に大きくなるので特に初心者は注意しなければならない。イギリスやオーストラリアでは、若者のカナビスによる精神病が大きな問題になっているが、背景にはアルコールの多量使用問題が横たわっている。

カナビスとアルコールの併用が常態化すると、カナビス依存性が起こりやすくなる ことも知られている。アルコールを併用したい場合は、アルコールを飲みながらカナビスを吸うのではなく、カナビスのハイの中で少量のアルコールを味わう程度にとどめるべきだろう。

また、たとえ少量のアルコールであってもカナビスと相乗的に影響して、運転のリスクが高まる ことが知られており、注意しなければならない。

カナビスは、常に 「もう一人の自分」 をリスペクトしながら使うように心がけることが大切だ。